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ニュースリリース

【参本会議】榛葉幹事長が総理訪米報告について質問

 榛葉賀津也幹事長(参議院議員/静岡県)は21日、参議院本会議において、総理の訪米報告について質問しました。質問内容は以下の通り。

参議院インターネット中継

「米国訪問に関する報告」に対する質問  

【はじめに】  
 私は、国民民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました帰朝報告に対し、菅総理大臣に質問します。
 今回のバイデン大統領との日米首脳会談は、日本を取り巻く安全保障環境において、歴史的な会談となりました。しかしながら、菅総理がバイデン外交の一 番乗りとなったことは評価に値しますが、これらを対日重視の表れと手放しで 喜ぶのは誤りです。バイデン大統領が日米会談を最優先にしたのは、偏に米中対 立の構図の中で、地政学的要因も含めカギとなるのが日本であり、日本が覚悟を もって「同盟の羅針盤」を共有できるかを迫るためです。中でも、安全保障上の リスクは深刻で、台湾海峡や尖閣諸島を含む我が国周辺の軍事的緊張はかつて ないほど高まっています。共同声明に「台湾」を 52 年ぶりに明記したのも、我 が国を「あいまい戦略」から決別させるためにほかなりません。  

【台湾海峡と南西地域の防衛】  
 首脳会談と時を同じくして、岸防衛大臣は陸上自衛隊の与那国駐屯地を視察 しました。日本最西端の与那国島は台湾から 110 ㎞、尖閣から 150 ㎞に位置し 沿岸監視隊 160 名が任務にあたっています。防衛大臣は「国際社会の安定には 台湾の安定が重要である」と訓示し、南西地域の防衛強化を明言しました。「中 国に言うべきことははっきり言っていく」と総理が明言した日米首脳会談に合 わせた防衛大臣のこの行動こそが、菅内閣の覚悟の表れだと認識します。しか し、同時にそれは、かつて西欧の同盟国が「米ソ冷戦」の最前線に立たされたよ うに、今度は日本が「米中対立」の第一線に立たされることを意味すると思いま すが、総理のご認識を求めます。  

  米国のデービッドソン・インド太平洋軍司令官は今年3月9日の議会証言で、 インド太平洋の軍事バランスは極めて厳しい状況にあり、中国が一方的に現状 変更を試みるリスクが高まっている、台湾への脅威は今後6年以内に明白にな ると危機感を示しました。米国防省の調べでは 4 年後の 2025 年には中国軍の戦 闘機は米軍の 8 倍、空母は 3 倍、潜水艦は 6 倍、戦闘艦艇も 9 倍に増えるとさ れています。つまりは、2027 年までに中国が台湾を侵攻する可能性があること を示唆したのです。  

 更に近年、我が国固有の領土である尖閣諸島周辺において、中国海警船などが 独自の立場を主張し領海に頻繁に侵入、日本漁船を追尾するなど、主権の侵害を 繰り返しています。本年 2 月 1 日には海警法を施行させ、海警局は準軍隊組織 へと変容し、中央軍事委員会の指揮の下、武器使用を含む防衛作戦を遂行するこ とが可能となりました。専門家からは、中国が尖閣諸島を簒奪する計画の実行段 階に入ったと警鐘が鳴らされています。総理のご認識をお伺いします。  

 中国は、日本の事情や法解釈に沿った行動は取りません。日本にとっては「主権の侵害」であっても、中国にとっては、たとえそれが国際法に反する暴挙であ っても「主権の回復」なのです。目的実現のためにすべての手段を採る相手にど う対処するのか、現実的な具体策を検討すべきです。厳しい状況下でも、海上保安庁は高い士気を保ち、日々最善を尽くしていただ いていることに敬意を表します。しかし、中国の可能行動に対し、現在の海保に 与えられた権限で日本の主権を本当に守りきれるでしょうか。例えば、現行法に よる海保の中国船への対応は、警察権に基づくものに限られています。中国の海 警船は 76ミリ機関砲を搭載し、1 万トン級の船舶も確認されています。もはや軍艦です。また、現行では相手の水中侵攻上陸や空からの降下着陸には対応できません。日本の手の内を研究している中国は、集団漁船や海上民兵などを使って「グレーゾーン」を突いてくる可能性が大です。海上保安庁に求められる任務と 実態の乖離を認識し、海保、国境離島警備隊、そして自衛隊との連携のシームレ ス化が極めて重要です。総理、海保の任務実態への認識とシームレス化への具体 的な対応策をお示しください。  

