国民民主党 つくろう、新しい答え。

就職氷河期世代政策

はじめに

 2024年3月28日、令和6年度予算三案に対する討論に立った伊藤孝恵参議院議員が自身の就職活動で100社もの会社に落ちたことを述べた際、議場に笑いが起こったことに端を発し、国会議員の就職氷河期世代に対する認識不足を問う声がSNSにあふれました。

 国民民主党では、当該世代の実態把握のため4月15日~28日までオンラインアンケートを実施し、8日間で933人の当事者等から回答を得ました。その中で、最も多く寄せられたのは、就職氷河期により安定的な職に就くことが出来なかったことによる現在の生活および将来への不安であり、政府実施の「就職氷河期世代支援プログラム」については87.8%が利用していない、又は聞いたことがないとの声でした。

 国民民主党は、行政や社会、当事者の中にもある就職氷河期世代に対するバイアス(無意識の思い込み)の調査を求めると共に、就職氷河期世代を中心とした我が国の中高年層が直面する課題の解決に資すると思われる政策を、2024年6月25日に提言し、その後も政府に対しさまざまなかたちで提案・要請を行ってきました。

「就職氷河期世代」とは

大卒就職率

大卒就職率 2003年 55.1%、2023年 97.3%

 1993年から2004年にかけて大学(学部)卒業者の就職率は平均69.7%と、当該期間を除く1985年から2019年の全体平均80.1%を大きく下回っており、特に2003年の就職率は55%になるなど、景気後退の局面で旧態依然とした日本型雇用システムを維持する為の弊害として就職氷河期は生まれました。これは人為的な『災禍』といえます。

 また団塊ジュニア世代の就労期に重なったことで、結果として我が国に「第3次ベビーブーム」を起こせず、少子化を一層深刻化させました。

 政府は1993年から2004年の期間を「就職氷河期」と位置付け、2018年時点で35歳から44歳であった1,689万人を中心層として、正規雇用を希望しながら非正規雇用で働く人が少なくとも50万人、仕事も通学もしていない無業者が40万人いると試算しました。

 2020年度からは3か年で「就職氷河期世代支援プログラム」を実施し、その後は第二ステージとして2023年度から2年間、対策期間を延長して取り組みましたが、効果をまみえているとは言い難い現状です。

国民民主党「就職氷河期チャンネル」もご覧ください

国民民主党は2025年4月18日、「就職氷河期世代政策」に特化した党公式サブチャンネルを立ち上げました。
党が取り組んできた政策を紹介するとともに、様々なコンテンツを通じ、皆さんの意見をさらに党の政策へと反映していきます。

1

就職氷河期世代の固定イメージ(男性×非正規)の払拭

就職氷河期世代の実態調査と
政府施策の検証

  • 「就職氷河期=男性×非正規」の固定イメージ
  • ターゲットの解像度が低いので政策がニーズに合っていない
  • ハローワークは失業者、無業者が対象

ひきこもり、長期の非正規雇用、結婚・出産で退職、無業、在職中など、現況を勘案した選択肢をつくる

まず、就職氷河期世代の実態調査が必要

 政府の施策が届いていない理由に※1、ペルソナ分析がない等、ターゲットの解像度が低いことによる政策とのアンマッチが挙げられます。
本来の就労支援とは、医療や福祉への接続を含む多様な課題のアセスメントから、スモールビジネス※2等の起業を含めた就労定着に伴走することです。

 就職氷河期世代が置かれている状況はさまざまで、雇用形態に対するニーズは正社員に限りません

 よって同居家族の構成や育児・介護の有無、自身が「ひきこもり」「長期にわたる非正規雇用」「無業」「結婚・出産を機に退職」「在職中」等の現況を勘案し※3選択肢をつくる政策が求められています。

政府の「氷河期世代支援プログラム」を
利用していない理由

ニーズに合っていない47.7%
国民民主党アンケート結果より
2

就職氷河期世代を中心とする中高年層の年金不安への対応

厚生年金の「過去遡及納付」と
「最低保障年金制度」の構築

  • 不安定就労や無業者はもらえる年金が少なくなる(収入格差=年金格差)
  • 2016年以前はパートタイム労働者は社会保険の加入対象外(一部を除く)
  • 過去に遡って年金保険料を納付して年金額を増やせるように
  • 抜本的には「最低保障年金制度」で新たなセーフティネットを構築

