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ニュースリリース

【衆本会議】玉木代表が岸田総理の施政方針演説に対する代表質問で登壇

 玉木雄一郎代表(衆議院議員/香川2区)は26日、衆議院本会議において、岸田総理大臣の施政方針演説に対する質疑を行った。全文は以下の通り。

第211回国会における岸田内閣総理大臣施政方針演説に対する代表質問

令和5年1月26日
玉木雄一郎(国民民主党・無所属クラブ)

(今年こそ「賃上げ“実現“国会」に)
 国民民主党代表の玉木雄一郎です。昨年の代表質問で私は議場の皆さんに、この国会を「賃上げ国会」にしようと呼びかけました。あれから一年、国民民主党は、今年の通常国会こそ「賃上げ“実現“国会」にしようと改めて訴えます。米国でも欧州でも韓国でも賃金が上がっています。なのに日本だけ25年以上賃金が上がっていません。国民民主党は、この賃金デフレこそが日本経済の最大かつ本質的な課題と考え「給料が上がる経済の実現」を公約として訴え続けてきました。
 そして、昨年2月のロシアのウクライナ侵略以降、原油価格高騰などにより30年ぶりの物価高となっています。であれば、賃金も30年ぶりの上昇にしないと国民の生活は苦しくなるばかりです。賃金が上がらないと消費も落ち込み、年金も上がりません。「結局、問題は賃金なのです。」だからこそ、労使のみならず政府もあらゆる政策を動員して賃上げの流れを支援すべきです。もはや賃上げは、単なる個別企業の労使交渉という枠を超えた日本経済最大の課題なのです。

(「賃上げ」の基本認識)
 まず、賃上げの必要性について岸田総理の基本認識を伺います。総理のいう「構造的賃上げ」は重要ですが、あくまで中期的な目標です。問われているのは今年の賃上げです。今年の賃上げを実現するために、総理は何をするのか、特に、企業の9割を占める中小企業、とりわけ労働組合のない中小企業の賃上げをどのように実現するのか、また、非正規労働者や派遣社員の賃金をどう上げるつもりか、具体的にお答えください。
 加えて、賃上げのためには、適正な価格転嫁が必要ですが、下請けや中小企業はなかなか価格転嫁ができません。価格転嫁をどのように円滑に進めるのか。また、価格転嫁によって懸念される家計の消費減少対策をどう考えているのか、その具体策を総理に伺います。

(「政労使会議」を今すぐ開催)
 今週月曜に経団連の会長と連合の会長が会談しました。日本にしみついたデフレマインドを払拭するために賃上げが必要との認識で一致したそうです。ここに政府のトップである総理もコミットすべきです。労働組合のない企業も含め、物価上昇を上回る賃上げが必要とのメッセージを目に見える形で打ち出すことが重要です。そのため、政府・労働界・経済界の代表が一堂に集う「政労使会議」を、岸田総理が呼びかけて、今こそ開催しませんか。国民民主党としても、賃上げに向け政治が取り組むべき以下10の政策を具体的に提案します。

新「アコード」には名目賃金上昇率目標を)
 まず、金融政策について。岸田総理は、黒田総裁の後任総裁の下で金融政策を変更すべきと考えていますか。民間銀行の住宅ローンの固定金利は既に上昇しており、急に金融を引き締めると、民間の投資と消費を冷やし賃上げの妨げになります。金融政策の変更に当たっては、雇用や名目賃金上昇率に十分配慮すべきです。国民民主党は、政府と日銀で合意する新たな協定「アコード」に、名目賃金上昇率5%程度の目標を掲げるべきと考えますが、総理の見解を伺います。

(今は増税の時期ではない)
 財政政策についても、雇用や賃金上昇率に十分配慮して決定する必要があります。国民民主党は、名目賃金上昇率が安定的に5%程度を超えるまで、財政の引き締め、とりわけ増税は行うべきではないとの立場です。たとえ将来のことであっても、現時点で増税の話を持ち出すことは賃上げにマイナスの影響を与えることになります。増税議論の賃上げへの影響について、総理はどう考えていますか。また、増税を決めた場合には、その実施の前に選挙で民意を問うのが筋だと考えますが、併せて伺います。

(電気代のさらなる値下げ)
 電力各社の発表によれば、4月から電気代が3〜4割上がる見込みです。電気代高騰に苦しむ学生や、8割節電したのに電気代は4割も増えた中小企業など、悲鳴のような声がネットにも溢れています。政府の支援策で下がるのは約2割なので、4月以降は電気代が差し引き1〜2割上がります。賃上げの原資を確保し、また、価格転嫁の家計への影響を和らげるためにも、電気代をさらに値下げすべきと考えます。予備費を活用し、燃料費調整の深掘りや再エネ賦課金の徴収停止などで、さらに1割程度電気代を引き下げませんか。総理の見解を伺います。

