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ニュースリリース

【完全版】行政改革・政治改革推進本部インタビュー

 第213回国会で大きな話題となった「政治とカネ」の問題。自民党の派閥の裏金問題に端を発したこの問題は結局原因究明には至らず、自民党が提出した実効性の全くない「ザル法」とも言える政治資金規正法改正案が強引な形で成立。 国民民主党の政治資金規制改革を担当した、政治改革・行政改革推進本部の3名古川元久本部長、竹詰仁 事務局長、長友慎治 事務局次長が今回の国会議論を振り返ります。

 ※ 国民民主PRESS23号に掲載された、行政改革・政治改革推進本部の役員インタビューをノーカット完全版で掲載しております。

1.国会審議を終えて

古川:まずは通常国会お疲れ様でした。今国会の重要な議案の一つとなった政治資金規正改革について、党の行政改革・推進本部の三名で振り返っていきましょう。
 今回の議論の契機は、自民党派閥の裏金問題でした。「民、信なくば立たず」、一番大切なのは政治に対する国民からの信頼です。本来は、今回の一件で失墜した信頼を回復するための政治改革でなければならなかったのですが、問題を起こした自民党自身に当事者意識がなく、真摯な反省も見られませんでしたよね。

長友:総理が5月中の衆議院通過にこだわり、細部を詰めずに強行スケジュールを押し切ろうとしたため、政治改革委員会の現場は混乱しました。この期に及んで「自民党は何をやっているんだ」と呆れますし、そもそも議論をする気すらなかったかのかと思います。

竹詰:なぜ派閥の裏金問題が起きたのか、真相や原因を明らかにしないままで法改正の議論が進められたことも、改正の方向性が本当にあっているのかどうかが全く分からず、非常に問題であったと思います。問題を起こした当事者として、自民党は説明責任をきちんと果たすべきです。

古川:再発防止を掲げるなら、原因究明・真相究明が必要ですよね。その点はきわめて不十分なまま、岸田総理は何度も「今国会で政治資金規正法改正を実現する」と発言し、結局、法改正の中身を度外視して改正案を成立させるという、体裁だけ整えることを優先した結果となりました。

長友:本当にその通りです。衆議院の理事懇談会は約2週間、毎日のようにやっていましたが、具体的な中身の協議は行われていません。一方で委員会での審議は5回で実質2日半のみで、国民に見える形での審議・議論としてはまったく足りません。国民の皆さんからすれば、「これが国会、政治改革の姿なのか」とあきれてものも言えないと思います。

古川:30年前の平成の政治改革が行われた時には、「政治とカネ」の問題を起こした当の自民党の中から、この機会に政治のあり方そのものを変えるべきだという声が上がりました。「内外の情勢の変化に対応した政治を実現するためには政権交代可能な政治体制にすることが必要だ」との声が、長年与党であった自民党の中から出てきて、選挙制度から始まって政治のあり方を広範に見直すことを提言した政治改革大綱がまとめられました。しかし今回は全く自民党にこうした姿勢が見られません。内外の情勢は平成の当時と同じか、それ以上に大きな転換期にありますが、日本の政治はこのままでよいのかという大きな問いかけもなく、単に再発防止のための応急処置を施そうとしかしていません。しかも中身を見れば応急処置にさえもなっていない。

竹詰:私は法案作成や協議などの実務者として関わる中で、約30年ぶりの大きな政治資金改革という貴重な機会に立ち会う高揚感はありましたが、実際委員会が始まっても、今後の各党各会派の議論に委ねると言い逃れ、具体的な議論は何も行われず、納得のいくものではありませんでした。

古川:竹詰さんには衆院側の法案提出のために色々と調整に臨んで頂きました。

竹詰:立憲民主党と、細かな相違点をお互い歩み寄れる部分を確認しながら成案を得ていくという作業を初めて行いました。両党それぞれが自分たちの考えをいかに国民に知ってもらうかといったことなど、お互いの様々な事情も考慮しながらの実務者協議は貴重な経験となりました。

古川:初めてと言えば、お二人は今回初めての委員会答弁でしたよね。実際に答弁に立たれてみてどうでしたか?

