ニュースリリース
【衆本会議】玉木代表が岸田総理の所信表明演説に対する代表質問で登壇
玉木雄一郎代表(衆議院議員/香川2区)は25日、衆議院本会議において、岸田総理大臣の所信表明演説に対する代表質問を行った。全文は以下の通り。
第212回国会における岸田内閣総理大臣施政方針演説に対する代表質問
令和5年10月25日
玉木雄一郎(国民民主党・無所属クラブ)
(3年連続賃上げにコミットを)
国民民主党代表の玉木雄一郎です。まず、「賃上げ、賃上げ、賃上げ」と三唱させていただきます。賃金が上がれば年金も上がります。賃金があれば子育てもしやすくなります。結局問題は賃金なのです。また、私が3回申し上げたのは、本当に経済を新しいステージに移行させるには、少なくとも今年、来年、再来年と3年連続の賃上げが不可欠だからです。総理、一国のトップリーダーとして、賃上げ実現のメッセージをもっと力強く出してください。岸田内閣では3年連続の賃上げを何としても実現する。そのためにあらゆる政策手段を講じる。それぐらい言ってください。総理の決意を伺います。
(中小企業における賃上げ)
今後の持続的賃上げのポイントは、中小企業の賃上げです。しかし、中小企業や下請け企業では、賃上げに必要な価格転嫁は簡単ではありません。運送業や農業はその典型です。昨年、公正取引委員会は、燃料費や人件費などのコスト上昇分を取引価格に反映する協議をしなかったとして佐川急便などの社名を公表しました。価格転嫁において優越的地位の濫用がないか、業界大手にこそ公取や下請けGメンは積極的に入るべきです。総理の考えを伺います。
(税収増の見通し)
次に経済です。内閣府は、今年度の名目GDP成長率を4.4%と予測しているのに、税収は昨年度から2兆円減る予想になっています。奇妙です。意図的に税収を低く見積もり、増税が必要と言っているのではないですか。税収に関する総理の基本認識を伺います。
一昨年度は約10兆円、昨年度は約6兆円の税収の上振れ、そして今年度も、1997年以降の税収弾性値の平均値を当てはめると79兆円程度の税収になり、約10兆円の上振れが見込まれます。そうなれば、目標の2025年を待たず、来年度にはプライマリー・バランス黒字化を前倒しで達成します。しかし、早すぎる財政再建のペースは、かえって経済を減速させます。現に4月-6月の消費はマイナスになっています。今やるべきは増税ではなく減税です。国民民主党は、国民に直接届く「生活減税4本柱」を中心とする経済対策を取りまとめました。
(所得税減税)
まず、所得税減税です。税収の上振れ要因の一つは所得税の増収です。30年ぶりの賃上げにより、所得の増加率以上に税収が増える「ブラケット・クリープ現象」が生じています。総理、「税収増の還元」と言うなら、非課税世帯への給付だけではなく、税金を払っている納税者にこそ、税収増を還元すべきです。具体的には、所得税のインフレ調整、すなわち、基礎控除や給与所得控除の引き上げによる減税を提案します。
基礎控除は最低限の生活に必要な所得には課税しない制度です。しかし、1995年を最後に基礎控除と給与所得控除を足し合わせた額の引き上げは行われていません。デフレからインフレに経済のステージが変化する中、「生きるコスト」も上昇しています。だからこそ、定額とか時限とか表層的な議論ばかりでなく、基礎控除の引き上げなどインフレ時代に対応した筋の通った所得税改革が必要です。総理の考えを伺います。
(消費税減税)
所得税と合わせて大きく伸びている税収が消費税収です。物価の上昇は、消費税率の引き上げと同じ効果があります。国民民主党は、名目賃金上昇率が5%程度に達するまでの間は、消費税率を5%に減税することを提案しています。また、単一税率になればインボイスも要りません。弱含んでいる消費を下支えし、中小・小規模事業者の負担をなくすためにも、税率を引き下げ単一税率にすべきと考えます。総理の見解を伺います。
(ガソリン減税)
