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ニュースリリース

【衆本会議】田中けん議員がサイバー対処能力強化法案に対する賛成討論

 田中健政務調査会長代理(衆議院議員/静岡4区)は8日、国民民主党を代表し、衆議院本会議で議題となったサイバー対処能力強化法案に対する賛成討論を行った。討論の全文は以下の通り。

令和7年4月8日

衆本会議討論

国民民主党・無所属クラブ 田中健

 私は、政府提案の「重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律案」とその「修正案」そして「重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」の二法案に賛成の立場から討論いたします。

 サイバー空間における脅威は、日々その深刻さと複雑さを増しています。国家機関、重要インフラ、民間企業、そして国民一人ひとりの生活が、サイバー攻撃の危険にさらされている現状において、我が国が従来の「受け身」の姿勢から脱却し、「能動的な防御」体制へと踏み出すことは、まさに今、不可欠な判断です。

 国民民主党は、安全保障政策2022において早くから能動的サイバー防御の必要性を提言してまいりました。そして2024年4月には、議員立法として「サイバー安全保障を確保するための能動的サイバー防御等に係る態勢の整備の推進に関する法律案」を提出いたしました。本法律案は、その方向性と基本理念において、我々の主張と一致しており、現実的かつ責任ある国家防衛の第一歩であるため、賛成いたします。

 今回の政府案には、特に重要な三つの柱が盛り込まれています。

 第一に、「官民連携の強化」です。

 電気、金融、航空、放送などの基幹インフラ事業者がサイバー攻撃を受けた際には、政府への報告が義務化されます。これは迅速な情報共有と初動対応を可能にする制度的な前進です。

 また、政府と基幹インフラ事業者などが参加する官民協議会が新たに設置され、政府が把握しているサイバー攻撃の手口や分析情報を、インフラ事業者に提供する仕組みが整備されます。これにより、民間側の防御力も飛躍的に向上することが期待されます。

 第二に、「通信情報の適切な利用」です。

 外国間、あるいは外国サーバーを送信元又は送信先とする通信の中で、サイバー攻撃に関与する疑いのある通信について、政府は独立機関の承認を得た上で、当事者の同意なく通信情報を取得できるようになります。分析の対象はあくまでIPアドレスなどの機械的情報に限定され、メールの本文やファイルの中身など「通信の本質的内容」は対象から除外されます。

 あわせて、通信の秘密を保障する憲法の趣旨を踏まえ、独立性の高い「サイバー通信情報監理委員会」が設置され、運用の適正性を継続的に監督します。プライバシーの保護と安全保障のバランスをとる、重要な制度的工夫であると評価します。 

 第三に、「無害化措置の実施」です。

 警察や自衛隊が、原則として独立機関の承認を得たうえで、攻撃元のサーバーにアクセスし、指令通信の遮断やマルウェアの無効化といった「無害化措置」を行うことが可能になります。

 また、自衛隊法の改正により、国家の関与の疑いがある特に高度に組織的・計画的な攻撃が海外から行われた場合には、首相の命令により自衛隊が「通信防護措置」を取ることが可能となります。これにより、国家安全保障上の対応が明確化されます。

 以上のように、本法案は、サイバー空間という新たな戦場において、我が国の主権と国民の暮らしを守るために不可欠な制度的整備であり、国民民主党としてもかねてより主張してきた方向性に即したものです。

 しかし、サイバー空間は変化のスピードが極めて速く、制度の整備と並行して、今後さらに実効性を高めるための不断の努力が必要です。ここで、いくつかの課題と提言を申し上げます。

 第一に、サプライチェーンの強靱化です。

 サイバー攻撃の手法は多様化しており、直接的な攻撃だけでなく、関連企業や下請け企業を通じた「サプライチェーン攻撃」が増加しています。こうした攻撃に対処するためには、委託元企業だけでなく、サプライチェーンを構成する中小企業の体制整備や支援策の強化が不可欠です。政府には、包括的なセキュリティ基準や支援制度の整備を求めます。

 第二に、サイバー人材の育成です。

 サイバーセキュリティは人の力に支えられています。攻撃の巧妙化・高度化に対応するには、専門的知識と高度な技能を有する人材の育成・確保が急務です。国・自治体・教育機関・企業が一体となって、戦略的かつ計画的な人材育成プログラムを推進すべきです。

 第三に、制度の継続的な見直しです。

 現時点では、IPアドレスなどの機械的情報に基づいてリスク判断が可能な場面も多いですが、今後、AI技術の悪用などにより、外形的情報のみではリスク判断が困難になる可能性もあります。今回の法制度を肯定しつつも、その内容や運用を時代に応じて柔軟かつ継続的に見直していく姿勢が極めて重要です。

 第四に、海底ケーブルの保護です。

 国際通信の大半を担う海底ケーブルは、我が国にとって極めて重要な情報通信インフラです。近年ではその脆弱性が国家安全保障上の懸念ともなっています。政府には、海底ケーブルの保護に関する責任体制の明確化と、必要な法整備に早急に着手することを強く求めます。

 国民を守るのは、理想論ではなく、現実に即した行動と責任です。見えない敵に立ち向かうこの挑戦に、国家と社会全体で共に取り組むべき時です。国民民主党は、これからも、単なる批判ではなく、建設的かつ現実的な安全保障政策の実現を追求していくことを,国民の皆様にお誓い申し上げ私の討論といたします。

 ご清聴ありがとうございました。