長友:緊張しました(笑)。通告通りの質問が来るのか分からないし、変化球で質問されたら答えられるのだろうか、と思いながら自分の番を待っていました。

竹詰:私も同じです。労組役員時代に色々な経験もしましたが、それとは違う独特の雰囲気がありました。特に、通告とは違う変化球の質問が来たら、どこまでの範囲で答弁すればよいだろうか判断に迷ってしまうと思いながら身構えていました。「そんなこと聞いていない!」と答弁を遮られる方もおられるので(笑)

長友:今後、自分が質疑を行っていく際にも活かすことができる貴重な経験になりましたよね。あと印象的だったのは古川議員が、ご自身が質問される時より生き生きとした姿で答弁されていたことです(笑)。私もああなりたいと率直に思いました。

古川:過去に政府に入ったときに鍛えられましたからね。我々はずっと野党のままではなく、与党を目指していますから、これから質問をする際は、攻めだけではなく守りも意識してください(笑)。一日も早く、与党側で答弁席に立てるよう皆で頑張っていきましょう。


2.改正案について

古川:話を戻しますが、先ほど竹詰さんも少し仰った通り、進め方もそうですし、内容も問題だらけでしたね。

長友:衆議院側では、岸田総理が公明・維新の党首と会談することで、かろうじて合意にこぎつけましたが、中身についての詳細な議論は全くされていません。これでは、公明党も維新も自民党と“同じ穴のムジナ”と批判されても仕方がないと思います。総理に中身を直接聞いても、「法案が通った暁には、各党各会派とこれから話し合う」という答弁ばかり。国民を馬鹿にしていると言わざるをえません。

竹詰:総理も自民党提出者も、様々な規定が検討だらけにもかかわらず、詳細は各党各派のご議論で決めていきたいとの答弁を続けられました。少なくとも提出者側として、自分たちの主張や制度設計の考え方を明確に説明をした上で、他党の皆さまいかがでしょうかと意見を聞くのであれば議論も進んでいくと思いますが、あのような姿勢では筋は通らないだろうと、私もいまだに納得できていません。

長友:総理入り質疑で質しても、総理ですら具体的な中身が答えられない。そうであれば、 現場の担当者が答えるなんて到底無理ですよ。建設的な議論とするためにも、まずは総理入りを行うべきだったと思います。もしかすると、自民党側にはそもそも議論を行う気も委員会の場で決める気もなかったのかもしれませんよね。ちなみに、こんな議論の進め方はかつてあったのでしょうか?

古川:過去、重要なテーマで与野党を超えて合意形成することが求められるような場合には、委員会での質疑と同時並行で政策責任者の間での協議を行うことが通例でした。そこで今回も、こうした形で与野党協議が行われるものと思っていましたが、実際はそうならず、特定の政党間での水面下の協議のみで決まってしまいました。

長友:委員会の現場に大物もおらず、自民党としては若手にやらせておけばいいといった考え方があったのかもしれませんが、内容のない理事懇が何度も開かれたのは、正直、国会会期中の貴重な時間の浪費だと感じざるを得ませんでした。

古川:委員会質疑は基本的に一方通行ですからね。理事や現場の担当者に決定権限がない中で、委員会だけで進めていくというのはやはり難しかったと思います。長友さんもそうですが、与野党ともに現場の皆さんは真面目にやってくれていたと思います。責任は、岸田総理を筆頭に、自民党幹部がきちんと政策責任者による与野党協議の場を設けなかった不誠実さにあると思います。

竹詰:具体的な中身が検討だらけというなかで、委員会での議論は政策活動費の公開のあり方が中心になりましたよね。我々は何でも禁止だというのではなく、政治資金の透明性を高めることに重点をおいていますから、公開すること自体は理解できるのですが、時期が十年後であり、それにもかかわらず黒塗りで一部非公開となる可能性も極めて高いというのは問題外です。

長友:維新が提案したということですが、悪手ですよね。国民をだましています。私や田中健議員の質疑の中で明らかになりましたが、10年後に政治資金規正法違反が発覚しても時効、また、課税を逃れたことに対しても税法上の時効は最大7年のため、責任を問うことができません。時効の停止を法文上規定するなど、早急な対応が必要です。

竹詰:やはり政策活動費については問題点が多すぎるので、自民と維新以外の全ての党が訴えた通り、廃止にすべきだと思います。政策活動費は法律上の根拠がなく、使途が明らかにならないにもかかわらず、政治資金であることを前提に非課税扱いになっています。しかし、非課税であるなら公開するのが当たり前だと思うんです。今回の改正案では、ブラック・ボックスの政策活動費に法律上のお墨付きを与えるようなものであって、到底あり得ません。

