ニュースリリース
【衆本会議】鈴木敦議員が岸田総理の帰朝報告に対する質疑
鈴木敦議員(衆議院議員/新神奈川18区)は24日、国民民主党を代表し、衆議院本会議で岸田総理の帰朝報告に対する質問を行った。質問の全文は以下のとおり。
岸田総理大臣帰朝報告に対する質疑 全文
令和5年3月24日
国民民主党・無所属クラブ
鈴木 敦
国民民主党の鈴木敦です。
インドからのウクライナ訪問、お疲れ様でした。G7首脳の中で最後の訪問となった、という見方もありますが、現地の最新の状況を見、聞きとったことは、G7サミットで実のある会議を主催する上で非常に有益であろうと思いますし、この時期の訪問については外交上大変結構であったと考えております。
ただし、総理の動向がポーランド入国時点から追跡可能であったことは、危機管理上極めて問題であったことは指摘しておかなければなりません。アメリカのバイデン大統領がウクライナを訪問した際には、ジャーナリストには携帯電話の携行を禁止し、キーウに到着するまで報道が禁じられておりました。我が国の場合、総理がお乗りになっていた飛行機の映像や、プシェミシルから列車に乗車する様子などを報道が速報しておりました。これがカメラでなかったらどうなさるおつもりですか。
何より、これによって日本国内閣総理大臣の安全を脅かすのみならず、先方のゼレンスキー大統領の動向をも予見可能としてしまったのです。武力紛争が生起している地域を訪問する際は、極めて厳格な危機管理の認識が必要です。関係各所に猛省を促すとともに、この件について実際どのように捉えておいでなのか総理に伺います。
現地でもお聞き及びとは思いますが、ロシア軍はウクライナ領内から複数の子どもを「再教育」と称してロシア国内に連れ去り、ロシア人家庭に編入するという深刻な人権侵害をおこなっております。北朝鮮による拉致問題の解決を最重要課題と位置付ける我が国が、この問題に他人事でいるわけにはいきません。5月に予定されているG7サミットでは、我が国も拉致被害当事者国であるとの認識のもと、他国による拉致という深刻な人権・主権侵害への対処を議題に加えていただくことを求めますが、総理のご見解を伺います。
岸田総理のウクライナ訪問と時を同じくして、ロシアのプーチン大統領は、ロシア訪問中の中国の習近平国家主席と会談を行い、共同声明では中国が主権と領土保全のためにとる措置をロシアが「断固支持する」と明記し、台湾問題についてこれまでより踏み込んだ内容となりました。プーチン大統領はウクライナ停戦に向けた中国の仲介案を平和的解決の基礎とすることができると賞賛しました。中国のロシアへの影響力が日を追って増しています。昨年のロシアと中国との貿易額は前年比約3割増えました。また、輸出決済通貨における人民元の割合は昨年1月の0.4%から9月に14%に上昇し、ロシア財務省は外為市場への介入を今年から人民元で実施することを決めたと報じられます。人民元経済にロシアが取り込まれ、経済のみならず、外交でも、中国へのロシアの依存度は今後も高まることが予想されます。
一方の中国はロシアへの影響力を高めると同時に、エネルギーを安定的にしかも割安に確保でき、さらにはロシアの軍事技術の入手も可能になると見込まれます。中国によるロシアのとりこみが、世界の経済面、軍事面双方の長期的安全保障に与える影響について、総理の認識をお伺いします。
中国の影響力拡大はこれだけでなく、サウジアラビアとイランの外交関係正常化の仲介は、中東を巡る地政学にとって衝撃的な出来事と言わねばなりません。ドルが基軸通貨である基盤の一つに、原油取引決済がドル建てであることが挙げられますが、圧倒的な石油購買力を持つ中国は、中東産油国のエネルギー市場における影響力を一段と強めると同時に、湾岸諸国に対して提案している原油取引の人民元決済を実現することで、世界経済の秩序を一変させることができます。
中国は人民元決済の拡大、エネルギー取引の手段の独占によって米国との競争に勝利する意図を有していると考えられ、日本を含む西側諸国としては懸念すべき状況と考えますが、総理の認識を伺います。
米国はシェール革命によりエネルギーを自給できますが、日本にはできません。我が国は原油の90%を中東地域からの輸入に頼っており、国内で原油・天然ガスの生産ができる米国と全く同じエネルギー戦略を取り続けることは不可能です。我が国の今後のエネルギー戦略は、我が国による、我が国独自の資源外交を展開する必要があると考えます。
中東産油国との関係強化に向けた国家の総力を挙げた資源外交を加速度的に進めるべきではないでしょうか。また、米国にも中東への強いコミットを働きかけるべきと考えますが、総理に併せて伺います。
アルプス処理水の海洋放出をめぐっても、中国外務省軍縮局が国内外のメディアを集めた記者会見において「ロシアなど周辺国のほか、南太平洋諸国などとも連携して反対していく」と発言しました。私がかねてから外務委員会及び東日本大震災復興特別委員会において、我が国の政策に反対している国家のみならず、世界に広く理解を得る努力をせよと申し上げてきたのは、こういうことになるからであります。今からでも遅くはありませんから、早急に極東地域のみならず太平洋島嶼国、ヨーロッパ諸国、アフリカ諸国とも連携を深める必要があります。いわゆる西側の価値観のみを強調した外交ではなく、交通・公共インフラなど我が国が強みとする分野を生かした、安全保障も視野に入れた多面的な外交を戦略的に進めるべきと考えますが、総理のご見解を伺います。
ロシアによるウクライナ侵略以降、世界は法の支配と民主主義を重視する国々と、権威主義的な政治体制の国々との間の勢力争いの様相を深めています。いわゆるグローバルサウスと言われる国々が権威主義的な勢力に飲み込まれないよう、世界の法と民主主義を断固として守り抜く、強い覚悟が必要であることをお訴えし、私の質問といたします。