(特別高圧の電気代値下げ)
 クリーンルームがある半導体製造拠点や電炉のある事業所、また大型ショッピングモールなど、大量の電力を消費する工場や事業所は、2万ボルト以上の特別高圧の電力を利用していますが、特別高圧は政府の支援策の対象外となっています。中には、10億円単位で電気代がアップするところもあり、賃上げの原資が電気代に消え賃上げを困難にしています。予備費を活用して、特別高圧も電気代値下げの対象に追加しませんか。総理の決断を求めます。

(賃上げはエネルギーの安定供給が大前提)
 我が国の化石燃料依存度が8割を超え、そのほとんどを輸入に依存している現状は、エネルギー安全保障上、極めて脆弱です。昨年の貿易収支は過去最大の約20兆円の赤字。多額の富が国外に流出し賃上げに回らないのも、化石燃料の大量輸入が大きな原因です。持続的な賃上げの実現にとっても、エネルギー安全保障と電力の安定供給が大前提と考えますが、総理の基本認識を伺います。
 また、電力需給ひっ迫の改善と電気代を下げるためには、原子力発電所の早期再稼働が必要です。とりわけ東日本における安価で安定した電力供給のためには、柏崎刈羽原発の再稼働が急がれます。そのために国が全面に出て具体的にどのような役割を果たすのか、総理の見解を伺います。

(電力システム改革・電力自由化の検証)
 資源価格高騰により、電力自由化によって参入した新電力の撤退が相次ぎ、電力会社との契約ができない「電力難民」が続出しました。また、政府は、火力から再エネに電力システムを構造転換すると言ってきましたが、いま綱渡りの電力需給を支えているのは老朽化した火力です。電力システム改革は有事への備えを想定していたのか、自由化で本当に電気代は安くなったのかなどを検証し、電力の安定供給の観点から必要な見直しを行うべきです。また、供給力確保義務の徹底など、新電力への適切な事業規律の確保が必要と考えますが、総理の見解を伺います。

(「インフレ手当」支給)
 民間企業の中には独自に「インフレ手当」を支給するところも出てきていますが、これは本来国がやるべき対策です。国民民主党は参院選公約で一律10万円の「インフレ手当」給付を訴えましたが、物価上昇による消費減少対策として、また、企業の賃上げ原資確保のためにも、国が「インフレ手当」を支給すべきです。なお、電子マネーやQRコード決済などキャッシュレスを活用し、期限付きポイントで給付すれば、貯蓄に回ることもなく、地域の消費活性化効果もより高まります。総理、いかがでしょうか。

(消費税減税と社会保険料減免)
 賃金が上がっても、税金や保険料が高くて手取りが増えないとの声も多く聞きます。物価の上昇は、事実上、消費税率アップと同じ効果を生み出します。実際、消費税収は増えています。名目賃金上昇率が5%程度に達するまでの間、消費税を減税してはどうですか。また、正社員を雇ったり、非正規社員を正社員化した場合に、事業主が負担する社会保険料の減免措置を講じるべきと考えますが、総理の見解を伺います。

(保育士、介護士、教員、公務員の給料アップ)
 国が賃上げを主導するのであれば、まずは、公定価格である保育士や介護士の待遇をさらに改善し、公務員の給料も上げてはどうでしょうか。また、公立学校の先生が置かれている状況はさらに厳しく、給特法という法律によって給料の4%分が上乗せされる代わりに時間外勤務手当がもらえない仕組みとなっています。総理は給特法を見直す必要があるとお考えなのか、お答えください。

(製薬業界の賃上げのために薬価の毎年改定見直しを)
 総理も施政方針演説でエーザイの認知症治療薬を絶賛されました。しかし、毎年薬価を引き下げていく今の仕組みのままでは、国内で優れた新薬が出ててこなくなる可能性があります。また、薬の原材料価格も高騰する中、流通も含めて製薬業界は厳しい状況に直面しており、今のままでは賃上げは難しい状況です。製薬業界での賃上げを促すためにも、薬価の毎年改定は見直すべきではないですか。総理の見解を伺います。

