国民民主党 つくろう、新しい答え。

政策各論1. 給料・年金が上がる経済を実現

上げるべきは物価ではなく給料です。1996年をピークに長期的に下がり続けている実質賃金を上昇に転じさせ、「令和の好循環」をつくります。名目賃金上昇率が一定水準(物価上昇率+2%=当面の間4%)に達するまで、積極財政等と金融緩和による「高圧経済」によって為替、物価を適切に安定させ、経済低迷の原因である賃金デフレから脱却します。それまでの間、増税や社会保険料アップ、給付削減などによる家計負担増は行いません。「大規模、長期、計画的」な産業政策と、消費力を高める「家計第一の経済政策」により、分厚い中間層を復活させます。

現役世代の給料が上がれば年金も上がります。現役世代の納める保険料が退職世代の年金に充てられる仕組みになっているためです。年金を上げるためにも給料が上がる経済を実現する必要があります。

1.「令和の所得倍増計画」

「未来志向の積極財政」と金融緩和で消費や投資を拡大させるとともに適正に価格転嫁できる環境を整え、持続的に物価を上回る賃金アップを実現します。また、減税、社会保険料の軽減、ガソリン代・電気代値下げなど生活費の引き下げにより、「消費」を喚起します。

半導体、蓄電池、AIWeb3.0等の成長分野への投資減税を行うことなどにより「投資」を拡大させます。

1)「消費」の拡大

❶介護職員、看護師、保育士等の給料倍増

特に、公定価格が給料決定に影響を及ぼす介護職員、看護師、保育士等の方々については10年で地域の実情を勘案しつつ給料を2倍にするとともに、地域手当の見直しを行います。処遇改善加算等は対象者に直接給付します。

❷初任給倍増の早期実現

初任給を大幅にあげて「初任給倍増」を早期に実現し、若い世代に所得増加で経済的ゆとりを生み出し、経済的に婚姻できない状況を改善するとともに、非婚、未婚、ひとり親を選択した場合でも、子育てを応援できる環境を整えることで少子化対策にもつなげます。

❸所得税減税

所得税を課す最低金額の引き上げ等を行い、賃金上昇に伴う名目所得の増加によってより高い所得税率が適用され、賃金上昇率以上に所得税の負担が増える「ブラケット・クリープ」に対応します。具体的には1995年からの最低賃金の上昇率1.73倍に基づき、基礎控除等の合計を103万円から178万円に引き上げます。物価上昇を踏まえ、通勤手当の所得税非課税枠を引き上げます。

❹税・社会保険料と債務の減免

物価が上がり景気が低迷するスタグフレーションに陥らないため、賃金上昇率が物価+2%に達するまでの間、増税や社会保険料アップ、給付削減などによる家計負担増は行わず、消費税減税(10→5%)を行います。

中小事業者の負担などを踏まえ、インボイス制度は廃止します。

❺若者減税

若者減税(所得税住民税を減免)を導入し、働く若者をサポートします。

❻電気代・ガス代・ガソリン代・水道料金値下げ

ガソリン補助金を延長するとともに、いわゆるトリガー条項※の凍結を解除し、減税によりガソリン・軽油価格を値下げします。また、クリーンエネルギー自動車購入促進補助金を補強します。

※トリガー条項…ガソリン価格が3ヵ月連続で160円/ℓを超えた場合に、上乗せされている特例税率を停止しガソリン価格を25.1円/ℓ引き下げる措置

特別高圧を含む電気代・LPガス料金等の物価高騰対策を継続するなど、エネルギー関連補助金等を拡充して灯油や重油、航空機燃料、LPガスなどの価格対策を進めます。電気代の高騰が続く中で、家計負担を軽減するため、「再生可能エネルギー発電促進賦課金」の徴収を一定期間停止することで電気代を値下げします。また、省エネ家電購入支援、省エネ住宅購入・ZEH化支援※、断熱リフォーム支援など、省エネ住宅支援策を拡充します。

ZEH・・・netZeroEnergyHouseの略、消費エネルギー量を実質的にゼロ以下にする家

地方創生臨時交付金により、夏季の水道料金を減免します。

❼「日本型ベーシック・インカム(仮称)」創設

給付(負の所得税)と所得税の還付を組み合わせた新制度「給付付き税額控除」を導入し、尊厳ある生活を支える基礎的所得を保障します。マイナンバーと全銀行口座のひも付けなど、所得と資産を月次単位で把握できる政策インフラを整えます。「命の口座」を登録し、災害や感染症まん延時などの際、必要な手当や給付金が申請不要で迅速かつ自動的に振り込まれる「プッシュ型支援」を実現します。

