国民民主党 つくろう、新しい答え。

ニュースリリース

【参本会議】伊藤孝恵議員が令和6年度予算案について反対討論

 伊藤孝恵組織委員長(参議院議員/愛知県)は28日、国民民主党を代表し、参議院本会議で議題となった令和6年度予算案に対する反対討論を行った。討論の全文は以下のとおり。

 国民民主党・新緑風会を代表し、ただいま議題となりました令和6年度予算三案に対し、反対の立場から討論を行います。

 私が、就職活動で100社もの会社に落ちた1997年、北海道拓殖銀行や山一證券が相次いで経営破綻しました。バブル崩壊後の日本経済を襲った金融不安は、消費を鈍らせ、融資を衰えさせ、企業の設備投資を凝らせました。 
 長引くデフレと実質賃金の低下、経済成長力を失った社会の中で、雇用は不安定化し、若者は奨学金という名の借金返済に追われ、はびこる性別役割分担意識が、働く女性をせめぐ中、いつしか、我が国の少子化の底は抜けました。

2023年の日本の出生数は75.8万人、1990年は122.1万人
あの年、「1.57ショック」に対して正しい危機感を持ち、対策を打てたのは、一体誰だったのか?

2023年の日本の1人当たりGDPランキングは34位、1990年は8位
あの頃、どんどん貧しくなっていく国民の所得を守れたのは、一体誰だったのか?

2023年の日本の世界競争力ランキングは35位、1990年は1位
あの瞬間、競争力を失わない為の人的資本投資やデジタル革命を決断出来たのは、一体誰だったのか?

2022年の日本の過疎化率は51.5%、1990年は38.3%
あの時代、東京一極集中以外の選択肢を創れたのは、一体誰だったのか?

 「失われた30年」を創ったのは、言うまでもなく政治であり、これらの検証と反省のもとに、国家の予算は編成されるべきです。
 今般、春闘の賃上げ率は2年連続で前年を大きく上回り、1991年以来、33年ぶりに5%台を達成しました。
 まさに、ここからが正念場です。中小・小規模事業者の価格転嫁対策を徹底し、ガソリン代・電気代などのエネルギーコストを抑え、そうして生まれた企業の利益を、労働者の賃上げの原資とする。
 日本社会の構造的、根本的な課題である賃金デフレの脱却に向け、千載一遇の好機が今、目の前にあります。

 しかしながら本予算には、この危機感が通底せず、何ともちぐはぐな施策が並び、到底賛成することは出来ません。以下、本予算に反対する主な理由を申し述べます。

 反対の第一の理由は、賃上げの機運を、中小企業や非正規雇用労働者、地方に波及させる内容になっていない点です。
 この10年間、企業の営業収益は年率1.6%しか増えていないにも関わらず、社会保険料負担は年率3%で伸びています。
 「こども・子育て支援金制度」は、現役世代に重くのしかかるステルス増税であることや、保険料の目的外使用が問題であることのみならず、企業にとっても社会保険料の更なる負担増となり、賃上げ抑制要因になりかねません。言わずもがな、社会保険料は総人件費であることから、雇用抑制と非正規化を進める原因にもなります。

 加えて、ガソリン価格高騰対策についても、会計検査院が、あれほど補助金が消費者ではなくガソリンスタンドの利益に回っている可能性を指摘していたにも関わらず、燃料油価格激変緩和対策事業を継続することは、到底看過できません。
 2022年1月から補助金が始まり、既に2年以上が経過しました。総理は近く7度目の延長を表明されるそうですが、延長幅は6月末で調整に入ったとのこと。
 先ず、5月以降も補助金を続けられるのであれば、予算案を組み替える必要があります。予備費の中で、中途半端な延長をするなど、おためごかし以外の何ものでもありません。
 また企業の経営者が、たった2カ月の補助金延長を拠り所として、安心して従業員の給料を上げられると思われますか? リッター175円前後で高止まりするガソリン価格に、今日も頭を抱える生活者を支えることが出来ますか?
 トリガー条項凍結解除と共に、暫定税率、二重課税を見直す事でガソリン価格を引き下げ、再エネ賦課金の一時徴収停止によって電気代の負担軽減を図る。更には、安定的に賃金上昇率が物価上昇率プラス2%になるまでの間、消費税率を10%から5%に引き下げ、伴ってインボイス制度を廃止する。
 賃金と物価の好循環の為には、総理が拘泥する「一度きりの所得税の定額減税」より、国民民主党の提案の方が余程、効果をまみえるはずです。

