ニュースリリース
【参本会議】大塚耕平政調会長が所得税法等改正案について質疑
大塚耕平政調会長(参議院議員/愛知県)は8日、参議院本会議で「所得税法等の一部を改正する法律案」に対して質疑を行った。質疑の全文は以下の通り。
本会議質問
令和6年3月8日
国民民主党・新緑風会 大塚耕平
国民民主党新緑風会の大塚耕平です。ただ今議題となりました所得税法等改正案について会派を代表して財務大臣に質問させていただきます。
1949年のシャウプ勧告以来、日本の租税原則は「公平・中立・簡素」の3点です。現実は真逆の方向に進んでいることを憂慮しています。
定額減税の仕組みも簡素ではなく、事務処理が複雑過ぎるために、実務を担う税理士や企業の経理担当者等から極めて不評です。
国税庁が2月5日付で配布し始めた「令和6年分所得税の定額減税Q&A」を大臣は公表前にご覧になったか否か、またどのような印象を持ったか、伺います。
定額減税は6月からですので、予算案や所得税法改正案が可決成立してからQ&Aを公表しても十分間に合います。可決成立が予想される3月末頃から逆算すると、2ヶ月も前からQ&Aを公表することは、唯一の立法機関である国会軽視であり、租税法律主義に反すると考えますが、財務大臣の所感を伺います。
給与所得者の大半は所得税を勤務先で源泉徴収されます。今回の仕組みでは6月分源泉徴収額から減税分を控除し、源泉徴収額が減税額に達しない場合は翌月以降に繰り越して控除します。
例えば、年収300万円、妻と子供2人が扶養家族の場合は合計12万円の減税ですが、源泉徴収額の水準から計算すると、今年12月でも減税が完了せず、年末調整時に未達分を国から給付金として受け取ります。
年収水準や賞与の有無、扶養家族の人数等々、給与所得者ごとに異なるため、企業の経理担当者等は 個々に計算を余儀なくされます。このような複雑な仕組みにした理由を伺います。
当初、岸田首相は所得制限に否定的でしたが、結局所得1805万円以下に対象が限定され 、扶養家族としてカウントできる人数も制限が設けられました。
最終的な所得額は年末調整や確定申告で定まるため、一度減税した控除額を返還させる事態が多数生じることが予想されます。
返還が生じる納税者数をどの程度と予想しているのか、財務大臣に伺います。
16歳未満の扶養親族は所得税の計算に影響しないため、扶養控除等申告書に記載していないケースが 少なくありません。小規模事業者ほどそうしたケースが多いようです。
その場合、6月までに扶養控除等申告書に16歳未満の扶養親族を記載して再提出する必要がありますが、Q&Aを公表しただけでは周知徹底は無理でしょう。本件を、小規模事業者を含む企業全体に周知徹底するためにどのように対応するか、財務大臣に伺います。
働く高齢者が増えています。公的年金から源泉徴収され、かつ給与所得があり、不動産所得の予定納税がある人は、各3万円、合計9万円の定額減税を受けます。しかし、年末調整と確定申告で所得が1805 万円以上となった場合、来年春に9万円を返還することになります。このような対象者は何人ぐらいと 予想しているのか、財務大臣に伺います。
こうした人たちはある程度自分の最終所得額について予測できます。面倒な返還事務を回避することは、当事者にとっても、税理士や経理担当者等の関係者全体にとってメリットがあります。しかし、Q&Aには「定額減税の適用を受けるか否かを選択できない」と記されています。このような対応とした 理由を伺います。
複雑な事務が年末及び確定申告まで続くため、マンパワー負担 だけでなく、事業者には給与計算・納税処理のためのシステム改修負担が発生します。マンパワー及びシステム改修負担等、日本全体でどのぐらいの対応コストを要すると想定しているのか、財務大臣の認識を伺います。
過年度所得を基準に減税すれば、実務上の煩雑さも回避できたでしょう。過去の所得税減税において過年度分を基準としたことの有無、今回はそうしなかった理由を伺います。
今回は主たる勤務先の給与所得において減税を行います。複数の仕事を持つ人も少なくない中、両方で減税を受けたり、その後の返還や給付金等が錯綜する来春にかけて、「還付が受けられる」「給付金がもらえる」「減税額が足りなかった」等々を騙る特殊詐欺が横行することが懸念されます。こうした懸念に対して税務当局はどのような対策を講じるのか、伺います。
住民税非課税世帯は10万円給付を受けますが、その6割は高齢者、年金受給世帯です。金融資産等をそれなりに保有している人も少なくありません。
財務大臣が述べたように、今回の措置では900万人が「住民税は払っているので10万円は給付されないが、所得税負担は4万円以下」であり、相対的な不公平感が指摘されています。今回の措置に関する不公平感についての所見、及びその是正策について伺います。
賃上げ促進税制について伺います。改正案では賃上げ率に「5 %以上」「7%以上」の区分を新設し、赤字企業は減税額を5年間繰り越せる仕組みとし、黒字化すれば実際に減税できるようにした点は評価します。
一方、賃上げできない中小企業は減税を享受できないだけでなく、採用難が進み、人手不足倒産に至ることも懸念されます。倒産によって流出する勤労者の保有スキルと、企業が求める人材や技術のミスマッチが大きいことも予想されます。
国の政策によってマイナスの影響を受ける勤労者に対し、リスキリングの機会提供、再就職支援の施策等を講じることが肝要です。
今回の賃上げ促進税制でどのようなプラス効果及びマイナス効果を想定し、マイナス効果に対してどのような施策で対応しようとしているのか、財務、厚労、経産の各大臣にそれぞれの所管の立場から見解を伺います。
財務省の財政金融月報のデータから、給与所得者の所得税・住民税負担額と社会保険料負担額の多寡が読み取れます。
年収1000 万円以上の給与所得者は税負担額が社会保険料負担額より大きく、1000万円以下の給与所得者はその逆です。給与所得700万円の場合、社会保険料負担は税負担額の1.5倍、300万円の場合は2.5倍に及びます。つまり、低所得者の可処分所得に好影響を与えるには社会保険料負担を軽減することが必要です。
そうした観点から、給与所得者と社会保険料を半額負担する雇用主に対して、何らかの 負担軽減策を 拡充すべきと考えます。今現在どのような工夫をしていて、今次予算案や関係諸施策においてどのような手当てが行われているか、財務大臣と厚労大臣に伺います。
最後にプラットフォーム課税について伺います。パソコンやスマホ向けアプリを販売する事業者から消費税を徴収できないため、アプリ販売の舞台を提供しているプラットフォーマーから代替徴収するのは適切な対応だと思います。
その際、徴収基準を年商50億円超のプラットフォーマーとしていますが、基準が高すぎると思います。国内事業者にはインボイス導入で捕捉率を高めようとしている中、アプリ販売についても厳格に対応すべきです。徴収基準の引下げ、及び国際交渉等によってアプリ販売事業者の事業実態を把握する工夫について、財務大臣に伺います。
本件に関連して伺います。価格16,666円以下の少額商品輸入の越境電子商取引については、税関手続簡素化のために消費税・関税が免税扱いです。電子商取引が拡大する中、こうした扱いは国内事業者の競争力に影響するため、主要国では同様の措置を廃止する動きがあります。
主要国の少額商品輸入における消費税・関税の扱い、及び日本の同制度廃止に関して、財務大臣の所見を伺います。
「公平・中立・簡素」の租税原則に照らし、いかなる事態に対しても納税者の納得が得られる公平な税務行政を貫徹することが、税務当局に対する信頼の要諦であることを申し上げ、国民民主党としての 代表質問と致します。
以上