ニュースリリース
【参本会議】榛葉賀津也幹事長が岸田総理の帰朝報告に対して質疑
榛葉賀津也幹事長(参議院議員/静岡県)は27日、国民民主党を代表し、参議院本会議で岸田総理の帰朝報告に対する質問を行った。質問の全文は以下のとおり。
「岸田総理の帰朝報告」に対する質問
令和5年3月27日
国民民主党・新緑風会 榛葉賀津也
【はじめに】
私は、国民民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました帰朝報告に対し、岸田総理に質問します。
今回の、グローバルサウスに照準を合わせ、その代表格であり G20の議長国でもあるインド訪問、G7 議長国としてのウクライナ電撃訪問は、日本を取り巻く安全保障環境の観点からも重要な会談となり、国民民主党はその外交成果を率直に評価します。岸田総理のウクライナ訪問に関して国民民主党は、従前より国会ルールを柔軟に見直して訪問すべきだと提言をしてまいりました。今後も国会審議の充実と総理や外務大臣などの実りある外交交渉の両立を目指すべく、議院運営委員会や国会対策委員会などで与野党の垣根を越えた国益の全体最適を模索すべきと考えます。
【インド訪問】
まず、インド訪問についてお伺いします。ロシアによるウクライナ侵攻のあおりを受け、物価高やエネルギーの高騰により、食料やエネルギー確保に苦労し貧困にあえいでいる途上国の脆弱性が浮き張りになっています。中国はこの機に乗じて広域経済構想「一帯一路」などを掲げてそれらの国々を取り込もうとしていますが、スリランカや一部のアフリカ諸国に巨額の債務を残す「債務の罠」が火種となり、中国への逆風も吹き始めています。G7議長国の日本とG20の議長国でグローバルサウスの代表格であるインドが、経済と安全保障の両面で途上国にアプローチすることは極めて重要です。欧米や中露のどちらにもつかないグローバルサウスや今や 130 ヶ国以上が名を連ねる中国を除いた G77 に寄り添い、今後、G7 側に引き込むことが外交上の鍵となると考えますが、岸田内閣の具体的な外交戦略について総理にお伺いします。
総理は、FOIP の実現に向けた新たな推進計画で、インド太平洋地域のインフラ整備のために2030年までに官民で750億ドル以上を投じると表明し、地理的概念も ASEAN、中東、アフリカにまで拡大しました。総理、数字ありきや地域の拡大だけでなく、その具体的な内容をご説明ください。また、ODA を拡充し日本の強みを生かした『オファー型』の協力も提起し、更に、総理は日本の外交史上初めてとなる途上国支援の一環で同志国の軍への無償資金協力にも言及しました。「統合抑止力」を重視する米国バイデン大統領に歩調を合わせたものと推察しますが、中国に近い ASEAN 諸国の中には、このような日本の提案に対し、懸念の声も聞こえます。同志国の軍への無償資金協力とはいかなるものなのか、具体的にどの国をイメージされているのか、懸念を持つ国々への不安をどのように払拭するのか、併せて総理にお伺いします。
【ウクライナ訪問】
次にウクライナへの電撃訪問についてお伺いします。まず、総理の移動や現地での警護について浜田防衛大臣は、記者会見で「自衛隊は関与していない」と説明されました。他の G7首脳たちのウクライナ訪問時の警護に、それぞれ自国の軍隊は関与されたのでしょうか。また、今回、自衛隊が関与しなかった理由は、自衛隊法に要人保護のみを目的に自衛隊を海外に派遣する規定がないからですか。あるいは、戦時下の国に公然と他国軍の要員が入ることにより様々な危険が伴うことを避けるためですか。総理にお伺いします。
