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ニュースリリース

【参本会議】田村まみ議員が国民年金法等改正案に対する反対討論

 田村まみ国民運動局長(参議院議員/全国比例)は13日、国民民主党を代表し、参議院本会議で議題となった国民年金法等改正案に対する反対討論を行った。討論の全文は以下のとおり。

2025年6月13日
田村 まみ

「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」本会議反対討論

 私は、国民民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」に対し、反対の立場から討論を行います。

 まず、本法 原案は与党審査において改正内容を後退させた上に、提出を2か月も遅らせたことについて政府・与党は猛省いただきたいです。
 昨年の財政検証では、経済が順調に推移しない限り、基礎年金の給付水準が三割減少するという結果が既に出ています。
 就職氷河期世代を始め、厚生年金に比べ基礎年金の割合が大きい人たちほど、適用拡大の先送りや限定的な対策では将来の年金給付に大きな影響を受けます。
 政府は、『まずは成長型経済を目指す』、や『経済動向を見て検討する』などと、楽観的な見通しで悠長に構えているのではなく、経済状況が厳しい場合でもセーフティネットが機能する備えを講じるべきです。

 国民民主党は、厚生年金に加入できなかった就職氷河期世代への給付拡充、第3号被保険者制度の廃止の検討、中低所得者のイデコへの拠出支援、財源適正化へのクローバック導入、雇用・労働政策も踏まえた議論など、様々な提案を盛り込んだ修正案を衆議院に提出しましたが、十分に議論されませんでした。
 また、与党と野党第一党が合意したからといって、国民の十分な理解と納得を得られていない状態で、重要広範議案としては異例の短期間・短時間で審議を終わらせることに、強く抗議します。
 以下マクロ経済スライド調整の一本足打法で、「働き方に中立的な年金制度の構築」に向け踏み込み不足の政策について指摘し、反対の理由を述べます。

 まず政府原案の唯一の年金受給額底上げ施策であった被用者保険の適用拡大への踏み込み不足について指摘をします。
 1つ目は企業規模要件の撤廃を10年後に先送りしたことです。
 本法案では、短時間労働者への被用者保険の適用拡大における企業規模要件について、10 年間掛けて段階的に撤廃するとしていますが、そんなに時間を掛けるのは、一体誰のためでしょうか。政府は、「今まで以上に小規模の企業や個人事業所を適用拡大の対象とするため、事業主負担への配慮として準備期間を設ける」と事業主のためと答弁しますが、最長10年の準備期間を設けると、事業主負担への工面が立つという見通しがあるのでしょうか。
 また、「任意適用を進める」とも答弁していますが、10年もの準備期間を必要とするような企業や個人事業所において、任意適用が大幅に進むとは到底考えられません。

 2つ目は、労働時間要件の見直しが全く盛り込まれていないことです。
 短時間労働者への被用者保険の適用拡大における労働時間要件は、現在週20時間以上とされていますが、同じく週20時間以上を要件としている雇用保険では、令和10年10月に要件を週10時間以上に変更することが決まっています。
 政府の審議会でも、被用者保険の労働時間要件を週10時間以上にすべきとの意見が多数派で、慎重意見はごく少数でした。
 それにもかかわらず、本法案には労働時間要件の見直しが盛り込まれなかったことに、疑問を呈さざるを得ません。
 この点、政府は、「対象企業への影響が大きいことから今回の法案に含めていない」と答弁していますが、見直しが行われないことは、加入できない労働者への影響が大きいということを理解しているのでしょうか。
 また、「他制度の在り方にも留意して議論を深める」とも答弁していますが、雇用保険で見直しが行われた今回こそが、まさに他制度の在り方に留意して議論を深めるタイミングです。
 複雑で難解な労働者を取り巻く制度を分かりやすくする、社会保障における被用者の公平性、また3号被保険者の在り方について冷静な議論を行うためにも、労働時間要件を週10時間以上とし労働参画を促すべきです。

 51人以上の企業へ適用の施行がされた令和5年10月、法改正から4年もあったにも関わらず、急に対応ができない、このままでは負担に耐えれないという事業主からの声で、突如年収の壁支援強化パッケージ等の支援策が準備されたことは記憶に新しいです。選任の労務担当者を置けない中小企業の多くはいざ、対象になるというところまで準備はできません。
 長すぎる準備期間や中途半端で申請が複雑な支援ではなく、年金制度改正のベースとなる財政検証が少なくとも5年ごとに行われることを踏まえ、すくなくとも企業規模要件の完全撤廃は5年後に完了しその後の適用拡大を進めるべきです。3つ目は参考人質疑の中で指摘のあった、マクロ経済スライドの調整期間の一致には、厚生年金の積立金を活用した方法と適用拡大を最大限図る方法の2つがあり、各方法により生じる効果は似ているにもかかわらず、適用拡大の最大化を諦めてしまった点です。

 今回の改正で約 200 万人の被用者保険の適用拡大を見込むとありますが、年金部会で4つ示されたオプションのうち、2番目に小さい拡大という中途半端なものにとどまったのは、適用拡大対象者が860万人という、週10時間以上のすべての被用者への適用拡大を選択せず、時期も範囲も、そして働き方に中立な制度、全世代型の社会保障制度への道筋を先延ばしにしました。基礎年金の底上げについて、適用拡大が厚生年金も合わせた需給の引上げ効果と財源確保への効果がいかに有用か明白にも関わらず、事業主負担へ配慮することが優先されたからです。

 そして、11日の参考人質疑で明らかになった、審議会での議論を途中で打ち切った基礎年金拠出期間の45年化を見送ったことです。
 今回の財政検証及びオプション試算では、基礎年金の拠出期間の40年間を65歳までの45年間に延長することが、年金給付水準の改善に大きな効果があることが示されました。
 それにも関わらず、厚労省は審議会において、「前回の財政検証より改善が見られること」を建前に「保険料負担増に対する批判を一掃できていないこと」を理由として、拠出期間の5年延長を早々に断念することを表明し、法案への反映に向けた本格的な議論は行われませんでした。
 時の批判的世論を理由に45年化を見送る一方で、標準報酬月額の上限引上げを行う今回の法案は、保険料を取れるところから取ろうという考えが透けて見えます。
 給付増のために広く負担を求める必要性があるのであれば、そこから逃げずに、理解を得るために説明を尽くして、実現に向けて取り組むことが政府の責務です。この行動が、結果的に年末のマクロ経済スライドの調整策を削除することにつながった証左です。
 だからこそ年金制度を始めとする国民に理解される年金制度・社会保障制度について、与野党を超えて検討、協議する場を設け、時間を掛けて議論することが必要です。各党からもその求めがありましたが総理は最後まで必要性に理解を示しつつも設置を明言されず今後の改正の在り方が不透明なままでは今後の検討項目を多くおいている今回の改正には賛成できません。
 引き続き、現実的な提案を続けることを申し添え反対討論とします。