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ニュースリリース

【参本会議】伊藤たかえ議員が日本版DBS法案について質疑

 

 伊藤孝恵子ども・子育て・若者政策調査会長(参議院議員/愛知県)は7日、国民民主党を代表し、参議院本会議で議題となった「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律案(日本版DBS法案)」に対する質疑を行った。質疑の全文は以下のとおり。 


令和6年6月7日 こども性暴力防止法案 本会議質問

国民民主党・新緑風会
伊藤孝恵

 国民民主党・新緑風会の伊藤孝恵です。私は会派を代表し、ただいま議題となりました法律案について、質問いたします。

 性暴力の被害者には、一片の落ち度もありません。ただの一片もありません。まだ恋も知らない子ども達が性被害者になっている現実を、私たちは決して許さず、行動に移さなければなりません。

 国民民主党は、2021年5月「子どもの性被害防止法」を議員立法致しました。性犯罪の前科を有する者は、子どもに日常的に接する職業には就けないようにするため、保育士や教職員等の国家資格における欠格事由を厳格化すると共に、資格で分類できない塾講師やベビーシッター等については無犯罪証明書を厳格に運用する旨を提案致しました。
 資格者は、現行法でも網をかけることが出来ます。しかし、資格で分類できない者は、それが出来ないからこそ、DBSが必要だったのです。

 加藤大臣に伺います。本案において、学習塾など民間教育保育等事業者を、義務ではなく、認定制とした理由について、政府は、事業者の対象範囲が不明確で、監督や制裁の仕組みが必ずしも整っていないためとご説明されましたが、それは単に行政側の都合の解説であって、子ども達の居る場所を押し並べて安全にする有意味性とは、比ぶべくもありません。

 昨年成立した「フリーランス・事業者間取引適正化等法」においては、それまで対象範囲が不明確で、行政の監督等の仕組みが整っていなかったフリーランスを法律の中で定義し、取引適正化のための規制を新設しました。
 本案においても、網かけすべき事業者を定義し、新たに監督や制裁の仕組みを構築すれば、義務化も可能だったはずです。立法の意味はまさにそこにあります。フリーランス法では出来て、DBS法案では出来なかった理由を教えて下さい。

 実際に盗撮や性暴力の事案が表出した学習塾や、大規模な性加害事案が発生した芸能事務所ですら、義務化の対象でないのなら、本案には重大なブラックホールがあると言わざるを得ません。この黒い穴から意図をもって、子ども達に、にじり寄るものは必ず現れます。
 加藤大臣は、衆議院での審議の中で、犯罪事実の確認義務を負う要件を「継続性」「閉鎖性」「支配性」とし、学校のクラブや部活動におけるボランティアのコーチ等についても対象となる旨、明言されました。では、学童や塾の送り迎えをする子育てタクシーのドライバーは如何でしょうか?スクールバスや日本版ライドシェアのドライバーは対象になるのでしょうか?車内は閉鎖性、ハンドルは支配性そのものです。
 今後、マッチングプラットフォームの責任はどのように問い、雇用と請負の労働者性をいかに整理し、どこに網をかけていくのか?犯罪事実の確認義務を負う職種の拡大については、誰が、どのように判断していくのか?加藤大臣、お答え下さい。

 特定性犯罪に、公然わいせつ罪やわいせつ目的略取及び誘拐罪、下着などの性的欲求を満たすための窃盗罪等の犯罪類型が含まれなかったことに加え、特定性犯罪に該当する犯罪であっても、逮捕後に示談をして不起訴となった事例や、行政による懲戒処分、民事訴訟で性加害が認定されたものについては、本案では調査対象に含まれていないことも、大きな穴です。
 犯罪事実の確認結果は「事実上の就業制限の根拠となる」とされていますが、あくまで事業者側が安全確保措置を講じるかどうかの判断材料であって、欠格事由ではありません。加害者の職業選択の自由を尊重しつつ、子供たちを性暴力から守ることの比較衡量を最優先に考えるならば、おそれがあるかどうかを、判断するに足る材料を最大限、抜け漏れなく、事業者側に提供する必要があります。加藤大臣のお考えをお聞かせ下さい。

