ニュースリリース
【参本会議】伊藤孝恵議員が令和5年度補正予算案に対する賛成討論
伊藤孝恵組織院長(参議院議員/愛知県)は29日、国民民主党を代表し、参議院本会議で議題となった令和5年度補正予算案に対する賛成討論を行った。討論の全文は以下のとおり。
令和5年度補正予算案に対する討論
令和5年11月29日(水)
国民民主党・新緑風会 伊藤 孝恵
国民民主党・新緑風会の伊藤孝恵です。私は会派を代表し、令和5年度補正予算案に、賛成の立場から討論を行います。
野党の役割は、厳しい行政監視によって政府の問題点を指摘し、翻意や修正を迫ると共に、与党よりも優れた政策を提示し、実現し続けることで、次はこの人たちにやらせてみるかと、政権の選択肢たり得たる存在になることです。
今回、国民民主党が賛成するのは、ひとえにトリガー条項凍結解除によるガソリン価格を引き下げる為であり、交渉のテーブルにつくことを私たちは選びます。
それが物価高に苦しむ家計を支えると共に、企業のエネルギーコストを抑え、そうして生まれた利益こそが、持続的賃上げの原資になるからです。
会計検査院は今月7日に公表した「令和4年度決算結果報告」の中で、2022年1月から導入された、石油元売り会社等への補助金1兆2773億円の内、およそ101億円が消費者には届かず、ガソリンスタンドの利益に回った可能性を指摘しました。
事実、石油元売り3社の連結決算は、何れも純利益を上方修正しています。原油価格の上昇と、円安による備蓄原油の在庫評価益が膨らんだことに加え、政府補助金による需要の下支え、および燃料油販売の利益率が改善したことが影響しているとのことです。
会計検査院は更に、資源エネルギー庁が、およそ62億円をかけて実施した“価格モニタリング調査”曰く週1回、全国2万か所のガソリンスタンドに「政府の補助金でガソリン代って下がりました?」と聞き回る事業の必要性に疑義を呈しています。
当初から懸念されていた「石油元売り会社への補助金は、本当にその全てがガソリン価格の引き下げに使われるのか?」に対しての結論は、もう既に出ています。
さりとて、この期に及んで「やはり補助金の方が使い勝手がいい、トリガーを解除すると年1.5兆円の減収が出る」という声も聞こえてきますが、補助金は年1.9兆円を要します。
国民から税金を取って、石油元売り会社に配り、再び国民に戻そうとする過程で、結局、届かなかったり、税金のムダ遣いが現に発生しているのだから、もう取るのをやめては如何でしょうか。
トリガー条項凍結解除による減税の方が合理的な上、「160円を3カ月連続上回った時」という、対策をする基準、やめる基準およびその手続きが明確で、いつまで続けるのかが見通せない補助金よりも、出口戦略として筋がいいと思います。
最後は政治決断です。総理の決断を強く求めると共に、本予算案に足らざる点についても、以下、具体的に指摘させて頂きます。
第一に、消費と投資を下支えし、持続的賃上げを確実にするための「生活減税」が足りない点です。
デフレからインフレに経済が移行する中で必要となるのは、トリガー条項凍結解除のみならず、いわゆる暫定税率、二重課税の廃止と併せた【ガソリン減税】、基礎控除・給与所得控除等の額を引き上げることで家計負担を軽減する【所得税減税】、賃金上昇率が物価上昇率を2%上回るまで、当分の間、税率を10%から5%に引き下げる【インボイス廃止を含む消費税減税】、少額減価償却資産特例の上限額を引き上げ、投資額以上の償却を認める【法人税における投資減税】、税額控除額の引き上げや価格転嫁等への取引条件を改善し、赤字法人も対象となるよう減税項目を法人事業税、固定資産税、消費税にまで拡大した【賃上げ減税】です。
GDPの6割近くを占める個人消費と、伸び悩む企業の設備投資に直接アプローチ出来る対策が必要です。
第二に、予備費や基金に対する、国会の行政監視機能不全です。
コロナ禍以降、多額の予備費計上が常態化しています。予備費は、予見しがたい予算の不足に充てる為に認められた、予算の事前議決原則の例外的制度であり、今回のように、なし崩し的に使途を“コロナ”から“賃上げ”に変更し、拡大する政府の手法は、財政民主主義を有名無実化するものです。
