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ニュースリリース

【衆本会議】玉木代表が岸田総理大臣の所信表明演説に対し質疑

 玉木雄一郎代表(衆議院議員/香川2区)は6日、衆議院本会議において、岸田総理大臣の所信表明演説に対する質疑を行った。全文は以下の通り。

第210回国会における岸田内閣総理大臣所信表明演説に対する代表質問

令和4年10月6日
玉木雄一郎(国民民主党・無所属クラブ)

 国民民主党代表の玉木雄一郎です。まず、台風14号、15号で亡くなられた方にお悔やみ申し上げ、被災された皆様にはお見舞いを申し上げます。現地に行って被災者の声を伺ってきたので、岸田総理に2点、提案します。

(台風被害への対応)
 先週訪問した静岡市清水区では、大量の災害ゴミが、住宅のそばの広場に積まれたままになっていました。今後、浸水被害が発生する可能性がある地域では、都道府県と市町村があらかじめ災害ゴミ置き場を決めておくよう国から要請できませんか。次に、被災した飲食店からは、コロナ禍から立ち直れると思ったのに心か折れそうだとの声がありました。過去の台風被害でも設定された小規模事業者持続化補助金の台風枠を追加公募してください。

(全国で聞いた声を届ける)
 さて、国民民主党は選挙で約束した公約を実現するため、引き続き「対決より解決」の姿勢で、「給料が上がる経済」の実現に全力を注ぎます。また、物価高に苦しむ国民の声を聞くため、参院選直後から私自身が全国を回ってすでに34の都道府県を訪問しました。YouTubeやツイッターでも、多くの切実な声が日々届いています。今日はその声を総理に直接ぶつけますので、官僚の原稿ではない、政治家としての言葉で、熱のある答弁をお願いします。

(賃上げの基本認識)
 全国を訪問して一番多く聞いたのは、給料が上がらない、あるいは年金が下がる中、物価高に苦しむ声です。国の統計によれば、7月の実質賃金は4ヶ月連続のマイナスで、物価の上昇に賃金の伸びが追いついていません。最近だけでなく、25年間実質賃金が下がり続けているのは日本だけです。総理、なぜ日本では賃金が上がらないのか、どうやって上げるつもりなのか、岸田内閣の基本認識と方針を伺います。国民民主党は、①まず、積極財政で需要不足を解消する、②教育国債の発行で子育て・教育・科学技術投資を倍増して経済全体の生産性を上げる、③求職者ベーシック・インカムによる円滑な労働移動を促進する、この3つの柱で「給料が上がる経済」を実現します。

(日本経済の基本認識)
 まず、総理に日本経済の基本認識を伺います。総需要である国内総生産GDPと、潜在GDPとの差である、いわゆる「需給ギャップ」の最新の数字はいくらですか。

(一律10万円のインフレ手当)
 我々国民民主党は、どの党よりも早く、先月13日に23兆円規模の緊急経済対策を取りまとめましたが、少なくとも15兆円程度の需要不足があるとの前提に立ち、積極財政による経済対策を訴えています。政府は先月、住民税非課税世帯への5万円給付を決定しましたが、住民税非課税世帯の約78%は高齢者です。物価高に苦しんでいるのは高齢者だけではありません。民間調査会社の試算によれば、物価高による家計負担は昨年に比べて9万8千円の負担増です。総理、需要不足という認識があるなら、我々国民民主党の緊急経済対策に盛り込んだ、国民一人当たり現金10万円を一律給付する「インフレ手当」こそ、今必要な経済対策ではありませんか。

