ニュースリリース
政治資金規正法改正案の成立に当たって(談話)
令和6年6月19日
政治資金規正法改正案の成立に当たって(談話)
国民民主党 政治改革・行政改革推進本部
本部長 古川 元久
本日の参議院本会議において、自民党提出の「政治資金規正法改正案」が自民党、公明党の賛成により可決、成立した。
「今や、幾多の先人の努力の積み重ねにより築き上げられてきた議会制民主主義や政党政治は、その土台を大きく突き崩されかねない極めて憂慮すべき事態となっている。政治家にとって国民の尊敬と信頼が最高の基盤であることを忘れ、政治家が政界内部にのみ配慮するようになると、国民の常識と遊離することになる」
これは、現状を言っているのではない。平成元年、リクルート問題等による政治不信が高まる中、当時の竹下総理から諮問を受けた「政治改革に関する有識者会議」がまとめた提言の一部である。平成の時代が過ぎ、令和の世になっても、またもや政治が、先達の警告した「憂慮すべき事態」に陥ってしまっていることは大変遺憾である。
「政治腐敗は、つまるところ、政治倫理、すなわち、国民の常識を無視するところから生じる」
同提言は、さらにこう記す。我々は、「政治倫理」とは『国民の常識』であるとの考え方に立ち戻り、政治資金の問題をはじめとした諸課題について、『国民の常識』に照らして、どうあるべきかを議論していく必要があったはずではないか。それにもかかわらず、今回の自民党の対応は何一つとっても『国民の常識』から逸脱したものであった。
参議院での審議において、我々国民民主党は具体的で現実的、かつ建設的な提案を盛り込んだ法案も提出し、委員会に置いても様々な問題を指摘し続けたが、自民党はいずれも一顧だにせず、衆院可決時のまま一切の修正を行うこともなく、数の力で押し切った。
また、本来このような与野党を超えて合意形成することが求められる重要なテーマを国会で議論する場合には、委員会と併せて、与党の提案による政策責任者の間での協議を行うことが通例である。今回のように特定の政党間での水面下の協議のみで決める姿勢は、我が国の議会制民主主義を真っ向から否定するものであり、到底看過できない。
しかも、衆議院側で賛成した日本維新の会・教育無償化を実現する会が参議院側で反対するなど、その協議すらまともにまとめきれず、国会の場を混乱させたことは、自民党にそもそも問題を起こした当事者としての反省もなければ、与党としての矜持も、責任も全くないものと断じざるを得ず、怒髪、天を衝くものである。
そもそもの今回の法改正の発端は、自民党の一部の派閥・議員の収支報告書の不記載・虚偽記載の問題である。この不正を「誰が」「いつ」「どのような理由で」始め、行ってきたのかを明らかにしなければ、再発防止策はとれない。参議院の質疑において、この点を何度も質したが、まともな答弁は得られなかった。真相を究明しようとする姿勢がないと断ぜざるを得ない。
法案の中身についても同様である。本改正案成立により、今まで、政治資金規正法に明記のなかったいわゆる政策活動費が法律に規定されることとなる。さらに「10年後に領収証を公開する」など、日本維新の会・教育無償化を実現する会の意見も盛り込まれた。
しかし、このままでは、10年後であっても領収証の黒塗りは否定されないこと、罰則はその要否を含めて検討すること、10年後の領収証で脱税が発覚しても最長7年の時効が成立しており罪に問われることはないことなどが質疑によって明らかになり、さらに穴を多く、深くすることになってしまった。
これでは、『国民の常識』に照らして、透明性向上に値する、納得いく制度とは到底言えないどころか、かえって政治資金に対する国民の不信を高めるものではないだろうか。
また「秘書のせい」「会計責任者のせい」という言い逃れをさせないよう、代表者の責任強化を図るべきであったにもかかわらず、改正案では確認書の交付が導入されるのみである。確認書を出すにあたり、入出金の具体的な流れをどこまでチェックすべきかが不明確であり、形式的な確認書を出すことで責任を免れることが否定されず、政治家の言い逃れのための免罪符にある可能性がある。自民党が強弁する通り、本当に不正に対する抑止力になるのか、甚だ疑問である。
今回の改正案のせめても救いは、第三者機関の創設が決まっていることであろう。法律の公布後、我々が主張するような幅広い権限を持った実効性ある第三者機関として設置されるよう、協議の過程で強く求めていかなければならない。設立された第三者機関においては、ゼロベースで政治資金規正法のあり方が検討され、ザルにも失礼な穴だらけの「ザル法」は改正されるべきである。
我々、国民民主党は、『民、信なくば立たず』、政治に最も大切なのは国民からの信頼であることを改めて胸に刻み、政治資金改革を皮切りとして、政党改革、選挙改革、国会改革まで一体とした「令和の政治改革」を実現させ、次の世代にまで貫くことができる「正直で偏らない現実的な政治」に引き続き、全力で取り組み続ける。
以上