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ニュースリリース

【衆本会議】西岡義高議員が教職員給与特措法改正案について質疑

 西岡義高政務調査副会長(衆議院議員/神奈川18区)は10日、衆議院本会議で議題となった教職員給与特措法改正案について質疑を行った。質疑の全文は以下の通り。

 

公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案に対する質疑

令和7年4月10日
国民民主党 西岡義高

 国民民主党・無所属クラブの西岡義高です。
 ただいま議題となりました「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案」ついて、会派を代表して質問いたします。

 まず、総理に我が国の教育をどのように導いていくのかを問います。

 昨年12月に公表された令和5年度における精神疾患で病気休職となった教職員の数は、7千人を超え3年連続で過去最多を更新しました。子どもたちにおいては、不登校の児童・生徒数が過去最多、いじめの認知件数が過去最多、児童・生徒の自殺者数が過去最多となっています。現在の教育現場は大人も子供も疲弊しきっていると言わざるを得ません。

 明治に学制ができ、近代国家として富国強兵を成し強い日本を目指しました。戦後にはこの学制をよりスリム化して6・3・3・4の単線型の学校制度となり、高度経済成長を成しえて豊かな日本を作りました。確かにこれまでのそろえる教育によって日本は成長してきました。しかし、明治の学制制定から150年が経ち、戦後80年にもなります。教育現場の現状を鑑みるに学校制度自体が制度疲労を起こしているのではないでしょうか。教育現場で起こっている様々な課題を解決するには抜本的な教育改革が必要な時期に来ていると思われます。そこで、楽しい日本を目指していく上で、教育をどのように導いていくのか具体的なビジョンを総理大臣に伺います。

 今回の法改正において、若干ながらも教員の処遇が改善されることは評価しますが、まだまだ不十分であり現状の根本的な改善には程遠い内容であると考えます。

 今回の法律案は、学校教育に質の高い人材を確保することがねらいです。昨年6月に閣議決定された「骨太方針2024」においては、「質の高い教師の確保・育成に向け、働き方改革の更なる加速化、処遇改善、指導・運営体制の充実、育成支援を一体的に進める。」とし、「教師の処遇を抜本的に改善する。」とされています。現在、全国各地で教員不足が問題となる中、これから社会に出る若者や民間企業等の経験者に教員を志してもらうためには、教員という職業を魅力あるものとしていかなければなりません。しかし、その内容は教員の業務の削減に直接繋がる内容はなく、給特法の枠組は維持されたままです。教職調整額を引き上げるといっても、年1%ずつ、6年かけて10%まで引き上げるというのはあまりにも時間がかかりすぎではないでしょうか。そして10%という数字も制定当時の時間換算で20時間相当であり、あまりにもショボい数字ではないでしょうか。今は少子高齢化によって、あらゆる業界で人手不足が叫ばれています。この過酷な人材の獲得競争に勝ち抜いていかなければならない状況において、これで教員の処遇を抜本的に改善し、人材が集まる魅力ある職場になると言えるのか、総理大臣、文部科学大臣の見解を伺います。

 昨今の「定額働かせ放題」といわれるような教員の長時間勤務の元凶は、給特法であるという声も耳にします。しかしながら、給特法は、原則として時間外勤務を命じないこと、そして時間外勤務を命じる場合も、超勤4項目と呼ばれる特定の業務について、しかも臨時又は緊急のやむを得ない必要がある場合に限定することを目的としており、本来的には教員の無定量な時間外勤務に歯止めをかけることを目的とした法律です。

 それにもかかわらず、給特法が悪法であるかのように言われるようになったのは、業務が繁忙なためやむを得ず時間外に行っている超勤4項目以外の業務、例えばテスト問題の作成などが教員の任意の「自発的行為」であるとして黙認され続けてきたからであり、給特法の本来の目的と実態が乖離しているからであります。本来は教員を無定量の時間外勤務から守るための給特法が、教員を守ることが出来ていないばかりか、むしろ無定量な時間外勤務を容認するような運用がなされている現状について、文部科学大臣の見解を伺います。

 令和元年の給特法の改正により、教員の任意の自発的行為とされてきた時間外勤務も含めて「在校等時間」として把握することとし、時間外の在校等時間の上限が月45時間、年360時間と定められました。「在校等時間」という考え方が導入されたこと自体は、長時間勤務を是正するという観点では一歩前進でした。しかしながら、労働基準法に従えば時間外勤務に対しては超過勤務手当が措置されるところ、給特法の「在校等時間」の考え方ではその時間外勤務に対して超過勤務手当が措置されず、給特法の仕組みと労働基準法の考え方の間に齟齬が生じることとなっています。今回の法律案によっても、この齟齬は残ることとなりますが、このままで差し支えないのでしょうか。給特法上の「在校等時間」と労働基準法上の「労働時間」の間でズレが生じている現状について、文部科学大臣の見解を伺います。

 給特法の「教員に無定量な時間外勤務をさせない」という目的が達成されているか否かを判断するにためには、教員の勤務実態を絶えず確認していく必要があります。

 それにもかかわらず、国による教員の勤務実態調査は、給特法が制定される前の昭和41年、制定から40年経過した平成18年、そして平成28年、令和4年と実に4回しか実施されておりません。本来ならば、給特法の目的が達成されているか、教員に長時間の時間外勤務が生じていないか、常に確認が必要でありますが、国による教員の勤務実態調査がこれまでに4回しか、給特法制定後に限っては3回しか実施されていない理由について、文部科学大臣に伺います。

