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ニュースリリース

【衆本会議】玉木代表が岸田新総理大臣の所信に対して質疑

 玉木雄一郎代表(衆議院議員/香川2区)は12日、衆議院本会議において、岸田新内閣総理大臣の所信演説に対する質疑を行った。討論の全文は以下のとおり。

所信表明演説に対する代表質問

令和3年10月12日 玉木雄一郎(国民民主党・無所属クラブ)

 岸田総理、就任おめでとうございます。まず、岸田総理の「看板政策」である「令和版所得倍増」 について伺います。

 

「令和版所得倍増」が消えた所信表明演説

 岸田総理は自民党総裁選で「令和版所得倍増」を公約として掲げ、ニュースなどでも大きく取り上げられました。総裁選パンフレットの表紙にも掲げられた、文字通り「看板政策」でしたが、先週の所信表明演説には「所得倍増」の言葉がどこにもありませんでした。なぜ所信には入れなかっ たのですか。誰かの反対で入れられなかったのでしょうか。そもそも総裁選で主張されていた「令和版所得倍増」とは、いくらの所得を、いつまでに倍増させる計画でしょうか。その具体的な方策も含めてお聞かせください。

 

「成長と分配の好循環」は5年前の与党公約

 岸田総理は「新しい資本主義」として「成長と分配の好循環」を目玉政策に掲げましたが、これは何も新しい言葉ではなく、5年前の2016年1月の施政方針演説で当時の安倍総理が述べたキャッチフレーズです。同じく公明党も2016年の参院選公約で「成長と分配の好循環」を掲げました。 あれから5年経ちましたが、果たして「成長と分配の好循環」は達成できたのでしょうか。また、 新・三本の矢の政策目標であった「600兆円のGDP」、「希望出生率1.8」、「介護離職ゼロ」は達成できたのでしょうか。達成できていないとしたらその原因もあわせてお答えください。

 そもそも、岸田内閣の唱える「成長と分配の好循環」は安倍内閣の「成長と分配の好循環」とどこが違い、どこが同じなのですか。安倍内閣でできなかったことが、岸田内閣でできるのでしょうか、お答えください。

 

具体性に欠ける分配戦略

 岸田内閣の具体的な成長戦略が見えません。4つの柱はいずれも抽象的なものばかりで、数値目標などもほとんど示されていません。

 分配戦略の3つ目、看護、介護、保育の現場で働いている方々の給料を上げることは賛成ですが、これらの分野で働く人は全就労者の約5%で、マクロ経済へのインパクトは小さいと言わざるを得ません。どのように国民全体の所得を上げようとしているのか、また、約25年間下落傾向が続 いている実質賃金をどのように引き上げるのか、その具体的な戦略をお示しください。

 分配戦略の1つ目、「労働分配率向上に向けて賃上げを行う企業への税制支援を抜本強化する」 とのことでしたが、大企業向けの人材確保促進税制や中小企業向け所得拡大促進税制のように、給料を上げたら減税する仕組みは既にあります。しかし、民間シンクタンクの分析によれば、日本経済全体としての賃上げ効果は限定的だったと評価されています。政府として所得拡大促進税制など の効果をどのように評価し、具体的にどのような抜本強化策を講じるつもりなのか、それによりどの程度賃金を上げる政策効果を見込んでいるのか、明確な答弁を求めます。

労働市場の流動化

 生産性の高い、すなわち賃金の高い産業をつくり、そうした分野への人材の円滑な移動を促すことが、給料の上がる経済の実現には不可欠です。国民民主党は、職業訓練や学び直しの機会を無償で提供し、同時に、その間の基礎的所得、ベーシック・インカムを補償する「求職者ベーシック・インカム」制度を提案しています。岸田内閣は、労働市場の流動化をどのように進める方針か伺います。

 

消費税減税

 消費税について伺います。国民民主党はコロナの影響に対する経済対策として、昨年から一貫し て消費税率の引き下げを主張し続けています。政府が税として集めて、コロナ支援策として配るのが遅すぎるのなら、そもそも税を取らない減税の方がその場で効果が得られます。総理は先週、経済対策の策定を指示したそうですが、報道を見る限り消費税について言及がありません。岸田総理、コロナの影響から経済が回復するまで、消費税を減税すべきではないでしょうか。

