ニュースリリース
【参本会議】伊藤孝恵議員が大学等修学支援法改正案に対する質疑

伊藤孝恵広報委員長(参議院議員/愛知県)は26日、参議院本会議で議題となった大学等修学支援法改正案に対する質疑を行った。質疑の全文は以下のとおり。
令和7年3月26日
大学等における修学の支援に関する法律の一部を改正する法律案に対する質疑
国民民主党・新緑風会 伊藤孝恵
国民民主党・新緑風会の伊藤孝恵です。私は会派を代表し、ただいま議題となりました法律案について質問します。
「何故、あなたは大学等で学ぶのか」
私たちはこの法律に、立法府の真意と期待を添えて、子ども達のもとに送り出す必要があります。そして、それは我が国で生きる全ての子ども達に向けられるべきものであり、親の所得や兄弟の数が、分断要素となってはいけません。
阿部文部科学大臣に伺います。高等教育の修学支援新制度のみならず、高等学校等就学支援金や高校生等就学給付金、義務教育段階の就学援助など、教育費の負担軽減策には所得制限のあるものが多数ありますが、その金額や根拠に一貫性はありません。
資産の有無や、不登校、介護や障がいのある兄弟のケアなど、家庭内にある困難度を加味しない、収入のみに着目した所得制限は、再配分政策として適当ではないと指摘する識者もいます。
子どもの学びや育ちに線引きは必要ありません。制度を抜本的に見直す必要があると思います。ご所見を伺います。
次に、政策決定までのプロセス及び立法事実について伺います。2023年6月に閣議決定された「こども未来戦略方針」では、「2024年度から多子世帯や理工農系の学生等の支援を、世帯年収およそ600万円の中間層に拡大することに加え、執行状況や財源等を踏まえつつ、多子世帯の学生等に対する授業料等の減免について更なる支援拡充を検討し、 必要な措置を講ずる。」との記載にとどまっていたところ、12月のこども未来戦略会議では 多子世帯の所得制限撤廃の方針が提示されました。半年間で、一体どのような検討がなされたのか?特に多子世帯の生活困窮度と、子どもの進学率の数字的根拠を用いて文科大臣、ご説明ください。
学校基本調査によれば、昨年度の大学進学者は62万8,766人。進学率は59.1%と過去最高を更新しました。数字を押し上げているのが、出身高校の所在地が47都道府県にはない「その他」に分類される外国の学校卒業者等の2万1,410人で、前年よりおよそ6,00 0人増加しています。校種別にみると国立大学は51人、公立大学は2人であることから、私立大学による受け入れが大半であることが分かります。
また、都道府県別で進学率1位の東京は74.2%、47位の沖縄は46.7%と、各自治体において独自の教育費負担軽減策が進められた結果、地域間格差が拡大しています。 各教育段階において、どのような支援を国が全国に均等で保障すべきで、どのような支援を地方自治に基づく判断に委ねるべきか、国と地方の役割分担および、外国の学校卒業者等の急激な増加に係る認識について、文科大臣の答弁を求めます。
地域間格差は生活保護世帯の進学率にも顕著に表れています。現行の制度では、生活保護を受けながら、子が大学等に進学することは認められておらず、世帯分離をすることに なります。結果、当該子が生活保護の受給対象から外れ、保護費の支給額が減少することが、進学を妨げています。
厚生労働省の調査によれば、石川県のように進学率が5割を超える都道府県がある一方で、隣接する福井県では2割を下回り、最大で4倍近い地域差があります。一般世帯の進学率も、都道府県格差があるものの、その差は最大1.3倍程度であることから、この数字がいかに特異であるかが分かります。
本法律の趣旨に鑑み、困窮家庭を支援する団体や大学の支援体制など、格差の要因分析と改善が急務だと思われますが、文科大臣のご見解を伺います。
生活保護世帯の進学の理不尽や、海外に比べて著しく見劣りする「GDPに占める公財政教育支出の割合」は、教育無償化の本質的な意義が「次世代への人的投資」だという認識が共有されていないことに起因します。
質の高い教育を受けた子ども達は、やがて経済的自由のある納税者になります。またその効果は次の世代にも及び、持続的な経済成長の基盤となることが近年の研究で明らかになっています。
