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ニュースリリース

【参本会議】伊藤孝恵議員がデジタル社会形成基本法等改正案について質疑

 伊藤孝恵議員(参議院議員/愛知県)は15日、参議院本会議で議題となった「情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律案」に対して質疑を行った。質疑の全文は以下の通り。


 国民民主党・新緑風会の伊藤孝恵です。私は会派を代表し、ただいま議題となりました法律案について、河野デジタル大臣に質問致します。

 この身を引き裂いて我が子を産んだのち、待っているのは全身疲労と、ホルモンの乱高下、乳房の痛み、そして膨大な数の書類手続きです。

 出生後14日以内には、戸籍法第49条に基づいて、出生届を市区町村長に提出しなければなりません。同じく14日以内の国民健康保険加入届提出が、国民健康保険法第9条1項に義務付けられています。保険証が届いたらすぐさま、自治体条例に基づいて乳幼児医療費助成の申請をし、母子保健法に則って乳幼児健診の手続を行い、健康保険法に定められた出産育児一時金の申請を病院または健康保険組合の窓口ですると共に、児童手当の申請を直ぐにしなければいけません。児童手当法および施行規則によって、受給資格と手当額の認定請求は、15日以内にしなければ、受けとれる筈の手当てが受け取れず、期間を遡って支給することも出来ないとされている為です。

 基、デジタル時代においては、遡る必要はなく、出生届が出されたと同時に児童手当の申請はされたとみなし、追加的に必要な情報は、利用者にプッシュ型で求めれば事は足ります。

 大臣に伺います。申請窓口も期限もバラバラで、手続き毎に必要な書類が異なるため、利用者の大きな負担になっています。政府が主導するデジタルガバメント実行計画には、行政手続きをデジタルのみで完結させる“デジタルファースト”、申請者が情報の提出を一度で済ませられる“ワンスオンリー”、複数の行政機関にまたがる手続きを一度の申請で完了する“コネクテッド・ワンストップ”が、徹底すべき三原則として示されています。現実世界との、この著しいギャップについて、ご所見を伺います。

 産後の手続きはまだまだ続きます。傷病手当金、出産手当金、育児休業給付金に医療費控除申請、帝王切開の場合は高額療養費や医療保険の申請も必要で、そうこうしている内に、あっという間に2カ月が過ぎ、赤ちゃんの予防接種デビューの日がやってきます。スタートダッシュが肝心の0歳児ワクチンの同時接種や間隔のマネジメントは想像を絶する煩雑さで、何度も同じことを記入する予診票の枚数は、半年間で15枚をゆうに超えます。

 大臣に伺います。令和5年6月9日閣議決定の、デジタル社会の実現に向けた重点計画のうち、オンライン化を実施する行政手続き一覧表の「地方公共団体が優先的にオンライン化を推進すべき手続」に掲げられている15項目の中に、厚労省所管の予防接種予診票、国民健康保険加入届、出産育児一時金申請、法務省所管の出生届、内閣府所管の、乳幼児健診手続きおよび自治体条例に基づく乳幼児医療費助成申請が入っていない理由と、今後のオンライン化の見通しをお聞かせください。

 併せて、デジタル庁の「自治体での子育て・介護関係の26手続のオンライン化取組状況に関するダッシュボード」を確認すると、令和5年3月31日時点で、オンライン化が完了した自治体は1,133、全体のおよそ65%に過ぎません。政府として、取組が遅れている35%の自治体のボトルネックは一体何で、今後どのような支援を行っていくのか?特にシステムの標準化と、地域の独自性・柔軟性の両立を如何にして実現するのか?ご所見をお聞かせください。

 利用者にとっては、申請窓口が何処であろうと、所管省庁や根拠法が何であろうと、1つの窓口にアクセスすれば、行政全体の支援を、取りこぼしなく得られれば良いのです。国・都道府県・市区町村という三層構造の行政は、アナログ環境の中での最適であって、デジタル時代の適当とは限りません。

 大臣に、ワン・ツー・ワン(1対1対応)、ワンストップ(窓口一元化)、およびワンモアプッシュ(もう一押しの能動的なサービス提供)という“3つのワン”の行政サービスを実現していただきたく、具体的な工程や優先順位、時間軸を含めた御見解を伺います。

 次に、ベース・レジストリ(公的基礎情報データベース)について伺います。行政によって確認・登録された、信頼性・正確性・最新性が担保されたデータの整備は、デジタル社会の絶対条件です。ただ、そのデータは本当に信頼できるデータなのか?更には、アクセス出来る人の信頼性は担保されているのか?2つの観点で、大臣に質問致します。

