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ニュースリリース

【衆本会議】小竹凱議員が刑事訴訟法等改正案について質疑

 小竹凱国対副委員長(衆議院議員/石川1区)は27日、衆議院本会議で議題となった刑事訴訟法等改正案について質疑を行った。質疑の全文は以下の通り。

2025年3月27日
衆議院本会議

情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案
趣旨説明質疑

国民民主党 小竹凱

 国民民主党・無所属クラブの小竹凱です。
 ただいま議題となりました、「デジタル刑事訴訟法改正法案」について、会派を代表し、質問をいたします。

 この法案は、紙と対面が原則であった刑事司法現場においてデジタル化を図ることで、業務の効率化や迅速化を目指すものです。しかしながら、導入するにあたってはいくつか懸念すべき点もございます。本日はそれらの点について、鈴木法務大臣に質問します。

 まず、情報セキュリティとプライバシーの確保について伺います。刑事手続をオンライン化し、捜査記録や裁判資料を電子データでやりとりするようになると、それらの機密情報がサイバー攻撃や不正アクセスの対象になるリスクが高まります。実際、近年は政府機関や企業に対するサイバー攻撃が頻発しており、大量の個人情報や機密情報が流出するといった事件も報じられています。

 こうした状況下で、警察・検察や裁判所のシステムに対する情報セキュリティ対策は本当に万全と言えるのでしょうか。サイバー攻撃や内部からの不正アクセスを防ぐために、具体的にどのような対策を講じているのか、お答えください。また、デジタル化された捜査情報や裁判資料が漏洩しないようにするための仕組みについてもお聞かせいただきたいと思います。たとえばデータの暗号化やアクセス権限の厳格な管理、システムへの監査体制などはどのように整備されているのでしょうか。国民のプライバシーを守りつつ効率化を進める上で、この点の担保は不可欠と考えますが、鈴木大臣のご見解を伺います。

 電子令状の導入により、現場の警察官が遠方の裁判所に赴く必要がなくなり、迅速な捜査対応が可能になる点は大きな利点です。一方で、手続きの簡略化により、令状請求や審査の慎重さが損なわれ、不当な令状の発付につながる懸念もあります。オンライン申請だと操作一つで手軽に令状が請求できてしまう分、対面で説明を尽くす場合に比べて裁判官への説示や審査が形式的になってしまうのではないでしょうか。電子化によって令状の発付までのハードルが下がり過ぎれば、不当な令状の濫発につながる恐れも指摘されています。この点について、手続きの迅速化と適正手続の確保をどのように両立させるお考えなのでしょうか、大臣のご見解を伺います。

 被疑者・被告人の権利保護についてお尋ねします。法案では、裁判所と離れた場所を映像と音声でつなぐ「ビデオリンク方式」の活用範囲が拡大されることになっています。たとえば勾留の可否を判断するための裁判官による被疑者への質問や、一部の証人尋問などがオンラインで可能になるとのことです。これらにより、さまざま状況に応じて、非対面であっても柔軟な対応ができるようになるのは望ましい面があります。

 しかし、刑事手続において対面で直接やりとりする機会が減ることで、被疑者・被告人の防御権、特に弁護人と十分に相談しながら手続きに臨む権利が弱まってしまうのではないかと危惧します。例えば、遠隔での勾留質問や公判に被疑者がビデオ出演する場合、弁護人がその場で耳打ちして助言したり、即座に打ち合わせをすることが難しくなるのではないでしょうか。画面越しでは微妙な表情や声のトーンを感じ取りづらく、証言の信用性の判断にも支障が出る可能性があります。また、証人に対する反対尋問でも、オンライン越しでは対面ほど踏み込んだやり取りができず、尋問の効果が制限される懸念も指摘されています。

 こうしたビデオリンクの活用によって、被疑者・被告人の弁護を受ける権利が弱体化したり、裁判の公平性が損なわれたりすることはないと断言できるのでしょうか。大臣のお考えをお聞かせください。また、被告人本人の意思に反してオンラインでの出席が強制されることは認められず、証人審問権や反対尋問権を保障するために、証人や鑑定人のオンライン尋問は本人の同意がある場合に限るべきと考えますが、そのような運用になっているでしょうか。大臣のご説明をお願いします。

 ビデオリンクの活用がされる一方、現在、被疑者・被告人の弁護人との接見については、対面によるものが基本とされており、遠隔地の勾留者にとって弁護人との接見が困難であることが指摘されています。法務省は平成19年以降、全国9か所(東京、立川、横浜、大阪、京都、神戸、福岡、仙台、札幌の各拘置所)にて外部交通制度を実施していますが、東京、立川及び大阪を除いては電話連絡となるため「オンライン接見」には、ほど遠いと考えられます。さらに、真にリモート化が必要な地方や離島ほど導入が遅れていることや、利用には予約が必要で、通話時間も15分~20分と短いこと、秘密交通権が保障されていないことなど様々な課題があり、全国的な導入と法整備が求められています。そこでお聞きしますが、オンライン接見の法制化こそ、刑事司法のデジタル化に必要ではないでしょうか。また、迅速な助言・連絡手段の充実に向けた具体的な施策について、政府としてどのように取り組まれるおつもりでしょうか。答弁を求めます。