 

積極財政への転換

 財務省は、2002年に日本国債の格付けを引き下げた外国格付け会社に向けて「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。」と述べていますが、岸田内閣においても日本国債の債務不履行はないとの考えは今も変わっていないのか、もし国債の債務不履行があるとすれば如何なる事態を想定しているのか、答弁を求めます。国民民主党は、財政政策を「積極財政」 に転換し、10年間で150兆円を国の未来のために投資することを提案しています。米国のように、 需要が供給を上回り、消費や投資を活発化させる「高圧経済」政策を取り入れ、積極財政でまず経済回復を確実なものにしてから、結果として財政状況が改善する道を追求すべきではありませんか。

 

一律現金給付

 コロナ対策の現金給付について伺います。非正規、子育て世帯などに限定した給付金を表明されましたが、特定の対象者に絞ると給付が遅くなることは、これまでの給付金の例を見ても明らかで す。岸田内閣の現金給付は、どのような対象者にいつまでに届けるのか、明確にお答えください。 国民民主党は、給付を必要な人に迅速に届けるため、一旦全ての国民に一律10万円を給付し、高所得者には後で課税時に「逆還付」を求めることを提案しています。昨年の一律10万円給付も、どこよりも早く昨年の3月9日に提案したのは国民民主党でした。2回目の現金給付のやり方もぜひ私たち国民民主党の提案を採用してください。また、岸田総理がテレビ番組でおっしゃった「プッシュ型支援」はいつ頃、誰に対して行われる予定がお答えください。

 

総合支援資金の延長

 生活再建までの生活費を月20万円まで貸し付ける総合支援資金は、コロナ禍で仕事を失い、生活が困窮する人々の最後の拠り所となっています。国民民主党は最大6ヶ月となっていた貸付期間の延長を今年の通常国会冒頭の代表質問で菅総理に提案し、3ヶ月間の追加貸付が認められましたが、岸田総理、コロナ禍の長期化に伴い、総合支援資金は再度貸付期間を延長すべきではないでしょうか。

事業規模に応じた固定費支援

 岸田総理が総裁選で訴え、所信でも言及された「地域、業種を限定しない形の事業規模に応じた給付金」は、国民民主党が今年4月2日に提出している法案と同じです。コロナという危機対応ですので、いい政策はどんどん取り入れていただいて構わないのですが、せっかく準備ができているので、国民民主党の地域・業種を限定しない、事業規模に応じた固定費支援法案を必要な補正予算とともにこの臨時国会で成立させ、コロナで困っている事業者を救済してから、選挙をしてはどうでしょうか。総裁選で訴えた「先手先手で徹底したコロナ対策を実行する」が言葉だけでないことを行動でお示しください。

 

ガソリン価格の値下げ

 ガソリン価格が5週連続で上昇しています。3年ぶりに160円台となり、コロナで冷え込んだ家計にさらに打撃を与えています。ガソリン高騰の影響は、移動を車に頼らざるを得ない地方ほど厳しいことは総理もご承知かと思います。総理、いまこそ、「トリガー条項」を発動すべきです。「トリガー条項」とは、ガソリン価格がリッター160円を超えた際、価格に上乗せされている特例税率を停止する措置のことで、東日本大震災の復興財源に充当するため、現在は凍結されています。このガソリン価格の「トリガー条項」を復活させて、上乗せされている税金分リッター25円を値下げすべきではありませんか。

 

科学技術投資の財源

 岸田総理が「科学技術立国の実現」を掲げたことは歓迎します。所信では「先端科学技術の研究開発に大胆な投資を行う」とのことでしたが、今後20年間、高齢化に伴う社会保障関係費の増加が見込まれる中で、総理は科学技術の研究開発投資の財源をどのように調達するのでしょうか。国民民主党は「教育国債」を新たに発行して、これまで年間5兆円で横ばいだった教育・科学技術予算を、年間10兆円に倍増させることを提案しています。