もう一つ、やるべき生活減税が「ガソリン減税」です。国民民主党は2年前の衆院選の時から「トリガー条項の凍結解除」による旧暫定税率分、リッター25.1円の減税を主張してきました。自公国の3党協議を経て補助金という形になりましたが、かえって財政支出が増えています。出口戦略の一環としても、補助金からトリガー条項発動による減税に移行すべき時です。また、そもそも暫定と言いながら来年で導入から50年を迎える旧暫定税率や、ガソリン税にも消費税を課す二重課税は見直すべきです。総理の考えを伺います。国民民主党は、暫定税率と二重課税を廃止する税制改正法案を今国会に提出しました。
(介護、看護、保育人材の賃上げ)
国が賃上げを主導するならば、まず、公定価格である介護や保育の従事者の給料を上げるべきです。特に、介護の人材不足は深刻で、昨年、介護就労者の数は転職などにより初めて減少しました。政府が経済対策に盛り込む予定の月6000円の賃上げでは全産業平均には全く及ばず離職は防げません。月6000円の根拠はいったいなんですか。介護従事者の待遇を、いつまでにどの程度の水準に引き上げようとしているのか、総理に伺います。
(製薬業界の賃上げのために薬価の毎年改定見直しを)
国民民主党は、咳止めや痰を切る薬など品薄が続く医薬品の製造・流通への支援が必要だと訴えてきました。先日、厚労省から製造メーカーに対する増産要請が出ましたが、いつ頃までに品薄が解消されるのか、見通しを示してください。
そもそも、今の薬価では作れば作るほど赤字です。いくら増産要請をしても、薬価を上げない限り安定供給は実現しません。適正価格で国が買い取るべきではありませんか。
また、低すぎる薬価では国内で優れた新薬が生まれません。製薬業界の賃上げを促すためにも、毎年改定を含めた薬価制度のあり方を根本的に見直すべきではありませんか。総理の見解を伺います。
(原発の再稼働と電力システム改革・電力自由化の検証)
電気代値下げには、原子力発電所の早期再稼働が必要です。とりわけ東日本における安価で安定した電力供給のためには、柏崎刈羽原発の再稼働が必要です。新潟県や東電任せにせず、国が前面に出て、再稼働に向けた具体的な行動を起こすべきではありませんか。
政府は、火力から再エネに電力システムを構造転換すると言ってきましたが、電力自由化で本当に電気代は安くなったのか、などを検証し、電力の安定供給の観点から必要な見直しを行うべきです。総理の見解を伺います。
(「年収の壁」の見直しと社会保険料負担軽減)
「年収の壁」の問題について具体策が出たことは評価します。ただ、現場ではキャリアアップ助成金を用いた新制度は使いづらいとの声が出ています。この新制度で何人が新たに保険加入するのか、人手不足は改善するのか、見通しをお答えください。
さらに、一部の人の社会保険料を国が肩代わりすることについては、自分で保険料を納めている人との不公平感は否めません。総理、令和7年度末までの時限措置を終えた後の「年収の壁」の抜本改革の姿を速やかに示すべきではありませんか。
(「子育てケアマネ」創設による伴走型支援の拡充)
こども未来戦略方針について伺います。妊娠・出産・育児を通じた「伴走型支援」が盛り込まれたことは評価しますが、肝心の伴走者が不在です。フィンランドにはネウボラという無料の出産育児相談所があり、親子を同じ保健師がずっと担当する「マイ保健師」制度があります。出産直後の産後うつや虐待死を防ぐため、日本でも、妊娠から育児まで同じ専門家が伴走し、複数の支援サービスのコーディネートも行う「子育てケアマネージャー」や「かかりつけ保健師」の創設が必要だと考えますが、総理の見解を伺います。
(障害児福祉を含む子育て支援策の所得制限撤廃)
児童手当の所得制限撤廃は評価しますが、それ以外の子育て・教育政策については所得制限が残ったままです。特に、障害児福祉の所得制限撤廃についてはこども未来戦略方針にも言及がありません。総理、児童手当の所得制限を撤廃するなら、せめて障害児福祉の所得制限も撤廃しましょう。国民民主党は、障害児福祉を含む所得制限撤廃法案を国会に提出しました。
(年少扶養控除の復活と高校生の扶養控除の廃止反対)
