ニュースリリース
【衆本会議】田中けん議員が所得税法等改正案について質疑
![](https://new-kokumin.jp/wp-content/uploads/2025/02/491f98e85968ee2a57d8a507d56c10db.jpg)
田中健政務調査会長代理(衆議院議員/静岡4区)は14日、衆議院本会議で議題となった所得税法等改正案に対して質疑を行った。質疑の全文は以下の通り。
国民民主党・無所属クラブの田中健です。ただいま議題となりました所得税法等改正案について、会派を代表して石破総理に質問いたします。
まず「年収103万円の壁」について伺います。予算委員会の質疑の中で「税金を国民の皆様にお返しできる状況ではない」との総理の発言がありました。本当にそうでしょうか。昨年から今年にかけて法人税は12.9%増、所得税は30.1%増、消費税は4.6%増と所得が一番伸びており、所得税は昨年の定額減税を割引いても15.2%の伸びです。いずれもGDPの伸び2.7%より大きく、歳出は3.0兆増えているのに対し、税収は8.8兆円増えています。私たちはインフレが続く中、税金を取りすぎている、国民の手元にお金を戻していく、つまり手取りを増やすことが大事であると言い続けてきました。今はその状況にないとのことですが、それでは返すことができる状況とは具体的にどのような状況をさすのでしょうか?その状況を政府は作ろうとしているのでしょうか?総理に伺います。
総理は1月28日「政府として150万円程度の引き上げについて検討している事実はない」と言い、一方で1月31日には「123万円からびた一文たりとも動かないぞというかたくなな姿勢をとるものでもない」と言ったり、足元が定まらない印象を受けます。引き上げは必要でありますが、財源がないから仕方なく123万円と言っているのでしょうか、そうではなくて、そもそもこれ以上の引き上げは必要ないと思っているのでしょうか、私には総理は後者としか思えません。総理の見解を伺います。
国民民主党は、年収103万円の壁は生存権の問題であるとし、生存権を保障する他の制度、具体的には生活保護の給付水準との整合性も考えるべきとの考えも提示させていただきました。また公明党の斎藤代表からは「150万ぐらいまでなら、根拠がある」として生鮮食品の伸びを念頭においた発言もありました。私たちは30年ぶりのインフレにどこまで対応が可能かという議論を真剣に続けています。皆がそれぞれの立場で少しでも178万円に近づける案を模索している中、総理は納税者に寄り添う気持ちがあるのでしょうか。いつまでに結論を出すのでしょうか、総理のリーダーシップを求めたいと思います。見解を伺います。
ガソリン税についても伺います。昨年12月19日、本年1月16日の2回にかけて、ガソリン補助金が段階的に縮小されております。ガソリン価格の高騰は家計に深刻な影響を与えており、月の給油費用は、1世帯あたり平均して2,000円から3,000円程度増加、特に通勤や送迎などで車の使用頻度が高い世帯では、月5,000円以上の負担増となっているとの声もあります。また、物流コストの上昇により、食品や日用品の価格上昇にもつながり、間接的な家計負担も増加しています。運送業界では、大型トラックの燃料費は、月約2万円の追加負担となっています。価格転嫁が難しい中小企業では、利益率の低下や赤字転落のリスクが高まり、一部の企業では配送料金の値上げや配送ルートの見直しなどの対応まで迫られています。その中ですでに、令和7年度税制改正大綱には、ガソリン税に上乗せされている暫定税率の廃止方針が明記されました。今やるべきことは、ガソリン減税を来年度から速やかに実施することです。先送りすべき課題ではありません。令和8年にむけての目標でなく、今必要な政策なんです。地方の声、物流業界の声が総理には届いていませんか。ガソリン価格を下げて物価高に苦しむ家計を物流を支えていこうではありませんか。総理の決意を伺います。