古川:「政治とカネ」の問題が起こるたびに政治資金法を改正してきましたが、政治家間で議論をするとどうしても抜け穴ができてしまうことは、恥ずかしながら過去の歴史をみると明らかです。自分を縛るルールを自身で作ると、どうしても甘さが出てしまう。それゆえにまた「政治とカネ」の問題が起きる。この悪循環を断ち切るには、やはり第三者の目が必要です。はじめにもお話した通り、個別具体の政策以前の政治に対する信頼の問題ですからね。ここまで信頼が失墜してしまった以上、ルールを作る段階から、遵守状況のチェック、違反があった時のペナルティの判断まで広範な権限を第三者に委ね、政治家はプレーヤーに徹する覚悟が必要です。

竹詰:私も参議院側で答弁をしましたが、完全に同意します。ただ、自民党案は、公明党の要求もあって第三者機関の設置が附則に盛り込まれているものの、設置の時期も具体的な権限も何も決められていません。
 その他、委員会ではあまり議論になりませんでしたが、代表者、政治家や政党の責任強化についても自民党案では問題がありますよね。

古川:そうですね。自民党以外の政党はいずれも代表者や政党の責任を明確にし、罰則を強化することを提案していました。しかし自民党案では、会計帳簿や領収書の保存を国会議員が確認するよう規定し、会計責任者が作成した収支報告書の確認書交付を義務付けましたが、その確認書が免罪符になる可能性があります。

長友:「政治家が裏金の存在を全く知らなかった場合、その確認の責任も負わず、罰則の適用もない。」との答弁がありましたよね。裏金に「気付かなかった」場合は責任を問われない、という理屈は通用しないと思います。

古川:その通りです。今回の政治資金改革の大きなポイントは、①代表者などの責任の明確化と罰則強化、②政治資金の入りと出の透明化、③第三者機関の設置の3つだったと思います。ただ今回の成立した改正案では、どれもまともな中身とはなっていません。
 平成の政治改革を牽引された元東京大学総長の佐々木毅先生は、平成の政治改革を牽引された元東京大学総長の佐々木毅先生は、「今回のような問題が起きたのは、平成の政治改革の時に細部まできちんと詰めなかったからで、『細部に悪魔が棲む』ので細部にまでこだわることが重要」と仰っています。検討、検討、また検討で細部まで全く詰められていない今回の改正案では、将来、また同様の「政治とカネ」の問題が起こることは火を見るより明らかです。


3.これからの政治改革について

長友:中身は問題だらけとは言え、とりあえず改正案は成立しました。今後、具体的な法整備が行われていくと思いますが、我々として何をやっていけばいいのでしょうか。

竹詰:私は、まずは政治倫理審査会を引き続き開催していくことが必要だと思います。真相はまだ明らかになっていません。当事者の口からきちんと説明をしてもらいたいと思います。

長友:法案の検討事項を具体化していく作業には、原因究明は必要不可欠ですよね。

古川:検討事項の具体化で言えば、とりあえず第三者機関が設置されることだけは決まったので、一日も早く設置に向けて動くべきです。法律の附則に例示されている政策活動費の監査のみに限定されることなく、我々が主張するような幅広い権限を持った実効性ある第三者機関となるよう、協議の過程で強く求めていきます。

竹詰:一般的な政府提出法案であれば、政省令などで詳細を決めていく過程に我々は関与できませんが、今回は議員立法であり、総理も各党各会派の議論で、と言われていますので、検討規定が多く並ぶ中で、細部についてまでどのような制度設計がされていくのか、法案の具体的な進捗状況もきちんと見て、関わっていく必要がありますよね。

長友:その際にはやはり、政治資金がどのような使われ方をしているのか、自分たちが負担している税金が、いい社会を作るために真っ当な使われ方をしているのかどうか、を国民が当然チェックできるようにしていくべきです。国民には「知る権利」がありますので、政治資金は全面公開されなければなりません。国民に説明できない、隠したくなるようなお金の使い方はもう許してはいけない。政治家自身が身をもって示していくべきだと思います。