 反対の第二の理由は、異次元の少子化対策が、家族政策先進国であるスウェーデン並になったと、事実を歪曲されている点です。
 施政方針演説で岸田総理は、少子化対策が画期的に前進した根拠として、家族関係支出の水準がOECDトップのスウェーデンに並ぶ、GDP比16%になったことを挙げられましたが、それらは「18歳以下人口1人当たりの家族関係社会支出」という日本独自の計算式によって昨年11月に突然、財政審で登場したモノサシであり、国際比較可能なGDP比では、2%が2.4%になっただけで、スェーデンの3.4%には、未だ至っておりません。スウェーデン並でないのにスウェーデン並と喧伝するのは、国民を欺くトリックです。

 政府が本来見るべき数字は、例えば、2020年の内閣府・国際意識調査、「自国は子どもを産み育てやすい国だと思うか?」の問いに、とてもそう思うと答えたのは、日本4.4%、スウェーデン80.4%、両国には76%の開きがあります。この隔たりは何によって生じているかを考え、スウェーデンの制度に学ぶのが政治家である筈が、机上の数字のみをスウェーデン並にするために、知恵を絞るなど言語道断です。

 他にも着目して頂きたい数字があります。実質賃金の低下と出生数の低下の相関係数は「0.93」強い相関関係があります。
 また、婚姻数の減少と出生数の低下の相関係数は「0.95」こちらもかなり強い相関です。
 更には奨学金利用者の増加と出生数の低下の相関係数は「-0.90」明確な相関が確認できます。

 これらを鑑みれば、異次元の少子化対策とは、若者世代、子育て世代の異次元の可処分所得対策であり、一日も早く教育無償化を実現し、子ども達を奨学金返済から解放し、結婚や出産がリスクだと感じない社会を創るのが「失われた30年」を「失われた40年」にしない為に、今、私たちが決断すべきことです。
 その意味で、扶養控除の維持・拡充と、年少扶養控除の復活については、検討するかしないかではなく、もはや其れは少子化対策の前提であることを改めて強く申し上げます。

 加えて、反対の第三の理由は、能登半島地震の復旧・復興支援に必要な予算が盛り込まれていない点です。
 高齢化率48.9%の奥能登を、元日に巨大地震が襲いました。被災地の一日も早い復旧・復興を願ってやみません。
 復旧、とりわけ生活支援と生業の再建を急がないと、若い人の流出が止まらず、街の高齢化に更に拍車をかけます。

 この間、政府は令和五年度予算における予備費からおよそ2,800億円を使用したのみで、本予算においては、具体的な事業を提示しておりません。
 今すぐ、被災者生活再建支援金の上限額と国庫補助率を引上げ、臨時特例交付金を増額し、適用地域を拡大して下さい。復旧なくば、復興もありません。本予算には、被災地に向けられた想いもスピードも足りないのです。

 最後に、反対の第四の理由は、平時への回帰を主張しながら、未だに積算根拠が不明瞭な予備費や基金を積み増している点です。
 特に予備費については昨年、会計検査院が、積算の杜撰さや繰越、流用、目内融通など、著しく規律を欠いた各府省の執行状況を明らかにしました。予備費は国会による事前議決原則の例外だからこそ、会計法令に則った適正な運営をしている事を、積極的な情報公開によって証明しなければなりません。それが全くなされていない現状を、黙認する訳には参りません。

 以上、本予算に反対する主な理由を申し述べました。

 昨夜、岸田総理による安倍派幹部への事情聴取の中で「キックバックの再開判断に森元総理が関与していた」旨の報道がありました。
 自民党の組織的な裏金づくりの背景には、閉鎖的な風土や長老支配、時代錯誤を時代錯誤と、間違っているものを間違っていると、断罪出来ない忖度や慣れ合いの弊害があり、それらが今や、民主政治の機能不全を引き起こすバグになっています。
 結局、政治はそんなもの、政治家は変わらない、そんな諦め感や軽蔑が、社会の閉塞感や生きづらさにも連なっています。
 果てなく広がる格差や孤独・孤立の中で、政治の力が必要なのは、いつだって、政治家の知り合いなどいない人たちです。

 国民民主党は、寄せられた1つ1つの声に社会課題の本質を見出し、建設的な提案に変えていく。そんな一途な決意を申し上げ、私の討論を終わります。