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ニュースリリース

【参本会議】大塚代表代行が岸田新総理大臣の所信に対して質疑

 大塚耕平代表代行(愛知県/参議院議員)は13日、岸田新内閣総理大臣の所信演説を受け質疑を行った。質疑の全文は以下のとおり。

 

総理の所信表明に対する代表質問 

令和3年10月13日国民民主党・新緑風会 大塚耕平

 国民民主党・新緑風会の大塚耕平です。会派を代表して総理の所信に対して岸田総理に質問致します。

 冒頭、コロナ禍でお亡くなりになった皆様のご冥福をお祈り申し上げますとともに、闘病中の皆様にはお見舞いを、医療関係者やエッセンシャルワーカーをはじめ、コロナ対策にご協力いただいている全ての皆様に心から感謝申し上げます。

 第100代内閣総理大臣への就任に祝意を表します。しかし、日本は内外ともに厳しい状況にあります。山積する諸課題に適切に対応することを強く求めたいと思います。

 

 はじめにコロナ対策についてです。総理は所信において「常に最悪の事態を想定する」と述べました。どのような「最悪の事態」を想定しているのか、具体的にお答えください。また「何が危機管理のボトルネックだったのかを検証する」とも述べました。現時点でボトルネックの原因をどのように認識しているのか伺います。

 

 国民民主党はコロナ対策の柱として、第1に検査の拡充で「見つける」、第2に感染拡大防止で「抑える」、第3に経済・社会活動との両立で「動かす」という「コロナ三策」を提言しています。その内容に沿って質問します。

 

 「検査の拡充」に関して、所信では「予約不要の無料検査を拡大」と述べましたが、総裁選の際には「予約不要の無料PCR検査所の拡大」「簡易な抗原検査など在宅検査手段の普及促進」「学校現場での定期的検査の実施」を約束しました。所信で述べた無料検査にそれら3つが含まれているのか否か、それぞれどのような内容をいつまでに準備するのか、具体的に説明願います。国民民主党は家庭内感染防止のための「無料自宅検査」を可能とすること、陰性証明を持ち歩ける「デジタル健康証明書」の創設運用を提言しています。この2つについて、総理の考えを伺います。

 所信では、電子的なワクチン接種証明の積極的活用にも言及しました。その具体的内容をご説明ください。

 

 次に「感染拡大防止」に関して、総理は総裁選で「野戦病院等の臨時医療施設開設と大規模宿泊施設借上げ」「国公立病院のコロナ重点病院化」「地域の開業医への協力要請」を掲げました。所信では言及していません。3点とも実行するのか否か、伺います。また、第6波が発生した場合、この3点について第5波までの対応と比べ、何をどのように改善するつもりか、お答えください。国民民主党はさらに「民間病院の受入指示法制化」や「被災者健康支援連絡協議会」の枠組みを活用した医療従事者確保、抗体カクテルの自宅投与等を提言しています。総理の考えを伺います。

 

 「経済・社会活動との両立」に関して、総理は地域・業種を限定しない事業規模に応じた給付金支給を約束しました。これは国民民主党が提出済の法案と骨子は同じなので賛同しますが、選挙後の特別国会に閣法を提出するのか、あるいは法律なしの行政裁量で行うのか、方針を伺います。

 非正規、子育て世帯への給付金支給も約束しました。支給基準や支給額を具体的にご提示ください。総裁選では、このほかに女性、学生困窮者、及び学校休校に伴い仕事を休まざるをえない親も対象にすると述べました。こうした皆さんも支給対象に含むのか否か、含む場合の支給基準、支給額について伺います。

 無利子無担保、いわゆるゼロゼロ融資の返済が始まると多くの借り手が苦境に陥ります。国民民主党は税・保険料の猶予延長と減免措置の拡充、消費税納税猶予を提言しています。昨年4月の本会議で安倍元総理に申し上げたとおり、コロナ禍の経済苦境は「融資では解決しない」「猶予ではなく減免」が必要なのです。

 融資返済や税・保険料猶予分の減免措置、ならびに消費税納税義務事業者の納税猶予について、総理の考えを伺います。

 

 次に、政策全体について伺います。総理が10月31日投開票を宣言した総選挙において、国民民主党の政策は、第1に「積極財政」に転換、第2に「給料が上がる経済」を実現、第3に「人づくり」こそ国づくり、第4に国民と国土を「危機から守る」、第5に「正直な政治」をつらぬく、この5つが柱です。これらに関連して伺います。 

 まず、政策全体の大前提についてです。

 総理は総裁選の中で「成長の果実は一部の人間に留まっている」「格差を埋めていかなくてはならない」と指摘する一方、所信ではアベノミクスの3本柱である「大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略」を推進すると述べました。アベノミクスの骨格を維持すれば、同じ結果になるのではないでしょうか。アベノミクスのどの部分を維持し、何を変更するのか、成長の果実が広く行き渡らなかった原因、格差が生まれた原因について、総理の認識を伺います。