総理、異次元の少子化対策というなら、自民党が野党時代の公約に掲げた年少扶養控除を復活しませんか。本来、人的控除は最低限の生活費には課税しない制度で、子どもの生存権を保障するものでもあります。児童手当とは制度目的が異なるので両立は可能だと思いますが、総理の考えを伺います。また、児童手当を高校生まで延長する財源として高校生の扶養控除を廃止するとの声がありますが、総理も賛成ですか。
(給付型奨学金の対象拡大と債務の軽減策)
こども未来戦略方針では、来年度から給付型奨学金の対象を多子世帯や理工農学部の中間層の学生にも拡大するとしています。これを多子世帯以外や文系の学生にももっと拡大すべきと考えますが、総理の見解を伺います。
(「HECS債」を「教育国債」に拡大を)
こども未来戦略方針では、来年度から「授業料後払い制度」を修士段階の学生に導入し、その財源を日本学生支援機構によるHECS債で調達することとしています。国民民主党は、教育・科学技術など人的資本形成に資する予算には「教育国債」という新たな国債を充てることを提案し法案も提出しています。政府が検討しているHECS債の対象をさらに拡大した「教育国債」を発行することで、望むすべての学生が大学や大学院に無償で通えるようにすべきです。総理、「教育国債」を前向きに検討してください。
(カーボン・ニュートラルの推進)
クリーン・エネルギー自動車導入補助金(CEV補助金)や、充電・充てんインフラ等導入促進補助金は人気があり、いつも年度途中でなくなってしまいます。補正予算で予算を積みまし、さらに推進を図るべきです。なお、その際、経済安全保障の観点から、国内メーカーが国内で生産した自動車のみに補助の対象を限定してはどうですか。バイデン政権では、米国のメーカーが国内の工場で製造したEV車にのみを支援の対象としています。中国の車の支援にどんどん税金を使っていいのか、よく考えるべきです。
(「自分の国は自分で守る」)
国民民主党は、重要な情報を扱う政府の職員や民間人の信頼性を確認する「セキュリティ・クリアランス法案」と、積極的サイバー防御を可能とするための「サイバー安全保障基本法案」を国会に提出する予定ですが、こうした課題について政府の対応は遅れています。岸田内閣として法案の提出はいつになるのですか。
(日本版エガリム法)
肥料、飼料、資材、燃料などの高止まりが続いていますが、日本農業新聞の調査によると価格転嫁できない農家は7割に及んでいます。2021年、フランスではエガリム法が公布され、農業者と取引相手との取引関係の適正化が図られています。農産物の生産コスト増の適正な価格転嫁を推進するため「日本版エガリム法」が必要だと考えますが、総理の考えを伺います。来年の通常国会への提出は断念したのですか。
(中国の禁輸措置に対する水産支援)
福島第一原発からの処理水放出に対して中国が日本の水産物の輸入を禁止した結果、ホタテなどの水産物が倉庫に滞留して追加の保管費用がかかっています。また、中国以外でも、輸入する水産物について放射能検査や安全証明を求めてくる国も出てきています。政府として、禁輸措置などより生じた水産物の保管や検査の費用に対する支援を行うべきだと考えますが、総理の見解を伺います。
(憲法改正)
国民民主党は、本年の通常国会で、日本維新の会、有志の会とともに、大規模災害時等における国会議員の任期延長など、国会機能の維持を目的とした緊急事態条項の憲法改正条文案を取りまとめました。岸田総理が公約どおり今の任期中に憲法改正を実現するのであれば、この臨時国会が勝負です。臨時国会で憲法改正条文案を取りまとめ、来年の通常国会で発議しないと間に合いません。総理の憲法改正に向けた本気度を伺います。
(持続的賃上げ実現のため「対決より解決」)
最後に、総理に申し上げます。解散総選挙に有利な政策ではなく、国民のための政策を堂々と進めてください。国民民主党は「対決より解決」の姿勢で、賃金を上げ、所得を増やし、税負担や社会保障負担を引き下げる政策を積極的に提案していきます。私たち国民民主党は、今の「働いたら罰」「子どもを産んだら罰」「子どもを育てたら罰」と言われるような社会を変えていきたいと思います。政府及び与野党を超えた同僚議員の協力をお願い申し上げ、国民民主党を代表しての質問といたします。
以上