 捜査機関による電磁的記録の提供命令制度についてお尋ねします。

 本制度の創設により、電磁的記録の収集が一層容易になることが見込まれる一方で、その対象範囲が極めて広範に及ぶ点については、プライバシー等の保護の観点から懸念が残ります。たとえば、犯罪と無関係な個人情報や、秘匿性の高い通信記録までが収集・利用されるおそれがあり、企業の内部資料や報道機関の取材源など、本来保護されるべき情報が、捜査の名のもとに目的外利用される危険性も否定できません。

 一方で、身体拘束中の被疑者・被告人に対しては、電子的手段による書類閲覧環境が整っておらず、いまだに紙媒体に限られているのが現状です。これにより、情報へのアクセスに著しい格差が生じています。

 こうした状況を踏まえ、デジタル化の利便性を真に活かすためには、被疑者・被告人にも適切な電子閲覧手段を保障することが不可欠と思いませんか。大臣の見解をお伺いします。

 また、自己の情報を取得される個人・企業・団体に対する不服申し立ての機会が保障されておりません。通常、捜査機関の命令によって情報提供が強制されますが、対象者が事前に異議を申し立てることができず、提供を拒めば刑事罰の対象となるという仕組みは、明らかにプライバシー権を侵害するものではないでしょうか。そうでないのであれば、政府はどのように正当性を担保すると考えているのでしょうか、具体的にお示しください。

 さらに、提供されたデータが適法に取得されたかを精査し、不適切に収集された情報を破棄する仕組みが本法案には明確に定められておりません。これまで、捜査に直接関係のないプライバシー情報をもとに、被疑者に対して脅迫まがいの取り調べや、いわゆる「人質司法」的な尋問が行われているという報告も未だ後を絶ちません。こうした行為は、被疑者の人格権やプライバシー権を侵害するものであり、適正手続の原則にも反する重大な問題です。デジタル機器に保存された情報を科学的手法で調査・分析し、法的証拠として活用するデジタルフォレンジック技術の進展により、削除されたデータの復元が可能になるなど、捜査の精度は高まっていますが、それに比例して、捜査と関係のないデータをもとに、人権侵害リスクが高まることはあってはならないことと思いませんか。データを取得することに重きを置く一方で、取得後の適正な管理・破棄の仕組みが不明確なのではないでしょうか。大臣の答弁を求めます。

 スマートフォンは単なる通信端末だけではなく、キャッシュレス決済や各種金融アプリの利用を通じて、個人の財産そのものとも言える存在になっています。本制度の下では、スマートフォンに保存された決済履歴や暗号資産の管理データまでもが提供の対象となり得るのではないでしょうか。これは事実上の資産押収に近い措置であり、財産権の侵害にもつながる可能性があると考えます。この点について、政府はどのような保護措置を講じるつもりなのでしょうか。大臣の答弁を求めます。

 自己負罪拒否特権についても伺います。憲法第38条は「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」と定めており、自分に不利益な証拠の提出を強制されないこともその趣旨に含まれると理解しています。スマートフォン内のデータ提出を強制するこの提供命令は、結果的に自らに不利益となる証拠を自分で提出させられることになり、憲法上の自己負罪拒否特権に抵触しかねないのではないでしょうか。とりわけ、スマートフォンのロック解除やパスワードの開示を求める行為は、本人に秘密の情報を喋らせるのと同じではないでしょうか。大臣の答弁を求めます。

 また、このデジタル化の波は司法に関わる人々自身にも及びます。裁判官や検察官、警察官はもちろん、弁護士をはじめとする法律の専門家の中にもIT対応に戸惑う方が少なくありません。法案を実効性あるものにするには、人材のデジタルスキル向上も不可欠です。そこでお聞きしますが、司法関係者全体のデジタル対応力を高めるために、研修の実施や専門人材のサポートなど何らかの向上策を講じる予定はありますでしょうか。また、その点について具体的な取り組みはありますでしょうか。大臣の答弁を求めます。

 新たな犯罪の増加と対策について質問します。今回の法案では、電子データの文書偽造罪の新設が盛り込まれております。紙の文書に限らず電子ファイルの改ざんも処罰対象とすることで、例えば他人や架空の人物になりすましてネット上に虚偽の情報を発信するような行為にも対処できるようになります。デジタル社会の進展に伴い、これまで想定されていなかった新手の犯罪に法の網をかける意義は大きく、必要な措置だと考えます。

 一方、電子データの偽造という犯罪を新設する際、例えば、SNS上に安易に投稿された軽微な違反に対し、過度な処罰が行われてしまう危険性はないでしょうか。本法律の趣旨に反した使われ方がなされないよう、運用面での監督やガイドラインの整備は十分でしょうか。大臣の答弁を求めます。

 また、既存の詐欺罪やサイバー犯罪に関する法体系との適用関係も整理が必要だと思います。同じような行為がどの罪に問われるのか不明確なままでは、現場で混乱が生じかねません。新しい犯罪類型を導入することで実効性が高まる一方で、運用面の不安が残らないよう十分な検討が求められると考えます。そこでお聞きしますが、電子データの偽造罪と、現行の詐欺罪や不正アクセス禁止法など他の関連法規との境界線や適用範囲について、政府はどのように説明しているのでしょうか。大臣のご見解を伺います。

 以上、質問させていただきました。日本の刑事司法を時代に合った形にアップデートしていくことは不可欠だと思っていますが、国民の皆様が安心してこの変化を受け入れられるよう、情報セキュリティや適正手続、権利保護などの懸念点について政府として真摯に向き合い、丁寧に対応していただくことが重要です。ぜひとも前向きで具体的な答弁をお願い申し上げ、私の質疑を終わります。ご清聴、ありがとうございました。