(「年収の壁」の見直し)
 昨年の臨時国会の代表質問でも見直しを提案した、年収103万円、130万円などの「年収の壁」について、総理が施政方針演説で制度の見直しを明言されたことは評価します。では具体的にどう見直すのか、配偶者扶養控除の廃止も含めて考えているのか、分かりやすくお答えください。

(異次元の少子化対策とは)
 次に、「異次元の少子化対策」について伺います。総理、新しい政策に取り組む前に、まず、これまでの少子化対策は何が間違っていたのか、何が成功したのかを検証すべきではありませんか。また、兵庫県明石市による医療費や給食費などの「5つの無料化」政策は、10年連続人口増加などの実績を出しており、まずこうした政策を、国が全国一律で行うべきです。住んでる自治体によって子育て支援を受けられたり受けられなかったりする「自治体ガチャ」のような状況は、速やかに改善すべきです。

(子育て支援策の所得制限撤廃)
 総理、ある人からこんな相談がありました。「会社から部長への昇格を打診されているが、子育て支援に所得制限があって子ども4人を大学に入れられなくから保留している」と。賃上げが実現したと思ったら、所得制限に引っかかって子育て・教育支援から外れる人が増える。これは総理が目指す方向と矛盾するのではないですか。国民民主党は昨年「所得制限撤廃法案」を国会に提出しました。総理、まずは、児童手当など子育て・教育施策の所得制限撤廃を決断しませんか。賃上げと所得制限撤廃は同時に実現すべき政策です。

(障害児福祉の所得制限撤廃)
 国民民主党は、来週にも、障害児福祉の所得制限撤廃法案を追加で提出します。子育て施策のうち、障害児の特別児童扶養手当など障害児福祉の所得制限は真っ先に撤廃すべきです。総理、せめて障害児福祉の所得制限の撤廃を決断しませんか。政治の責任で、すべての子どもたちが安心して生きていける希望を作り出そうではありませんか。

(年少扶養控除の復活)
 岸田総理、自民党が野党時代の公約に書いた年少扶養控除の復活はしないのですか。民主党政権が子ども手当を導入した際「控除から手当へ」ということで年少扶養控除は廃止されましたが、昨年10月に61万人の子どもに対する特例給付も廃止されました。370億円の財源が浮きましたが、控除も給付もなくなり、まさに「子育て罰」という状況です。せめて年少扶養控除だけでも復活すべきではありませんか。財源もあります。「相続人なき遺産として国に帰属したお金」は、昨年度647億円に達し10年で倍増しています。こうした資金を財源として活用すればすぐにできます。

(N分のN乗による多子支援の導入)
 国民民主党は、フランスの例を参考に、いわゆる「N分N乗方式」の導入を提案しています。昨日、茂木幹事長も言及されましたが、子どもの数が多ければ多いほど世帯全体の所得税の負担が少なくなる、この「N分のN乗方式」の導入を、政府としても検討すべきと考えますが、総理の見解を伺います。

(給付型奨学金の対象拡大)
 先の臨時国会で「外国人留学生の支援もいいが、日本人の学生をもっと助けて欲しい」という学生の声を紹介して質問したところ、総理は「学生への経済的支援の充実を進めてまいりたい」と答弁されました。しかし、文科省の有識者会議は、給付型奨学金の対象拡大を「3人以上の子どものいる多子世帯や理系だけ」に限定する報告書をまとめました。年収要件などをもっと幅広く緩和し、次元の異なるレベルに対象を拡大すべきではないでしょうか。

(「教育国債」発行による予算倍増)
 「異次元の少子化対策」というのであれば、予算倍増の財源調達手段にこそ、従来とは次元の異なる新しい発想を採り入れるべきです。国民民主党は、教育・科学技術など人的資本形成に資する予算には「教育国債」という新たな国債を充てることを提案し、法案も提出しました。まずは、出世払い型の奨学金などの財源として「教育国債」を発行し、家庭の経済事情に関係なく大学や大学院に無償で通えるようにすべきです。総理、ぜひ前向きに検討していただけませんか。国民民主党は協力します。

(イージス・システム搭載艦などの歳出見直し)
 国民民主党は、必要な防衛費の増額には賛成ですが、「イージス・システム搭載艦」については、その有用性を厳しく検証すべきとの立場です。もともと海上自衛隊の負担を減らすためにイージス・アショアを陸上に配備するはずが、導入をめぐるドタバタでまた海に戻ることになりました。海上自衛隊の負担はかえって増えることが予想されます。迎撃能力にも疑問の残るイージス・システム搭載艦について有用性を厳格に検証すれば、必要な防衛費をもっと圧縮できるはずです。

