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ニュースリリース

【参本会議】伊藤孝恵議員が日本語教育機関認定法案について質疑

 伊藤孝恵議員(参議院議員/愛知県)は17日、参議院本会議で「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律案」に対して質疑を行った。質疑の全文は以下の通り。


 国民民主党・新緑風会の伊藤孝恵です。私は会派を代表し、ただいま議題となりました法律案について質問いたします。

 質問に先立ち、本法律案の起点となった議員立法「日本語教育推進法」を生み出した、超党派日本語教育推進議員連盟の先達のご努力に、心からの敬意を捧げます。

 議連案を拝見した際、「どうしてこの法案条文には“児童・生徒”は書いてあるのに“幼児”はないのでしょうか?就学前の、柔らかな脳と心を持つ子ども達にこそ日本語教育が必要です」おそるおそる述べたその言葉を「確かにねぇ」と受けとめ、第3条および第12条に“幼児”を追記して下さった、中川正春議連会長代行らの顔が今、浮かびます。

 言葉は何かを変えることが出来る。言葉は想いを伝え、仲間をつくり、孤独孤立から救ってくれる。言葉の力は、この国で生きていく力そのものだから。

 共生社会の実現に資する日本語教育の推進を願い、以下質問致します。

 本法律案は、一定の要件を満たした日本語教育機関を国が認定することで、日本語学習者が適切な日本語教育機関の選択ができるようにすると共に、その質保証を行うことを目的としています。これまで質に関する共通の指標が存在せず、日本語教育の水準を確認することが困難だった状況の改善が期待されます。

 但し、当該認定制度が、我が国に居住する外国人の、日常生活及び社会生活の円滑な営みに有益なものとなるか否かの鍵は、現在国内にある多種多様な日本語教育機関のうち、どのような機関に、どういった要素を求め、何をモノサシとして評価し、認定の是非を決めるか、その「基準」です。

 文化庁の有識者会議では、認定日本語教育機関の類型として、主に留学生が通う日本語学校は「留学」類型、企業と連携して日本語教育を提供する機関は「就労」類型、生活者を対象とした地域の日本語教育の一端を担う機関は「生活」類型として、認定を行うことが示されておりますが、その認定基準は文部科学省令で定める事となっており、詳細は明らかにされておりません。今後、どのような類型、および基準を設けるのか、文科大臣のお考えを伺います。

 類型について付言すれば、本法律案には、学校等における児童生徒に対する日本語指導に関する言及が一切ありません。近年、日本語指導が必要な幼児・児童・生徒は増加の一途をたどっており、学校等における日本語指導体制の急速な整備・拡充が求められていることに加え、議員立法「日本語教育推進法」では、幼児・児童・生徒等に対する日本語教育についても、充実を図るため、必要な施策を講ずるとされています。

 また、令和3年に日本語教育機関の類型等を検討した文化庁の有識者会議では、日本語指導が必要な子どもの「就学の為の日本語教育」についても類型を設ける事が必要ではないか?といった意見が出され、最終報告書に「就学等の、その他類型」についても、今後検討を行う必要性が明記されました。 

 就学前教育を含む、学校等における日本語指導の体制強化について、文科大臣はどのように考えているのか、また、認定日本語教育機関の類型の一つとして「就学」を今後検討する予定はあるのか?伺います。

 本法律案は、認定⽇本語教育機関において、⽇本語教育を⾏うために必要とな る新たな国家資格として「登録⽇本語教員」を設ける事としています。専⾨的な 知識及び技能等を有する⼈材の養成と確保は、⽇本語教育の根幹と⾔える要点 です。そこで、1990 年代より指摘されてきた、⽇本語教員の「雇⽤条件や労働 環境の悪さ」「ボランティア 5 割、⾮正規 4 割といわれる、他分野では考えられ ない職務構成」「若者の⽇本語教育離れ」「⾼齢化」「⾮熟練労働とみなされる地 位」「⼥性に偏るジェンダーバランスの悪さ」等の改善に向け、どういった具体 の取り組みを⾏うのか?⽂科⼤⾂に伺います。

 また一定の要件を満たす現職の日本語教員には、筆記試験や教育実習の免除を含めた経過措置を設けると伺いましたが、重要な差配であると評価する一方、容易に新資格への移行が出来るのであれば、教育水準の向上という制度の趣旨が揺らぎます。質の向上と担い手の確保をどのように両立させていくか。文科大臣、ご所見をお聞かせください。

