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ニュースリリース

【参本会議】舟山やすえ参議院議員会長が食料・農業・農村基本法改正案について質疑

 舟山康江参議院議員会長(参議院議員/山形県)は24日、参議院本会議で議題となった食料・農業・農村基本法改正案に対する質疑を行った。質問の全文は以下の通り。

令和6年4月26日

食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案に対する質問

国民民主党・新緑風会
舟山康江

 国民民主党・新緑風会の舟山康江です。
 会派を代表して、食料・農業・農村基本法案について質問を致します。

 法案審議の前に、私たち国会議員の自由な政治活動を脅かす重要な問題を共有させて下さい。香港国家安全維持法違反容疑の裁判で、「ジミー・ライ被告」の「共謀者」として菅野志桜里元衆議院議員が名指しされています。我々にとっても対岸の火事ではなく、いつ、どのような活動、言動が、狙い撃ちされるか分かりません。4月18日の衆議院本会議での我が党、玉木代表の質問を受けた、「香港当局に対して関心表明を行っている」、「言論の自由が保障されるよう、毅然と対応していく」との総理答弁から、もう一歩踏み込んだ対応が不可欠です。3月の予算委員会で上川大臣に約束して頂いた、主権侵害に当たるかどうかの判断を、政府は下して頂いたのか?抗議はしないのか?不透明な裁判の詳細を把握しているのか?また、刑事共助条約上の扱いなど、総理からご答弁願います。【総理】

 さて、法案への質問に入ります。「基本法」は、一般的に政策の理念や方向性を示すもので、それ故に「食料・農業・農村基本法」は「農政の憲法」とも言われます。そうした性格上、制定や見直しの際は、十分な現状分析や検証、議論が必要です。
 実際、1999年制定の現行「食料・農業・農村基本法」は、旧農業基本法制定から30年後の1991年に、見直しを含めた検討を農林水産大臣が示唆したことで議論が始まりました。農林水産省下での議論を経て、総理府に総理の諮問機関「食料・農業・農村基本問題調査会」を設置、以降、約1年半、50回超の調査会・部会などで検討を重ね、法案の閣議決定にこぎ着けるまで、実に約8年の歳月をかけています。
 一方、今回は、2022年2月設置の自民党「食料安全保障に関する検討委員会」がわずか3ヶ月でまとめた提言の総理への提出を契機に、9月に官邸が「基本法見直しを指示」したのを受ける形で、農水大臣から「食料・農業・農村政策審議会」に見直し議論を諮問、審議会の下に設置された「基本法検証部会」が10月に第1回の部会を開催、以降、翌年5月までわずか計16回の部会での議論で9月に最終答申が決定。議論提起から法案閣議決定まで併せてもわずか2年で、拙速感が拭えません。農政の憲法である以上、前回同様、総理直属の諮問機関を中心に、政府全体での十分な議論が不可欠だったはずが、なぜ結論を急いだのか?総理の答弁を求めます。【総理】

 加えて、今回の答申は、大臣からの諮問に答えていない疑念もあります。
 現行基本法では、「効率的かつ安定的な農業経営」を中心に「強い農業」を目指していましたが、これは実現されたのか?農業者も農地も維持され、農村は豊かになったのか?まずはこのような基本事項に対して答申ではどのように分析・評価しているのか、大臣、教えて下さい。【農林水産大臣】

 食料・農業・農村をめぐる現下の課題は、単に人口減少など社会情勢がもたらしたものではなく、政策によってつくられた側面が大きいと考えます。だからこそ、諮問文では、「基本的な政策の検証及び評価並びにこれらの政策の必要な見直し」を求めていたのです。基本政策の評価と現状分析なしには次なる施策は打ち出せません。
 残念ながら現状は農業者も農地も減少、国内生産の増大も実現できず自給率は下がる一方、生産基盤の弱体化と農村の疲弊に歯止めがかかっていません。
 この現状を打破し食料安全保障の実現を図るために、これまでの政策の何を反省し、どう転換していくのか、見直しの方向性について大臣の見解を伺います。【農林水産大臣】

 現場の声を反映させたのかも疑問です。昨年5月の基本法検証部会の中間取りまとめ時には、我が党も「農業者の所得向上を最優先に考えた農政へ」との副題で、8項目にわたる提言書を直接農水大臣に申し入れました。この提言書は参考にして頂いたでしょうか?また、11カ所での地方意見交換会やパブコメ募集などで寄せられた多くの意見は最終答申にどのように反映しましたか?大臣、お聞かせください。【農林水産大臣】