(外為特会の積極活用)
 国民民主党は、外為特会の運用益の活用を繰り返し提案してきたので、防衛費増額の財源の一部として活用することになったことは評価をしますが、まだ不十分です。変動為替相場制のもとで、為替介入のためだけに150兆円を超える多額の外貨資産を保有する必要性は乏しくなっています。むしろ、外為特会は、安定財源確保と戦略的投資のための国家ファンドに生まれ変わるべきです。資産サイドの運用を多様化、高度化すればシンガポールの国家ファンド「テマセク」並の年率7%程度の高いリターンも可能です。3兆円程度の毎年の剰余金を7〜8兆円程度に倍増させることも可能です。国こそ「資産運用収入そのものの倍増」を実現すべきです。総理の見解を伺います。

(Web3.0推進で所得税増収)
 日本では暗号資産の売買益に雑所得として最高55%の税率が課せられるため、多くの富裕層が海外に暗号資産を移転しています。今、ビットコインやアルトコインなど暗号資産の世界市場規模は230兆円とも言われており、このうち日本人が1割程度、約20兆円を保有している可能性がありますが、国内の暗号資産交換業者のビットコインの預託総量は0.6兆円しかありません。そこで、暗号通貨の売買益に20%の分離課税を導入することで国内に20兆円規模の資産を呼び戻すことができれば、4〜5兆円の所得税の税収増が見込めます。Web3.0を活用したスタートアップ企業を育て、税収を増やすためにも、暗号資産の売買益に20%の分離課税を導入すべきです。総理の考えを伺います。

(「自分の国は自分で守る」)
 防衛費を倍にしても、その分、米国からの高価な防衛装備品の購入が増えるだけでは、「自分の国を自分で守る」力は強化されません。一つの戦闘機を開発するのに8,400社の企業が関わるとも言われますが、機微な技術であればそのうちの1社が抜けても開発できなくなります。ましてや他国に買収されることは避けなければなりません。総理は施政方針演説で「防衛産業の基盤強化や装備移転の支援」を進めると述べ、防衛省も法案を提出するとのことですが、こうしたリスクへの対応は十分に取られていますか。
 また、防衛産業の強化と同時に、国内法の整備が急がれます。国民民主党は、経済安全保障体制を強化するための「セキュリティ・クリアランス法案」と、積極的サイバー防御を可能とするための「サイバー安全保障基本法」を議員立法として提出予定ですが、政府としてこうした法案の提出はいつ頃を考えているのか、総理の見解を伺います。

(水田活用直接支払交付金)
 一昨年12月、農林水産省は水田活用直接支払交付金の「5年に一度の水張り」要件を発表しましたが、転作を進めてきた全国の農家に不安が広がっています。このままでは離農と耕作放棄地が増え、食料安全保障にとっては明らかにマイナスです。総理、水田活用直接支払交付金は地域の事情に応じて、「5年に一度の水張り」要件を柔軟に緩和すべきではありませんか。

(憲法改正)
 国民民主党は昨年、緊急事態条項に関する包括的な憲法改正の条文案を各党に先駆けて取りまとめました。緊急事態においても制約してはならない権利を定めたり、国会機能を維持する規定を設けるなどバランスのとれた内容となっています。イデオロギー対立が起きにくい緊急事態条項、とりわけ議員任期の延長規定についての条文案で与野党の合意を得ることが、憲法改正に向けた最も現実的かつ最短のアプローチと考えますが、岸田総理の考えを伺います。

(これからも「政策先導」「対決より解決」)
 この通常国会に、内閣提出法案として「孤独・孤立対策推進法」が提出されます。国民民主党が、孤独対策と孤独担当大臣の創設を公党として初めて公約に掲げたのは2019年の参院選でした。最初は「ユニーク政策」と揶揄されましたが、あれから3年半。ついに、政府提出法案に至ったことは感無量です。内容も国民民主党案とほぼ同じです。政府、与党はじめ関係者のご尽力・ご協力に感謝申し上げます。
 私たち国民民主党は、これからも必要な政策を先手先手で打ち出し政策を先導していきます。所得制限撤廃法案が典型ですが、その他にも、ヤングケアラー支援を強化するための法案やカスタマーハラスメント対策についても具体的な政策を示し実現につなげます。もちろん、今国会最大の課題である賃上げの実現にも「対決より解決」の姿勢で建設的な議論をリードしていきます。「賃上げ“実現“国会」のため、そして、所得制限撤廃など子育て支援の拡充のため与野党を超えた同僚議員の協力をお願い申し上げ、国民民主党を代表しての質問といたします。