職業の違いによる税制の不公平の是正、確定申告の機会拡大の観点等から、給与所得控除等を見直しつつ、サラリーマンの諸手当の非課税対象拡大を行うとともに、自動車の任意保険料等について特定支出控除の対象とすることを検討します。

❽賃上げ支援

サラリーマンやフリーランスの方が貯金や長期投資で資産形成できる所得水準を実現します。最低賃金を引き上げ、「全国どこでも時給1150円以上」を早期に実現します。中小企業支援の強化で最低賃金の大幅な引き上げを実現します。「年収の壁」の解消にも取り組みます。

中小零細企業の賃上げの原資のために賃上げ引当金の制度の創設を行います。

❾政労使合意の締結

構造的な賃上げに加え、「生産性三原則の確認と周知強化」に向けた政労使合意の締結をめざします。「労働者」は物価上昇分を含め、正当な賃上げ要求を行います。「使用者側」は賃上げ等を実現し、適正に価格に転嫁します。「政府側」は所得の継続的な上昇に向けて適切な政策を行います。賃上げ幅の開示を義務付けるとともに、都道府県政労使会議を継続的に開催します。

❿賃上げ減税の拡充(詳細は1の1の(3)の❹

税額控除額の引上げ等、賃上げ減税を拡充します。価格転嫁等の取引条件改善企業等に減税します。

⓫年末調整制度の見直し

年末調整制度は事業者の事務負担が小さくありません。納税者の意識醸成のためにも、年末調整制度を見直し、全員確定申告制度導入も視野に検討を進めます。

2)「投資」の拡大

長期低迷する日本経済を動かすため、「人への投資」、デジタル化、カーボン・ニュートラル対策、先端テクノロジーへの投資、インフラ整備、スタートアップなど、「未来への投資」を積極的に行います。人口が減っても経済成長する「強い日本経済」をつくります。
「大規模、長期、計画的」な産業投資を行い、PDCAを回しつつ、生産性向上を実現します。「小規模、短期、場当たり的」だったこれまでの財政出動を転換します。

❶「人への投資」(詳細は3「人づくりこそ、国づくり」

❷産業の成長に資する規制改革の推進

中長期的な技術革新や、産業の成長と競争力の向上を促すため、国の規制改革に関して、中小企業においても一層の効率化が促進されるよう、規制の影響の定量的な評価による見える化を進めます。

❸第4次産業革命

世界で進行中の第4次産業革命(量子コンピューター、IoT、ブロックチェーン、ロボット、人工知能、ビッグデータ、自動運転等の多岐にわたる技術革新)については産官学・中小企業と大企業・国内外の企業家など異分野のプレーヤー同士を結び付ける手法(オープン・イノベーション)を積極的に活用し、日本発の「世界で戦える産業」を育成します。同時に国の研究開発のあり方を質・量ともに変革します。研究開発への補助金をさらに増やし、ITIoT分野(特に、ソフトウェア、サイバーセキュリティ等)の予算を重点的に拡充します。また、交通事故の削減、高齢者等の移動支援や渋滞の解消などに資する自動運転の実現に向けて、特定条件下における完全自動運転(レベル4)を可能な限り早期に実現します。その実現に向け、道路の高度化の基準を作るとともに、交通ルールを変更・整備することにより、安全な交通社会の推進に取り組みます。あわせて、産業のグローバル競争力強化のための、国際標準化に向けた取り組みを国策と位置付け、推進します。

❹カーボン・ニュートラルの促進

デジタル化、カーボン・ニュートラル(CO2排出量の収支実質ゼロ化)を長期的、計画的に促進するためグリーンイノベーション基金事業を見直し「DCN基金」(仮称)を創設します。民間におけるデジタル、環境分野への投資を加速するため、取得額以上の減価償却を認める「ハイパー償却税制」を導入するとともに、価格転嫁の促進を図ります。

カーボン・ニュートラルの実現に向けて、過度な負担により産業競争力を低下させることを避けつつ、あらゆる部門(エネルギー・製造・運輸・民生)における省エネ化や電化の促進をはじめとする技術革新と社会実装によるイノベーションを推進します。とりわけ、カーボンプライシングの実施にあたっては、円滑かつ適正な価格転嫁を確保することを通じ、広く社会で公平・公正な負担となるよう努めます。また、非電力分野のうち自動車については、「自動車産業脱炭素化推進法」により、研究開発・実用化及び導入促進のための誘導政策を実施します。また、Jクレジットの有効活用を進めます。

