国民民主党 つくろう、新しい答え。

ニュースリリース

【参本会議】大塚代表代行が岸田総理の所信表明演説に対する代表質問で登壇

 大塚耕平代表代行(参議院議員/愛知県)は26日、参議院本会議において、岸田総理大臣の所信表明演説に対する代表質問を行った。全文は以下の通り。

所信に対する本会議質問

令和5年10月26日
国民民主党・新緑風会 大塚耕平

 国民民主党・新緑風会の大塚耕平です。会派を代表し、総理の所信表明演説に関して 、総理に質問させていただきます。

(外交)
 冒頭、国際紛争による子どもを含む多くの犠牲者に哀悼の意を表します。ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルとハマスの紛争が一刻も早く停戦に至るよう、長く外務大臣も務められた岸田総理には、日本として何ができるのかを熟慮いただき、戦略的に行動していただくことを期待します。
 総理は所信の中で「「人間の尊厳」という最も根源的な価値を中心に据え、世界を分断・対立ではなく協調に導くとの日本の立場を強く打ち出していきます」と述べました 。ウクライナ ・中東問題に対して、今後どのように対処する方針か伺います。また、所信に登場する「岸田外交」という表現の意味するところ及び意図についても、合わせて 伺います。

(経済情勢認識と補正予算 )
 所信の最初は「経済、経済、経済」と「経済」を3回繰り返す項目名 になっています。 経済を動かす主体は家計と企業です。家計と企業に具体的かつ的確な政策が講じられなければ「経済、経済、経済」という呪文の効果も顕れません。
 総理は総合経済対策策定を表明した9月25日の記者会見で「経済状況は改善しつつある」と述べました。どのようなデータ及び状況を指して「経済状況は改善しつつある」と考えているのか、今後の議論の前提として総理のご認識を伺います。
 GDP需給ギャップがプラスに転じていることを勘案すると、今後編成される補正予算案の規模は、何を基準として決定するのか、現時点での総理の所見を伺います。