古川:さらに言えば、今回の問題は、個人の政治家の問題にとどまらず、政党や現在の政治のあり方そのものの問題でもあります。平成の政治改革では「政党本位、政策本位の政治の実現」を目指して、選挙制度改革や政党助成制度の導入が行われましたが、果たして今の政治はそうなっているでしょうか。今回の問題も、長年にわたる派閥の裏金づくりを見逃してきた自民党のガバナンスの問題に、その本質はあります。

竹詰:確かに、一回きりの法改正で終わりではなく、中期的にもっと広く政治改革を続けていくのだという認識をもって、取り組みを継続していくことが重要ですね。

古川:我々は「令和の政治改革」の実現に向けた方向性を示しましたが、政治資金改革を皮切りに、政党改革、選挙改革、国会改革まで、一体としてきちんとやり遂げなければ「令和の政治改革」は完結しません。例えば、国会議論が活性化するような国会改革を行えば、国会での活動が議員の評価のポイントになってくるはずです。地元の会合に何回顔を出したかで議員が評価されるような風潮があるのは、国会での活動があまり見えていないからです。有権者とのコミュニケーションはもちろん必要ですが、国民の代表としての国会議員本来の働きで議員が評価されるようになっていくことが大切ではないでしょうか。
 今は、議員個人が有権者に対して、本来、評価されるべきではないようなことで存在をアピールをしなければならないようになっているために、秘書を何人も雇ったりしなければならず、そのためにお金が必要になっているという面も否定できません。

長友:私自身はまだ一期生で、秘書も少ないですし、企業団体献金ももらっ たことはなく、地元で行うパーティーの収益も多くありません。同僚議員と話す中でも、これで活動を何とかやっていくのが当たり前だと思っていましたが、自民党議員が十人、二十人という秘書を抱えていることや何千万というパーティー券収益や企業献金の話を聞いた時には、こんな世界があるのかと正直驚きました。色々なところに本来不必要であるはずのお金がかかっているということなんですね。

竹詰:「お金のかからない政治」というのは聞こえは良いですが、実際の政治活動にはやはり一定のお金は必要ですよね。私は参議院の全国比例選出議員なので、郵送物や資器材、移動費など結構な費用が掛かってしまいます。政治資金を広く集めるという意味で、政治資金パーティーや寄附、献金も否定すべきではないと思っています。ただ、先ほども言った通り、政治資金は非課税扱いです、非課税であるなら公開すべきだと思うんです。そして、その公開されたお金の使い道も国民が見て、納得した上で応援してもらうというのがあるべき姿ではないでしょうか。

長友:同感です。一方で、特に総支部長はそうかもしれませんが、生きていく上に生活費もかかります。国のため地域のために活動したくても、金銭的な不安から、活動を制限しなくてはならないというのは辛いものがあります。裸一貫で志がある人が挑戦できない新規参入を阻む環境である結果、政治が硬直化してしまうというのは国家国民にとって重大な問題です。

 それでも「お金がかからない選挙、政治」にはしていくべきじゃないでしょうか。与党中心の金権政治ではなく、大小様々なすべての声に与野党が耳を傾け、損得勘定ではなく協力して常に超党派で課題解決に臨み、日本を良くしていく。そんな政治を皆さんと一緒に作り上げたいです。

古川:我々が掲げる「対決より解決」は、与野党が対決ばかりするのではなく、国が抱える諸課題を互いに建設的な提案と丁寧な議論をすることで解決策を見出し、実現していくということですからね。先ほどの話で言えば、政党のガバナンスを高める政党改革を行うことで政党組織を強化し、選挙や日常活動を支える基盤は政党が中心となり、志や能力がある人が全力で政策実現に取り組むことができるような環境を整えていきたいと思います。また政治家のジェンダーギャップの解消や政治家の質の向上にもつながるような選挙制度改革も実現したいと思います。さらに国会議論がもっと活性化するような国会改革を行って、政策実現のために真面目に活動している議員の姿がきちんと国民に伝わり、そのことで議員が評価されるような政治へと変えていきたいと思います。
 「令和の政治改革」は、まだのほんの序章が始まったばかりです。こうした改革を全てやりきらない限り、真の政治の信頼回復にはつながりません。「最後までやり切る」との強い決意と覚悟をもって。根気よく訴え続けていきましょう。