最低保障年金で老後の不安を解消

 正規雇用への拘りは、将来不安、老後の暮らしへの心配に拠るところが大きく、社会参画の形態に柔軟性を備えるには、年金制度の議論は不可分です。

 所得が低い不安定就労や無業者の状態を余儀なくされた者は、老後に向けた貯蓄が出来ないばかりか、現役時代の所得格差が貰える年金の多寡に直結します。

 非正規雇用の場合は厚生年金に加入できないことも多く、2016年以前は一部を除きパートタイム労働者は社会保険の加入対象ですらありませんでした。その場合、自身で国民年金に加入する必要がありますが、保険料は所得に関係なく定額であり、将来貰える年金は老齢基礎年金のみになります。勿論、未納の期間があれば基礎年金すら減額されます。

 現在、パートタイム労働者への社会保険適用が段階的に拡大されており、今後は他に主たる生計者の居ない非正規雇用労働者の大半は厚生年金に入ることになりますが、既に中年期を迎え、老後の不安に苛まれる就職氷河期世代が※1過去に遡って保険料を納付することで年金額を増やせる「遡及納付」や「最低保障年金制度」など、新たなセーフティーネットを再考する時期に来ています。

現在の課題・不安について

1位 老後の備えが不十分。2位 生活が苦しい。3位 いざという時に頼れる人が少ない(またはいない)。 1位 老後の備えが不十分。2位 生活が苦しい。3位 いざという時に頼れる人が少ない(またはいない)。
国民民主党アンケート結果より
3

就職氷河期世代に“履歴書と面接を入口としない”採用を

就労に困難を抱える人が働ける
会社を国が支援

  • 職歴の多さや資格の有無が気になる
  • 採用面接に苦手意識がある
  • 「東京ソーシャルファーム」の全国拡大
    ー般的な企業と同様に自律的な経営を行いながら、就労に困難を抱える方が必要なサポートを受け、他の従業員と共に働く社会的企業を支援
  • 特定求職者雇用開発助成金(就職が困難な状況にある方を継続して雇用する事業主が受給できる助成金)の拡充・延長

面接や履歴書を入口としない採用を国主導で拡大

 東京都による「東京ソーシャルファーム」は、就労に困難を抱える方を採用している企業を補助金等で支援する制度です。就労継続による正社員登用等が実現した場合、企業に更なるインセンティブがあることで、就労後のトラッキングも出来る仕組みになっています。

 履歴書や面接を入口とせず、まず共に働き、互いに持続可能か否かを判断していく採用形態は、履歴書の職歴の多さや資格の有無を気にしたり、採用面接に苦手意識を抱く就職氷河期世代には非常に有効です。

 「特定求職者雇用開発助成金」の拡充と実施期間延長により、今後就労拡大が必要な、観光・介護・農林水産・運輸・建設・教育等での採用企業には特に社会保険料の免除や税制優遇等の支援を強化すると共に、スカウト機能も備えたマッチングの仕組みが求められています。

 具体的には、オンラインによる全国共通窓口での就労トレーニングや動画コンテンツによる情報提供、マッチングバンクの実装及び、エリアごとのハローワークやサポステの機能を強化することで支援の多様性を担保します。

国民民主党アンケートの声

氷河期世代向けというと、スキルがない事を前提に引きこもり→正社員みたいな募集ばかりですが、実際には非正規でありつつ努力をして資格も持っているけれど、生かす場面に辿り着けなかったのがほとんど。面接官と話すのが苦手すぎて苦戦しました… 氷河期世代向けというと、スキルがない事を前提に引きこもり→正社員みたいな募集ばかりですが、実際には非正規でありつつ努力をして資格も持っているけれど、生かす場面に辿り着けなかったのがほとんど。面接官と話すのが苦手すぎて苦戦しました…
国民民主党アンケート結果より
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就職氷河期世代の固定イメージ(男性×非正規)の払拭

就職氷河期世代の実態調査と
政府施策の検証

  • 減員が前提の国家公務員の定員管理
  • 自治体の行財政改革でも職員定数減
  • 国家公務員・自治体職員(教職員やスクールサポートスタッフ、保育士、福祉職など)の採用拡大