(減税の具体策)
 補正予算の前提となる総合経済対策 が11月2日に閣議決定されると報道されていますが、今週月曜日に国民民主党の提案は既に総理に提出させていただきました。
 生活減税4本柱として、第1にブラケットクリープ対策としての所得税減税、第2にトリガー条項発動及び当分の間税率すなわち暫定税率廃止によるガソリン減税を含む燃料費高騰対策、第3に消費税5%減税による単一税率化とインボイス中止、第4に投資額以上の償却を認めるハイパー償却税制導入等による法人税減税案をお示ししました。
 ブラケットクリープ対策は、賃上げ、所得増加によって適用税率が上がり、税負担が増える勤労者、家計の負担軽減策です。総理は、期限付所得減税の検討を指示したと報道されていますが、ブラケットクリープ対策を講じる方針か否いますが、ブラケットクリープ対策を講じる方針か否か伺います。
 ガソリン暫定税率の廃止法案を開会日に提出しました。総理は所信において「変化の流れを掴み取る」「その一丁目一番地は経済」「先送りせず、必ず答えを出す」と述べました。その決意が本気であれば、半世紀前の戦後復興期に道路建設のために必要という理由で創設された暫定税率、自動車重課税・二重課税をもういい加減に止めませんか。総理に、トリガー条項凍結解除、暫定税率廃止に関する決意を伺います。
 次に、消費税減税についてです。10月からインボイス制度がスタートし、納税義務者である事業者は事務負担及びコスト増加に直面しています。消費税減税とインボイス中止について、総理の認識を伺います。
 インボイスに関連して国際的な経済覇権の観点から伺います。日本経済が絶頂期を迎えた1980年代以降、プラザ合意、BIS 規制導入、国際会計基準導入が行われました。当時の日本経済の強さの要因であった「円安」「オーバーローン」「ストック経営」に対する欧米諸国からのカウンターであり、結果的に貿易黒字とバブル経済で得た日本の資産力 は破壊されました。
 当時の政財官学、各界のリーダーはそのことに気づかず、日本経済は1990年代以降の「失われた30年」に誘われました。
 そこで伺います。今回のインボイス制度導入の背景では、取引資金決済の電子処理を実現するため、電子インボイスについて欧州ルーツの国際規格「Peppol」の採用が前提となっています。「Peppol」の採用によって今後 の日本経済の慣行や税制にどのような影響が生じ得るか、現時点での総理の所見を伺います。
 「失われた30年」の間に、総理が所信で述べた「コストカット型経済」 が定着しました。今年1月27日、通常国会の代表質問において、「日本の経営者の思考や企業戦略を、スリム化・コストダウン至上主義等の悪弊・呪縛から解放するために、どのような政策を考えているか」と質問させていただきました。
 今回の所信では、総理は「「コストカット型経済」からの完全脱却に向けて、思い切った「供給力の強化」を3年程度の「変革期間」を視野に入れて、集中的に講じていきます」と述べました。 共通認識に立っていただけたものと思います。
 その具体的な方策として寄与し得るのが、国民民主党が提案している第4のハイパー償却税制です。
 先端分野、戦略分野に関して、今や国家間の産業政策競争の時代です。設備投資額以上の償却を認めるハイパー償却税制を導入すべきと考えますが、総理の所見を伺います。
 所信では半導体の供給力強化に言及しています。今年の夏、 日本Rapidusとベルギー imecの提携に関する調査のため渡欧し、 EU代表部担当官等と意見交換してきました。アライアンスが成立するのは相手にもメリットがあるからです。今回の提携でimec側にどのようなメリットがあると考えているのか、総理の認識を伺います。
 所信では「AI、自動運転、宇宙への取組」にも言及しています。通信、測位及び画像 衛星、AIの3つは、現代国家 にとって重要な技術インフラ3要素です。3要素に自動車や家電製品等が接続され、兵器がつながればLAWSとなります。3要素を外国に依存するようでは、産業も経済も防衛も安全保障は成り立ちません。
 3要素のうち通信に関し、現在 NTT法を含む関連法制見直しが議論されているようです。見直し議論や関係各社の主張が、安全保障上の観点から懸念がないか、総理の認識を伺います。

(財源)
 以上の諸減税の財源があるか否かも焦点です。
 経済を動かす主体は家計と企業で す。 家計と企業に具体的かつ的確な対策を打たなければ「経済、経済、経済」という呪文の効果も顕れないと申し上げました。
 経済という概念的な存在、とくにマクロ経済に対する対策だけで何とかなるような印象を与えた異次元の金融緩和は11年目に入り、壮大な社会実験は袋小路に入っています。
 この間、自国通貨を発行する国の国債発行は無限大とするMMT(現代貨幣理論)が登場した一方、伝統的理論派は古色蒼然たる財政健全化論を展開し続けています。
 国民民主党は、異次元緩和による「財政ファイナンス」が極まった中で、現実的な政策的工夫を明示しています。日銀保有国債を一部永久国債化して財源確保を図る一方、日銀保有のETF、REIT等を計画的に売却し、成長戦略と出口戦略を両立させるとともに、 確保した財源を、人材育成、技術開発、産業支援、防衛強化等の喫緊の課題に充当する という工夫です。本件について、通常国会に続いて総理の所見を伺います。

