ニュースリリース
【参本会議】榛葉幹事長が防衛装備品等基盤強化法案について質疑
榛葉賀津也幹事長(参議院議員/静岡県)は26日、参議院本会議で「防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤の強化に関する法律案」に対して質疑を行った。質疑の全文は以下の通り。
「防衛基盤強化法」に対する本会議質問
令和5年5月26日
国民民主党・新緑風会 榛葉賀津也
【はじめに】
私は、国民民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました「防衛基盤強化法」に対し、防衛大臣に質問します。
米中を軸とした現在の厳しい安全保障環境を、かつての米ソ冷戦に準えて「新たな冷戦」と表現することがありますが、日本にとってそれはあたらないと思います。我が国を取り巻く現状は「冷戦」などという生易しいものではないからです。米ソの冷戦時代に北朝鮮のミサイルが日本の上空を飛来したことなどは一度たりともなく、弾道ミサイルも核兵器も持っていませんでした。冷戦時代、中国による尖閣諸島への領海侵犯は一度もなく、我が国のEEZ内に弾道ミサイルを打ち込むなどと言うことも皆無でした。冷たい戦争ではなく、本当の戦争の危機が、我々の目前に迫りつつあることを自覚しなくてはなりません。中国、ロシア、北朝鮮と言った日本の隣国に位置する「権威主義国家」が剥きだしの力で、一方的に世界の秩序を変えようとしているのです。
米ソ冷戦当時、ソ連の経済は米国の半分以下でしたが、中国経済は米国に肩を並べつつあり、米中逆転さえ視野に入ってきています。巨大な経済力をバックに急速に軍事力を増強させ、「米国を凌ぐ軍隊を持つ」という明確な国家目標を掲げています。米国は、オバマ大統領時代に「米国はもはや世界の警察官ではない」と宣言し、その役割を降りました。トランプ大統領は米国が維持してきた、アジアとヨーロッパ、東西二つの敵と戦って同時に勝つという「二正面作戦」を放棄し「一正面戦略」に切り替えました。バイデン大統領は「もはや一つの正面でもアメリカ単独では対処できない」と明言しています。憲法9条の下で米国に依存して日本の安全を確保するという時代は完全に終わっているのです。
「自分の国は、自分で守る」という国民民主党の政策の柱は、独立国家の最低限の意思表示です。にもかかわらず、その当たり前が、未だにできていないのが日本であり、その原因の一つが、国防に対する危機感と緊張感が希薄で、現実から目を背けている立法府自身にあることを我々は自覚しなくてはなりません。
【基盤強化に関する基本方針】
国家国民の平和を守る、最後の砦が「防衛省・自衛隊」です。浜田防衛大臣は「自衛隊の任務遂行に必要な装備品の製造などを担う防衛産業は、まさに防衛力そのものだ」と発言されました。大臣、そのとおりです。
しかし、その自衛隊の基盤となる防衛産業が深刻なレピュテーションリスクに晒されています。防衛産業は一部で「死の商人」と評され、産業界において、正当な評価を受けていませんでした。防衛産業に対する社会的評価は自衛隊に対する評価そのものです。防衛産業の位置づけを明確化して、国における防衛産業の重要性と、「防衛産業なくして日本の防衛なし」という認識を周知する必要があると考えますが、大臣の見解をお伺いします。
また、各企業内においても、防衛部門は、売り上げ規模や利益率の低さから社内での発言力が弱く、新たな事業展開が困難な上に、対中国ビジネスなどにおいての阻害要因となっているなど、内部的なレピュテーションリスクへの対応も極めて重要です。ゆえに本法案にある「基盤強化に関する基本方針」が極めて重要であり、「基本方針」が明確かつ具体的で防衛産業側に寄り添ったものでなくてはならないと思いますが、どのような「基本方針」を考えているのか大臣の説明を求めます。
本法案は、防衛省にとって、初めての産業支援法であり、各方面が固唾をのんで見守っています。防衛産業は裾野が広く、防衛省と直接契約をするサプライヤーの下には、F-2戦闘機で1,100社、10戦車で1,300社、護衛艦で8,300社の下請け企業があり、その多くが町工場を含む中小零細企業です。「基本方針」は大手のプライム企業だけでなく、これらの中小零細企業にも十分配慮したものにすべきと考えますが、大臣の認識をお伺いします。
本来、防衛産業では、通常平均8%ほどの利益を見込んで契約をしていますが、契約後の原材料や電気代などの高騰で、実際の利益率は2%程度しかない例が多発しています。これでは経営が成り立つわけがありません。持続可能な産業基盤を維持するためにも、法律とは別に企業との契約価格の算定基準をものづくり側に立って改めるべきと考えますが、大臣の見解をお伺いします。
【サプライチェーン調査】
次に、サプライチェーンについてお伺いします。「自分の国は自分で守る」という原点に回帰すれば、輸入依存度の高い部品を国産に切り替えたり、外国による輸出禁止や海峡封鎖といった輸入途絶事態を想定し、サプライチェーンを強化しておくことこそが重要です。本法案ではサプライチェーンリスクを防衛省が直接把握するために、任意ではなく法律をもって厳格に調査できるようになりました。しかし、企業に求め得るのは、「回答の努力義務」だけであり、これでリスクが本当に回避できるのかとの疑問の声もあります。調査の結果、セキュリティーが不十分であったり、海外のリスクがある事業者と判明した際には、調達先に「変更命令」を出せるようにするなど、実行性のある制度にすべきと考えますが、大臣の見解を求めます。
【基盤強化の措置】
次に基盤強化の措置についてお伺いします。
本法案では、製造工程の効率化やサイバーセキュリティーの強化など、防衛装備品等の製造に資する企業の取り組みについて、サプライヤーも含め、国が経費を直接的に支払うことが可能になります。極めて有用な措置であるという評価の一方で、この救済措置が企業の固定化や新規参入を阻害しないかとの懸念の声もありますが、大臣の認識をお伺いします。
防衛省は、当初、経費を直接支払うやり方以外に、サイバー防衛の強化など具体策を講じた企業に対して減税制度を盛り込もうとしましたが、財務省との折衝で断念したとの報道がありました。極めて残念です。集めた税金を使う側ではなく、働いて税金を納める側に立ったインセンティブが大事だと考えますが、大臣のお考えをお聞かせください。
【おわりに】
本法案の目指すものは、言うまでもなく日本を守るための「基盤の強化」です。その基盤で最も大切なもの、それは「人」です。各幕を支える「装備」の要である防衛装備庁の職員は、防衛生産•技術基盤の強化、装備品の研究開発、プロジェクト管理を通じた装備品の効率的な取得や装備品の調達実務など、防衛装備行政全般を担い、昼夜を問わず職務に励んでいます。しかし、新たに策定された防衛力整備計画の具現化や本法案に基づく施策の着実な実施、さらには政府全体の経済安全保障の取り組みに協力•連携していくためには、防衛装備庁の約1900人の体制では人員があまりにも足りません。定員•実員を大幅に増やす体制強化が必要だと思いますが、大臣の認識をお伺いします。
最後に、現在、国防の最先端で汗をかく若い自衛官である「士」の充足率は8割を切っています。極めて深刻な状態です。産業界と内局が努力して立派な装備を確保し、基盤を強化しても、それを運用する自衛官が疎かにされては本末転倒です。自衛官の給与、再就職先の確保、部隊での生活環境の改善こそ急務です。自らの命を賭してでも国民を守ると「服務の宣誓」した自衛官の身分と尊厳を、憲法と法律で明確にし、守ることこそが我々の職責であることを訴え、質問を終わります。