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ニュースリリース

【参本会議】大塚代表代行が岸田総理の施政方針演説に対する代表質問で登壇

 大塚耕平代表代行兼政務調査会長(参議院議員/愛知県)は27日、参議院本会議において、岸田総理大臣の施政方針演説に対する質疑を行った。全文は以下の通り。

本会議質問

令和5年1月27日
国民民主党・新緑風会 大塚耕平

 国民民主党・新緑風会の大塚耕平です。会派を代表して、総理の所信表明演説の項目順に沿って、総理に質問させていただきます。

(歴史の転換点)
 所信冒頭は「歴史の転換点」と銘打ち、明治維新からの変遷に言及されましたが、敗戦から今日までの中間地点である1989年頃をピークとして、日本経済は世界における相対的地位を徐々に低下させ、今日に至っています。
 バブルの影響があったとは言え、1989年の世界株式時価総額トップ10のうち7社、トップ50社のうち32社を日本企業が占め、翌1990年の半導体売上高トップ10のうち6社が日本メーカーであったことを鑑みると、現在の日本経済の状況を深刻に受け止めざるをえません。
 総理に伺います。1990年代以降、日本経済がただ今申し述べたような経緯を辿った原因について、どのように分析・認識し、それを踏まえてこれからどのように舵取りしようとしているのか、お聞かせください。
 とりわけ2010年代以降、主要国で技術革新が加速していた中、日本は異次元の金融緩和に依存した運営であったことに関し、評価すべき点、振り返ってみれば失敗だった点について、総理の認識を伺います。

(防衛力の抜本的強化)
 次の「防衛力の抜本的強化」において、総理は「外交には裏付けとなる防衛力が必要」と述べました。そのことには同意しますが、国民民主党は、国家としての真の防衛力とは「総合的な安全保障」であると考えています。
 昨年提出した「総合的安全保障法案」を今国会でも提出する予定ですが、安全保障を支えているのは、狭義の防衛力のみならず、経済力、技術力、資源や食料、言語を含めた文化力、人材力等々の総合的な国力です。この点に関する総理の認識を伺います。
 所信では「相手に攻撃を思いとどまらせるための反撃能力の保有」という表現を使っています。国民民主党は一昨年総選挙の公約で「打撃力」という表現を選択しました。その心は、反撃しても効果がなくては目的を達成できないからです。
 武力攻撃事態法第3条3項には「武力攻撃が発生した場合には、これを排除しつつ、その速やかな終結を図らなければならない」と政府の義務を明記しています。その観点を踏まえ、「相手に攻撃を思いとどまらせるための反撃能力」とは、具体的にどのような防衛力を想定しているのか、あるいはどのような定義なのか、総理の認識を伺います。
 1995年、日本の防衛予算は対GDP比が約1%であっても実額規模で世界2位であったのは、経済規模そのものが大きかったからです。
 その後の経済低迷の中、日本の防衛予算は1995年の499億ドルから2021年の519億ドルと微増ではあるものの、実額規模は世界9位に低下しています。
 この事実を踏まえれば、経済成長をすることが、実額ベースの防衛予算を確保しつつ、国民に過大な負担をかけないための要諦です。今国会では防衛財源の議論が行われますが、「成長なくして財源なし」と申し上げておきます。増税より成長政策を優先すべきです。

