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ニュースリリース

【参本会議】川合孝典議員が石破総理の施政方針演説に対する代表質問で登壇

 川合孝典幹事長代行(参議院議員/全国比例)は29日、参議院本会議において、石破総理大臣の施政方針演説に対する代表質問を行った。全文は以下の通り。

政府四演説に対する質問

国民民主党・新緑風会 川合孝典

 国民民主党・新緑風会の川合孝典です。会派を代表して政府四演説に対して質問します。

1.「年収の壁」の引き上げ

 まず「年収の壁」への石破総理の対応方針について質問します。
 既に昨年12 月11 日の自公国三党幹事長会談において、30 年間据え置かれてきた「103万円の壁は178 万円を目指して来年から引き上げること」、「いわゆるガソリン税の暫定税率は廃止すること」が合意されました。国民民主党が、この合意を前向きに受け止めて昨年末の補正予算案に賛成票を投じたことは周知のとおりです。

 この三党合意を受けて、翌日には政府与党において、19 歳から23 歳未満までの子を扶養する親等の税負担を軽減する「特定扶養控除」について、適用条件となる子の年収を、それまでの103 万円以下から150 万円以下へと引き上げる方針を発表して頂きました。
 働きながら学ぶ学生が手取りを増やすと共に親の税負担の軽減に繋がる今回の方針決定については、率直に評価し感謝します。

 しかし三党幹事長合意の本丸である103 万円の壁の178 万円への引き上げについては、補正予算成立後の政調・税調の三党実務者協議では財源不足を主な理由に、与党は消極的な姿勢に転じ、成案を提示しないまま、178 万円には遠く及ばない123 万円への小幅な引き上げを目指した税制改正の大綱が閣議決定されました。
 幹事長合意を無視するかの如き与党の対応に強い不信感を抱くとともに、この引き上げ規模では手取りを増やすことに繋がらないことから国民民主党として到底受け入れられるものではない、ということを明確に申し上げて質問に入ります。

 まず、年収の壁の引き上げに向けた石破総理の基本姿勢について質問します。
 「103 万円の壁を178 万円目指して引き上げる」ことで三党合意文書を交わした以上、政府・与党には178 万円への引き上げに向けたスケジュールを説明して頂く必要があります。
 今後、「いつまでに」「どのように」178 万円を目指して壁の引き上げを行うのか、石破総理の説明を求めます。

 次に178 万円への引き上げの財源について総理に質問します。
 与党税調及び財務省は、178 万円への引き上げを行うことで7~8 兆円の税収減が生じるとこれまで説明してきました。しかし令和7年度租税及び印紙収入の当初見通しは、令和6年度との比較で、実に88,320 億円の税収増となっており、これに加えて地方税収も大幅に増えることが見通されています。
 既にここに178 万円への引き上げの財源があるものと考えられますが、石破総理の認識を伺います。

 税収が大幅に上振れしている背景には、30 数年ぶりの高水準の賃上げに伴う名目賃金の上昇によって多くの国民が気付かないうちに所得税増税が進んでいることがあります。
 これまで与党・財務省は、103 万円の壁の引き上げによる税収減という負の側面だけを主張していますが、実際には恒久減税による消費拡大効果や、年収の壁を理由とした働き控えの解消による労働力供給増など様々な政策効果が見込まれています。
 石破総理は、103 万円の壁の引き上げが経済・雇用に及ぼすプラスの政策効果について、どのように認識しておられるのかお聞かせください。

 次に103 万円という課税最低限度額が生活保護費を下回っている現状について、石破総理の課題認識を伺います。
 103 万円の壁の引き上げ額を巡って様々な意見が出ていますが、課税最低限度額が、「生活する上で必要最低限の収入には課税しない」という考え方に基づいて設定されている以上、憲法25条に定める生存権保障の観点から生活保護費の水準との整合性を取ることが必要と考えます。
 言うまでもなく最低生計費として設定されている生活保護費ですが、その現在の支給額
は例えば、昨年度の一級地の1における単身世帯で41歳から59歳の平均的な生活保護費は、月額約130,000 円を超え、年額約1,560,000 円を上回ります。
 現下の物価上昇局面では、これでも厳しい金額ですが、生活保護基準は文化的最低限の生活を営む上での最低水準として国が規定しているものであり、それ以下となる123万円を課税最低限度額として政府が設定することは、生存権保障の観点から問題があるものと考えます。また生活保護費以下で課税されることによって「働くこと」に対するディスインセンティブが働くことも懸念されます。課税最低限度額が生活保護費と逆転している現状について、石破総理の課題認識を伺います。