 中間とりまとめと最終答申との違いはわずか一カ所、「ファーストマイル」という言葉の追加のみで、あとは一切変更なし。多様な意見から浮かび上がった重要な論点に目をつぶり、拙速に組み立てた法案作成のプロセスには重大な瑕疵がないのか、総理の見解を伺います。【総理】

 具体的な内容についてお聞きします。
 現行基本法には「価格により所得確保を図るという価格政策の考え方を見直し、価格形成は市場に任せ、所得の確保は政策に委ねる」という明確な柱があったからこそ、議論の過程で、例えば、当初は否定的な見解だった直接所得補償方式が、最終答申では、「新たな公的支援策として有効な手法の1つ」と明記され、中山間地域等直接支払制度につながりました。WTOなどの国際交渉で、価格支持政策が「赤の政策」として削減対象になる中、欧米型の「価格支持から所得補償へ」踏み出した点を私は評価しています。今回改正では、これを一歩進めるのか否か、新たな基軸が見えません。政府が柱の1つとして掲げた「食料安全保障」も「食料の安定供給」から表現を変えただけに映ります。違いを挙げるとすれば、不測時の個々への「分配」にウェイトを置いたぐらいですが、分配するには「供給」が必要です。世界的にリスクが高まる中で、国内の食料供給困難事態を迎えてからあわてて生産者に作付けを指示しても遅く、平時からの国内生産の増大こそが「食料安全保障」の要であり、その観点からも、2条2項に食料自給率向上を明記すべきと考えますが、総理の見解を伺います。【総理】

 一方、「食料自給率目標が未達成で要因などの検証もされていない」ことを会計検査院が指摘しています。目標達成できなかった理由と施策の検証、あわせて自給率向上に必要な施策について大臣に伺います。【農林水産大臣】

 広島県が地元の総理は、よくご存じでしょうが、今、農村現場は危機的状況です。条件のいい平地農業地域でさえ、高齢農家や兼業農家を含め「あと何年持つか」のギリギリの状況で営農を続けています。政府の言うスマート化や、効率化だけでは何の解決にもなりません。
 農業者減少の最大の理由は「所得の低さ」であり、長引くデフレによる安売り競争の常態化や、関税撤廃や引き下げによる海外の安価な農産物の市場席巻、資材価格高騰によるさらなる収益性悪化が主な要因です。
 こうした中、改正案で2条、食料安全保障の柱の一つに掲げている「合理的な価格の形成」は、果たして上手く機能し、所得確保につながるのか、大臣の所見をお伺いします。【農林水産大臣】
 野菜や果樹のような、労働集約型かつ品質の差が価値に反映しやすい品目でさえ、価格転嫁は容易ではなく、ましてや土地利用型で国際価格の影響を受ける米や麦、大豆などは、海外産との競合もありなおさらです。さらには、低所得層への安定供給確保の面からも、消費者負担型には自ずと限界があります。
 何より必要なのは、所得の確保策です。先も見えず儲かりもしないことを誰がやるのか?このままでは地域の将来計画すら描けません。政府は、生産性向上と高付加価値化で所得の向上を目指すと言うだけで、所得確保を担保する具体策を示していません。それどころか、法案には「所得」という言葉が1つも出てきません。価格よりも所得を基本法で明記すべきではないか?総理に伺います。【総理】

 また、改正案では、農業の環境負荷ばかりが強調されていますが、本来農業は環境調和型の産業です。有機農業など負荷低減活動への支援に加え、価格に反映されない、景観形成や生物多様性の保全、洪水防止機能など、多面的な役割や価値を、政策によって評価することで、再生産可能な所得を実現し、国内生産の増大による食料安全保障の確保につなげる、海外では当たり前の、本格的な直接支払い政策、例えば、農地への面積支払いを基本とした「食料安全保障基礎支払」を導入するべきです。こうした政策の必要性に対する総理の見解をお伺いします。【総理】

 結びに、防衛予算が特に昨年度から大幅な増額となっている一方で、同じく安全保障の要を成す食料・農業・農村関係予算は、減少し続けています。国を守るのは防衛力だけではありません。「食料安全保障の重要性」が高まる中、農林水産予算の増額について、改めてその実現へのご決意を総理からここで表明頂くようお願いし、私の質問とさせて頂きます。【総理】