 画像生成AIによるCSAM(性的児童虐待コンテンツ)の問題が世界的に広がっています。ダークWEBのCSAMフォーラムでは、1カ月で2万件以上の画像が検出され、日本では、ガバナンスが未整備のため、ダークWEBに潜らずとも容易にコンテンツにアクセスできます。
 実在児童が特定不可能な生成AIによるCSAMは、児童買春・児童ポルノ禁止法での立件が困難です。またAIには制作者がいないので、著作権法でも逮捕できません。恐ろしいことに、実在の児童に酷似したCSAMを生成できる、追加学習用データが、当たり前のようにネット上で売買されていますが、こういった「ファインチューニング」と呼ばれる手法は、我が国の法律の何れもが想定していないため、太刀打ちできない状態です。
 子どもたちの権利侵害、特にオンライン上の保護を目的とした新たな法整備の必要性について、加藤大臣の見解を伺います。
 同時に、法整備前であっても、こういった行為を業として行った者については、司法手続に準じた適正な方法で、子どもに関わる仕事には就けないようにする必要があると思いますが、加藤大臣の認識を伺います。

 声をあげられないのは、子ども達だけではありません。障害者施設職員による性暴力や、高齢者施設職員や訪問介護スタッフによる性虐待も深刻化しています。今後、対象を子どもに限らない犯罪事実確認のニーズが生まれることが考えられますが、武見厚労大臣の見解を伺います。
 英国DBSにならったバリューフォーマネー(価格に見合った価値)について伺います。英国DBSは、内務省に後援され、議会に対して直接説明責任は負うものの、省には属さない公的機関として、手数料を収入源に独立採算制で運営されています。
 戦略計画・年次報告書等の内容も、少ない経費で効率的に運営し、迅速な対応によって顧客満足度を上げる、バリューフォーマネーに重点が置かれています。
 ただ、当初からそうだった訳ではなく、2018年に会計検査院の調査が入った際、年間280万人の利用を見込んでいたにも関わらず実際は90万人だったことや、デジタル化が計画より46カ月遅れていたこと、当初見込み予算額に対し35%も超過していたこと、何よりそれらの原因分析や対策が全く講じられていなかったことなどが判明し、議会から指摘を受け、改善を余儀なくされました。我が国のDBSは、同じ轍を踏むわけには参りません。

 加藤大臣に伺います。DBSの当初予算、利用見込み者数、デジタル化のスケジュールや外部委託する際の責任・監視の在り方など、現在のプロジェクト概要および、監査の時期や内容について教えて下さい。
 また将来的に、受益者に応分負担を求めることについての、加藤大臣の見解を伺います。
 この問いの主旨は、今後、子どもから大人にも対象を拡大したり、開示される情報源を司法判断等から起訴猶予による不起訴処分や行政処分、通報情報へと拡大した場合、既存組織では到底賄いきれず、実行組織の拡大が不可避となります。その際、財源を国庫に求め続けるのは、現実性に乏しいのではないかという問題意識です。
 先を行く英国DBSに、経営観点、バリューフォーマネー視点でも学ぶべきと考えますが、加藤大臣の見解を伺います。

 自己情報コントロール権とプライシバシー権についても伺います。
 前科等は極めて高度のプライバシー情報であることから、その適正な開示に重大な利害を有する本人が、確認申請の主体であるべきと考えます。しかし、個人情報保護法第124条第1項では、個人の犯罪歴等については、開示請求等の規定の適用除外とされており、その理由として、拡散・転々流通の弊害が挙げられています。これこそが日本のパターナリズムの典型、国民は正しい判断を下すことが出来ないので、国が介入してあげる、あなたの為にね、という立て付けです。

 加藤大臣に伺います。昨年8月の有識者会議では、イギリスやドイツ、韓国など10か国の犯罪歴照会制度について比較検討されたと承知しています。諸外国では、プライバシー情報に係る自己情報コントロール権の帰属はどうなっていますか?教えて下さい。

 最後に、性暴力被害者の半数は心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症すると報告されています。PTSDへの介入なしに「子ども達をまもる仕組み」はできません。専門治療がどうしても必要ですが、現在の精神科医療では、PTSDに対する治療を行うと赤字になるため、導入が進んでおりません。加藤大臣に、検証と取組を求めます。

 被害者の小さな心に埋め込まれた地雷は、何がきっかけで爆発するのか分かりません。進学、就職、恋愛… 不安の中を、私は這うように生きてきた。
 そんな胸の内を教えてくれたのは、今もPTSDに苦しむ被害者の方です。

 諸外国にならい、性犯罪者、特に小児性犯罪者に対する科学的去勢やGPS装着等の厳罰化の必要性を口にする私に、その方は、包括的性教育や、加害者に対する再犯防止プログラム、保護観察終了後の孤立対策を求められました。「社会にとって、それが一番、安全への近道です」柔らかに諭す言葉は、まるで道しるべのようでした。

 ようやく生まれるDBSが、我が国で生きる全ての子ども達の、豊かな学びや育ちを支えるものとなるように、これからも果断に行動していくことを申し上げ、私の質問を終わります。