2.ガソリンの暫定税率の廃止時期

 次にガソリンの暫定税率の廃止時期について総理に質問します。
 昨年の自公国幹事長合意を受けて、令和7年度税制与党改正大綱に「いわゆるガソリンの暫定税率は廃止する」ことが明記されました。国民は早期の暫定税率廃止に大きな期待を寄せていますが、具体的な実施方法等については引き続き関係者間で協議する、として結論が先延ばしにされています。既に燃料油価格激変緩和補助金の段階的縮小によって、ガソリンの店頭価格は急激に上昇し、企業や自動車ユーザーからは悲鳴の声が上がっています。
 しかし石破総理は今回の施政方針演説において、暫定税率の廃止については一言も触れていません。石破総理に質問しますが、ガソリンの暫定税率は廃止する、ということで宜しいのですね。明確にご答弁をお願いします。

 また、いつガソリンの暫定税率を廃止するのか、その時期も不明確です。
 国民は一刻も早く、ガソリンの暫定税率廃止を望んでいますが、いつガソリンの暫定税率を廃止するのか、石破総理にお伺いします。

3.就職氷河期世代対策

 就職氷河期世代を中心とした中高年世代の年金対策について総理の認識を伺います。
 就職氷河期と呼ばれる、1993 年から2004 年の大卒平均就職率は69.7%と想像を絶する就職難の時代でした。その結果、やむを得ず非正規労働に従事することとなった新卒者がこの世代には大勢おられます。
 こうした実態を踏まえて、これまで安倍政権下では特に就職氷河期世代対策に注力して来ましたが、昨年6月の閣議決定で「就職氷河期対策は一定の成果を挙げた」として中高年層政策にまとめる方針となりました。
 しかし昨年、国民民主党が就職氷河期世代を対象にオンラインアンケート調査を行ったところ、そもそも政府が実施してきた「就職氷河期世代支援プログラム」を87.8%が利用していない、聞いたこともない、との回答結果となりました。
 石破総理に質問しますが、これまで安倍内閣が重点政策として取り組んできた就職氷河期対策を手仕舞いする判断に至った「一定の成果を上げた」内容とは何だったのか、具体的な就職氷河期世代対策の成果をご説明下さい。

 就職氷河期世代とその前後の世代との違いは、大きく分けて三点あります。
 ひとつ「非正規雇用比率が高いこと」、ふたつ「平均年収が低いこと」、みっつ「貯蓄が少ないこと」です。そして就職氷河期世代がいま一番心配しているのは老後の生活です。
 こうした就職氷河期世代の実情を踏まえて、与野党ともリカレント・リスキリングといった「学び直し」による正社員化や安定雇用の推進を求めていますが、それだけでは対策として不十分です。
 就職氷河期世代は既に50 歳を超え始めています。定年年齢までの期間が限られる中、正社員化の取り組みだけでは充分な額の年金保険料を積み立てることができないままリタイヤすることになります。
 また女性の年金受給額は、2016 年以前は一部を除き、パートタイム労働者は社会保険の加入対象でなかったことや、出産や育児、介護によるキャリア中断といった理由により、男性の約55%、月額約11 万円という低水準にとどまっており、単身高齢女性の貧困率は47%に達しています。更に短時間労働者やフリーランスなど約500 万人がいまだ厚生年金の適用外で十分な年金受給資格を得られていません。
 こうした低年金対策として、出産・育児期間を「みなし加入」とする制度の拡充や短時間労働者の加入要件緩和、短時間労働者やフリーランスを含む約500 万人を対象とした、厚生年金の適用拡大を行うこと、などが喫緊の課題と考えます。
 石破総理は、就職氷河期世代や女性の低年金問題について、どのように認識をしておられるのか、年金制度のセーフティネット機能を高める必要性についての認識と併せてお答え
下さい。

