2022.03.24-国会

【衆憲法審】玉木代表が緊急事態条項について発言

 玉木雄一郎代表(衆議院議員/香川2区)は24日、衆議院憲法審査会に出席し、緊急事態条項について発言を行った。内容は以下の通り。

憲法審査会発言要旨

 今週は定例日に憲法審査会が開催されたことを歓迎したい。また、緊急事態条項を中心としてテーマを絞って議論することには大変意義があると考える。これからも、言いっぱなしではなく具体的な議論の成果を出せる運営を期待したい。

 改めて、国民民主党の考える緊急事態条項についての基本的考え方を述べておきたい。それは「緊急事態条項自体が危ないのではなく、まともな緊急事態条項がない中、曖昧なルールの下での行政府による恣意的な権力行使によって、憲法上の権利が制限されうる状態こそが危ない」ということだ。

 一般的に流布する「緊急事態条項」のイメージは、「行政府の簡易・迅速な権限行使」を可能とする“権限行使の容易化条項“としての緊急事態条項である。しかし、私たち国民民主党の考える緊急事態条項は、むしろ「公共の福祉」などの漠たる規定を根拠として、行政府による権力の濫用や人権侵害の危険性が高まること、また、国全体が正気を失いがちになるという歴史の教訓に鑑み、これに対する立法や司法による統制を明示する“権限行使の統制条項“としての緊急事態条項である。

 ここで、緊急事態条項に関する国際比較をお示ししたい。これは、ケネス・盛・マッケルウェイン東大教授の研究で示されたもので、1789年から2013年までに制定された約900にのぼる憲法をデータ分析したものだが、

  • 2013年時点で、93.2%の憲法において緊急事態条項を含まれており、今や緊急事態条項は憲法における最も共通した項目の一つとなっていること。(ちなみに、表現の自由は95.5%の憲法に明記されている)
  • 他方で、緊急時における人権保護規定の停止や緩和規定が憲法に盛り込まれている割合は63.7%で、過大な権力を委任することには、特に第2次世界大戦後、慎重になっている傾向があるということ。
  • また、緊急事態が宣言できる状態については、一番多いのが外国からの武力攻撃で64%、次に、内乱で45.6%、次が災害で39.7%で1990年以降、最も急ペースで規定率が上がっていること。
  • その一方、緊急事態を宣言できる状況を法律で定めるとしている憲法は10%に満たないということ。これは、緊急事態を法律で定めると、政府の重大な権限行使を議会の単純過半数で決定できるため、法律に委任することに慎重な態度をとっていると考えられる。

 国民民主党としては、こうした背景も踏まえつつ、行政府による権力濫用を防止する観点から、「緊急事態」は限定列挙すべきとの考えである。具体的には、

  1. 外国からの武力攻撃
  2. 内乱・テロ
  3. 大規模自然災害
  4. 感染症の大規模まん延

の4つのカテゴリーを原則とすべきと考えている。何を緊急事態とするのか、まずこの点について、憲法審査会で議論を深め共通認識を形成したい。

 次に、緊急事態が宣言された時の「効果」についての国際比較を紹介したい。

  • 一番多いのは、22.8%の憲法が規定している。「議会任期の延長」と「解散権の制限」である。
  • 次に規定率が高いのが、緊急事態宣言下の憲法改正(発議)不可の規定である。これが12.5%。
  • なお、法律と同等の効果を持つ政令について定めているのは7.4%にとどまっている。

 こうした点も踏まえ、我が党としても、前回も提案した「議員任期の特例」についての議論をまず急ぐべきだと考える。任期満了時に正常な選挙ができないような事態に陥った場合に、任期の特例延長の規定を創設すべきと考える。この点に関して、憲法54条2項の参議院の緊急集会は解散時だけでなく、任期満了時にも内閣は開催を求めることができるのか、その解釈を本審査会で明らかにすべきことを改めて提案したい。

 次に、ヨーロッパにおける「緊急事態」と「人権保障」について触れておきたい。日本における緊急事態条項の議論については、どうしても日本特有の護憲・改憲論の磁場から離れて行うことが困難であるが、一度、こうした古い構造から離れて議論してみることが必要だと考える。そのための素材として、欧州評議会に置かれたヴェニス委員会の見解を紹介したい。ヴェニス委員会とは、欧州評議会の下に1990年に置かれた憲法問題についての諮問機関である。加盟国に法的助言を行っており、日本もオブザーバー参加している。

 そしてこのヴェニス委員会は、「憲法に明確な緊急事態権限について定めることこそが、人権保障や民主主義、法の支配にとって有益だ」と主張している。特に、コロナ禍を経て2020年6月に策定された報告書の中で、「緊急事態と緊急事態権限に関する基本的な規定を憲法に盛り込むべきであり、その中に、いかなる権利が停止され、いかなる権利は逸脱から許されずいかなる状態においても尊重されなければならないことを明確に示す規定を含むべきである」としているのである。続く2020年10月の報告書でも同様の趣旨が述べられている。

 私たち国民民主党は、ヴェニス委員会が指摘しているように、政府による緊急権の濫用を防止するためには、行使できる状況、効果、発動に関する規定を詳細かつ明確に憲法に規定すべきと考える。

 改めて申し上げたいのは、「緊急事態条項自体が危ないのではなく、まともな緊急事態条項がない中、曖昧なルールの下での行政府による恣意的な権力行使によって、憲法上の権利が制限されうる状態こそが危ない」ということである。

 だからこそ、憲法の規範性を生かすことが重要であり、国民民主党が考える“権限統制条項“としての緊急事態条項を検討する際には、権限統制ツールとして、大きく2つのカテゴリーの統制が必要だと考える。

  1. 原則国会の事前承認を求めるなどの「手続的統制」
  2. 絶対に制限してはならない人権制限の限界を明示するなどの「内容的統制」

 こうした緊急事態における統制の具体的内容について現在党内で議論しているところであり、まとまれば条文の形でお示ししたいと考えている。いずれにせよ、緊急事態条項については議論すべき論点が多々あるので、ことの緊要性に鑑み、次回も緊急事態条項に絞った集中的な審議を求めたい。そのためにも、憲法審査会を毎週開催することを、改めて求めて発言を終える。

 ケネス・盛・マッケルウェイン教授を参考人でお越しいただくことも検討していただきたい。

<参考>国民民主党「憲法改正に向けた論点整理」(2020年12月)

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