 

脱炭素に向けた産業支援策

 2050年カーボンニュートラルの目標は進めるべきですが、日本経済の屋台骨である自動車産業や国内雇用にも甚大な影響を及ぼすことになります。米国では、電気自動車の購入時に、労働組合を持つ拠点で組み立てられた車両に追加の税額控除を講じる法案が議論されており、事実上ビッグ3の支援を検討しています。自国の産業や国民生活を守るため、脱炭素化の推進にあたっては、欧米と同規模の産業支援策を我が国も講じるべきと考えますが、総理の見解を求めます。

 

円安対策

 米国の連邦準備制度理事会、FRB議長が11月にも「テーパリング開始」の可能性に言及したことで、円安が進んでいます。輸入原材料費の高騰は中小企業の経営に大きな影響を与えます。急激な円安を迎えた場合の政府としての支援や対策についてどのように考えているのか、総理の見解を伺います。

 

子ども庁も看板倒れか

 岸田総理が総裁選で掲げた、子ども関連施策を一元的に扱う「子ども庁」も所信表明では消え、「こども目線での行政の在り方を検討」という、あいまいな「霞ヶ関文学」的表現に変わってしまいました。なぜ所信表明に「子ども庁」を盛り込まなかったのでしょうか。来年の通常国会に関連法案を提出する予定はあるのでしょうか。

 

コロナ司令塔も看板倒れか

 国民民主党はアメリカの疾病対策予防センターをモデルとした「日本版CDC」の創設を提案していますが、「健康危機管理庁」を創設すべきではないですか。また、司令塔機能を強化するなら、複数いるコロナ関係大臣は厚労大臣にまとめるべきではないでしょうか。総理の見解を求めます。

 

米価下落対策

 この秋は、コロナによる需要減が追い打ちをかける形で米価が大幅に下落しています。これも総裁選では「市場隔離を含めた十分な支援」を訴えておられましたが、所信表明では市場隔離が消え、「当面の需給の安定に向けた支援」に変わっていました。総理、米価下落対策として、市場隔離、すなわち政府備蓄米の緊急買い上げはするのか、しないのか、明確にお答えください。また、「新自由主義からの脱却」をめざすなら、農政の見直しがその資金石になると思いますが、米の生産調整に国が関与しない方針は継続するのでしょうか。あわせて伺います。

 

国際的な人権侵害への対応

 国際的な人権侵害に対する制裁措置を定めた「日本版マグニツキー法案」を、国民民主党は昨年11月にとりまとめました。また、今年6月には企業に人権取組状況の公表を求め、優良企業を政府調達で優遇する「人権デューデリジェンス法案」の骨子案をまとめました。岸田総理は、総裁選で日本でもいわゆる人権侵害制裁法を導入すべきと答えていましたが、人権外交を日本がリードする観点から、岸田内閣として人権侵害に対処する法案や人権デューデリジェンス法案を提出する用意はありますか。

 

結び

 コロナで日本経済と国民生活は深く傷つきましたが、コロナの前から日本経済は長期低迷に陥っています。1人あたりのGDPは韓国にも負けて世界で26位。国際競争力ランキングは中国に負けて31位。日本はどんどん貧しく安い国になっていっています。1996年から25年間、日本の実質賃金は長期にわたって下がり続けています。このうちほとんどの期間、政策を担ってきたのは自民党で す。 総理、これまでの延長線上の政策ではこの衰退の流れを変えることはできません。岸田総理が自民党を変えてくれると期待しましたが、気の毒なくらいいろんな人の意見を聞きすぎて、もう既に看板政策さえなくなってしまっているではないですか。私たち国民民主党は、「人づくりこそ国づくり」の理念に基づき、経済政策をメリハリの効いた積極財政に転換し、「給料の上がる経済」の実現を目指します。動かなくなったお金や人を動かし、日本を立て直せるのは私たち国民民主党の政策です。

「動け、日本。」

私たちは動かなくなった日本を動かしていきます。ご静聴ありがとうございました。

以上