在外邦人等の保護措置を定める自衛隊法 84 条の 3 では、緊急事態に際して、現地の治安が一定程度維持され、現地の機関の協力が得られる場合には、邦人の警護、救出その他の措置を取り得ることを規定しております。今回のケースのように要人が自ら現地に赴く場合のケースにおいても、自衛隊法 84 条の 3 を適用することは法文上、不可能ではないように思いますが、総理の認識をお伺いします。警務隊や陸自の特殊部隊は要人を警護する能力も実績も十分に兼ね備えています。自衛隊法 84 条の 3 での対応が厳しければ、真正面から自衛隊法を改正して、あらゆる場合に自衛隊も活用し得るようにしておくことも、慎重かつ徹底的に検討すべきだと考えますが、総理の認識をお伺いします。
今回の総理のウクライナ訪問は、中国の習近平国家主席がロシアを訪れて、プーチン大統領と会談をする仲介外交と同時期という、絶妙なタイミングとなり、我が党の玉木代表が指摘するように、日中どちらがアジアのリーダーとして民主主義と法の支配の守護神であるかを世界にアピールする最大の機会となりました。G7の首脳では最後でしたが、日本の総理がキーウを訪れ「日本の揺るぎない連帯」を伝え、4億7千万ドルの無償供与を含む具体的な数字を明言し、5 月の「G7 広島サミット」に繋げたことは評価に値します。これからは、日本のプレッジをどのように迅速かつ確実に履行するのか、我が国の実行力が問われます。総理はゼレンスキー大統領に「今後も日本ならではの形で切れ目なくウクライナを支える」と話されたと報道がありましたが、具体的にどのような支援をどのようなタイミングでお考えなのか、総理ご説明ください。
ロシアのウクライナ侵攻で甚大な影響を受けているのはウクライナ国民だけではありません。多くのウクライナ避難民を受け入れているウクライナ周辺国も、物価の高騰や避難民流入による財政負担増などにより極めて厳しい状況にあります。とりわけ、EU 非加盟国であるモルドバの状況は深刻です。モルドバには人口の 2割を超える 10 万人以上もの避難民が流入し、財政の逼迫など、国内経済が大きな打撃を受けています。親ロシア派の前政権から親欧州派のサンドゥ政権に移行したものの、エネルギー源のほぼ100%をロシアに依存しているため、電気代はこの一年で 6 倍以上になっています。また、同国のトランスニストリア地域には親ロシア住民がソ連崩壊直後から分離独立を宣言し、未だに 1500 人以上のロシア軍が駐留し続けている状況です。先日行われた「ミュンヘン安全保障会議」においても、欧米各国からロシアによる「モルドバ侵略」が共通の懸念として示されました。親日国であるモルドバを第二のウクライナにしないためにも、日本の支援が重要だと思いますが、総理のご認識をお伺いします。
【出口戦略】
中国は先月、ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場「12 項目の提案」を発表しましたが、和平に積極的な“仲介者”を演じ、欧米と距離を置くグローバルサウスへの影響力を増す狙いがあるのは明らかです。
中ロの会談を受けて、ブリンケン米国務長官は「ウクライナ領土からのロシア軍の排除を含まない停戦の呼びかけは、主権を持つ隣国の領土を武力で奪おうとするロシアの試みを認めることになる」と牽制し、また、習氏の訪ロ自体を「ロシアが犯罪を続けるための外交的な隠れ蓑を提供しようとしている」と激しく非難しています。
先の「ミュンヘン安全保障会議」においても、ロシアがウクライナから完全撤退することなしの停戦交渉は、ロシアによる核の脅しが功を奏したことになり、西側がロシアの脅しに屈したとの間違ったメッセージになるばかりか、中国や北朝鮮といった核保有国をミスリードすることになるとの懸念が各国から示されました。
総理、中国の「12 項目の提案」への評価とロシアの完全撤退を要求する米欧の共通認識についてどのように考え、G7 広島サミットの議長国としてウクライナ戦争の出口戦略をどう描くのかお伺いします。
最後に、台湾海峡の平和と安定、北朝鮮の拉致・核・ミサイル、北方領土問題を抱える我が国にとって、ウクライナ侵攻は対岸の火事ではありません。「自由・民主主義・基本的人権・法の支配」といった普遍的価値や国際秩序を揺るがす蛮行を絶対に許してはならないことを申し上げ、質問を終わります。