ニュースリリース
【参本会議】大塚代表代行が防衛財源確保法案に対する反対討論
大塚耕平代表代行兼政務調査会長(参議院議員/愛知県)は16日、参議院本会議で議題となった「防衛財源確保法案」に対して反対討論を行った。討論の全文は以下の通り。
財確法案に対する反対討論
2023年6月16日
国民民主党・新緑風会 大塚耕平
国民民主党・新緑風会の大塚耕平です。我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案に反対の立場から意見を申し述べます。
日本を取り巻く国際情勢、安全保障環境が厳しさを増す中、防衛力を強化するために防衛費を増額することには賛成します。
一方、その財源の調達の仕方、及び防衛に関連する諸施策のあり方に関しては、改善すべき点が多々あります。
委員会の中で申し述べましたが、わが国の安全保障環境を巡る課題の背景には、外部要因と内部要因があります。外部要因とは諸外国の動向のことであり、これはわが国自身でコントロールすることはできません。外交努力等によって安全保障環境を脅かす外部要因を改善、解決しなければなりません。
一方、内部要因はわが国の国内的要因です。例えば、防衛財源を確保して防衛力強化を図る場合でも、FMSに対する過度の依存やFMSの高額かつ不条理な取引関係を改善しなければ、十分な防衛力強化が図れないものと考えます。もちろん、米国側の対応姿勢も影響するため、日本の要望がそのまま受け入れられる保証はありませんが、少なくともそのような交渉をするかしないかは、わが国自身の国内的要因です。
また、FMSの代替防衛装備品を自ら開発、製造する技術力、産業力を有しなければ、防衛力抜本強化は米国への過度の依存状況が続きます。そうした技術力、産業力を高めるためには、研究開発人材の育成、デュアルユースに対する適切な認識と対応、防衛産業の収益性改善、インテリジェンス機能の強化、セキュリティクリアランスの整備、RAWS開発や衛星コンステレーション及び測位衛星整備等に対する対応、自衛隊員の処遇改善に伴う隊員確保等々、改善、解決が必要な国内的課題は山積しています。
今次財確法案のスキームで財源を確保したとしても、それらの課題に適切に対応しなければ、いくら財源を投入しても防衛力抜本強化は実現しません。
仮にそうした課題に適切に対処したとしても、今次法案の財源調達方法が適切か否かという観点からも問題があります。それが反対の主たる理由です。
質疑の中でも申し述べましたが、財投資金や外為特会、独法資金、決算剰余金等を対象に財源を工面しても、それは当面の財源確保にとどまり、中長期的な財源確保、及び可及的速やかな防衛力抜本強化の観点からは適切とは言えません。また、将来的に想定している増税による財源確保は、家計や法人の消費余力、投資余力にマイナスの影響を与え、現下の経済情勢に鑑みると経済政策的にも適切とは言えません。経済低迷を招けば、結局は税収減少、防衛財源確保の困難化に至り、防衛力抜本強化の目的を達成することはできなくなります。
将来の増税方針を掲げる理由として、政府は現下の財政状況や財政健全化の道筋を展望した理由を繰り返し述べていますが、その発想の背景となっている日本の財政金融の現状に対する認識が適切とは言えません。
これも質疑の中で申し述べましたが、財政当局と中央銀行は既に事実上の統合政府状態となっており、一定期間での防衛力抜本強化等の政策対応と財源調達が迫られる事態の中では、伝統的な財政健全化や中央銀行の独立性の論理は整合性と現実性を欠いていると言わざるを得ません。
財政金融委員会の中では説明させていただきましたが、かつては伝統的な手法のみで対応できていた財政及び金融政策は、今や非伝統的な手法を駆使し尽くし、弥縫策と伝統的な財政健全化とセットで考える正常化の道筋に非現実的な時間がかかり、防衛力抜本強化のみならず、子育て支援、研究開発支援等に膨大な財源が必要となっている現下の情勢には適合しないことを直視することが必要です。
事実上の統合政府状態になっている中で、財政金融が正常な状況下での理論や理屈を持ち出して増税による財源調達を企図することは、結果的に所要の財源規模を確保できないばかりでなく、経済状況をかえって悪化させ、さらに財政状況を厳しくし、目標の期間内に防衛力抜本強化を実現することにも失敗するでしょう。
委員会の中で、内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」では防衛財源を想定していない非現実的な内容が放置されていることも指摘しました。
つまり、今回の財確法案の前提となっている財政金融の現状認識、事実上の統合政府状態にある中での思考の時間軸、手法の選択等が現実に適合していない、適切とは思われないことが、反対する理由です。
重ねて申し上げます。短期間での防衛力抜本強化、その後の中長期的な防衛力整備のためにかなりの財源が必要となること、子育て・教育・産業支援等の他の政策でも相当の財源が必要になること、財政及び金融の状況が事実上の統合政府状態になっていること、その下で平時の財政や金融の論理を前提に考えれば増税や中途半端な財源調達という発想にならざるを得ないこと、等々の要因から、結局、所期の目的を達成することはできないでしょう。
目の前の現実をどのように認識し、どのような工夫でその現実を有効活用し、それに伴うリスクをどのように制御するか等々に関し、政治的決断が必要な局面です。
5月24日の本会議質問で申し上げたことを、総理及び財務大臣に再度お伝えします。
国民民主党はあえて「日銀保有国債の一部永久国債化」という手法を駆使し、現下の統合政府状態の財政金融環境を有効活用することを提案しています。
日銀が500兆円以上の国債をバランスシートに抱え込んでいる異常な状況が目の前にあります。国債市場は流通量不足に直面しています。日銀が保有する500兆円の国債を日銀に償還するために国民に増税する構図は論理的ではありません。
日銀保有国債を一部永久国債化することで、政府の元本返済負担は軽減され、国債発行余力は増します。それを市場で発行することで、財源調達及び流通量不足を補えます。
推奨しているわけではありません。他に合理的かつ相対的に有意な手段がないからこそ提案しています。
調達した財源をもとに、防衛力抜本強化のみならず、人材育成・教育や、技術力・産業力を高める政策に本気で取り組む国の運営を行えば、日本の変貌振りを内外が認識することとなり、市場にはマイナスではなく、ポジティブに受け止められることでしょう。
日本が防衛強化と産業や経済の再生に本気だという印象を与えること、及びそれを迅速かつ確実に実行すること、それが現下の日本国の舵取りを担う総理の使命だと考えます。
以上、国民民主党の考え方を参考にしていただくことに一定の意味があり、隘路を見い出すことに寄与しうることを申し上げ、反対討論といたします。
以上