 今年の夏までに米国は、世界的な米軍の配備体制を見直す Global Posture  Review(GPR)を発表します。2006 年にライス国務長官・ラムズフェルド国防長 官+麻生外務大臣・額賀防衛庁長官の「2+2」で承認された在日米軍のための 「日米ロードマップ」から 15 年、また、在日米軍再編の内、沖縄県内における 土地返還の工程を示す「統合計画」から 8 年が経過しました。当時は世界の関心 が中東やアフガニスタンに集中していましたが、今や国際情勢が一変していま す。沖縄の基地負担軽減のためには「統合計画」実施は必須です。他方、激変す るパワーバランスや中国の拡張主義を見れば、必然的にロードマップの中身や 行程が変わってくるはずです。“GPR”の作成と並行して、日米がより連携を密に、 新たな「日米ロードマップ」を検討する段階に入っていると考えますが、総理のご認識をお伺いします。  

【サプライチェーンの脱中国依存】  
 「米中の新冷戦」と叫ばれていますが、かつての「米ソ」と決定的に異なるのが 経済です。米ソの冷戦時代と異なり、米中、日中ともに経済的な相互依存は広範 囲で深層的です。そのことをまざまざと認識させられたのが今回の新型コロナ のパンデミックでした。マスクやガーゼ、医薬品や医療用防護服ばかりか、日用雑貨から自動車部品に 至るまで日本のサプライチェーンの過度な中国依存が露呈しました。以来、多く の業界で、生産拠点の国内回帰などでサプライチェーンを短くしたり、拠点を ASEAN 諸国に分散したりするなどの多元化を進めています。しかし、中国の産業 集積は非常に厚く、中国に代替する国を見つけるのは容易ではありませんし、市 場としての中国の重要性は全く変わらないなど、厳しい現実に直面しています。  

 又、深刻なのはレアアースなどのレアメタルの分野です。レアアースは脱炭素 に関連する素材としても需要が急激に高まっています。かつて 9 割あったレア アースの対中国依存率を、この 10 年でなんとか 6 割まで下げましたが、米国に 至っては未だ 8 割です。レアアースの脱中国依存に、日米豪印のいわゆる「QUAD」 で協力を強化することが各国との首脳会談で確認されていますが、今後の具体 的な見通しについて総理にお伺いします。あわせて、半導体や AI、量子コンピューターや5G・6G などの技術開発や基 準の管理も QUAD などの民主主義国家が戦略的に主導していくとの声明がありま したが、その具体策をお示しください。  

【中国との信頼醸成】  
 今回の声明には中国との信頼醸成のメッセージも多く含まれています。例え は、台湾の平和と安定に言及する一方で、「両岸問題の平和的解決を促す」とさ れています。総理、「両岸問題の平和的解決」とは何を意味し、具体的に何をさ れるのですか。また、「共通の利益を有する分野で、中国と協働することが必要」 とありますが、どの分野で、どのような協働をされるのか具体的にお答えくださ い。  

【終わりに】  
 人類はこれまでに何度も戦争を繰り返してきました。尊い数多の命を犠牲にし ながらも、その教訓を生かせずに、戦争を繰り返してきたのです。今は亡き私の 両親も戦争遺児でした。「二度と戦争をしない国にしてほしい」戦争未亡人であ った祖母の遺言です。この今を「戦前」と呼ばせないためにも、非現実的な理論論に拘泥せず、また勇ましいだけの過度な武装論にも流されず、我が国の領土・ 領海・領空と国民の生命と財産を守るために政治が冷静に現実を分析し、リアリ ズムを追求することが大事です。台湾、尖閣、コロナ、人権、地球温暖化、そし て科学技術などの様々な分野で日米同盟の絆をより強固にし、更には、日本こそ が国際法を遵守していることを世界に広く知らしめ、日本国民からの信頼と納 得を得ることが平和の礎となるのです。我々野党にもその責任があることを強 く申し上げ、私の質問といたします。 

以上