ニュースリリース
【衆本会議】田中国会対策副委員長が「雇用保険法等の一部を改正する法律案」について質疑
田中健国会対策副委員長(衆議院議員/静岡4区)は3日、国民民主党を代表し、衆議院本会議で議題となった「雇用保険法等の一部を改正する法律案」への質疑を行った。全文は以下のとおり。
2022年3月3日
「雇用保険法等の一部を改正する法律案」に対する趣旨説明質疑
国民民主党・無所属クラブ
田中 健
国民民主党の田中健です。私は会派を代表して、雇用保険法の一部を改正する法律案について質問します。
雇用保険制度は労使と国の共同事業であり、雇用保険は、失業者の急増などに対応するため一定の失業給付の積立金を維持しつつ運営されてきました。積立額は2015年には約6.4兆円にまで達していましたが、2017年国庫負担割合を大幅に下げたことで減少し続けました。さらにコロナの感染拡大により、雇用調整助成金支給増に伴い枯渇した雇用安定資金へ貸出を行ったことで、2022年度末の積立金推定額は、500億円とほぼゼロに近い状態です。そのような中で失業等給付の国庫負担割合についての改正案が示されました。時限的に減らされていた国庫負担率を本則の25%に戻すのではなく、基本2.5%にするという政府法案では、2.5%が事実上の本則となり、適用され続けることが懸念されます。これは従来の「政府による雇用政策に対する責務」の性格を変えているのではないかとの疑問が生じます。失業等給付が支払われないという実態の対策のみをもって「雇用政策の責務」と考えているのでしょうか。「雇用情勢及び雇用保険法の財政状況が悪化している場合は本則と同じ25%とする」と機動的な対応が可能だと言っていますが、その判断基準は基本手当の受給者が70万人以上というものであり、近年では2009年度のリーマンショック時のみです。この間2007年の雇用保険部会報告書において「失業は、政府の経済政策、雇用政策と無縁ではなく、政府もその責任の一端を担うべきである」さらに2017年・2020年衆参厚労委員会の付帯決議でも、「雇用保険の国庫負担については、早期に安定財源を確保し、本則に戻すこと」とされています。当然のことながら、付帯決議は与党も賛成されたものです。失業等給付に係る国庫負担割合を現時点の25%のまま維持することで基盤整備を整えるべきであると考えます。積立金が一定額積み上がっているなど、雇用保険制度の運営に財源的な問題がない時は、国庫負担率を2.5%にしても運営上の問題はありませんが、少なくとも財政が危機的な現状で、国庫負担割合の原則を事実上の2.5%と大幅に引き下げることについて、今回の決定に至った合理的かつ十分な説明とともに見解を求めます。
国庫負担が減る一方で労使の負担が増えるのでは、共同事業というには程遠いと言わざるを得ません。コロナ禍で厳しい経済状況にある中、雇用保険料の負担増による影響に配慮し、保険料率の抑制を図るべきと考えます。今回の労使保険料率の引き上げについての考えを伺います。
また改正案の国庫負担では、枯渇した積立金が十分な額に達することは難しく、雇用保険の給付縮小も懸念されています。2000年・2003年の法改正では、基本手当の日額・給付日数の水準が引き下げられ、現在も回復に至っていません。基本手当の支給水準はどのようにして決められているのか、また現在の水準が適当と考える説明を求めます。
政府案では、失業等給付の国庫負担割合の見直しと併せて、新たな国庫繰り入れ制度を導入することとしています。しかし、国庫繰り入れをするための一定の要件しか政府法案には規定されておらず、機動的・実効性が担保されず、雇用保険制度に支障をきたす恐れがあります。雇用保険部会で提言されたように「失業等給付や、雇用調整助成金の支払いに支障が生ずる恐れがある場合」など、決算確定後の時点を問わず、労働政策審議会の意見を聴き、必要な対応を可能とする運営体制を規定すべきと考えますが、見解を伺います。
他方で育児休業給付金の給付額も増加傾向にあり、2020年度は受給者40万人、支給金額6400億円以上に達しています。政府は育児・介護休業法を改正するなどして男女とも育休をとりやすくする取り組みを進めている中、健全な保険財政の維持確保のためには、国庫負担割合の見直しが必要と考えます。現在の1.25%をまず本則の12.5%に戻したうえで、これまで被保険者でないために給付の対象でなかったフリーランスなどの個人事業主等も給付が受けられるよう、雇用保険によらない方式の育児休業給付制度を検討することで、フリーランスなどで働く者の子ども・子育てを広く支援し、我が国の喫緊の課題である少子化対策をさらに強力に進めるべきであると考えます。政府としてフリーランスの法的保護も重要な政策として掲げられておられますが、見解を伺います。
財政を含めた雇用保険制度全体の在り方は、雇用保険制度の当事者たる公労使が一致して納得のいく結論が出せるよう、引き続き、制度・運用両面において継続的に検証・検討し、必要な対応を求めていくことを要望して質問を終わります。