ニュースリリース
【参本会議】伊藤孝恵議員が令和7年度補正予算案について質疑
伊藤孝恵コミュニケーション統括本部長(参議院議員/愛知県)は8日、国民民主党を代表し、参議院本会議で議題となった令和7年度補正予算案について質疑を行った。質疑の全文は以下のとおり。
令和7年12月8日
令和7年度補正予算案に対する質疑
国民民主党・新緑風会 伊藤孝恵
国民民主党・新緑風会の伊藤孝恵です。私は会派を代表し、令和7年度補正予算案について質問します。
トランプ大統領を誕生させたのは、ラストベルトと呼ばれる工業地帯に暮らす「Forgotten people」忘れ去られた人々だったと言われています。
政治に忘れ去られた人々の声には、政治を大きく動かす力があった。
冒頭、2つの報道について確認させていただきます。
今月4日、政府・与党が高校生の扶養控除38万円を縮小する方向である旨が報じられました。15歳以下の年少扶養控除がない中で、同じ“子ども”に対する制度上のバランスが悪いことや、児童手当・高校無償化との重複、所得の高い人ほど減税額が大きくなることが理由だといいます。
制度上のバランスを重視するのであれば、最大58万円の扶養控除がある同居高齢者との整合についてはどうお考えになるのか?総理に伺います。
重ねて、扶養控除は憲法25条が保障する「最低生活費部分には課税しない」という趣旨に基づいて認められる基礎的な人的控除であり、納税者本人の所得に応じて逓減・消失させる項目ではありません。児童手当や高校無償化を理由に廃止される根拠もありません。総理の認識をお聞かせください。
また、高額所得者ほど税額削減効果が高いという点については、所得控除方式の人的控除を行ったあとの課税所得に対して、適用される税率構造を調整すべきと考えますが、総理の見解をお聞かせください。
子育て世代はせっかく給料が増えても、所得税率がそれ以上の比率で上がって実質所得が目減りする“ブラケットクリープ”や、各種手当の所得制限に引っかかり、取るもの取られて貰うもの貰えない“中間層クライシス”状態が続いています。言うに事欠き扶養控除まで奪うとは、許すまじ。
総理は6日夜、自身のSNSに「縮減を指示していない、与党税調で決定した事実もない」と投稿されました。ではどうか税調に、見送りではなく撤回を指示してください。
扶養控除は維持・拡大の上、年少扶養控除を復活する。それが時代の要請です。総理の見解を伺います。
今月1日、基幹統計である学校基本調査の大学進学率が、特別支援学校に通う子どもたちを除いた18歳人口を用いて算出されていたことが分かりました。
この差別的な除外に至った経緯と、長年放置されてきた理由、高市政権の対応についても総理、お答えください。
障がいのある子どもたちが18歳以降も学べる場所は少なく、児童福祉法を根拠とした放課後等デイサービスにも通えなくなることから、ケアにあたる保護者が就労を継続できなくなる。これが所謂「18歳の壁」です。
2012年の児福法改正で放デイが出来て13年。6歳で通いはじめた子どもたちは今年、19歳になりました。時間の猶予がありません。「18歳の壁」に対する総理の見解をお聞かせください。
子どもの障がいは、受け止めるものでも乗り越えるものでもありません。ただそこにあるもので、ただただ愛しい我が子です。親亡きあとの子どもたちに先立つものを遺したいと思うから、親たちは今日も一生懸命働いています。
国民民主党は、「18歳の壁 対策法案」を近く衆院に提出します。それに先立ち8月1日には「障害児福祉に係る所得制限撤廃法案」を参院に再提出しました。総理に法案の評価を伺います。
2025年度の国の税収は、6年連続で過去最高、かつ6年連続で上振れ。ついに80兆円を超えました。当初見込みより税収で2.9兆円、税外収入で1兆円上振れた他、予算の使い残しが1.1兆円。これだけで5兆円の財源が生まれています。
年収の壁を178万円まで引き上げることも、年少扶養控除を復活することも、赤字国債を発行することなく実現できます。
税収増の主な要因は、物価高による消費税収、賃上げに伴う所得税収の伸びによるもので、コロナ以前から20兆円の増加、つまりインフレ影響で国が潤っています。
インフレの勝ち組を国にしてはいけません。インフレで増えた分は、インフレに苦しむ家計に戻すのが道理です。にも関わらず減税は、国民民主党が提案した、「ガソリン暫定税率廃止」1.5兆円と、「年収の壁の見直し」1.2兆円、総額2.7兆円に留まります。
それぞれ51年ぶり、31年ぶりとなる大英断ではありましたが、税金をとって配ると、どうしても無駄なコストが生じます。総理、「おこめ券」に変えるより、取らずに残すが合理的だと思われませんか?見解を伺います。