また、経済界においても、人的資本投資と株価のプラス相関を示した定量分析も進んでおり、教育支援と税収や潜在成長率との相関を示すことも可能です。加藤財務大臣及び赤澤内閣府経済財政政策担当大臣に、国による調査研究の必要性について認識を伺います。
しかして、教育支援は個の豊かさのみならず、我が国のイノベーションの促進と、労働生産性の向上、更には社会保障費用の抑制など、財政基盤を強化する投資としての性格を持つと考えますが、文科大臣および財務大臣のご見解を伺います。
2000年代に入ってから、我が国が社会保障費の増大を言い訳に、教育や研究予算を減らす中、アメリカは2.7倍、韓国は5.3倍、中国は24.5倍の投資を子どもや若者たちにしてきました。今や中国は、先端技術ランキング全44項目のうち37項目で1位です。
人しか技術やサービスは生み出せません。1つの優れた技術が、企業となり、産業となり、 雇用や競争力が生まれ、経済を成します。
今般の高校授業料無償化の財源は、「行財政改革で捻出する」とのことですが、大学運営費交付金を削れば必ず基礎研究に支障を来します。高等教育、特に博士課程の日本人学生への支援を削れば我が国のイノベーションの種はついえます。今後の行財政改革の方向性について、文科大臣および財務大臣に答弁を求めます。
修学支援新制度の2025年度予算案についても伺います。国と地方の所要額は7,025 億円とされ、その内、多子世帯の所得制限撤廃には2,600億円を要するとされる一方で、2 4年度予算の金額と、25年度予算案の金額差は1,094億円と、多子世帯の所得制限撤廃以外の、既存部分の予算が縮減されています。具体的にどの支援区分が縮減されているのか?また、どのような理由で縮減されたのか?財務大臣に積算根拠の説明を求めます。
2019年の制度創設時、国会審議において政府は、「低所得者世帯の進学を後押しする。 今回対象となる住民税非課税世帯及びこれに準ずる世帯の進学率は現状4割であります が、これを全体の進学率8割まで上げることを目指していく」と、答弁されています。6年目の 春、進学率はどうなりましたか?また、25年度予算案の既存部分の予算縮減に伴い、進学 率の目標は後退していませんか?文科大臣に確認します。
平成元年(1989年)と比べて現在、国立大学の授業料はおよそ20万円、私立大学の授業料は文系およそ35万円、理系およそ50万円値上げされ、奨学金受給率は21.8%から49. 6%に跳ねあがりました。
一方で、世帯年収は471万円から440万円に下がり、国民負担率は37.9%から46. 8%にあがり、貯蓄ゼロ世帯は6.7%から23.1%に上昇しています。特に29歳以下の税負担率は、1996年から2022年の26年間で17.7%から30.4%と、ほぼ倍増です。
理想の子どもを持たない理由に「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」と答えた夫婦の数は1992年の30.1%から、2021年は52.6%に大幅に増えました。手取りは増えないのに、負担ばかり増やした政治の失策です。
政府の今後の「手取りを増やす」経済政策、具体的な可処分所得および、可処分時間の増加策を、内閣府経済財政政策担当大臣に伺います。
必要な政策を、財源論を理由に着手出来ない内に、我が国からは子どもが消えます。子どもが消えるということは、イノベーションも可能性も、そして国も消えるということです。国民民主党は、用途を教育や研究に限定した教育国債を提案しています。教育国債で教育予算を賄った場合、受益者が債務返済者となることから「将来世代への負担の先送り」 にはなりません。
財務大臣に伺います。現在、財政法で認められているのは橋や道路をつくる為の「建設国債」のみですが、政府はそれを育英会や大学ファンドに流用しています。それらの予算規模および、流用はいいのに、教育国債はダメな理由について、教えて下さい。
最後に。AI などの進歩によって、記憶された知識の価値は相対的に下がっています。近未来では、学力とは偏差値ではなく、プロンプト、つまり「AI に対して指示や質問する力」のことになるかもしれません。
自らが問いを立て、データをもとに考え、判断し、行動する力は、受け身の進学の延長にはありません。
社会は課題に溢れています。それを解決しようとする主体性や当事者性を、子ども達が今日もそれぞれの学び舎で育むと共に、人生を豊かにする出会いと経験が其処にあることを願いつつ、私の質問を終わります。