定額減税について伺います。2024年分の確定申告が2月17日から始まりますが、定額減税に係る特別税額控除が実施される申告であり、様々な課題が指摘されています。定額減税は、所得税・住民税を1人当たり計4万円差し引くのが基本ですが、収入や家族状況によって実施時期が変わります。さらに、納税額が少なく減税しきれない人に「調整給付」を行うなど、きわめて仕組みが複雑です。所得税の納税額が3万円に満たず、年末までに3万円を払い戻せない対象者は、3,200万人にも上り、自治体は、前年の課税実績を基に、臨時給付金を支給するとしています。端数は1万円単位で切り上げるとしており、結果的に通常の3万円よりも多くもらえる人もいることになります。また令和5年の所得が低く、令和6年の所得が高い場合、令和5年の所得の金額に基づき調整給付を受けて、令和6年分の確定申告において定額減税に係る特別税額控除が実施されるため、定額減税の二重取りが発生します。この場合も調整給付が結果的に過払いになったとしても払いすぎた分を返してもらうことは想定されていません。どれだけの臨時給付金が支払われると政府は想定しているのでしょうか。また定額減税の二重取りについて問題だという認識はないのでしょうか。そもそも国民に税金をお返しする状況でなはいと言っていながら、一方で所得税の納税が正しく行われない制度を作り、公平性の観点にも問題を生むような状況を作った責任は政府にあると考えますが、総理の見解を伺います。
早期給付の実現のため、令和6年分推計所得税額等を用いて定額減税調整給付金の額を算定したことに伴い、令和6年分所得税額及び定額減税の実績額等の確定をした後に、本来給付すべき所要額と定額減税調整給付金額に差額が発生する方が一定数生じることになります。その差額分を対象者に対して、令和7年度以降に「定額減税不足額給付金」として支給する予定となっていますが、自治体からは、国が事務処理基準日や実施時期等について具体的に示さない限り住民にも説明できないでいる状況が続いていると聞きます。いつごろに詳細が示されるのでしょうか?スケジュールをお示しください。自治体の大きな事務負担をどう考えているのでしょうか、その対応はあるのか、総理の見解を合わせて伺います。
様々な課題が指摘される中見切り発車した一度きりの定額減税制度は、企業に多大な事務負担・人件費負担を負わせ、その後市区町村にすべてしわ寄せがいっている状況です。政権の人気取りを狙った愚策と言わざるをえません。費用対効果を検証し、妥当性と政府の責任をしっかりと示すべきと考えますが総理の見解を伺います。
デジタル小作人について伺います。日本の貿易・サービス収支は「双子の赤字」を背負っています。一つは言わずとしれた原油の輸入ですが、もう一つが「デジタル貿易赤字」です。直近の国際収支速報によると、経常収支は過去最大となる29兆円超の黒字となっています。しかし、貿易・サービス収支は6兆5千億円の赤字、特にクラウドサービスなど「通信・コンピュータ・情報サービス」の収支は2兆5千億円の赤字であり、ここ10年で3倍超に達しました。インバウンドで稼いでも「デジタル貿易赤字」が打ち消す構図となってしまっています。企業や個人がクラウドやネット広告などのサービスを海外のIT大手に依存する構図、いわゆるデジタル小作人化はますます進展しています。この流れは止まるどころか、政府の試算によると2030年にはデジタル貿易赤字額が10兆円に達し、昨年の原油輸入額に肩を並べる規模になる見通しです。世界を見渡せば、インドや中国など、独自のIT企業を養成し、大きな「デジタル黒字」を稼いでいる国がある一方で、日本は、世界の中で貿易赤字が多い国となってしまっています。この状況を打開する鍵は、改めて人と技術に投資することに他なりません。日本独自のデジタル技術の開発とデジタルサ—ビスに、半導体並みの投資をしていく。国がその先頭に立って旗を振っていく必要があるのではないでしょうか。デジタル研究開発分野での政府投資の拡大や人材育成を担う大学への投資、IT技術への大幅減税などが必要と考えています。こうした、急激に進むデジタル小作人化と拡大するデジタル貿易赤字の現状と、国内のデジタル技術基盤の強化をどう認識され対策を考えているのか伺います。