 総理は分配が不十分であったことに総裁選や所信を通じて繰り返し言及しました。アベノミクスが始まって約1年後、フランスの社会学者トマ・ピケティ博士の著書「21世紀の資本」が日本でもベストセラーになり、国会論戦でも何度も取り上げられました。ピケティ博士は2015年1月の日本記者クラブでの講演で「アベノミクスによって、格差が広がる一方で低成長が続く最悪の事態になりうる」という趣旨の発言をしました。ピケティ博士の予測が的中したような現状ですが、同時に博士は「賃金を含む国民所得に比べて資本や資産の蓄積の多い経済では資産課税にウェイトを置く方が望ましいこと、税率の累進度の高い税制下では格差拡大や低成長にはなりにくいこと等の趣旨の見解を述べました。

 総理の目指す「新しい資本主義」とは、不十分だった分配がしっかりと行われる資本主義、ピケティ博士が推奨していたような資本主義であるのか、伺います。

  総理は新自由主義的政策の見直しを明言されました。新自由主義は金融資本主義と表裏一体です。また現在の日本は、中国に代表される国家資本主義という潮流とも対峙しています。

 これらを踏まえ、新自由主義の定義に関する総理の認識、総理が目指す「新しい資本主義」と国家資本主義、金融資本主義との関係について、見解を伺います。この部分は官邸官僚の答弁案ではなく、政治家として、内閣総理大臣として、ご自身の考えを是非お聞かせください。

 

 国民民主党の「積極財政」に転換という方針に関連し、総理は所信で「経済あっての財政であり、順番を間違えてはならない」と述べました。この考えには賛同します。国民民主党は分配政策を進めるために、雇用者側にインセンティブ付けをすること、看護師、保育士、幼稚園教師、介護士等、不当な低賃金を余儀なくされている職種の給料を政策的に引き上げること、さらには所要の産業政策及びコロナ対策等を行うために、積極財政以外に選択肢はないと考えます。総理の所見を伺います。

 

 日本は約30年間、実質賃金が上がっていません。国民民主党は「給料が上がる経済」を実現するため、名目賃金上昇率が「物価上昇率+2%」程度に達するまで、積極財政で産業政策と家計第一の経済政策を支えることを目指しています。総理の受け止め方を伺います。

 「給料が上がる経済」を実現するため、国民民主党は、AI、デジタル、カーボンニュートラル等の民間設備投資が劇的に進むよう、投資額以上の償却を認めるハイパー償却税制の導入を目指します。科学技術や産業の最先端の動向は民間企業や技術者こそが熟知しています。民間の自発的かつ真剣な設備投資を大胆に支援することがハイパー償却税制の狙いです。総理の所見を伺います。

 

 所信では「科学技術分野の人材育成」「先端科学技術の研究開発への大胆な投資」と述べましたが、具体的に何をやるのか、あるいはこれから考えるのか、伺います。

 カーボンニュートラルに関して、米国が主導するESG投資、欧州が主張するライフ・サイクル・アセスメント、中国が注力する排出権取引、いずれもそれぞれの思惑や戦略が内包されています。カーボンニュートラルを目指しつつ、いかに世界を先導し、自国の技術や産業や雇用を守るかが問われています。達成すればよいという単純な話ではありません。合成燃料を使った内燃機関、高効率火力発電やアンモニア発電、日本が先行する技術の活用や主導権確保が重要です。カーボンニュートラルに向けた総理が考える国家戦略、及びG20、COP26において日本はどのような主張をするのか、その方針を伺います。

 安倍元首相、菅前首相の9年間も、結果的に日本の科学技術や産業競争力は主要国に劣後しました。日本の科学技術力、産業競争力の現状認識、諸外国に劣後した原因、今後のキャッチアップの具体策について、総理の考えを伺います。

 半導体産業についても伺います。次世代半導体の研究開発や工場の国内誘致等、支援をどのように行うのか、総理の考えを伺います。台湾TSMC等の工場誘致は歓迎するものの、それは日本自身の技術が劣化していることの証左でもあります。演算用CPUの世界最先端の回路線幅は5ナノメートル以下ですが、日本の技術は40ナノメートルという信じられない状況です。国際分業と言えば聞こえはいいですが、実態はそうではありません。半導体を含む重要産業技術の向上のために、どのような戦略、施策、予算措置を講じるおつもりか、伺います。

 所信において「スタートアップの徹底支援、新たなビジネス、産業の創出を進める」と述べたことに関連して伺います。宇宙物理学者スティーブン・ホーキング博士は、生前、次のシンギュラリティ、すなわち非連続な技術革新は2021年頃と述べていました。まさしく今何かが起きているかもしれない。そういう局面です。今年は米国の民間企業が一般人を宇宙に打ち上げる時代になりました。中国は来年独自の宇宙ステーションを完成します。米国や中国のプラットフォーマーや韓国の通信会社、イスラエルのIT企業等は、メタバースに一気に力を入れ始めました。