4.価格転嫁対策

 労務費の価格転嫁が遅れている現状について質問します。
 これまでの価格転嫁の取り組みによって、原材料費や燃料費の価格転嫁が一定程度進展している一方、労務費の価格転嫁は依然として低い水準にあります。
 昨年の民間調査によると、労務費転嫁率の中央値は30%にとどまり、転嫁率が50%未満の企業が半数以上を占めています。特に中小企業では「労務費は企業努力で吸収すべき」という取引慣行が根強く、価格交渉で不利な立場に立たされています。
 これまで政府は「労務費の適切な転嫁のための価格交渉指針」を策定すると共に「価格交渉促進月間」を設定するなどしていますが、認知度の低さや実効性不足が指摘されています。
 遅れが目立つ労務費の価格転嫁を推進するための取り組みを強化する必要があるものと考えますが、今後の政府の取り組み方針を新しい資本主義担当大臣に伺います。

 また中小企業が公正な価格交渉を行えるよう、取引条件の公開制度や優越的地位濫用のモニタリング体制を強化するなど、法整備も視野に検討すべきと考えますが、新しい資本主義担当大臣の見解を求めます。

5.ハラスメント対策

 ハラスメント防止に向けた政府の取り組み姿勢について質問します。
 2023 年度に労働局に寄せられたハラスメント相談は約13 万4 千件に上り、特にカスタマー・ハラスメントに関する相談は急増しています。
 顧客から過剰な要求や暴言を受け、精神疾患を発症したケースも数多く報告されており、現場の危機は見過ごせない状況です。
 しかし、日本ではハラスメント全体を包括的に規制する法律が整備されておらず、現行の厚生労働省指針は未だ実効性を欠いています。
 国際社会に目を向けると、ILO が2019 年に「仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約(第190 号)」を採択し、2021 年に発効しました。すでに47 カ国が批准し、取り組みを進めています。しかし日本は未だにこの条約を批准しておらず、既に国際基準から遅れを取っています。
 今後、外国人労働者の受け入れ拡大が見通される中、日本でもハラスメント防止のための基本法を策定し、ILO 第190 号条約の理念を国内に取り入れるべきと考えますが、厚生労働大臣には、日本がILO 第190 号条約を批准しない理由をご説明下さい。

 併せて被害者保護とハラスメント防止を包括的に進める基本法制定の必要性についての認識をお答えください。

6.介護事業が直面する課題

 介護事業を取り巻く現状と課題について質問します。
 いま日本の介護業界は、深刻な人手不足に直面しています。訪問介護分野の有効求人倍率は14.14 倍と突出して高く、深刻な人手不足が続く中、ひとり当たりの業務負担が増大し、現職者の離職を招くという悪循環が発生しています。
 2024 年度の介護事業者の倒産件数は過去最多の612 件、そのうち訪問介護事業者の倒産は448 件、実に全体の七割を超えています。
 物価上昇局面での介護報酬引き下げが、介護事業の収益性を低下させ、資金繰りの悪化による倒産や給与未払いが発生、このままでは利用者にも深刻な悪影響を及ぼすことは明らかです。
 2040 年までに約57 万人の介護職員が不足すると推計される中、介護人材を確保するため政府はどのような取り組みを行うのか、厚生労働大臣は対応方針をご説明ください。

