ニュースリリース
【参本会議】舟山康江政調会長が新型インフルエンザ等対策特措法等改正案に反対討論
国民民主党の舟山康江議員(参議院議員/山形県)は3日、国民民主党・新緑風会を代表し、新型インフルエンザ等対策特措法等改正案の採決にあたって、反対討論を行いました。
討論の内容は以下のとおり。
新型インフルエンザ等対策特措法等改正案に関する討論
令和3年2月3日
国民民主党・新緑風会
舟山 康江
国民民主党・新緑風会の舟山康江です。
会派を代表し、新型インフルエンザ等対策特措法等改正案について反対の立場から討論致します。
まずは、法案の内容についての問題を指摘します。
今回の特措法改正等は、これまでの感染拡大防止対策が行き詰まった結果、「特措法改正はコロナ収束後」という方針を、政府は年末に大転換し、苦し紛れに改正に舵を切ったのだと理解しています。しかし、感染拡大防止の実効性を高めるどころか、いくつもの点でむしろ混乱と分断を拡大するものであり、大問題です。
第一の問題は、店舗や事業の休業や時短など、国民や事業者に様々な制限を強いる一方で、それに伴う十分な補償が規定されていないことです。
昨日、1都9県における緊急事態宣言の1ヶ月延長が決まりました。感染症の拡大を食い止めるため、というのは分かります。しかし、「この一ヶ月さえ、なんとか乗り切れば!」と歯を食いしばって耐えてきた事業者からは、今後もこの状況が続くということが決まった今、「まだ続くのか」「このままでは商売が、事業が続けられない」「もはや限界だ」との悲鳴が上がっています。
家賃の支払いにも困り、従業員を抱え続けることもできず、失業者と生活困窮者が増加するという負の連鎖が拡がっています。
十分な補償なく、長期にわたって時短に協力して下さい、といわれても、もはや限界です。これまでも、定額の協力金と引き換えに協力を求められ、多くの事業者は必死に踏ん張ってきましたが、一律の給付では、とりわけ、規模の大きな事業者にとっては焼け石に水です。
公共の福祉のために受忍すべき損失は補償しない、そんな議論もあったようですが、どうかのエビデンスもないまま、事業者のみを犠牲にすることはこれ以上許されず、協力いただいた事業者の損失に対する補償をセットで行うべきです。
要請に応じられるか否かは、十分な補償にかかっています。強制力では何も解決しません!!
特に「感染拡大の元凶」とピンポイントで名指しされている飲食店の協力を仰ぎ、感染症防止対策を進めるためにも、十分な経済支援が不可欠であることを改めて強調させていただきます。
しかも、影響を受けているのは、飲食業だけではなく、また、宣言下の地域だけではありません。東京商工リサーチの調査によると、コロナ関連の倒産は昨日までに全国で累計1,000件を超え、アパレル関連業や建設業、宿泊業などを中心に幅広い業種で影響が波及しています。
特に、飲食店に関しては、「このままの感染状況が続けば、32%が廃業を検討する」という衝撃の結果も出ています。
附帯決議で「要請による経営への影響の度合い等を勘案」とある通り、直接・間接に影響を受けている事業者に対する、事業規模に応じた影響の度合いをしっかりと反映した十分な補償を法律に明記すべきであることを強く申し上げます。
第二の問題は、「政令に定める要件に該当する事態が発生したと認めるとき」に実施できる「まん延防止等重点措置」という、中途半端なカテゴリーを、平時と、緊急事態宣言の真ん中に、新設したことです。
いわば「ミニ緊急事態宣言」とも言うべき措置であり、まん延防止等重点措置を実施する際には、事業者に対して「営業時間の変更その他政令で定める措置を講ずるよう「要請」、「命令」」でき、従わなければ「罰則」という私権制限を課すことができます。
このように、財産権の侵害にもつながる強い措置にもかかわらず、
- どういう事態が生じれば、実施されるのか、という客観的な基準が法律に明記されていないこと
- 事業者に求める措置も、営業時間の変更だけでなく、「まん延を防止するために必要な措置」という、拡大解釈の危険をはらむ規定となっていること
- 公示、つまり実施する際の事前の国会報告が法律に何らの規定がなく、附帯決議で「速やかな報告」を努力義務的に規定しているだけであること
など、民主的統制が全く欠如しています。