(円安メリットを生かした財源捻出)
 緊急経済対策の財源についても提案があります。政府は為替相場への介入の原資として、外国為替資金特別会計、いわゆる外為特会に約1.3兆ドル、日本円にして約180兆円の資産を保有しており、そのほとんどがドル建ての米国債です。総理、いま記録的な円安なので、相当の含み益が出ているはずです。機械的に計算しても約37兆円あります。総理、外為特会の円建て含み益は本年1月に比べていくらですか。円安で損をしている個人や事業者がいる一方で、国の特別会計は円安でウハウハです。総理、円安メリットを活かすなら、緊急経済対策の財源として、外為特会の円建ての含み益を充ててはどうですか。

(再エネ賦課金停止による電気代値下げ)
 電気代の上昇が止まりません。家庭用の電気代は昨年に比べて2割以上アップ、震災前に比べると5割近くアップしています。実はこの値上げ分の3分の1が、電気代に上乗せされている再生可能エネルギー発電促進賦課金、いわゆる再エネ賦課金によるものです。国民民主党は、先の参院選の公約として唯一、再エネ賦課金の徴収停止を打ち出しました。これで一般的な家庭で12%、産業用も17%電気代を引き下げることができます。総理が指示された「前例ない思い切った対策」として、国民民主党の再エネ賦課金の一時停止案を採用してはどうですか。我々は実現に必要な再エネ特措法改正案も提出するので、与党としても協力してください。

(電力自由化の見直し)
 電気代の高騰に伴い、電力自由化によって参入した新電力の撤退などにより、電力会社との契約ができない「電力難民」が続出しました。円安メリットを活かした産業の国内回帰にも大きな障害となっています。総理、これまで進めてきた電力自由化で、本当に電気が安くなったのかなど検証した上で、電力の安定供給の観点から必要な見直しを行うべきではありませんか。

(総理はまず原発リプレースの決断を)
 原子力発電の活用について伺います。総理は所信で次世代革新炉の開発・建設について専門家による議論の加速を指示したと述べましたが、いくら検討を指示しても、建設をまず決めなければ、電力事業者が投資に踏み切ることはできません。総理、岸田内閣として原発の建て替え、リプレースを行うと今ここで明言してください。

(クリーン・エネルギー自動車の振興)
 総理の所信でもグリーントランスフォーメーション、GXを重点投資分野と位置づけていましたが、電気自動車などの新車購入を補助するクリーンエネルギー自動車導入促進補助金「CEV補助金」が、軽のEVなどが人気で今月末には予算がなくなる見込みです。総理、せっかくCEV補助金が人気なら、補助金の「空白期間」は避けるべきです。総理、追加予算を補正予算で積み増して、自動車分野のGX化を加速化してはどうですか。

(自衛隊の継戦能力)
 安全保障について伺います。政府は外交・安全保障政策の根幹である国家安全保障戦略など3つの文書を年末までに改定しますが、国民民主党も、台湾海峡問題や、中国・北朝鮮のミサイル開発に対応できる骨太の安全保障政策をまとめる予定です。そこで、総理に伺います。我が国の継戦能力、有事の際に組織的な戦いを継続できる能力はどの程度ありますか。また、防衛省による調査で、全装備品のうち足元で可働するのは5割あまりしかなく、可働していない5割弱の半分が「整備中」、残りは修理に必要な部品や予算がない「整備待ち」という一部報道もあります。これは事実ですか。秘密に関わることですが、可能な範囲で現状を明らかにし、必要な防衛費の増額について国民の理解を得るべきではありませんか。

(中距離弾道ミサイルへの対応)
 また、我が国の防衛を考える上で避けては通れないのは中距離弾道ミサイルです。ミサイル防衛システムが無力化される可能性のある、極超音速の中距離弾道ミサイルの開発と配備が周辺国で進んでいます。中距離弾道ミサイルに対する自衛隊施設の抗堪性、すなわち、敵の攻撃に耐えて機能を維持する能力を高めるため、自衛隊の重要施設の地下化や航空機のシェルター整備などを進める必要があると考えますが、総理の認識を伺います。また、個人宅など民間にもシェルターの設置を促す考えがあるのかも併せて伺います。