(新しい資本主義)
 次の「新しい資本主義」において、「労働コストや生産コストの安さのみを求めるのではなく、重要物資や重要技術を守り、強靱なサプライチェーンを維持する経済モデル」の必要性を述べている点は同意します。
 その観点から振り返ると、バブル崩壊後の1990年代以降、日本では設備・債務・雇用の「3つの過剰論」が跋扈し、設備・債務・雇用をスリム化できる経営者がよい経営者ともて囃されました。
その最中、1987年に台湾TSMCを創業したモーリス・チャンは、「収益を計上するより、全て技術開発と人材育成に投入しろ」と大号令をかけていました。今日、その差が決定的に表れています。
 日本の経営者の思考や企業戦略を、スリム化・コストダウン至上主義等の悪弊・呪縛から解放するために、総理はどのようなインセンティブ政策またはディスインセンティブ政策を考えているのか、伺います。
 雇用過剰をスリム化するという大義名分の下、1990年代以降、総合電機メーカーから多くのエンジニアが流出し、結果的に台湾・韓国・中国の半導体産業等の興隆を支えました。日本企業にこのような失敗を繰り返させないために、どのような政策や制度を講じていくのか、総理の方針を伺います。
 さらに1995年、日本が低コスト労働力を求めて中国進出を加速していた中、当時の台湾李登輝総統は「戒急用忍」すなわち「急がば回れ」というスローガンで、主要産業とりわけ半導体産業の大陸移転を抑止する対中国貿易法を制定しました。
 昨年末、台湾新竹のTSMC本社を訪問してきましたが、今日のTSMC隆盛には、そうした政治指導力も大きく寄与しています。1990年代以降、日本の政治や通商産業政策において、何が反省すべき点であったのか、総理の認識を伺います。
 昨年のダボス会議では「リショアリング」「フレンドショアリング」という言葉が飛び交いました。サプライチェーンを自国内あるいは友好国内に構築することの重要性を指摘した言葉です。
 リチウムイオン電池を例に申し述べます。2021年実績をみると、リチウム鉱石の53%をオーストラリアが産出し、最終製品の電池は77%を中国が生産しました。オーストラリアはコストの観点から製品製造に踏み込んでいませんでしたが、昨年来、採掘大手IGO等の企業が自国内に電池メーカーを設立し、製品製造に進出しています。自動化やAI活用とともに、政府の支援がこうした戦略を可能にしています。
 慌てた中国はオーストラリアに出資して合弁企業を作る動きに出ていますが、日本こそ出資や技術移転でオーストラリアと連携すべきではないでしょうか。まさしくフレンドショアリングです。
 政府は世界各国の動向をどのように情報収集し、国家戦略にどのように活かしているのか、その実情、及び調査・分析・戦略立案等における課題について、総理の認識を伺います。
 本件について、政府としてオーストラリアと何か交渉をしているのか否か、事実関係を総理に伺います。
 「新しい資本主義」の中では、物価高対策に躊躇なく取り組むと述べていますが、電気代が2~3割増加することが予想される中、国民民主党は予備費を使って家計の電気代を一定金額減額する「電気代インフレ手当」を実施してはどうかと考えています。総理の判断を伺います。
 「構造的な賃上げ」に関して「リスキリングから転職まで一気通貫で支援する仕組み」と述べていますが、具体的にどのような仕組みをイメージしており、それが「構造的な賃上げ」につながる理屈はどういうことなのか、総理の考えを伺います。
 また「企業にはそうした個人を受け止める準備を進めていただきたい」と述べているのはどういう意味でしょうか。合わせて伺います。
 さらに本年6月までに「日本企業に合った職務給」の導入方法を類型化し、モデルを示すと述べています。日本企業の人事給与体系が世界標準の競争についていけない構造要因のひとつになっている面がある中、あえて「日本企業に合った職務給」と述べているのは、何を意味しているのでしょうか。かなり難解です。総理の説明を伺います。
 GX推進のための「成長志向型カーボンプライシング」に関して、国が複数年の計画を示し、予見可能性を高め、期待収益率を見通せるようにして企業投資を誘引すると述べています。
 ここでは期待収益率の水準が問題になります。日本の場合、超低金利状態があらゆる産業分野で低い期待収益率を許容することにつながり、結果的により金利の高い欧米諸国や中国における競合ビジネスの期待収益率にかなわないという構造をもたらしています。
 次期日銀総裁に求める政策の内容とも絡め、この日本の構造問題をどのように改善するのか、総理の考えを伺います。
 DXに関しては、マイナンバーカードの利用促進と関連づけ、「スマートフォン一つあれば、診療券も保険証も持たずに医療機関の受診や薬剤情報の確認ができるようになる」と述べていますが、今やそのスマホの85.7%が中国からの輸入に依存しています。
 さきほど「総合的な安全保障」のことを申し上げましたが、このような社会的インフラツールも「総合的な安全保障」に関わります。
 スマホを中国からの輸入に依存する状態で、社会保障制度のプラットフォームや国民の個人情報管理を発言のような仕組みにすることのリスクをどのように考えているのか、総理の認識を伺います。
 所信では、日本発、世界初のイノベーションを生み出すために、中長期的かつ国家戦略的な視点をもって、半導体等の戦略分野への研究開発投資を支援すると述べました。
 半導体ICの生産工程における重要技術であるEUV、集積回路3次元・積層化に関わるFinFET、シリコンに代わるカーボンナノチューブ等、いずれも日本人が早々と発明、発見した技術や素材です。しかし、日本企業はこれを活用できず、今や外国企業を追随する立場です。
 日本の企業や産業がこうした失態を繰り返すことについて、民間側の原因、政府側の原因、アカデミアの原因、その他の原因について、総理の認識を伺います。

