ニュースリリース
【参本会議】榛葉幹事長がGIGO設立条約ついて質疑
榛葉賀津也幹事長(参議院議員/静岡県)は29日、参議院本会議で議題となった「GIGO設立条約」に対して質疑を行った。質疑の全文は以下の通り。
「GIGO 設立条約」に対する質問
令和6年5月29日
国民民主党・新緑風会 榛葉賀津也
私は、国民民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました「GIGO 設立条約」に対し、外務・防衛両大臣に質問いたします。
議論に先立ち、日本における防衛装備移転の変遷を振り返りたいと思います。我が国は、戦後間もない1950年代前半、貴重な外貨獲得の手段として、在日米軍向けに武器の生産を行い、50年代から60年代にかけては榴弾やピストルなど日本製武器をタイ、ビルマ、台湾といった東南アジア等に輸出していました。また、いわゆる朝鮮特需では進駐軍との物資契約の内、兵器及び関連部品は1950年から53年の4年間で11,200万ドルにまで増加し、全体の14.5%を占めるまでになりました。
防衛大臣にお伺いします。その日本が、どのような背景で「1967年・佐藤総理の“武器輸出3原則”の政府答弁」、更には「1976年三木総理の実質的な全面禁輸の政府統一見解」に至ったのか、国民にわかりやすく説明をお願いします。また、三木内閣における武器輸出禁止地域以外へも「輸出を慎む」いわば実質的な全面禁輸政策とは如何なる内容であったのか防衛大臣にお伺いします。
1983年に「対米武器技術供与取極」を締結し、以降、共同開発・生産など18回の個別の例外化で防衛装備品の移転を許可しましたが、その後、民主党政権下の2011年には官房長官談話として「防衛装備品等の海外移転に関する基準」が発出され、「平和貢献・国際協力」に関する案件と「国際共同開発・生産」に関する案件が、個別ではなく、初めて類型として例外化されました。私は、この民主党政権による包括的例外措置が、現在に至るまでの防衛装備移転への歴史的な転換点であったと思いますが、防衛大臣のご所見を伺います。
激動する国際情勢の中において、我が国の防衛装備の移転の変遷は、平和国家としての基本理念を維持しつつ、いかに国益と国家の安全を維持するかという葛藤の歴史でありました。戦争を防ぐ一番の方法は確かな抑止力です。国民民主党は、抑止力を高めるための重要な要素である防衛装備移転についても、現実的で偏らない議論を続けて参ります。
GIGO設立条約についてお伺いします。本条約を精査すると、現状、多くが英国・イタリアと「協議中」であり、詳細は未確定という状況です。政府にはGIGOに関する説明責任と透明性の確保を強く求めます。まず、GIGOの職員数が全体では300名程度で日本からの派遣職員が約100名、そして開発費の分担比率については日本と英国が4割、残り2割がイタリア、との報道がありますが、これは事実ですか。また、ワークシェアは出資比率に準ずる見込みですか、防衛大臣お答えください。
国民民主党はGCAPによる次期戦闘機の共同開発を理解し支持しますが、政府は国民に対して、次期戦闘機の共同開発について、メリットだけでなくリスクについても正直に説明すべきです。そもそも、なぜ次期戦闘機が必要なのか、なぜ共同開発でなくてはならないのか、日本単独開発の試算は存在するのか、なぜアメリカでなく英国とイタリアとの開発なのか、英国・イタリアがGIGOから離脱する可能性はないのか、日本が次期戦闘機に求める能力は確保されるのか、これら国民が感じる素朴な疑問に防衛大臣お答えください。