❺ソサエティ5.0の実現

先端技術を、物流や介護など、あらゆる産業や社会生活に取り入れ、誰もが快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることのできる人間中心の社会「ソサエティ5.0」を実現します。そのために、データ基本権の制定をはじめとしたデータ流通・利活用環境の整備や、サイバーセキュリティの強化を進めます。

❻暗号資産の減税(詳細は2の6(1)の❸

❼印紙税の廃止

印紙税は電子決済等の技術革新や社会のデジタル化に逆行する制度であり、廃止します。

❽分散型エネルギー社会の構築(詳細は2の4(3)

❾新幹線の整備

整備新幹線の着実な整備と基本計画路線整備及びフル規格での整備を見据え、具体的対応を推進します。リニア中央新幹線については、地元の合意を得るとともに自然環境への影響など課題に取り組み、早期整備を図ります。

❿高速道路料金

高速道路料金について、補修費や建設費も考慮に入れながら、償還期間や金利を実態に合わせて見直すこと等により、上限設定(定額制)など新たな料金体系を検討します。また、スマートインターチェンジ等の簡易な出口を多く設置し、利便性を向上させます。ETC2.0の利用促進による高速道路の有効利用を進めます。

⓫自動車の負担軽減

自動車重量税は廃止することを前提に、まずは「当分の間税率」を廃止し、自動車重量税の国分の本則税率の地方税化を進めます。環境性能割は、旧自動車取得税の付け替えであることから廃止します。自動車税は、新車・既販車に関係なく、現在の営業・貨物・軽自動車の負担水準を基準とした税体系に改革します。ただし軽自動車が地方の重要な交通手段となっている現状に鑑み、十分な配慮のうえで検討を行います。ガソリンや軽油の本則税率に約50年間も上乗せされている「当分の間税率」を廃止し、国分の本則税率の地方税化を進めます。また、消費税との二重課税問題を解消します。

自動車が生活必需品となっている地方のユーザーに大きな負担増となる、走行距離課税は導入しません。また、電動車普及の足かせとなるEVFCVに対する税収確保ありきの増税は行わず、カーボン・ニュートラル実現に向け、電動車普及促進を継続的に実施します。

⓬自動車盗難対策

自動車などを中心とした窃盗についての対策の実施と早期の被害回復を図るため、「自動車盗難対策法案」の成立をめざします。併せて、「組織犯罪厳罰化法」を制定することで、組織的な犯罪の厳罰化や、証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度(日本版司法取引)の対象拡大を行います。

⓭交通安全対策

自動車などの死亡事故から尊い命を守るために、技術開発を支援するとともに、歩車分離信号の増設などインフラ面の整備を推進します。また、子どもや妊婦をはじめ、シートベルトの正しい装着方法の周知や啓発活動を推進します。

⓮自動運転

完全自動運転EVの巡回バス・乗用車を実用化し、及び地域公共交通システムを構築するスタートアップ企業を優遇します。

交通事故の削減、高齢者等の移動支援や渋滞の解消などに資する自動運転の実現に向けて、特定条件下における完全自動運転(レベル4)を可能な限り早期に実現します。その実現に向けた道路の高度化と安全な交通社会の推進に取り組みます。

⓯知的財産戦略の推進

特許や著作権など、知的財産を守り積極的に活用するため、国際的な知的財産戦略を推進します。また、國酒をはじめとする日本の食文化やアニメや漫画などのコンテンツ(クールジャパン)を海外に積極的に展開し、ソフト分野でも稼ぎ、雇用を増やす産業構造をつくります。

3)「中小企業・非正規賃上げ応援10策」

【中小企業・非正規の賃上げ原資を確保する】

❶社会保険料負担軽減

中小・中堅企業に、新規正規雇用の増加に係る社会保険料事業主負担の半分相当を助成し、正規雇用を促進するとともに、低所得者等の社会保険料負担を軽減します。中小企業などへの代金支払いの約束手形廃止・即時払い徹底を行います。新型コロナウイルス禍で売り上げが減った企業に実質無利子・無担保で融資する「ゼロゼロ融資」について、事業を継続可能かどうかを申請の際に確認した上で、返済負担の軽減・免除を図ります。

❷消費税減税・インボイス廃止(詳細は1の1(1)の❹

❸ガソリン代・電気代・ガス代値下げ(詳細は1の1(1)の❻

❹賃上げ減税拡充

賃金を上げた場合、法人税の減税だけでなく法人事業税、固定資産税や消費税の減税で支援します。中小企業の継続と発展を支えるため、人材確保や事業承継を支援するとともに、下請法の適用拡大など下請け保護制度を強化します。技術伝承の支援を行いながら、事業承継税制の恒久化及び納税免除措置の創設を行います。少額減価償却資産特例の上限額を引き上げます。また、民法の債権法を是正し、事業向け融資に関する第三者保証を禁止します。賃上げ幅の開示の義務付けを行います。都道府県政労使会議を継続的に開催します。