それにしても「おこめ券」には驚きました。現在、重点支援交付金2兆円が計上されているだけで、自治体への交付額は、補正が成立するまで示されません。金額規模が分からないので、自治体は補正予算を組むことも、12月議会に追加提案することも出来ません。間に合わなかった場合、次の定例議会は2月か3月。そこで対策メニューを決め、商品券などを準備し、対象店舗への説明や住民への周知、コールセンターの設置など、事務コスト・事務負担が発生するのは年度末の超繁忙期です。
地域のニーズに即した物価高対策を実施するため、地方自治体に任せたいという総理の理念を具現化するには相応の時間が必要で、今回はそれが叶いません。7月の参院選から臨時国会開会までの3カ月に及ぶ政治空白が原因です。
そもそも自民党総裁選のすったもんだから、公明党の連立離脱、維新の閣外協力と、物価高にあえぐ国民生活には何ら関係のない政局の帳尻合わせを、自治体に強いるのは理不尽です。
後手に回った物価高対策の巻き返しを図る総理の発奮に、お地元・奈良市長からは、「国がすべきことで、地方に押し付けるのは無責任だ」との声が届いています。
昨年は、岸田政権肝いりの減税と給付が入り混じる複雑な定額減税で大混乱。今年は重点支援交付金で右往左往。全国の政令市長でつくる政令都市市長会は遂に、給付金事業は国の責任で一元的に実施することを求める緊急要請書を提出しました。
総理は総務大臣経験者です。自治事務の在り方についてどのような認識でおられるのか。併せて、重点支援交付金も補助金同様、会計検査院などによる事後検証を可能としておく必要があると思いますが、総理の見解を伺います。
本補正では41基金に2.5兆円が計上されました。昨年の補正ではなかった新設基金も7つあります。単年度主義の原則には工夫が必要ですが、基金は一度予算がつくと国会によるチェックがなく、執行管理の甘さがかねてより指摘されています。また金利ある世界に移行しつつある現在、これほど残高が積み上がっていることは、財政資金の効率的活用という点で問題はないのか。総理の見解を伺います。
一般会計予備費7,098億円についても伺います。当初予算の予備費7,400億円の内、まだ2,900億円が残っています。年度末まで4か月を切っている中、追加計上を行う妥当性および、予備費で実施した施策の効果検証の方法についても総理、お答えください。
先月、発足した日本版DOGE(ドージ)「租税特別措置・補助金見直し担当室」の総点検対象には、この基金や予備費、会計検査院による指摘事項は入っていますか?総理、お答え下さい。
日本版 DOGE では是非、ガソリン補助金の事後検証もお願いします。令和4年に始まった事業はこれまでに8兆1,719億円の予算を計上しました。
この間、資源エネルギー庁が62億円の補助金を交付して行った価格モニタリング調査の結果が放置されていたことや、補助金が消費者に還元されていなかった点など、会計検査院から複数の指摘を受けています。
この際、当初からガソリン暫定税率を廃止した場合と、補助金事業との政策効果の違いを研究し、国会に報告をすることを総理に求めます。
公開と説明は、多党時代・少数与党国会における、建設的な議論の要諦です。総理の積極財政や本補正に対し、財政健全性に関する懸念の声があることは否めません。緊要性や年度内消化に疑義があることも事実です。
マーケットと丁寧な対話を重ねて下さい。プライマリーバランスに拘る必要はありませんが、累積債務残高の対GDP比を減らしていくことは重要です。そして、名目GDPを確実に増やしていくための成長戦略が欠かせないからこそ、その阻害要因となっている人手不足の解消が急がれます。働き控えを生んでいる年収の壁、引き上げの決着。これこそが日本経済復活の分水嶺です。最後は政治決断。高市総理、いつ“関所”を越えられそうか。お答えください。
政治不信は社会の不安定に直結します。自分は忘れ去られている。剥奪されている。そんな政治への怒りや諦め、格差は社会の分断要素となり、SNSの中に広がる他責や他撃は現実世界に染み出していきます。
我が国の「Forgotten people」は誰なのか? 総理には、その問いを怠らないでいただきたいと思います。そして、ちゃんと寝て、ちゃんと休んで下さい。
我が国初の女性総理がおこす地殻変動を1つ1つ、指折り数えていること申し上げ、私の質問を終わります。
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