 また倒産が増加している介護事業者を支援し、事業継続を可能にするため、低利融資制度や税制優遇措置を行うべきと考えますが、併せて厚生労働大臣の見解を求めます。

7.医療用医薬品の中間年薬価改定について

 医薬品産業を取り巻く現状と課題について質問します。
 日本の医薬品産業は、現在、供給不安、ドラッグロス、ドラッグラグといった複合的な課題に直面しています。後発医薬品のデータ不正に端を発した医薬品の供給不安は問題発覚から4年経った今も全く解消されておらず、2024 年12 月時点で全医療用医薬品の19.5%にあたる3244 品目が供給不足状態にあります。
 この問題の背景には、インフレ下で高騰する研究・生産コストに逆行する形で近年始まった中間年薬価改定による急激な企業収益の悪化があることは明らかです。中間年薬価改定は、企業収益を圧迫するとともに、製薬企業の予見性を著しく損ない、医薬品の安定供給や新薬開発への投資を妨げる最大の要因となっています。
 近年、製薬企業は研究拠点や投資先を海外に移しつつあり、このままでは日本の医薬品産業は国際競争力を失うだけでなく、国民の健康を守る観点からも深刻なリスクを抱えることになります。
 我が国の新薬開発基盤と医薬品の安定供給基盤を速やかに立て直すため、一旦中間年薬価改定は停止する必要があると考えますが、厚生労働大臣の認識を問います。
 また日本から革新的医薬品が失われつつある現状を打開するためには、欧米と比較して低く抑えられている薬価水準の抜本的な見直しを行うことで、新薬の上市を促し、患者が必要な治療を適時に受けられる環境を整えるべきと考えます。
 この問題について厚生労働大臣の認識を問います。

8.ライドシェアの課題について

 ライドシェアを巡る課題について質問します。
 国土交通省の調査によると、全国約600 の自治体が「交通空白地」を抱えており、高齢者や地域住民が日常的な移動手段を確保できない状況が続いてきました。こうした移動困難者対策の一環として現在、一部地域で試験運用されているライドシェアですが、その普及にあたって多くの課題が指摘されています。
 例えば、ドライバーの労働環境保護や安全性確保の仕組みが十分に整備されておらず、2種免許制度の見直しも慎重な議論が求められています。2 種免許制度は、公共交通のドライバーに必要な専門性や責任を保証する重要な基盤であり、この要件を緩和することは事故リスクの増加や利用者の安全性低下につながる懸念があります。
 旅客輸送の安全確保の観点から2 種免許保持者とライドシェアドライバーとの関係をどのように整理するのか、国土交通大臣の説明を求めます。

 タクシー事業者や既存の公共交通機関との競争激化による地域交通網の崩壊を懸念する声も出ていますが、公平な競争環境を確保するためにどのような措置を講じるのか、国土交通大臣の説明を求めます。

9.政治DX を活用した国民の政治参加促進について

 最後に政治DX について総理に質問します。
 台湾には政府が運営し、市民権・永住権があれば誰でも政策提案が出来る「Join(ジョイン)」という政策提言プラットフォームがあり、AI やSNS 等、デジタル技術を駆使して声を集めることで、多くの市民の政治参加を実現しています。
 このプラットフォームで60 日間に5,000 人以上の賛同を得られた場合、政府は2 カ月以内に書面で回答することが義務付けられていますが、実際に女子高校生の書き込みをきっかけとして「プラスチックストロー禁止法」が制定されています。

 国民民主党は、これら台湾の仕組みを参考に、AI等デジタル技術を日本の政治に活用する実験プロジェクトを提唱しているAI エンジニア安野貴博氏に賛同し、去る1 月16 日、早速、オープンソースソフトウエア「Talk to the City」によるブロードリスニングによって、党に寄せられた意見の可視化とマッピングを実施し、24 日には結果を公表しました。
 8 日間の試行錯誤の中で、多くの解決すべき課題を把握すると共に、SNS 情報のみならず、電話音声をテキスト化したものや、ライブチャットコメントに至るまで、AIが瞬時に膨大な情報を可視化してくれることに、国民の政治参加の新たな可能性を感じました。
 国民の声を迅速かつ正確に集約することで、政策に生かすための「政治DX」の必要性について、総理のご所見を伺います。

 最後に、国民民主党は今国会も「対決より解決」の姿勢を堅持しつつ、納税者・生活者の立場から建設的な対案を提示し続けることを国民の皆様にお約束して質問を終わります。

 ご清聴ありがとうございました。

以上