(リスキリング)
 家計も企業も人が動かします。産業も技術も人が生み出します。 国民民主党が「人づくりこそ国づくり」を政策の柱としている所以です。
 新卒初任給を上げなければ 、全体の賃金も上がりません。初任給引上げや修士・博士号取得者、技術者・研究者の処遇に関する総理の所見、今後の政策的誘導について伺います。
 技術等の進歩や変化が加速する中、 現役層のリスキリングも重要です。リスキリング 政策に熱心なスウェーデンでは「イルケスヘーグスコーラン(Yrkeshögskolan<YH>)」 という職業訓練校が有効に機能しています。2年間のフルタイム教育を基本とし、座学と企業研修を組み合わせた実践的内容です。
 私が調査に行った2017年当時、全国に約230校、約5万人が通い、平均年齢32歳と聞きました。
 約6割は民間企業が運営し、残りの過半は市町村等の公立です。学費は無料。失業している場合は、リスキリングに取り組むことを条件に失業時給与の80%まで給付され、生活費を補うために教育ローンも利用できます。つまり、所得水準を落とさずに2年間、リスキリングに取り組めます。
 こうした制度の導入も含め、リスキリングに関する総理に方針を伺います。

(子育て政策)
 人材育成の前提として必要なのは、子どもを産み育て易い社会です。国民民主党は今回の提案の「子育て・人材育成」4本柱の中で、関連施策の所得制限撤廃、年少扶養控除復活等をお示し、所得制限撤廃法案は国会初日に再提出しました。子育て支援・教育に関する国・自治体の関連諸施策において所得制限を撤廃すること、及び年少扶養控除復活に関する総理の所見を伺います。
 政府も児童手当の所得制限を撤廃しましたが、「第三子以降」の給付金3万円は、第一子、二子が高校を卒業すると引き下げられると聞きました。そのような扱いとした考え方を総理に伺います。

(「収入の壁」対策と労働力)
 「異次元の少子化対策」は「年収の壁」問題も取り上げ、労働時間延長や賃上げに取り組む企業に必要費用を補助する等の支援策を講じたことは一歩前進です。
 所信では「「106万円の壁」に近づく可能性のある全ての方が壁を乗り越えられるようにするために、十分な予算上の対応を確保します」と述べています。
 「106万円の壁」では、従業員101人以上の企業で月収8万8000円(年収換算約106万 円)を超え、週 20時間以上勤務等の条件を満たすと、第3号被保険者は年16万円程度の保険料負担が発生します。壁越え前の手取りを確保するには収入を125万円程度に引き上げることが必要です。
 今月から始まった対策では壁越えの従業員1人あたり3年間で最大50万円を助成しますが、従業員ではなく企業に支給する仕組みになっています。企業によって活用方法が異なるうえ、既に保険料を負担している従業員と、新たに壁越えする従業員との公平性が課題です。
 公平な賃上げを目指す企業は不足分の資金負担が生じるため、そもそも壁越えを奨励しないという声も聞きます。
 そこで、この差額約19万円を企業側に減税や損金算入を認め、106万円の次は給料が 125万円になる仕組みを導入してはどうでしょうか。そうであれば、働くことを選択する人が増えると思います。総理の所見を伺います。
 もう一つの壁である130万円を超えると、配偶者の社会保険の扶養をはずれ 、年金と医療の社会保険料負担が発生します。130万円には残業代等も含むため、勤労者実態調査では約6割の人が就業調整の理由として「130万円の壁」を挙げています。
 今回の対策では130万円を超えても、人手不足のための一時的勤務で あることを事業主が証明すれば、扶養対象は維持されます。どのようなケースが「一時的」と判断されるのか、基準についての考え方を総理に伺います。
 今回の対策は2025年抜本改正までの時限措置と聞いています。抜本改正の方向性、及び18日に公表された技能実習制度の抜本見直し素案との関係について、総理の所見を伺います。

