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ニュースリリース

【参本会議】榛葉幹事長が防衛三文書について質疑

 榛葉賀津也幹事長(参議院議員/静岡県)は26日、国民民主党を代表し、参議院本会議で防衛三文書に対する質疑を行った。質疑の全文は以下のとおり。

「防衛三文書」に対する本会議質問

令和5年4月26日
国民民主党・新緑風会 榛葉賀津也

【はじめに】
 私は、国民民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました「防衛三文書」に対し、総理に質問します。

 米中央情報局のバーンズ長官が本年2月、「中国の国家主席が、2027年までに台湾攻撃の準備を整えるよう軍に命じた機密情報を把握している」「習近平の野心を過小評価すべきでない」と発言し、警鐘を鳴らしました。
 また、西側の各国間で開催されている昨今の安保関連会議では「もはや戦後は終わり、戦前に突入している」「第3次世界大戦は絵空事ではない」という切迫感と緊張感漂う議論がされていると聞いています。米中が「対立関係」から「敵対関係」になりつつある今、外交安保上、日本の存在が極めて重要になってきていますが、総理は欧米諸国と情報や危機感を共有されていますか。お答えください。

【基盤的防衛力構想からの脱却】
 今回の「防衛三文書」により、日本の安保政策に長年こびりついていた『基盤的防衛力構想』の呪縛から解放されたことは率直に評価します。また、今「三文書」は、現実から目を背け、リアリティのある国防議論を長年後回しにしてきた過去から決別するトリガーでもあります。

 新たな防衛政策の柱のひとつが「反撃能力」の保有です。これは自衛のために必要な「戦争をさせないための抑止力」であり、国民民主党はその能力の保有を理解します。反撃能力を自衛権の発動として行使するには、国会の承認が必要であり、そうである以上、専守防衛に反するとの批判は当たらないとの指摘もあります。相手国の第一撃着手の認定が難しいのは事実ですが、以降の攻撃を抑止するには反撃能力が有用なのは論を俟ちません。
「日本が反撃能力を持つと、相手国が更に軍備を増強する」という指摘も論理的ではありません。戦後77年間、日本は反撃能力を持たずにきましたが、それを尻目に軍拡を続けてきたのは中国、ロシアと北朝鮮です。憲法の範囲内での反撃能力のあり方について総理の説得力ある説明を求めます。

【非軍事こそ真の防衛力】
 現代戦の難しさは、平時と有事がシームレスであり、非軍事部分が極めて重要になっている点にあります。ある専門家は「軍事的手段と非軍事的手段の割合は1対4。つまり、戦いの8割がサイバーなどの非軍事部門となっている」と明言しました。ウクライナにおいても侵攻の40日も前からロシアによる大規模なサイバー攻撃が始まっていました。

【サイバー防衛】
 我が国の致命的な弱点が、この「サイバー」で、日米同盟の最大の障壁といわれています。2021 年に英国・国際戦略研究所が各国のサイバー能力の分析を行い、世界トップの「第一レベル」は米国、日本は、イラン、ベトナム、北朝鮮などと同じ、最も低い「第三レベル:一部を除けば、重大な弱点を抱える国」にカテゴライズされました。愕然とします。総理、一昔前まで「IT 国家」であった日本が、なぜこんなにも弱体化してしまったとお考えですか。ご説明ください。

 今の日本に必要なのは、人材の育成と法律の整備です。世界は今、サイバーにおいても、苛烈な人づくり競争をしており、日本はその競争に完全に遅れをとっています。つまりこれは国防の問題ではなく、教育の問題とも言えます。国防においてこそ「人づくりは国づくり」なのです。
 日本が参照すべき国があります。イスラエルです。かつてはサイバー先進国でなかったイスラエルは、10年以上前から教育カリキュラムを変え、小・中学校でサイバーの基礎を教え、すべての高校で「サイバー」を必修科目にしました。各大学にはサイバーの研究センターを設置し、最先端技術を軍や民間企業と共有しています。
 そのイスラエルに学んだのが韓国です。国防省と大学が連携を強化するとともに、サイバーを専門に学ぶ学生の学費を免除するなど、韓国も官民挙げて努力を重ねています。総理、日本も他国の成功事例を参考にして、本気でサイバー教育の見直しに取り組みませんか。総理の覚悟をお伺いします。