❺医療・介護・保育従事者等の賃上げ(詳細は1の1(1)の❶

【中小企業・非正規の賃上げを制度で支える】

❻適正な価格転嫁

不公正な取引慣行を改善します。公正取引委員会の「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の産業界への周知・浸透、厳格な履行、悪質事例・好事例の公表を行います。運送業に係る「標準的な運賃」を確保した荷主への税優遇を行います。

商品やサービスの価値に見合った価格で購入する経済活動への転換をめざし、賃金や原材料・エネルギーコストの上昇分を価格転嫁につなげられる実効性ある取引環境の整備を行います。

無形知財を適正に評価する仕組み(下請けの利益を吸いあげない、マージン取得に制限を設ける仕組み)の導入などにより、大企業が資源価格高騰、人件費上昇の負担を中小企業に強いることがないようにします。人材選別が厳しすぎるために、高い有効求人倍率が雇用促進につながらない構造を是正します。

❼農林水産分野の支援拡充

農林水産分野の適正取引を推進し、農業者に対する食料安全保障基礎支払を実施します。(詳細は2の3の(2)の❶

❽下請法・独占禁止法の実効性強化

下請法の適用拡大(資本金3億円以下から1千万円超)を行います。下請法・独禁法の罰則、優越的地位濫用の課徴金強化、公取等の取締強化、不適切事例公表・改善を行います。

適正な価格転嫁を支援するとともに下請Gメン、トラックGメンを増員し取引の実態把握を加速させます。運輸業や建設業の「2024年問題」や構造的課題の解決に向け、改正物流関連2法や改正建設業法の着実な実行とともに、多重下請け構造の是正、適正取引推進等商慣行の見直しを行います。

❾人手不足対策・育成支援

資格取得等(大型一種、二種免許等)につながる教育訓練給付の更なる拡充、企業内の人材育成を図る若手・中堅の教育プログラム作成、リカレント教育、リスキリング等への支援を行います。

❿「年収の壁」対策

「年収の壁」の解消に向け、本質的な課題(働き方に中立的な社会保障制度への転換を踏まえた第3号被保険者制度の見直し、配偶者控除の見直し、配偶者手当の見直し、家庭内ケア労働支援、性別役割分業等)への対策を行います。

4)「未来志向の積極財政」と財源の多様化

消費や投資を拡大させ、持続的に物価を上回る賃金アップを実現するため、「未来志向の積極財政」に転換します。そのため、「教育国債」の創設、日銀保有国債の一部永久国債化などにより、財源を多様化し、確保します。また「減価するデジタル通貨」などについても検討を進め、財源の多様化とともに金利やインフレを抑制する新しい財政コントロールのあり方を追求します。格差是正の観点から、富裕層への課税を強化します。

「外為特会繰入法案」の成立をめざします。急激な円安によって膨張した外国為替資金特別会計(外為特会)の運用状況に鑑み、公債発行に代わる財源として、外為特会から一般会計へ繰り入れます。

GAFAM」と呼ばれる巨大IT企業などがビジネスを展開し、利益を上げている国でほとんど納税していない実態を踏まえ、国際社会と協調して課税を強化していきます。

2.年金が上がる経済

現役世代の給料が上がれば年金も上がります。現役世代の納める保険料が退職世代の年金に充てられる仕組みになっているためです。年金を上げるためにも給料が上がる経済を実現する必要があります。

1)給料が上がる経済(詳細は1の1

2)年金制度改革と経済財政推計を行う独立機関設置

世代間公平とともに最低保障機能を強化した新しい基礎年金制度への移行を検討し、現役世代、将来世代を支えます。持続可能で安心な年金制度を設計するためにも、経済財政の将来推計を客観的に行い、統計をチェックする「経済財政等将来推計委員会」を国会に設置します。モデル世帯前提の議論を止め、第3号被保険者や配偶者控除の見直しを進めます。また、個人単位を前提とした議論を行います。

推計を踏まえ、法人課税、金融課税、富裕層課税も含め、財政の持続可能性を高めます。

所得再分配機能回復の観点から、金融所得課税の強化を行います。高所得者層は金融資産から所得を得ている割合が多く、所得税負担率は1億円超から急激に下がっています。一般の家庭が少しでも余裕を実感できるようにする一方、富裕層には応分の負担を求め、そのお金を社会に還元します。NISA等の非課税制度の拡充により、家計の金融資産形成を応援します。