 政府は、登録日本語教員のうち、特に児童生徒向けの日本語教育研修を受講した者を、小中高等学校等において活用したいとする方針を示しています。登録日本語教員を日本語指導補助者等の外部人材として学校現場に迎え入れることは、日本語指導の質を高めると共に、多忙を極める学校教員にとっても歓迎される内容です。しかし現状、学校教育法施行規則に日本語指導補助者についての規定はなく「必要に応じて配置」「資質、待遇、業務内容などの要件は雇用する設置者の判断」とされています。

 横浜市のように、日本語指導が必要な児童・生徒が5人以上いる小中学校には原則として、クラス担任もいる「国際教室」を設置する方針と併せ、放課後学習支援、母語支援ボランティア等、手厚く伴走している地域は稀で、日本語指導が必要な子どもの4割が居住するのは、支援が極めて手薄な散在地域です。

 就学義務はないからと、その取り組みを怠ってきた外国ルーツの子ども達の学びや育ちの問題は既に臨界点を超えています。自治体任せの国の姿勢が地域間の大きな対応格差も生んでいます。

 しかして、地方公共団体は、議員立法「日本語教育推進法」により、日本語教育の推進に関し、地域の状況に応じた施策を策定し、実施する責務を有するとされているにも関わらず、同法施行から4年が経とうとしている今も、地域の日本語教育が全く実施されていない「空白地域」となっている市区町村が全国でおよそ5割、存在しています。

 今後、地域間格差の解消に向け、数値目標を定めるとともに、期限を区切って、目標の達成に向けた財政支援を行うことが有効であると考えますが、文科大臣のお考えを伺います。

 併せて、教員養成課程や教員研修に、日本語教育学を多層的に組み込むことをご提案致します。

 通達1本で、ただ、登録日本語教員の登用を促すだけでは不足です。指導対象となる子どもの日本語能力や学習環境等のスクリーニングの適切な方法を、より具体的に助言し、求められる指導内容や人員体制を例示し、どのような場合に登録日本語教員の専門性が発揮されるかを示した上で、配置に係る追加的な財政支援を行わなければ「絵に描いた餅」になるのではないでしょうか。文科大臣、お答えください。

 さて、外国をルーツとする方々は、この「絵に描いた餅」が「役にたたない事を意味する言葉」だと、理解しづらいかもしれません。日本語はとにかく語彙が豊富で、漢字に音読み訓読みがあり、指示語も助詞も丁寧語も方言も極めて難解なのです。翻訳アプリのみならず、今後は、生成系AI、特に翻訳AIを利用する場面が想定されますが、これらが日本語教育に与える影響について、文科大臣のご見解を伺います。

 最後に、特別支援学級に在籍する外国ルーツの子ども達について伺います。

 公立小中学校で日本語を教える体制が整っていない為に、本来は障害のある子どもたちが学ぶ場であると、学校教育法で定められている特別支援学級に、障害ではなく、日本語が不得意だという理由で、外国ルーツの子ども達が在籍しています。それに対し文科省は、法令違反の恐れがあると言いながら、ガイドラインを改訂するのみで、対策は自治体や学校任せです。

 言わずもがな、特別支援学級で行う教育と日本語教育の指導内容は全く別物であり、両者にとって適切な教育が受けられず、子ども達の不利益になりかねない異常事態です。

 いま、日本語指導が必要な小中学生のおよそ5.1%、20人に1人が特別支援学級で学んでいます。日本人を含む全小中学生の1.4倍です。検査を母語で受けられない地域では、なんと8人に1人、10人に1人にのぼるといいます。文科大臣に今後の対応を伺います。

 言葉の問題を軽視して場当たり的に労働力としての外国人を受け入れれば、やがて社会の分断を生むことは諸外国の歴史が証明しています。だからこそ、先進国の多くは国が主体となって公用語の教育プログラムを進めています。

 我が国の「移民政策はとらない」という建前の如何に関わらず、外国人市民が定住者であることは間違いありません。多文化共生政策や、総合的、包括的な政策がどうしても必要です。

 私の住む愛知県犬山市には、日本初の外国人市議会議長がおります。日本初の赤十字救急法指導員も、自治会役員だっています。外国人市民は支援される側だけでなく、支援する側、地域づくりの担い手となっていることも、多くの方に伝えねばなりません。

 本法律案が、この国で共に暮らし、学び、働くその人たちに、かけがえのない「言葉の力」を贈る法案となることを切に願い、私の質問を終わります。

以上