 能動的サイバー防御の導入が急務ですが、憲法や法律が障壁となっています。憲法9条との関係では、サイバー空間は、領海や領空のような明確な境界がなく「専守防衛」の概念はそぐわず、憲法 21 条の「通信の秘密」は「国民に限定される権利」との解釈を明確にすべきと指摘がありますが、総理のお考えをお伺いします。また「電気通信事業法」をはじめ、「不正アクセス禁止法」や「ウイルス作成罪」などの刑法をまとめた「サイバー安全保障基本法」等を策定するなど、一刻も早い対応が必要と考えますが、併せてお答えください

【国民保護のための公共インフラ】
 有事の際、最優先すべきは国民保護です。そのための基本的なインフラ整備についてお伺いします。
 まず、「J アラート」についてです。北朝鮮による常軌を逸した弾道ミサイルの発射で、J アラートには信頼性の向上が求められています。ミサイル発射から伝達までの時間短縮や軌道の見極めなど、より精度を高めるための改善を強く求めます。
 他方、全国で防災行政無線が整備されていない市町村が、昨年3月段階で73団体もあり、J アラートと防災行政無線が連携していない自治体も存在し、その中には県庁所在地や中核市が含まれます。論外です。防災行政無線の設置や J アラートとの接続は行政の責務であり、一刻も早く改善すべきと考えますが、総理の見解を求めます。 

 最後に、有事における自衛隊の輸送や国民保護のための港湾・空港・鉄道の有効利用について伺います。「台湾有事は日本の有事」です。先島諸島をはじめとする南西地域の港湾、空港などの整備と利活用は極めて重要です。しかし、現実は自衛隊の艦船が接岸しようにも出来ない港が多数存在します。例えば、台湾からわずか111kmに位置する与那国島。「特定公共施設利用法」により利用できるのは祖納港ですが、吃水6m輸送艦や、吃水11m護衛艦は、水深5.5mの港に入港できません。他の離島も同じような状況です。南西諸島の港湾に自衛隊の艦船が接岸できないなどあり得ません。改修すべきは早急に改修し、今後は港湾建設当初から有事を想定し水深の確保をすべきと考えますが、総理の見解をお聞かせください。空港もしかりです。輸送機や戦闘機の離発着には3000mの滑走路が望まれますが、条件を満たす飛行場は「那覇空港」と「下地島空港」の2カ所だけです。しかも、下地島空港は、いわゆる「屋良覚書」があり、軍事利用ができません。南西諸島の空の拠点があまりにも脆弱ですが、総理の認識をお伺いします。また、沖縄県民の安全のためにも「屋良覚書」について、県と真摯に話し合う時期だと考えますが、併せて総理にお伺いします。

 今も昔も、鉄道は国防にとって重要なインフラです。自衛隊は、かつての北方防衛のなごりから、弾薬の約7割を北海道に備蓄しています。有事の際、弾薬や戦車などを南西方面に輸送するには鉄道貨物が欠かせません。しかし、約50tある戦車を乗せる貨車やクレーンがない。トンネルが戦車の幅より狭く通過できない、鉄橋が重量に耐えられない、など問題山積です。
 また、函館-長万部間を走る函館線は北海道と本州を結ぶ唯一の路線ですが、廃線の危機に直面し、仮に廃線となれば、貨物輸送に重大な影響が出ます。鉄道インフラの維持・整備は国防の生命線です。採算ベースのみで存続の是非を決めるのではなく、国防の観点から国が責任を持つべきだと考えますが、総理の認識をお聞かせください。

【結びに】
 理想を胸に秘めながらも、国家と国民を守るために、現実を直視し、行動に移す。正に安全保障政策こそ「対決より解決」が重要であることを申し上げ、私の質問を終わります。