 また、今回の法律案による長時間勤務の是正の効果を確認するためには、この先も国による教員の勤務実態調査が必要だと考えますが、次なる教員の勤務実態調査の実施の有無、またその時期について、文部科学大臣に伺います。

 給特法は、「教員の職務と勤務態様の特殊性」を理由として、教員の給与と勤務条件の特例を定めるために制定された法律です。この特殊性とは、教育が特に教員の自発的、創造性に基づく勤務に期待する面が大きいことや、夏休みのように長期の学校休業期間があることなどを意味します。たしかに、職務の複雑性や困難性、専門的な知識や技能が必要とされることなど、今日でもその特殊性を否定するものではありませんが、給特法が制定されたのは50年以上も前であり、制定当時と同様の「職務と勤務態様の特殊性」があるとは言い切れない状況ではないでしょうか。

 その例が、国立学校の教員です。国立学校の教員は、もともと給特法が適用されていましたが、平成16年の国立大学法人法の施行に伴い、身分が非公務員化されたことにより、教員の職務内容や勤務態様には何ら変化がないにもかかわらず、給特法の適用から外れ、労働基準法の適用を受けるようなり、時間外勤務には相応の時間外勤務手当が支給されるようになりました。この国立学校の教員の例に鑑みれば、教員の職務と勤務態様の特殊性を、公立学校の教員にのみ給特法を適用することの論拠とすることは説得力が欠けると思いますが、文部科学大臣の見解を伺います。

 給特法のほかにも教員の給与について定める法律がいくつかあります。その一つが「人材確保法」です。人材確保法は、給特法が制定された3年後、昭和49年に制定されたもので、教員に優れた人材を確保するため、一般の公務員の給与水準と比較して優遇措置を講じなければならないことが定められています。

 この人材確保法の制定を受け、本給の引上げと、教員にのみ支給される「義務教育等教員特別手当」が新設されたことにより、一般行政職と比べて、教員の給与の優遇分は7%を超えるまでに改善されました。しかし、それ以降は公務員の総人件費の削減の一環として優遇措置も縮減され、現在ではごくわずかとなっています。

 今回の法律案では、教員の処遇を改善するため、教職調整額を現在の4%から段階的に10%まで引き上げることとしていますが、この“10%”の論拠として「人材確保法による処遇改善後の教師の優遇分の水準を確保するための水準」としています。人材確保法制定の経緯等を踏まえれば、人材確保法による優遇分の回復は、人材確保法制定時と同様、本給の引上げか、若しくは義務教育等教員特別手当によるべきと考えます。今回の法律案において教職調整額の引上げにより教員の処遇改善を図ることとした理由について、文部科学大臣に伺います。

 学校における働き方改革を実効性あるものとし、教員の長時間勤務を是正するためには、業務を減らすことと、人を増やすことを同時に進めなければなりません。すでに学校や教職員の努力だけでは限界であり、これ以上どうすればいいのかという声も聞こえています。今回の法律案は、このような学校現場の切実な声に応え、教員という職業の魅力を向上するものでなくてはならないと考えますが、残念ながら教員の長時間勤務の是正に直結する教員の業務量の削減や教職員定数の改善に関する改正内容は含まれていません。

 そもそも、いわゆる「ゆとり教育」とも呼ばれる平成10年・11年の学習指導要領改訂以降は授業時間数が増加し、準備に時間のかかるアクティブラーニング等が導入されるなどしてきたにもかかわらず、教職員定数を定める「義務標準法」の改正等による教員定数の改善が行われてこなかったことが、常態的な教員の長時間勤務の理由の一つだともされています。これを踏まえれば、基礎定数を増やすなど、教職員定数を改善するための改正内容が含まれて当然ではないかと考えますが、今回の法律案に教職員定数の改善に係る改正内容が含まれていない理由について、文部科学大臣に伺います。

 石破総理は、今国会の施政方針演説の中で、「人口減少下においては、官民が連携した人づくりや公教育の再生・改革により、一人一人が持つ可能性を最大限引き出すことが必要」だとした上で、「そのために大事なことは、教育の内容と質であり、子供たちをどのように育てたいのかを明確にすること」だと言及されました。

 今回の法律案は、直接的には教員の給与や働き方などの勤務環境の改善を図るものですが、子供たちの育ちという観点において、どのようなメッセージが込められているのでしょうか。また、今回の改正内容のどの辺りにそのメッセージが反映されているのか、総理大臣に伺います。

 これまでも、様々な教育施策についての提案がなされても「財源がない」という言葉を繰り返し、課題が先延ばしにされてきました。

 我が党が訴えている「人づくりこそ国づくり」、この言葉を総理も文部科学大臣もおっしゃっておりました。「人づくりこそ国づくり」と言うならば、財源を理由に課題を先延ばしにし、教育施策を進めないことは、お金を理由に国づくりを、日本の未来を諦めることと同義ではないでしょうか。今こそ教育国債を発行し次世代に対してしっかりと投資を行うべきです。今発行した国債をものともしないくらいに国を成長させる人材を育てることこそが国家の務めではないでしょうか。

 教育への投資を拡充し、少なくとも、教育への公的負担割合をOECD平均程度まで引き上げるべきと考えますが、これからの教育予算の在り方について、そして国民民主党が提案している教育国債の発行について、総理大臣、財務大臣の見解を伺います。

 現役の中高生と話す中でも「先生の処遇をよくしてあげてほしい」という声を様々な場面で耳にします。そんな状況が教員本人にとっても、教わる子どもたちにとってもいいはずがありません。未来を担う人材を育てる最前線である学校現場をより良いものにしていくために、私も全力で取り組んでまいります。

 ご清聴ありがとうございました。