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ニュースリリース

【参本会議】矢田副代表が「デジタル改革関連法案」について賛成討論

 矢田わか子副代表(参議院議員/全国比例)は12日、参議院本会議において、デジタル改革関連法案について賛成討論を行いました。討論の内容は以下の通り。

「デジタル改革関連法案」についての本会議討論

国民民主党・新緑風会 矢田わか子

 国民民主党・新緑風会の矢田わか子です。会派を代表して、政府提出、「デジタル改革関連法案」に関し、賛成の立場で討論をいたします。

 わが国では2000年にIT基本法が施行され、電子政府がスタートしました。約20年が経過しましたが、その間、マイナンバー制度が整備され、電子申請システムも構築されたものの、行政の効率化、行政におけるシステムの統合化、そして何よりも国民の行政手続きにおける利便性の向上という点に関し、大きな進展は見られませんでした。

 一方、ICT、IoT、ビックデータ、5G、AIなどデジタル技術は急速に進歩し、産業、経済、そして国民生活の中に様々なハードやシステムが実装され、大きな影響を与えています。

 デジタル技術に関して思い出すのは、私が総合エレクトロニクスメーカーに勤めていたときのデジタルビデオカメラの発売です。1995年、約25年前のことです。海外出張の際に、ビデオカメラを持参しましたが、このビデオカメラは、当時、世界最小最軽量、世界初の手振れ補正機能の付いたものであり、アジア諸国はもとより、欧米諸国の方々からも珍しがられ、「触らせて欲しい」とせがまれました。それほど、わが国のデジタル技術力は先頭を走っていたのです。

 しかしながら、その後のわが国のデジタル分野における競争力の低下は、携帯電話、太陽光発電、半導体製造、ITプラットフォーマーの実情を見れば明らかであります。開発現場の技術者たちは、世界最先端を走り続けるために、命を削る思いで必死に走り続けてきたわけですが、今、何が間違っていたのか、と自問を続けています。やはり、「民間企業の頑張りだけではだめなのだ」、「政府による政策支援、法整備が進まなければ、いくら技術があっても、グローバル競争には勝てない」ということを実感しています。

 一方、行政におけるデジタル化という面を見れば、昨年来の新型コロナウイルス感染症対策において、隣国の中国・韓国・台湾をはじめ、世界のデジタル先進国から大きく遅れていることが明らかになりました。マイナンバーカードの普及率の低迷と複雑なパスワードによる特別定額給付金の窓口申請の混乱、オンラインによる持続化給付金申請システムの不具合、ICT教育の環境整備の遅れ、感染症対策に関わる保健所と医療機関のデジタル化の遅れなど、多くの課題が浮き彫りになりました。これまでの電子政府の取り組みが中途半端なものであった結果と言わざるを得ません。

 今回のデジタル改革関連法案は、内容的に必ずしも満足のいくものではありませんが、一歩前進が見込まれるものと考えます。しかし、審議において、幾つかの課題が明らかとなり、以下、3点の課題に絞って、今後の政府の善処を求めたいと思います。

 第一は、国民のプライバシーに対する不安や懸念にどう対応するかという課題です。この課題は、国民の政府への信頼と深く関連しているものであり、個人情報保護対策を徹底しなければなりません。今回、民間、国、地方、公的部門の全てについて個人情報保護の共通ルール化が図られますが、要配慮個人情報の扱いなどで、より厳しい規制をかけている地方公共団体の条例の趣旨が尊重されること、また、全体を一括して監視、監督する個人情報保護委員会の体制や権限の強化が必須であると考えます。

 第二には、自然災害や感染症流行など、不測の事態への対応能力の向上です。具体的には、迅速な支援金の給付など、安全、安心な暮らしの確保を可能にするために、マイナンバーカードの活用範囲を拡げ、行政が様々なサービスを提供するとともに、行政手続きの簡素化・利便性の向上をはかることが求められます。さらに、今回の新型コロナウイルス感染症においては、感染者の様々なデータを活用し、感染防止やワクチン接種の効率化につなげていかなければなりませんが、利用目的を明確にした個人情報の収集・活用の推進が求められます。

 そして三つ目に税と社会保障の一体改革における公平・公正の確保です。
 今回、国民の預貯金口座にマイナンバーの付番を推進する政府案の方向性については賛成します。しかし、政府案はあくまでも任意の付番になっています。行政の情報管理を効率化し、情報共有により、公正な負担と給付の確保をはかるというマイナンバー制度の目的に照らし合わせれば、本来、全ての預貯金口座にマイナンバーを付番すべきと考えます。
 この点、国民民主党は、衆議院での審議において、金融機関に対して顧客からマイナンバーの提供を受ける義務を規定する修正案を提出しました。具体的には、金融機関がマイナンバーの提供を受けた場合には、預金保険機構を経由して、他の金融機関が管理する顧客の全ての預貯金口座にマイナンバーを付番するという仕組みの導入です。
 金融資産の保有状況は個人のプライバシーに属するものであるため、個人情報保護のための規定を強化した内容としましたが、これによって、コロナウイルス感染症の影響によって雇用を失ったり、生活が激変してしまった方々に、本人の申請がなくても、所得・資産に応じて給付ができる「プッシュ型」の支援が実現することになります。
 同時に、公平・公正な社会保障制度や税制を実現していくために不可欠とされる「所得と資産の的確な把握」が可能となります。今日の税制では、所得や消費に対する課税は厳格に行われていますが、金融資産など資産に対する課税は税率が低く、金持ち優遇税制となっており、その改善が求められています。
 また、各種の支援金や社会保障制度では所得制限がかけられるものが多数ありますが、フローのみで支給・不支給が判断され、結果的に所得が少ない資産家が手厚い給付を受けるという不公平なケースも見受けられます。
 マイナンバーを全ての金融機関に紐付けし、個々人の資産にも配慮した 課税や給付を行えば、格差を是正し、所得再分配機能の強化に繋がる「給付付き税額控除制度」導入の環境整備が進むものと考えます。あらためて、全ての預貯金口座にマイナンバーを付番する制度の導入を求めたいと思います。

 以上、3点を指摘させていただきましたが、その他、積み残された諸課題についても、官民挙げて課題解決に取り組み、わが国がデジタル先進国となるよう政府の政策展開を求めます。

 今後、社会のデジタル基盤が着実に整備され、公的部門においては、行政の効率化と住民サービスへの向上が図られ、また民間部門においては、科学技術の発展、競争力の強化、そして働き方の改革に資する政策が推進されることを期待し、賛成討論といたします。