2022.03.31-国会

【衆憲法審】玉木代表が緊急事態条項の基本的な考え方ついて発言

 玉木雄一郎代表(衆議院議員/香川2区)は31日、衆議院憲法審査会に出席し、緊急事態条項の基本的な考え方について発言を行った。内容は以下の通り。

憲法審査会発言要旨

 今週は定例日に憲法審査会が開催されたことを歓迎したい。また、緊急事態条項を中心としてテーマを絞って議論することには大変意義あると考える。具体的な議論の成果を出せる運営を期待したい。

 改めて、国民民主党の考える緊急事態条項についての基本的考え方を述べておきたい。それは「緊急事態条項自体が危ないのではなく、まともな緊急事態条項がない中、曖昧なルールの下での行政府による恣意的な権力行使によって、憲法上の権利が制限されうる状態こそが危ない」ということだ。

 私たち国民民主党の考える緊急事態条項は、「行政の簡易・迅速な権力行使」を可能とする“権力行使の容易化条項“としての緊急事態条項ではなく、むしろ「公共の福祉」などの漠たる規定を根拠として行政府による権力の濫用や人権侵害の危険性が高まること、また、緊急事態においては国全体が正気を失いがちになるという歴史の教訓に鑑み、これに対する立法や司法による統制を明示する“権力行使の統制条項“としての緊急事態条項である。

 ここで、前回紹介した欧州評議会に置かれた「ヴェニス委員会」の見解を、改めて説明したい。ヴェニス委員会は、「憲法に明確な緊急事態権限について定めることこそが、人権保障や民主主義、法の支配にとって有益だ」と主張しており、特に、コロナ禍を経て2020年6月に策定された報告書の中で、「緊急事態と緊急事態権限に関する基本的な規定を憲法に盛り込むべきであり、その中に、いかなる権利が制限され得るのかを定めた条項(いわゆる「デロゲーション条項」)に加え、いかなる権利は制限が許されず、どんな状態にあっても尊重されなければならない権利(「デロゲートできない権利」)を明確に示す条項を含むべきである」としている。

 私たち国民民主党は、ヴェニス委員会が指摘しているように、政府による緊急権の濫用を防止するためには、行使できる状況、効果、発動に関する規定の本質的部分は明確に憲法に規定すべきと考える。なお、前回お示しした、ケネス・マッケルウェイン東大教授の研究では、1789年から2013年までに制定された約900にのぼる憲法をデータ分析したところ、2013年時点で、93.2%の憲法において緊急事態条項を含まれており、緊急事態条項は憲法における最も共通した項目の一つとなっている。

 だからこそ、緊急時にこそ、憲法の規範性を生かすことが重要である。国民民主党が考える“権力統制条項“としての緊急事態条項においては、権力統制ツールとして、大きく以下の2つのカテゴリーの統制を用意したい。

①国会の事前承認を求めるなどの「手続的統制」

②絶対に制限してはならない人権制限の限界を明示するなどの「内容的統制」

最初に、緊急事態の宣言発令の要件と手続きについて述べたい。まず、行政府による権力濫用を防止する観点から、緊急事態の要件は限定列挙すべきだ。具体的には、

①外国からの武力攻撃

②内乱・テロ

③大規模自然災害

④感染症の大規模まん延

の4つのカテゴリーを原則とすべきと考える。さらに、単にこれらの事態が事実として発生するだけでなく、「通常の統治機構の運用によっては緊急事態の収拾が著しく困難であるとき」という要件を加重すべきである。

 宣言を発令する際の手続きとしては、原則国会の事前承認を求め、例外的に事後承認を認めることとしたい。この点は自民党の2012年改憲草案にも明記されており、建設的な合意がつくれるはずだ。

