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ニュースリリース

【参本会議】大塚代表代行がRCEPについて質問

大塚耕平代表代行(参議院議員/愛知県)は21日、参議院本会議において、RCEP(地域的な包括的経済連携協定)について質問しました。質問内容は以下の通り。

参議院インターネット中継

RCEPに対する質問

 国民民主党新緑風会の大塚耕平です。会派を代表して、ただいま議題となりましたRCEPに関して質問します。通商交渉にひとり勝ちはなく、各国とも自国に有利と考えるからこそ合意に至ります。RCEPの内容も冷静に評価すべきであり、以下、そうした問題意識に立って質問します。

【農林水産業】
 はじめに農林水産業です。TPP、日欧EPA、日米貿易協定に加え、RCEPにも合し、日本は世界に市場を開き続けています。同一相手国に対して協定が重複する場合、その中で最も低い関税率や規制が適用されるということでよいか、外務大臣に確認します。仮にそうであれば、オーストラリアやニュージーランドとはRCEPを超える水準のTPPを、ASEAN諸国とはRCEPと同等水準のEPAを締結済であるため、RCEPで初めてEPAを結ぶ中韓両国との合意内容が農林水産業分野の評価のポイントです。そういう認識でよいか、農水大臣の所見を伺います。

 日本の農林水産物の関税撤廃率はTPPや日欧EPAの82%に対し、RCEPでは対ASEAN・オーストラリア・ニュージーランドは61%、対中国56%、対韓国49%です。では、中国、韓国の対ASEAN・オーストラリア・ニュージーランドの撤廃率は何%でしょうか。仮に61%より低ければ、RCEP内の開放度合いで中韓に競り負けていることになります。農水大臣に伺います。豚肉、鶏卵、イチゴ等、中国向けで関税撤廃を獲得した大半の品目は、検疫等の理由から実際には輸出できない状態です。要するに、事実上何も獲得できなかったとの農業関係者の声も聞きますが、農水大臣の認識を伺います。

 中国国務院は合意前に、輸出用農産物の生産基地建設や、加工食品の付加価値向上を地方政府に指示しました。日本も食料安全保障等の観点から国内農業の競争力強化が急務です。既往の施策の実施状況、効果、RCEP合意を機に新たに取り組むこと等について、農水大臣に説明を求めます。

 なお、「悪意の商標」規制のため、対象のリスト化が行われています。現状、何件ぐらいの「悪意の商標」が判明し、今後どのように対応するのか、外務大臣に伺います。

【鉱工業】
 次に鉱工業です。対中輸出上位を占める自動車部品の87%、熱延鋼板等の関税撤廃に合意したことは評価できます。しかし、ガソリン車エンジン部品、EV車載用電池の素材等、需要増が見込める製品の関税撤廃は10年以上先です。20年以上要する製品もあり、長過ぎます。完成車の関税撤廃も合意できていません。リチウムイオン電池の絶縁体は上海エナジーが世界首位となったほか、負極材では中国大手3社が世界シェア5割を占めるなど、中国勢が躍進しています。

 つまり、中国は自国企業が市場占有率を高める猶予を確保するため、完全撤廃に時間をかける戦略です。日本はどういう戦略で臨み、何を獲得したのか、経産大臣に伺います。関税撤廃率は品目ベースで算出されています。リチウムイオン電池はEV車体価額の半分以上を占めますが、撤廃率を品目数でカウントするか、価額割合でカウントするかで、評価は変わります。価額ベースの関税撤廃率を、自動車、鉄鋼、その他について、経産大臣に伺います。

【電子商取引】
 次に電子商取引です。TPPに含まれるソースコード開示要求禁止に合意できなかった経緯を、外務大臣に伺います。第12章電子商取引の規定は政府調達には適用しないと明記されています。適用除外となった経緯を外務大臣に伺います。