(子育て支援策の所得制限撤廃)
 先月、他を圧倒する子育て政策で人口増・税収増を実現した兵庫県明石市の泉房穂市長を訪ね、お話しを伺ってきました。泉市長は「国の所得制限が少子化加速策になっている」と批判していました。政府は今月から、一定の所得以上の家庭の児童手当の特例給付を廃止しました。国民民主党は、泉市長と同じく、子育て支援策には所得制限を設けず一律に支援すべきとの考えから、臨時国会の初日に、所得制限撤廃法案を提出しました。総理に伺います。子育て支援策の所得制限により、中間層の子育て世帯が取り残され、少子化を加速しているとの泉市長の指摘に対する総理の見解を伺います。

(学生支援)
 全国を回っていると、驚くほど多くの大学生や大学院生が、国民民主党の集会や街頭演説に参加してくれます。よく出る質問が、岸田総理は外国人留学生の受入れ支援を拡大するようだが、それなら日本人の学生をもっと助けて欲しいと言う切実な声です。この問いに総理はどう答えますか。また、給付型奨学金の要件緩和を検討しているようですが、3人以上の子どものいる多子世帯や理系だけに限定しようとしています。ケチケチせずに、保護者の年収など給付型奨学金の要件を幅広く緩和すべきです。財源は国民民主党の提案する「教育国債」を発行すれば解決します。併せて総理に伺います。

(「年収の壁」の問題)
 もう一つ全国を回っていてパート、アルバイトの皆さんからよく聞く声は、いわゆる「年収の壁」です。働く時間を調整しないと、社会保険料や所得税を徴収される年収103万円、106万円、130万円などの壁に達して、世帯全体の所得が減少する逆転現象が起きてしまう問題です。昨年、今年と最低賃金が上がっていることはいいことですが、そのことで「年収の壁」に早く達してしまいます。店長さんや経営者の方も、年末にかけて忙しい時期に人手の確保ができなくなって困っています。当面は、最低賃金のアップに連動して「年収の壁」の上限を引き上げる見直しをした上で、抜本的な制度改正が必要だと考えますが、総理の考えを伺います。

(旧統一教会への現行法適用)
 最後に、旧統一教会について伺います。まず、国会に調査特別委員会を設置し、物価高対策など本来の政策議論と同時並行でできる枠組みを作ることを提案します。また、昨日の総理答弁では現行法である宗教法人法81条1項に基づく解散命令について、判例を踏まえて慎重に判断するとのことでした。しかし、その判断材料をそもそも政府は持っているのでしょうか。総理、少なくとも宗教法人法78条の2に基づく報告を旧統一教会に対して求めたり、質問をしたりするつもりはありますか。現行法適用に関する総理の見解を明確にお示しください。法に基づく報告徴求にも慎重だとすれば、現行法はザル法だということになります。仮に今後法改正をしたとしても、運用がザルでは意味がありません。

(結び)
 先日、大分県別府市の「太陽の家」を視察しました。故中村裕医師が「No Charity, but a Chance」(保護より機会を)を理念に設立した社会福祉法人で、オムロンをはじめとした民間企業と共同出資会社を次々と設立し、障がい者の就労機会を飛躍的に拡大してきた法人です。ぜひ、総理も視察してください。私はそこに、理想の障がい者雇用の姿を見るとともに、人を中心に置いた資本主義の姿を見ることができました。総理の「新しい資本主義」は迷走しているように思います。私は、一人一人を尊重し大切にする経済こそ「新しい資本主義」だと確信しました。金融資本、つまりお金も大切ですが、資本主義を成り立たせているもう一つの要素、人的資本、すなわち人を大切にする政策を徹底することこそが、日本再生の鍵だと考えます。だからこそ、国民民主党は「人づくりこそ国づくり」の理念を掲げています。改めて「人への投資」の倍増による日本再生に本気で取り組むことを強く求めて質問を終わります。