肝心なところは政令に委ねられ、時の政権の裁量権により、恣意的に運用される余地を残しているという意味で、法治国家として看過できない欠陥法です。
実は、2回目の緊急事態宣言発出が決定された1月7日、特措法45条2項に関連する政省令がこっそり、修正されました。宣言下で、知事が使用制限などを要請できる施設は、法律の規定上はあくまで「多数の者が利用する施設」と限定が付く中、具体的には「政令」や「省令」に委ねられています。にも関わらず、こっそり面積要件を外し、全ての飲食店に対象を広げる政省令改正を行ったのです。
同様に「まん延防止等重点措置」に関する政令への委任事項も、国会の関与なく秘密裡に改正される懸念が現実になる可能性が極めて高いと危惧します。
私権制限を加える場合、基準は法律により、客観的に明確化すべきです。そして、改正前の法律でさえ、緊急事態宣言発出の際には、命令も罰則もない中で「国会報告」が法律に定められていたにも関わらず、今回の本案において、罰則が入る新たな事態に対する国会報告の規定を欠くことは、重大な問題と言わざるを得ません。
加えて問題なのが、中間的なカテゴリーの、この「まん延防止等重点措置」と、緊急事態宣言下でできる措置との違いが、20万円と30万円という過料の違いに過ぎないことです、返って、緊急事態宣言の実効性が低下する恐れがあることを大いに危惧します。
罰則は緊急事態措置に限定すべきであって、蔓延防止措置からは削除すべきです。
結局「まん延防止等重点措置」は、公明党顧問を務められている漆原前衆議院議員が1月26日付のご自身のブログに書かれていたように「危機を理由にして国民をいかに制御するかという統治者の思惑があるのみで、権利や自由を制約される国民に対する配慮は残念ながら認められません」
以上が、内容面からみた主な反対の理由です。
次に、議論の進め方についての問題を指摘させていただきます。
まずは、法改正のタイミングが遅すぎる!という点です。私たち国民民主党は、昨年の夏頃から、国民の善意に頼る単なる「自粛要請」ではなく、十分な補償と場合によっては罰則もセットの法的根拠を持った措置が必要と訴え、12月には、具体的に、立憲民主党などとともに野党共同の改正案と、国民民主党独自の改正案を国会に提出しました。
それを黙殺するかのように国会を閉じ、1月に緊急事態宣言を発出せざるを得ない状況になってから急ごしらえで法案を議論し、今になって「早急な成立を」というのは、あまりにご都合主義的過ぎるのではないでしょうか。
そして、法案作成から審議入りまでのあまりに拙速なやり方についても苦言を呈さなければなりません。
1月5日の「新型コロナウィルス対策政府与野党連絡協議会」での意見交換を皮切りに、閣議決定までは比較的丁寧に与野党各党の意見を聞く機会も用意されていました。
しかし、蓋を開けてみれば、22日の閣議決定後は、各党の意見が十分に反映されることもないままに、国会での議論を待たずに一部修正が行われ、結論が一方的に決められてしまいました。
本来は、公聴会も含めた十分な審議を経て決めるべき重要な案件。にもかかわらず、衆参での議論はわずかそれぞれ8時間弱。参考人からの様々な懸念の声や建設的な提案もかき消され、法案修正に応じる動きも全くありませんでした。
問題点は付帯決議で、といいますが、付帯決議に法的拘束力はなく、大臣答弁でも、「守ります」とも言わず、「尊重します」と繰り返すばかりです。
最後に、多くの国民は、緊急事態宣言の有無にかかわらず、感染症対策になんとか協力し、早期の収束を願っています。しかし、先が見えない中で、失業や倒産の危機に直面している方々もたくさんおり、そこを支えるのが政治の果たすべき役割です。
私たち国民民主党は、困窮する方々への早急なる支援として、再度の10万円の一律給付や、持続化給付金・家賃支援給付金の再給付および損失補てん的な内容への見直しを求めてきました。
アメリカが行っている、「給与保護プログラム」、PPPのような、返済免除特約付きの融資制度の創設なども必要だと考え、現在、党内で法案作成作業を急いでいます。国際通貨基金(IMF)も各国政府に対して追加的な財政出動を求める意思を表明しています。今、踏ん張るべきは事業者だけではありません。
国の決断こそが今求められていることを強く申し上げ、私の反対討論といたします。
以上