 次に、緊急事態が宣言された時の「効果」における、手続的統制と内容的統制について述べたい。

 手続的統制の第一として、国民民主党では、国会機能の維持を重視している。

 具体的には、国会開会時の閉会制限と閉会時の召集義務を課している。また、緊急事態宣言下での衆議院の解散制限の規定を考えている。これは、緊急事態の時であっても、いや、緊急事態の時だからこそ、国会の立法機能や行政監視機能を可能な限り維持しようとする趣旨である。解釈で認められたオンライン出席について、明文で規定することも検討したい。

 加えて、任期満了時に緊急事態が宣言された場合の議員任期の延長と選挙期日の特例に関する規定である。これは、前回も申し上げたように最優先で議論するテーマだと考える。

 さらに、ドイツにおけるミニ国会のような「両院合同委員会」による国会機能の代替についても議論している。

 手続的統制の第二として、裁判所による統制が必要だと考える。

 具体的には、まず、緊急事態宣言の要件が満たされているのどうかの「要件充足性」について最高裁が勧告できるようにし、恣意的な宣言発令を抑制できるよう検討している。また、緊急事態宣言発令中に採られた法令、命令、条例及び規則等の合憲性について、最高裁が集中的に判断ができる規定を設け、統治行為論で逃げられないようにすることで、最高裁が事実上の憲法裁判所しての機能を発揮できるようにしている。つまり、緊急事態においては、立法府に加えて、司法府のチェックが行政府に対して的確に働くよう設計している。

 続いて、緊急事態宣言の「効果」に関する「内容的統制」について概要を述べたい。

 内容的統制の第一として、いついかなる時も、国会機能を維持することが大前提であるが、それでもなお、①国会による法律制定・予算議決を待ついとまがないときには、②あらかじめ法律で定めるところにより、法律で定めるべき事項を定める政令や財政支出等を可能とする規定を創設したい。災害対策基本法で、施設や土地の収用、警戒区域からの退去命令、車両撤去などができると規定されているように、できるだけ法律で事前に規定しておくことが重要だ。

 内容的統制の第二として、「人権制限の限界」を明記することが重要だと考える。具体的には、「公共の福祉に基づく必要かつ合理的な限度での人権制限」を前提とした上で、それでも踏み込んではならない「絶対的禁止」の部分について一般的、個別的に規定すべきである。いわゆる「デリゲートできない権利」に関する規定である。

 まず、ドイツ憲法のように、「各人権の本質的内容」の絶対的制限禁止を規定するとともに、自由及び権利の制限は「必要最小限のものでなければならない」旨も規定する。その上で、判例や学説の多数の見解等を踏まえ、奴隷的拘束、思想・良心・信教の自由の内心部分への制約や、検閲、拷問・残虐な刑罰の絶対的禁止を規定することを検討している。例えば、「内心の自由の侵害は、絶対にこれを禁ずる」などの明文の規定を設けてはどうか。

 最後に、スペインやフランスの憲法を参考に、緊急事態宣言の発令中は、憲法改正、発議、国民投票ができないとの規定も設けることとしたい。なぜなら国の基本法である憲法は落ち着いた環境の中で議論し手続きを進めるべきと考えるからである。

 こうした全体像を視野に置きつつ、国民民主党としては、特に、「緊急事態の定義」と「議員任期の特例」についての議論をまず急ぐべきだと考える。なお、任期の特例を創設するに当たっては、憲法54条2項の参議院の緊急集会を、解散時だけでなく任期満了時にも内閣は開催を求めることができるのか、有識者に出席を求め、その解釈を本審査会で確定することを提案したい。

 以上のような緊急事態における統制の具体的内容について現在党内で議論しており、いずれ条文の形でお示ししたい。いずれにせよ、緊急事態条項については議論すべき論点が多々あるので、ことの緊要性に鑑み、引き続き緊急事態条項に絞った集中的な審議を求めたい。そのためにも、憲法審査会を毎週開催することを改めて求めて、発言を終える。

以上

<参考>国民民主党「憲法改正に向けた論点整理」(2020年12月)

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