 先ず、データそのものの信頼性についてです。マイナンバーカードの不正取得や偽造が横行している中で、どのようにデータの持ち主が主張する本人性を確認出来るのか?大臣の認識を伺います。また、データや履歴が改ざんされたものでないことを、電子署名やブロックチェーンなどで担保することが必須だと思いますが、我が国には、米国のNIST(アメリカ国立標準技術研究所 National Institute of Standards and Technology)のような政府機関がない中、如何なる体制でデータを運用・管理していくのか?ご見解を伺います。

 次に、データにアクセス出来る人の信頼性、とりわけマイナンバーシステムの開発者のセキュリティ管理が脆弱だとの指摘があります。自治体職員によるマイナポイントの不正受給も現に起こっていることから、大臣の、開発者および運用者への対応の御認識を伺います。

 ベース・レジストリ先進国のデンマークの試算によれば、整備におよそ120億円投資したところ、人件費やデータ管理費の圧縮など、15年間でおよそ1,500億円の効果が得られ、12.5倍の投資対効果があったと報告されています。大臣に、我が国のベース・レジストリの整備スケジュールおよび、データの流通・利活用イメージ、投資対効果の見立てについて伺います。

 今回の法改正では、法人の決算情報を整備すると承知しています。EBPMを標榜しながら、全くエビデンスに基づかない意思決定が横行する永田町の現状に一石を投じるものと期待しています。

 例えば昨年12月、業界団体が所管省庁を通じて提出した税制改正要望の内、財務省や総務省による事前審査で「バツ」と判定された8項目のうち、自民党税調幹部の一声で「マル」に覆ったものが7項目ありました。毎年、師走の税調会合直前の自民党本部には、業界団体の関係者がひしめき合い、プラカードを持って議員に自団体への税制優遇をアピールするのが恒例だといいます。

 利益誘導の政治、口利きの政治、それらに連なる裏金の政治を是正する力が、データにはあります。業界団体への影響力を保つため、高額の寄付金を集めるため、そんな瑣末な欲望で政策にゆがみを来すなど、もはや許されない我が国の深刻な凋落を、政治家は直視すべきです。

 今後は、租特や税制優遇を受けた企業が、実際に業績を伸ばしたのか、イノベーション投資をしたのか、労働者に還元したのかなど、エビデンスの実態たるデータを開示し、それらを用いて合理的に判断していくことが可能です。

 データ戦略とベース・レジストリの本旨は、単なるデータ整備ではなく、データを基に、エビデンスベースで科学的に業務を捉え、意思決定することを当たり前にする、とどのつまり、慣行の是正だと考えますが、大臣の見解を伺います。

 マイナンバー制度についても伺います。昨年8,395件のマイナンバーの、ひも付け誤りが発覚しました。デジタル庁は、公金受取口座の誤登録について、個人情報保護委員会の立入検査を受け、行政指導に至りましが、4月25日には、厚生労働省でも、健康保険証の、ひも付け誤りが545件あったことが公表されました。

 マイナンバー制度への国民の信頼は失墜し、連日報道される、偽造マイナンバーカードを用いたインターネットバンキングの口座開設や、携帯機種変更、SIMカード購入など、不安は広がるばかりです。大臣に対応策を伺います。

 河野大臣は今、見えないものを見せなければいけないミッションを負っています。まだはっきりと見えないデジタル社会の姿を語り、そのメリットのみならず、デメリットを同時に提示し、救済措置も備えていることを伝えて初めて、数多の懸念と反対の声の対案となり得ます。

 デジタルには必ず不具合や誤りが起こります。間違えないことを正義としたり、バグがないことを前提にするのではなく、バグがあった時の例外処理規定を明確にしておく、それが大臣に課せられた責務です。

 マイナンバー制度は行政デジタル化の核となるものだからこそ、不具合についての説明を怠らず、近視眼的な誘導施策や小手先の名称変更に固執せず、利便性が向上した事例の積み上げやプライバシー保護、デジタルデバイド対策などに邁進して頂きたいと思います。大臣の見解を伺います。

 最後に。高齢化が更に進んだ2040年、現役世代は現在の8掛けとなり、2050年に至っては、全国の自治体のおよそ4割が消滅する可能性があるといいます。人口減少を前提として未来の姿を想定し、そこから今の在り方を定める「バックキャスティング」の考え方に立てば、デジタル化や広域連携は、自治体行政サービス維持の肝中の肝です。

 一度失ったマイナンバー制度への信頼を再構築するためには、デジタル大臣に、礼を尽くし、言葉を尽くし、説明や責任から逃れずに汗をかいて頂くしかありません。どうか異なる意見を疎まずに、その言の葉の中にこそ課題の本質を見出して頂くことを殊更強く求め、私の質問を終わります。