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ニュースリリース

【衆憲法審】玉木代表が国民投票法などについて発言

 玉木雄一郎代表(衆議院議員/香川2区)は25日、衆議院憲法審査会に出席し、国民投票法などについて発言を行った。内容は以下の通り。

憲法審査会発言要旨(2023年5月25日)

国民民主党代表 玉木雄一郎

 現在の国民投票法は、105条で、投票期間前14日間についてテレビ・ラジオのCMを禁止しています。そして、同法106条で、その禁止期間は、国民投票広報協議会が「憲法改正案の広報のための放送をするものと」定めています。また、放送に関して「賛成の政党等及び反対の政党等の双方に対して「同一の時間数及び同等の時間帯」を与える等「同等の利便を提供」しなければならない」としており、改憲に賛成する政党等及び反対する政党等について、協議会の費用で各自の広告が行える規定が整備されています。

 また、同法107条で、協議会は「新聞に、憲法改正案の広報のための広告をするものとする」とされており、この広告に関しては、「憲法改正案に対する賛成の政党等及び反対の政党等の双方に対して「同一の寸法及び回数」を与える等「同等の利便を提供」しなければならない」とされています。

 しかし、現在の憲法改正手続法には、協議会のインターネットを利用する広報についての規定や、協議会の費用で賛成・反対する政党の広告を行うことについての規定もありません。インターネットがテレビ・ラジオと同等又はそれ以上に影響力のあるメディアになっている以上、協議会がインターネットを利用した広報や、禁止期間における政党等の広告を行うための法整備が必要と考えます。

 ただし、その際重要なのは、 禁止期間中に協議会の負担で行うインターネット広告について、どのようなルールを定めれば公平性・公正性が担保されるかです。特に、テレビ・ラジオ、新聞における「同等の利便を提供」をインターネット広告でどのように担保するのか、つまり、テレビ・ラジオ放送での「同一の時間数及び同等の時間帯」や、新聞広告での「同一の寸法及び回数」をインターネット上でどのように確保し、公平性・公正性を担保するのかを具体的に検討する必要があります。
例えば、静止画では、「同一の寸法」として左右上下に一体に並べるような表示したり、動画の場合は、賛否を一連の動画として、順次、同じ秒数、表示させることが考えられますが、例えば、検索連動型広告については、どうするのか。検索画面上で「同一の寸法」で左右上下等一体に並べるように賛成意見と反対意見が表示されるようにするなどの工夫ができるのか、技術的に実施可能性も含め業界側の意見も踏まえて検討する必要があります。

 次に、禁止期間のみならず発議後から投票期日までのインターネット広告について、プラットフォーム事業者が守るべき「放送法4条」のような政治的中立性を求める一般ルールが必要との意見がありますが、まず、こうしたルールが可能なのか現実的な議論が必要です。そして、これは国民投票法に限らない問題でもあります。ちなみに、新聞には、放送法4条のような政治的中立義務はかかっていません。

 そして難しいのは、インターネットのプラットフォーム事業者は海外事業者であることが多いために、公的規制やその適切な法執行は必ずしも容易ではありません。欧州では、インターネットのプラットフォーム事業者等に対する公的規制の試みが見られる一方で、プラットフォーム事業者等の自主的な措置も取られつつあります。我が国では、公的規制、自主規制、そして協議会によるインターネット広告の充実とを適切に組み合わせていくことが現実的なアプローチだと考えます。

 なお、個人が発信主体を明示してSNS等で発信する憲法改正案に対する賛成や反対の意見については規制すべきではないし、できないと考えます。そして、SNS等によるいわゆるフェイクニュースや誤情報の発信の問題も、国民投票法に限った問題ではなくSNS等一般の問題であることから、公職選挙法なども含めて包括的に取り組むべき課題だと考えます。リテラシー教育の強化も然りです。

 そして、個人の発信を制限できない以上、膨大なフェイクニュース情報の発信に協議会の発信だけで対抗できるのかという疑問もあります。例えば、国民民主党の緊急事態条項は国会機能を低下させ人権を侵害するものだと言ったフェイクニュースに対して協議会の情報発信だけで対抗できると思えません。そこで少なくとも、協議会に、何らかにファクトチック機能(民間機関との連携を含む)を持たせることも検討すべきだと考えます。

 最後に、前回の参考人質疑について一言申し上げます。お二人の先生方には改めて感謝申し上げますが、長谷部先生の発言は、立憲主義とはそもそも何なのかを考えらせられるものでした。すなわち、40日や30日といった具体的数字の入った準則規定は、平時には100%守らなければならないが、緊急事態においては生き残るのが最優先だから、必ずしも100%従わなくてもいいとの主張です。しかしこれはリベラルの皆さんが最も恐れる事態ではないのでしょうか。つまり、緊急事態には、既存のルールを行政の解釈で「書いてある」ルールを恣意的に拡大してしまう危険です。この法理が許されるのであれば、例えば、憲法9条の規定や解釈は全く意味がなくなってしまいます。国家の存亡をかけた究極の緊急事態が戦争であり、そのときに、国家の生き残りのためであれば、敵基地攻撃どころかフルスペックの集団的自衛権の行使さえ可能となります。普段、憲法の条文を守れとおっしゃっておられる方々は、このようなモーリス・オーリゥ流の「緊急事態の法理」を許すのでしょうか。立憲主義の基本は、まず憲法に「書いてあること」を書いてあるとおり尊重することではないのでしょうか。私も緊急時には赤信号を無視していいと思います。だからこそそれを、事前に憲法や法律に書いておきましょうと提案しているのです。憲法に「書いてあること」を緊急事態の名の下に無視することこそ、最も立憲主義に反する行為ではないでしょうか。できれば次回、共産党、立憲民主党はじめ各会派に意見を伺いたいと思います。

<参考>国民民主党「憲法改正に向けた論点整理」(2020年12月)