(子ども・子育て政策)
 「子ども・子育て政策」について伺います。総理が日本の給料が上がっていないことを認めたことに続き、「子ども・子育て政策」に重点を置いたことは評価したいと思います。
問題は、実際に「賃金が上がらない構造」や「子どもを産み育てにくい社会」を変革できるか否かです。「異次元の政策」ではなく、「地に足のついた現実的な政策」で具体的成果をあげることを期待します。
 「子ども・子育て政策」の第1の柱である経済的支援の中心になるのは児童手当拡充です。国民民主党は「子ども・子育て政策」の受益者は子ども自身であり、所得制限を設けるべきではないと考え、今国会でも所得制限撤廃法案を三度提出します。
 所得制限撤廃とともに、給付水準引上げ、高校生までの対象拡大、多子世帯への上乗せの4点について、これらを行う意思があるか否か、総理に伺います。
 政府は昨年10月、一定以上の所得世帯への特例給付を打ち切りました。打ち切り見直しも含め、総理の考えを伺います。
 第2の柱、サービス拡充については、保育士の配置基準見直しや処遇改善等の積年の課題解消、ゼロ歳児から2歳児に焦点を当てた支援拡充、幼児教育の体制整備等が急務です。それぞれについて、総理の方針を伺います。
 第3の柱、働き方改革について、男性の育児休業取得促進、女性の産休・育休復帰後の処遇確保、男女を問わず長時間労働の是正、自営業者やフリーランスなど企業内諸制度を利用できない勤労者向けの対応等について、具体的にどのような対策を想定しているのか、総理に伺います。
 所信では「各種の社会保険との関係」「若者世代の負担増抑制」という表現を使ったうえで、「勤労者皆保険など社会保障制度を支える人を増やし、能力に応じてみんなが支えあう、持続的な社会保障制度の構築」に取り組むと述べています。
 これは、財源として現在の社会保険制度の活用を想定しているのか、医療・介護・年金・雇用以外の5番目の社会保険創設を想定しているのか、方針を伺います。
 仮に前者の場合、それが現在の社会保険制度の持続可能性向上につながると考えているのか、それはどのような論理構造でそうなると考えているのか、総理の認識を伺います。
 国民民主党は「子ども・子育て政策」の恒常的な財源確保が重要だと考えています。党内の社会保障調査会、及び新たに設置する財源構造調査会(仮称)で検討を進めます。またその内容は、既に示している日銀保有国債の一部永久国債化を含む、財政金融政策全体の現実的かつ不可避の工夫と密接不可分の関係にありますので、限界に直面している財政政策と金融政策のあり方も視野に入れて、検討を進めます。
 そうした手法も駆使しつつ、可能であれば「子ども・子育て政策」のための基金創設が適当と考えますが、総理の認識を伺います。

(包摂的な経済社会づくり)
 所信の「包摂的な経済社会づくり」では、地方創生の取組としてデジタル田園都市国家構想を謳い、「光ファイバー、5G等の整備を進めつつ、全国津々浦々で、本格的なデジタル実装を進めます」と述べました。
 昨年秋、KDDIがスペースX社のスターリンクと契約しました。携帯基地局とトランクラインの間の光ファイバーが設置されていない地域でのサービス拡充を進めるようです。
 スターリンクのようなコンステレーション衛星は日本も国家として保有すべきインフラです。イーロンマスクは既に約5000機の衛星を投入済のうえ、2025年までに42000機の配備を終えると発表しています。
 また、ウクライナがスターリンクを活用することで、ロシアの侵攻や通信網破壊に耐えていることは周知の事実です。
 日本でも数社のスタートアップ企業がコンステレーション衛星構築に向けて奮闘しています。
 地方創生やデジタル田園都市国家構想のためにも、また国民民主党が主張する「総合的な安全保障」のためにも、日本は国自らコンステレーション衛星を構築運用するか、あるいはそれを目指す日本企業を支援すべきと考えます。支援の現状と総理の考えを伺います。

(災害対応・復興支援)
 「災害対応・復興支援」に関連し、国民民主党は、特定非常災害の損失に係る雑損失及び純損失繰越期間の5年への延長とともに、甚大被害の場合には、さらに弾力化が可能な税法上の措置を講ずることを目指しています。ご賛同いただけるか否か、総理の認識を伺います。

(新型コロナ)
 「新型コロナ」対策に関して、当該感染症の5類移行に賛成しますが、当分の間、ワクチン接種については公費で行うべきと考えます。
 これまで国が購入したワクチンの種類と総数、及び使用量、在庫量、及び5類移行後の公費負担について、総理の考えを国民の皆さんにご説明願います。

(外交・安全保障)
 「外交・安全保障」では、「条件を付けずに金正恩委員長と直接向き合う決意」を述べられました。拉致被害者の帰国、軍事的威圧緩和のために、首脳間の直接交渉は重要と考えます。いつ、どのような形で首脳会談を行う計画であるのか、伺います。
 また、この項の中で「グローバルサウス」という言葉を使うとともに、「開発協力」を謳っています。「グローバルサウス」は一般的に「途上国」と同様の意味で用いられていますが、国連は77の国と中国を「グローバルサウス」に分類しています。
 中国向けODAは各般の議論や中国の国情を鑑み、2022年3月にようやく終了しましたが、所信の文脈は、中国との新たな開発協力を意味しているのでしょうか。
 「グローバルサウス」の定義とともに、中国に対する開発協力の方針について、総理の考えを伺います。

(憲法改正)
 「憲法改正」は「先送りできない課題」と述べましたが、総理が考える「先送りできない課題」の内容、及び発議等について、総理の認識を伺います。

 最後に、漸増する社会保障費を筆頭に、防衛費、子ども・子育て対策費など、財源をどのように確保するかが日本にとって死活的な課題であることは論を待ちません。
 しかし、今は増税で財源を確保する経済環境や産業の状況にはないこと、「成長なければ財源なし」であることを申し上げ、国民民主党新緑風会としての質問とします。

以  上