 同章第3条3項では「締約国による若しくは締約国のために保有され、若しくは処理される情報又は当該情報に関連する措置については適用しない」と記されています。これは何を述べているのか、外務大臣に伺います。同じく4項・5項では、第8章「サービスの貿易」第10章「投資」に関して広範な適用除外規定を置いています。その理由を外務大臣に伺います。

 第14条「コンピュータ関連設備の設置」第15条「情報の電子的手段による国境を越える移転」等に関して、締約国の公共政策の目的、及び安全保障の利益のためには、適用しないとされています。これでは第12章全体が無意味になると思いますが、外務大臣の所見を伺います。以上の諸点を踏まえると、結局、電子商取引を対象としたものの、実際には何も決まらなかったに等しいのではないでしょうか。外務大臣の所見を伺います。

【国有企業、政府調達、競争、紛争解決等】
 RCEPではTPPに規定された国有企業、環境、労働、規制の整合性の章はありません。これらの章が設けられなかった経緯を外務大臣に伺います。

国有企業に関連する第13章「競争」においては、「公共政策又は公共の利益」を根拠とする競争に対する例外規定を置いています。外務大臣にその意味を伺います。政府調達はRCEPでも第16章として独立していますが、TPPとは内容が異なります。地方政府が対象外であることを含め、対象政府機関、透明性義務、調達自由化等、TPPとRCEPの違いについて、外務大臣に伺います。競争ルールを定める第13章の9条、政府調達ルールを定める第16章の8条とも、紛争解決ルールを定める第19章等の規定を適用しないと明記しています。

 これでは競争や政府調達の章を設ける意味はなく、また紛争解決ルールの実効性も担保されません。紛争解決ルールの適用除外規定の意味、及び紛争解決ルールの実効性について、外務大臣に伺います。

【米中両国との今後】
 RCEP合意に際し、経団連会長は「貿易・投資の拡大及び効率的かつ強靭なサプライチェーン形成に資するもので、さらなる繁栄と安定をもたらす」とのコメントを発表しました。一方、中国習近平国家主席は昨年4月10日、経済政策を担う共産党組織、中央財経委員会の会議で「国際的なサプライチェーンを我が国に依存させ、供給の断絶によって相手に報復や威嚇できる能力を身につけなければならない」と述べたことが報じられています。日中間の認識ギャップに対する所見を、外務大臣に伺います。

 TPPへの米国の早期参加が期待できない中、半導体産業の最重要国である台湾がTPPに参加することには大きな意味があります。RCEP合意時に中国がTPP参加に言及しました。中国が簡単にTPP水準の合意に至るとは思えませんが、米国抜きのTPPに中国が参加する事態は回避すべきと考えますが、大臣の所見を伺います。

 以上の諸情勢を勘案すると、台湾のTPP参加を推奨することは日本にとって重要な戦略的意義があります。RCEP及びTPPについて、インド参加の見通しとともに、台湾の参加に関する所見を外務大臣に伺います。

【おわりに】
 日本の貿易相手の1位、2位は中国とASEANであり、シェアは22.2%と15.4%です。一方、日本は中国にとって4番目、ASEANにとって5番目の貿易相手に過ぎず、それぞれシェアは、7.3%、8.0%まで低下しています。中国とASEANは相互に最大貿易相手であり、RCEP運営は両者の調整が重きをなすと予想されます。日本のRCEPに臨む戦略とともに、第18章3条に設置を定める事務局の東京誘致に関する外務大臣の所見を伺います。既に、中国は北京誘致のロビーイングをASEANに行なっていると聞きます。各種自由貿易協定締結に際し、農業への影響、経済効果試算などの国会での議論が不十分です。主要国との協定が出揃ったことから、今後、各協定の運営状況や国内対策の進捗状況を定期的に国会に報告することを外務大臣に求めます。

 国内産業を強くし、日本の製品・産物・サービスを世界が欲する状況をつくることが肝要です。そのために人材育成と技術開発支援に腐心すべきことを申し述べ、この点に関する現状と政府の対応を経産大臣に伺い、質問を終わります。