 こういうことに対する認識、日本としての取り組みに言及のない所信であったことは残念です。日本は有人宇宙飛行に独自に取り組むつもりはないのか、メタバースについての認識、またそうした分野の技術開発を政府として支援しないのか、総理の考えを伺います。

 産業政策に関連して、為替について伺います。現在、徐々に円安が進みつつあります。とくにインフレ率を加味した実質実効為替レートは1970年代前半並みに低下しています。円安進行の原因と影響、及び為替安定策について、総理の認識を伺います。

 少し視点を変えて伺います。総理は所信において「株主」「従業員」「取引先」の「3方良し」という表現を使いましたが、そこには「消費者」「ユーザー」の視点が欠けています。例えば、低所得者への負担が大きい消費税制や、消費税による事実上の二重課税が発生している自動車税制は、分配政策の観点から大いに問題があります。

 現在の消費税制や自動車税制が適切であるか否か、総理の認識を伺います。

 所信では中間層再生も掲げていますが、そのためには税・社会保険料の重い負担を是正する必要があります。中間層の税・社会保険料負担の軽減策について総理の考えを伺います。

 

 次に、「人づくり」こそ国づくりに関連して伺います。

国民民主党は3歳からの義務教育化、及び教育無償化を目指しています。それらの財源は惜しむことなく、教育国債を新設して調達することも提言しています。総理の受け止め方を伺います。

また教育政策を含め、日本の喫緊の課題に取り組むための財源捻出のひとつの手法として、日銀保有国債の一部永久国債化を提言しています。総理の認識を伺います。

 所信では「所得に応じて『出世払い』を行う仕組みを含め、教育費や住居費への支援を強化する」と述べました。これは具体的に何を言っているのか、ご説明ください。奨学金のみならず、住居費を学生に支給することを表明したのか、伺います。

国民民主党は国民と国土を「危機から守る」ために、広い意味での安全保障政策強化を目指しています。経済安保担当閣僚を置いたことは評価したいと思います。

国民民主党はさらに、食料安全保障等の観点から、農業者戸別所得補償制度の復活、環境加算導入なども提言しています。米価下落が続き、日本の農業の持続性が問われる中、総理の考えを伺います。

国民民主党は「自分の国は自分で守る」との理念に基づき、自立的な安全保障体制確立を目指しています。総理が総裁選で言及し、所信にはなかった点をいくつか質問します。

第1にグレーゾーン対応です。国民民主党が目指す海上保安庁の任務に領土保全を加える海上保安庁法改正、情報収集・警戒監視活動を明記する自衛隊法及び海上保安庁法改正について、総理の所見を伺います。

第2は台湾情勢です。多数の中国空軍機が台湾防空識別圏に進入し、米欧等の海軍と海上自衛隊が共同訓練や共同行動を行っていることを含め、台湾海峡及び台中関係に関し、現在の事実関係、及び総理の対処方針を伺います。

第3に、香港、ウイグル、及びロシアの野党指導者等の人権問題です。国民民主党は人権侵害制裁法、いわゆる日本版マグニツキー法成立を目指すとともに、人権侵害に対する情報開示等の法制度骨子案を発表しています。香港、ウイグル、ロシア問題等に、どのように向き合うのか、総理の方針を伺います。

 ロシアに関し、所信では「領土問題の解決なくして平和条約の締結はない」と明言しました。北方領土はわが国「固有の領土」と発言できるのか、総理に伺います。安倍元首相と同様にあえて「固有の領土」の表現を避けるのならば、その理由とともに、いつから「固有の領土」と表現できなくなったのか、伺います。

 所信では、韓国に対して「適切な対処を強く求めていく」と述べました。韓国司法当局が元徴用工訴訟に関して日本企業の差し押さえ資産の売却命令を出した件を含め、韓国にどのような「適切な対処」を求めていくのか、伺います。

 北朝鮮による拉致問題に関しては「最重要課題」であり「条件を付けずに金正恩委員長と直接向き合う決意」と述べました。安倍元首相も菅前首相も結局有言不実行となりました。拉致問題に取り組む総理の戦略、方針、決意を伺います。

国民民主党は「正直な政治」を追求しており、年金や財政についても国民の皆さんに正直に実情を開示することが重要と考えます。そのためにも、国会内に年金や財政の将来推計を客観的に行う経済財政等将来推計委員会を設置することを提言しています。総理の考えを伺います。

 所信では財政単年度主義の弊害是正に言及しました。憲法改正や財政法改正を念頭に置いているのか、総理の考えを伺います。

明日、衆議院を解散すると伺っています。国民民主党は改革中道政党として、「正直な政治」「偏らない政治」「現実的な政治」を追求し、総選挙においても、諸課題に真摯に向き合うことを申し上げ、最後に、総理は今回の解散で国民の皆さんに何について信を問うのかを伺い、代表質問とします。

以  上