(インフレ課税)
 総理は9月25日記者会見や所信において「成長の成果である税収増の還元」「国民への還元」と述べていますが、今回減税が実現する場合、それはインフレ課税分の戻しと言 うべきではないでしょうか。総理の認識を伺います。
 政府日銀は2%の物価目標を共有していますが、2%物価上昇が5年間続け10.410.4%、 10年間で21.921.9%となります。債務者はその分債務が減少し、債権者はその分資産を失 います。
 今年7月の「中長期の経済財政に関する試算」(成長実現ケース)では、2022年度の公債等残高の対名目 GDP比が213.5%となった後、10 年後の2032年度は170.7%まで低下しています。一般会計税収は1.31倍となることを想定します。まさしくインフレ課税です。
 日本経済の最大の債務者は国であり、債権者は預貯金等を有する国民です。インフレ課税によって国は債務が軽減され、国民は資産を失います。
 国民にとって、インフレ率を上回る賃金上昇率を持続的に実現できなければインフレ課税を免れられません。インフレ率よりも高い賃上げ率を持続的に実現するための方策として、具体的にどのようなことを考えているのか、総理の所見を伺います。
 マクロ経済スライドが課されている年金生活者もインフレ課税の影響が大きく、高齢者層が主な顧客である産業分野も影響を受けます。年金生活者対策、及びそうした産業 分野への対策について、総理の所見を伺います。
 減税に加えて直接給付も政策の選択肢となります。国民民主党は地方創生臨時交付金 を含む地方への各種交付金による直接給付も提案しています。総理の所見を伺います。

(資産運用立国)
 6月に閣議決定された「骨太の方針」では、家計金融資産を解放し、「資産運用立国」実現によって現預金偏重の家計金融資金を投資に振り向けると記されています。
 所信でも「金融資本市場の変革」に取り組むと述べ、資産運用業とアセットオーナーシップ改革を謳っていますが、これらに関して2点付言します。
 第1に、家計金融資産の95 %以上は円建てです。円安傾向の中で、資産運用を企図して外貨資産に投資する家計にとって、円安は資産形成にはプラスです。国民が総理の資産運用立国方針を聞いて外貨 資産に運用する一方で、政府・日銀がドル売り円買い介入する事態は論理矛盾です。「骨太の方針」はこの点が咀嚼されてい ません 。
 第2は、成長と資産運用の因果関係です。
 「骨太の方針」は「現預金偏重の家計金融資産の解放が持続的成長に貢献する」という論理で組み立てられています。逆に言えば「家計金融資産が解放されなかったため、持続的成長が損なわれてきた」ということを主張しています。
 しかし、家計が現預金偏重になっている背景には日本経済の期待成長率が低いことが影響しており、現預金偏重は低成長の「原因」ではなく「結果」と言えます。
 現預金を原資にした銀行の国債投資は、低成長の結果として資金余剰部門となった家計や企業から、資金不足部門である政府へ資金を融 通する循環構造です。つまり 「骨太の方針」の内容が実現する時には、政府が国債消化に窮し、金利が急騰する事態を迎えるということです。
 「骨太の方針」「中長期経済財政試算」及び「所信」が相互に整合的であるか否か、 総理の所見を伺います。

(認知症施策 )
 最後に所信で言及している認知症治療薬「レカネマブ」について伺います。米国での販売価格は患者1人につき年間2.65万ドル(約350万円)です。今後、日本で公的保険対象になる場合、 患者の自己負担は高額療養費制度の上限があるため、70 歳以上の一般所得層(年収 156~370 万円)で年14万4千円と想定されます。認知症患者数は2025年で約 675万人(有病率18.5%)と推計されています 「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」)。
 認知症施策が進むことは良いことですが、現役層にこれ以上の負担は課すことは避けるべきです。認知症施策及びレカネマブに関する総理の所見を伺います。

 「経済、経済、経済」と3回繰り返したのは、かつて英国ブレア首相が「教育、教育、教育」と述べた有名な演説を意識した工夫かと拝察します。経済の重要性には同意しますが、マクロ経済政策だけで何とかしようとする失敗を繰り返すことなく、技術を生み出し、経済を動かしている「人」つまり「国民に直接届ける」政策が重要です。
 日本の未来は「人、人、人」、全ては「人」にかかっていること、「人づくりこそ国づくり」と申し上げ、国民民主党を代表しての質問とします。

以上