国や自治体による採用を直接増やす

 国家公務員のなり手不足と若手の離職増加を鑑み、内閣人事局による定員管理の在り方の再考を求めます。同時に合併特例法の改正に伴い1999年4月~11年間にわたって続いた市町村合併や、経済低迷に伴う各自治体の義務的経費削減を目的とする行財政改革によって減らし続けた自治体職員定数も見直しを求めます。複雑化・深刻化する住民の課題に対し、アウトリーチ型の行政サービスの必要性は日ごと高まっており、会計年度任用職員や非正規雇用、派遣社員による充足では成り立ちません。

 ニーズの高い※1国家公務員および自治体職員(教職員やスクールサポートスタッフ、保育士、福祉職等を含む)の採用を拡大すると共に、採用を強化する自治体への交付金増額等を実施します。

就職氷河期世代を対象にした
各省庁共通国家公務員中途採用試験

採用予定人数157人に対して申込者数1万943人(採用倍率60.7倍)。東京都の特別区職員採用試験:事務職募集枠37名に対して申込者数2,479名/受験者1,514名(採用倍率40.9倍)。 採用予定人数157人に対して申込者数1万943人(採用倍率60.7倍)。東京都の特別区職員採用試験:事務職募集枠37名に対して申込者数2,479名/受験者1,514名(採用倍率40.9倍)。
国民民主党アンケート結果より
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就職氷河期世代のリカレント・リスキリングに生活支援で伴走

求職者ベーシックインカムの導入

  • 非正規の雇用・健康保険、厚生年金加入率は50〜60%(失業中の生活保障なし)
  • 求職者支援制度は所得制限など支援金(月額10万円)の受給条件が厳しい
  • 求職者ベーシックインカム
    所得制限なし、全ての求職者を対象
    支援金を月額15万円に引き上げ

安心して転職・スキルアップできるセーフティネットを

 正社員の雇用保険、健康保険、厚生年金の加入率はほぼ100%ですが、非正規ではいずれ50~60%超であり、失業期間中の生活保障がありません。雇用されている間も、雇用を打ち切られた後も、常に“不安定”がつきまとう現実があります。現在の求職者支援制度を拡充し、年齢制限のない職業訓練と生活支援給付等の支援を備えます。

国民民主党アンケートの声

ブラック企業に勤めていると分かりながら声もあげられず、簡単には転職も出来ない為に会社の言いなり。失業保険中は安心して受給でき、リカレント、リスキルを積極的に受けたい。 ブラック企業に勤めていると分かりながら声もあげられず、簡単には転職も出来ない為に会社の言いなり。失業保険中は安心して受給でき、リカレント、リスキルを積極的に受けたい。
国民民主党アンケート結果より
6

切実な就職氷河期世代の親介護問題

ビジネスケアラー支援策の充実

  • 非正規では介護休暇がとりにくい
  • 時間給なら介護で収入減
  • 団塊世代と団塊ジュニア世代の介護に関する全国調査の実施
  • 介護サービスの拡充
  • 低所得世帯への介護保険給付の充実

介護による収入減への不安に国が寄り添います

 非正規雇用では介護休暇がとりにくい職場が多く、時間給であれば介護のために労働時間を減らした分だけ収入も減るため、親の介護と本人の生活の両立が困難となります。

 就職氷河期世代の多くが今、後期高齢者となった親の介護に直面していることから※1独身の不安定就業者が親の介護と自身の生活を両立できる仕組みの整備は喫緊の課題です。

 「8050」「9060」問題を含む、団塊世代(親)と団塊ジュニア(子)世代の介護に係る全国調査及び、介護サービスの拡充や低所得世帯に対する介護保険給付の充実等、国および地方自治体による支援の強化は時代の要請です。

国民民主党アンケートの声

両親に今後介護が必要になった時、今と同じように働けるか心配です。両親が共に後期高齢者になり、自身が結婚もできず、子供がいないので、両親の介護と自分自身の老後に不安が感じます。近い将来両親の介護をすることになるが、その際に余裕資金がない。仕事と両立してやる事は恐らく難しいのではないかと考えている。 両親に今後介護が必要になった時、今と同じように働けるか心配です。両親が共に後期高齢者になり、自身が結婚もできず、子供がいないので、両親の介護と自分自身の老後に不安が感じます。近い将来両親の介護をすることになるが、その際に余裕資金がない。仕事と両立してやる事は恐らく難しいのではないかと考えている。
国民民主党アンケート結果より

アンケート集計結果

就職氷河期とは 1990年代〜2000年代の雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った世代を就職氷河世代と呼ぶ。(厚労省) 。大卒就職率 2003年 55.1%、2023年 97.3%。