また一方で、先進国に鉱物資源や食糧を供給してきた発展途上国は、デジタル分野を含めて独自の成長を進めようとしています。岐路に立つのは先進国です。日本をはじめとした先進国は、人口が増え、中間層も拡大する新興国を消費地や人材供給源として自らの成長にもつなげてきました。グローバルサウスとして力をつけている彼らとうまく付き合えるかが次の経済成長を左右します。ODAのような先進国が対外援助という施しを発展途上国に分け与えるという時代は終わりました。先端技術を巡る協力、協業が必要とされています。グローバルサウスとの新たな関係強化をどのように考えているのか総理に伺います。
暗号資産について伺います。金融庁が暗号資産を有価証券に並ぶ金融商品として位置づける方向で検討に入ったことが報道されました。日本暗号資産等取引業協会によると、仮想通貨の開設口座数は24年12月時点で1181万件にのぼります。投資家を保護するだけでなく、適切に関連ビジネスを活性化していく上でも実情に合った法整備が不可欠だと判断したことは高く評価したいと思います。トランプ米大統領は1月23日、暗号資産の利用を推進する大統領令に署名し、仮想通貨を含むデジタル資産が「米国のイノベーションや経済発展に重要な役割」を持つと規定し「経済の各分野で、デジタル資産やブロックチェーン技術の責任ある発展と利用を支援する」と記しました。日本もより早期かつダイナミックに動くときです。国民民主党が訴えてきた20%の分離課税導入、レバレッジ倍率引き上げ、暗号資産ETF導入の早期実現が重要と考えますが総理の見解を伺います。
賃上げ税制について伺います。賃上げを促す国の税制優遇制度を巡り、会計検査院は1月15日、社員の教育訓練費を増やした企業に対する法人税の税額控除の仕組みが適切でない恐れがあるとして、制度の検証や見直しを求めたと発表しました。検査院が18~21年度に制度を利用した延べ1万2861法人のうち、同9970法人を調べたところ、293億円が控除されており、会計検査院の試算額と比べて157億円大きくなっていて、仕組みが適切でない恐れがあるとの指摘です。国はこの制度を通じ、企業の賃上げやリスキリングなどへの意欲を引き出し、経済を好転させようと力を注いできました。しかし、制度が賃上げにもたらす「効果」は着目されず、22年には衆参の委員会が制度の検証・公表を求める決議をしたものの、訓練費に関する検証は行われてきませんでした。優遇措置の拡充・延長は昨年4月に施行されたばかりですが、検証もされずにここまで来たのは問題ではないでしょうか。会計検査院の指摘に対しての所感と併せて総理に伺います。制度が適切に運用されるように検証を行い、制度の在り方を見直すべきです。私たちは効果の薄い政策は見直し、社会保険の事業者負担の軽減にまわすべきではないかと考えますが総理の見解を伺います。
法人税について伺います。2015年度以降、成長志向の法人税改革が進められ、企業による投資・賃上げの促進や国際社会での立地競争力の強化を目的に、課税ベースを拡大し法人税率を引き下げる改革が行われました。現在、政府税制調査会の「税制の EBPMに関する専門家会合」において、成長志向の法人税改革の振り返りが進められています。その中の議論では、2010年代に「法人税率を23.2%まで引き下げ、この間、経済界には、法人税改革の趣旨を踏まえ、国内投資の拡大や賃上げを求めてきましたが、企業部門では収益が拡大したにもかかわらず、現預金等が積み上がり続けました。」「海外の先行研究を見ても、法人税率が設備投資や賃金に与える影響は限定的であるとの分析や、わが国の法人税改革が国内投資の増加には効果的でなかったとの分析が示されている。」とあります。大綱では、企業収益が拡大した状況下でも国内投資が進まなかったことを踏まえ、「法人税改革は意図した成果を上げてこなかった」と断じています。アベノミクスにおける法人税率引下げに対して否定的な見方を示しています。アベノミクスへの決別とも読むことができますが、総理も同じ認識でよろしいでしょうか、法人税率引き下げ競争の総括、また今後の法人税のあり方の転換についてどのような考えをお持ちか見解を伺い、以上を国民民主党としての代表質問といたします。