基金への予算措置と残高もまた、コロナ禍を契機に膨張し続けています。
年1兆円前後で推移していた予算額は2020年度に11.5兆円に増え、2兆円台だった基金残高も22年度末には16.6兆円と、増加の一途を辿っています。
成果の数値目標を持たない基金はおよそ20%、活動実態がなく、支出が人件費や管理費のみである所謂「休眠基金」も全体の15%を占めています。
この異常ともいえる事態に対し、河野行政改革担当大臣は、各府省の全基金を見直す方針を明らかにしましたが、結局、今般、十分な見直しも行われないまま4.3兆円を計上し、新たな基金の造成や積み増しを行っています。
財政法第29条における緊要性を鑑みれば尚更、これらの基金に対する取扱いは不適切と言わざるを得ません。
最後に、総理の少子化対策に対する基本認識に一言申し上げます。
予算委員会の審議の中で、総理が「子育て世帯の受益部分を拡大する。スウェーデン規模にまで引き上げる」と繰り返されているのを聞いて、今更ながら、なぜ、総理が、子育て世帯が心底望んでいる「年少扶養控除の復活」について、検討もして下さらないのかが、よく分かりました。
家族関係社会支出には「控除」はカウントされないからですね?
総理は、先の通常国会で、OECD定義による家族関係社会支出を、2020年度のGDP比2%から倍にする、先進国最下位レベルから、スウェーデンの3.4%をベンチマークとして、先進国最高位レベルまで引き上げると言明されました。
16歳から18歳の扶養控除を削り、社会保険料を引き上げて支援金制度をつくり、それらを児童手当として現金給付すれば、家族関係社会支出の机上の数字は跳ね上がります。日本の順位も確実に上がります。
しかし総理、今、見るべきは机上の数字でも順位でもなく可処分所得です。兎にも角にも、子育て世帯の、これから子育てをする次世代の、可処分所得をどう増やすかを考えて頂きたいのです。
政府は現在、高校生がいる世帯に児童手当を年一律12万給付する代わりに、所得税で38万円、住民税で33万円としている扶養控除の水準を一律で引き下げ、縮小する案を検討しているといいます。
少子化対策に必要なのは、給料を上げ、税負担を下げ、社会保険料負担を下げ、給付・控除・無償化などの公的支援を拡充することです。
扶養控除の縮小は撤回の上、年少扶養控除を復活してください。各種子育て支援制度の所得制限を撤廃し、教育の完全無償化を目指してください、そうして漸く、我が国は少子化対策のスタートラインに立つことが出来ます。
以上、本補正予算案の課題について申し述べました。
昭和52年、野党 民社党は異例の予算案賛成にまわりました。同党は、長期化・深刻化する経済不況対策として「1兆円減税」を提起し続け、やがてそれは1政党の訴えの枠を超え、野党共通の要求となりました。
その要求に対し、政府が一定の譲歩を示したのだから、予算案に賛成するのは、当初より提起し続けてきた党としての、責任の表明なのだと述べられています。
参議院で賛成討論に立った三治重信議員が残した議事録には、こうあります。
「およそ議会制民主政治を確立しようとする立場に立つならば、時には多少の不満を残しつつも、可能な限り国民の要求を現実的に満たすための不断の努力を積み重ねていかなければならない。国の経済政策の目標は、雇用の安定すなわち完全雇用の維持と物価の安定にある」
国民民主党は、衆参たった21人の政党です。我々が予算案に賛成したとて、大勢に影響はないと思われるかもしれません。
それでもトリガー条項凍結解除に拘り、食らいつき、我々の行動を批判する、その人の暮らしにも必ず利とならん政策を実現したいと思っています。
総理の御決断を重ねて強く要望すると共に、財務省などは決して諸手を挙げて賛成しない、このトリガー条項凍結解除。苦渋の決断を最後に支えるのは、与野党を超えた議員たちが地元で拾い集めてきた声であり、その発露としての賛意です。
30年ぶりの持続的賃上げを何としても実現する。その為に今、最も効果的だと思われる、トリガー条項凍結解除に対する理解を議場に切に呼びかけて、私の討論を終わります。