次に、次期戦闘機の第三国移転についてお伺いします。政府は第三国移転の理由として、生産数を増やしてスケールメリットを活かしたコストダウンであり、また、日本だけが輸出を拒否すれば、開発に向けた3ヶ国間の協議が不利になるとしています。政府のその説明は理解します。現在、米国の第5世代機であるF-35ステルス戦闘機は総発注数が3,500機に迫っています。F-35はなぜ売れるのか。それは F-35が性能に優れ、各国が国防のために必要だと判断するからです。誤解を恐れずに言えば、共同開発される次期戦闘機が性能やコスト面でF-35に勝る物でなければ、意味がありません。国際市場からそっぽを向かれ、新たな戦闘機を導入するのが日英伊の3ヵ国だけになれば、単価は大幅に高騰します。新戦闘機の性能は具体的にどの点がF-35に勝るのか防衛大臣にお伺いします。
次に、次期戦闘機に搭載予定であった「次期中距離空対空誘導弾・JNAAM」についてお伺いします。JNAAMは日本の優れた小型・高性能電波シーカーと英国主導の欧州6ヶ国で共同開発したミーティアを組み合わせる日英共同プロジェクトでしたが、昨年度プログラムが終了しました。関係者からは日英の共同開発の枠組みがそもそも不十分であったと指摘されています。なぜ JNAAM の日英共同研究が頓挫し、日本が期待する形とならなかったのですか。JNAAM の総括なくして、GCAPの成功はあり得ないと多くの関係者が不安を感じています。防衛大臣の説明を求めます。
「これは短い恋愛ではなく結婚だ。今後40年のプログラムで後戻りはできない」。英国のウォレス国防相は日・英・伊の共同開発についてこう語りました。共同開発から運用終了までおよそ40年。その間、戦闘機の中核技術を共有する3ヶ国は、安全保障上、切っても切れない準同盟国の関係となります。他方、GIGOの運営やそれぞれの国が優先する性能の搭載などを巡って 3 ヶ国の利害がぶつかり合う主導権争いが始まります。政府は「日本主導の開発」が確保できることを強調しますが、根拠が不明瞭です。戦闘機の国際共同開発機関に初めて参画する日本に対し、英国とイタリアはユーロファイター・タイフーンなど豊富な共同開発の実績があり、両国相手の交渉は楽観視できるはずがありません。日本主導の共同開発について防衛省は、①日本が求める主要な要求性能をすべて満たすこと ②将来にわたって適時適切な改修の自由を確保できること ③高い即応性を実現する国内生産、技術基盤の確保を実現することを掲げ、これまでの日英伊の協議を通じてこれらすべてを実現できる確信が得られたとしていますが、その根拠は何ですか。防衛大臣の説得力ある説明を求めます。
GIGOの本部は英国に設置され、実施機関の初代トップが日本、民間の共同事業体の初代トップがイタリアとなることが決まっています。しかし、その後の説明で、実施機関と共同事業体の二代目以降のトップについては3ヶ国での持ち回りになることが明らかになりました。初代のトップを日本とイタリアに譲りながらも、動かすことの出来ない本部を自国に置くことに成功した英国が、既に共同開発の主導権を握ったとも言われていますが、外務大臣の見解を求めます。
最後に秘密保全についてお伺いします。次期戦闘機の共同開発において、最も重要な点は秘密保全です。GCAPやGIGOを巡る協議において、英国・イタリアとは、3ヶ国におけるサイバーセキュリティーの基準について、どのような議論が行われたのか、防衛大臣にお伺いします。英国のサイバーセキュリティーセンター長官や英国軍サイバー防衛戦略の統括司令官は、日本のサイバー防衛強化に期待の意を表し、米国のデニス・ブレア元国家情報長官も「日本のサイバー対策は不十分で、情報の共有をためらう」と忠告しています。能動的サイバー防御を導入していない日本は共同開発の主導権を握ることが極めて難しくなるばかりか、開発に関する機密が漏れれば、我が国の信頼は地に落ちます。政府は、能動的サイバー防御をいつまでに導入し、それまでの間、サイバー上の機密保全をどのように担保していく考えかを外務大臣にお伺いして、私の質問を終わります。