ニュースリリース
【参本会議】礒﨑議員が「経済安全保障推進法案」に賛成討論
礒﨑哲史広報局長(参議院議員/全国比例)は11日、国民民主党を代表し、参議院本会議で議題となった「経済安全保障推進法案」に対する賛成討論を行った。討論の全文は以下のとおり。
「経済安全保障推進法案」に対する討論
令和4年5月11日
国民民主党・新緑風会
礒﨑 哲史
国民民主党・新緑風会の礒﨑哲史です。
まず、ウクライナ国民の皆様に連帯の意を表します。併せて、今も続くロシアによるウクライナへの軍事侵攻と、ジェノサイドが疑われている多くの民間人の虐殺や野蛮な行為を強く非難します。
一方、日本はジェノサイド犯罪を認定するための法整備がされておらず、ジェノサイド条約にも署名、批准できておりません。日本政府には、ロシアに対し即時撤退を強く迫るとともに、ジェノサイド条約の批准に向けた国内環境整備を早急に進めることを求めます。
また政府はロシア産の石油を原則禁輸する方針を表明しました。ロシアに対する更なる経済制裁により、エネルギー価格の不安定な状況が続くことを踏まえ、国内のエネルギー価格高騰対策としてトリガー条項凍結解除をはじめとした施策の更なる強化の早期実施を強く求めます。
その上で、国民民主党・新緑風会を代表し、ただいま議題となりました経済安全保障推進法案に対して賛成の立場から討論を行います。
冒頭、我々が参議院において提出した「総合的経済安全保障施策推進法案」が政府案と併行して審議するに至らなかったことについて、大変遺憾に思っていることをお伝えしておかなければなりません。国民民主党案は、政府案ではカバーされていなかった、生産設備、エネルギー、食料、医療品等、国民生活と日本の経済を守るために必要な事項を総合的に定めようとするものであり、同時に、国内人材の育成や確保、セキュリティクリアランス、国際規格・ルール整備への参画、人権デューディリジェンスなども含めた、より広い安全保障の概念を提唱しています。政府案を補完するもので、共存できるはずの内容でもあり、同時に審議されることで、より充実した議論ができたものと思っています。
一方で、審議における小林担当大臣の誠実な答弁もあって、一定程度政府の方針が具体的に示された部分もあったことから、明らかになった課題を列挙することで賛成討論に代えたいと思います。
本法案でカバーされていない項目の内、人権デューディリジェンスについては、夏までに業種横断的なガイドラインを策定するとの答弁がありました。一方、衆議院の参考人質疑で参考人からも示されたとおり、すでに実害が出始めているセキュリティクリアランスについては、法案提出の検討さえしていないことは問題です。法制化しないまでも、人権デューディリジェンスと同様、せめてガイドラインを早期に策定するなどの措置を講ずるべきです。さらには、ガイドラインを作って終わりではなく、その後の丁寧なフォローアップ体制も整備することを求めます。
また、基本的価値やルールに基づく国際秩序の維持強化に向けて、国際機関の幹部ポストの獲得や交渉人材の育成を通じた国際標準化、ルールメイキングの促進を加速するよう、経済産業省を始めとした各省との連携強化と具体的な施策の実施を要望します。特に幹部ポストの下、実際に交渉する人材の不足が顕著であり、交渉の現場からも強い懸念の声があることから、人材育成と確保に向けた早急な対応を求めます。そのことは、経済安全保障を確たるものにしていく上で必ずや強力な武器になるとともに、我が国産業の国際競争力強化にとっても極めて重要なことであると考えています。
政府案のいわゆる4本柱について申し上げます。
サプライチェーンの強靱化については、事業者が調査に応じる項目を明確にすること、また、特定重要物資の指定に併せて、国内投資促進事業費補助金の拡充などによる事業者へのインセンティブ強化や供給源の多様化を促進すること、さらには、蓄電池の原材料を始めとした循環型経済政策を促進すること、等を遅滞なく進めることを求めます。その上で、供給確保計画の提出は、あくまで事業者の自主的な取り組みであることを改めて強調しておきます。
基幹インフラ事業・事業者の指定については、その対象を甚大な影響を及ぼす事業者や設備に限定すること、すでに業法において安定的な提供義務が課されている中、この法律によって新たに課せられる規制の位置づけを明確にすることを、事業者や従業員の活動を萎縮させるべきではないとの観点から、強く求めます。
さらに、今述べました重要物資や重要設備について、多くが法案成立後に閣議決定や省令指針で定めることとなっていることから、そのプロセスの公平性・透明性の確保のため、経済界や労働界の意見、とりわけ実際に現場で働く者の声を反映させることができる機会を担保すべきと考えます。政府としての最大限の配慮を求めます。
先進的な重要技術については、その研究開発に携わる人材の養成と資質の向上が必要不可欠であり、技術の流出といった経済安全保障の観点からだけでなく、日本の産業基盤の強化による経済成長に向けても喫緊の課題だと認識しています。若手研究者やスタートアップ企業にとって「魅力的な環境を整備する」ための具体策を、政府として早急にいただきたいと思います。
特許出願の非公開化については、出願人がすべからく申請手続きに精通しているわけではないことから、保全指定や損失補償の申請においては、極力負担が発生しないようにすること、弁理士に相談・依頼する際のガイドラインを早急に策定することを求めます。また、損失補償の財源として特許特別会計から支出することは、会計本来の趣旨に合わないだけでなく、同会計の収支悪化につながること、加えて制度を維持する上で収支の悪化が開発者にとって余計な負担となり、様々な研究とイノベーションの足かせにもなりかねないことから、一般会計から支出すべきことを強調しておきます。
以上、これまでの審議を通じて明らかになった課題への対応を要望してきました。賛成討論であるにも関わらず要求項目が多くなったこと、また、委員会での附帯決議が23項目にも及んだことは、依然として「経済安全保障」の言葉そのものの定義が不明確なままであることに象徴されるように、法案全体の不明瞭さに起因しています。
現状、世界経済は大転換期を迎えています。第4次産業革命、地球温暖化対策、各国・各地域における経済連携、グローバリズムとナショナリズム、新型コロナウィルスの感染拡大、ウクライナへのロシアの軍事侵攻など、経済を取り巻く環境は否応なしに変化し、世界各国は既に新たな経済秩序を作り出し、次なる時代で優位に立とうとしのぎを削っています。
本法案は、新たな時代に向けた日本の安全保障のあり方をバージョンアップする第一歩として重要な意味をもつと同時に、自由な経済活動を相当程度制約する中身であることを改めて肝に銘じておく必要があると考えます。
そして、世界経済がどの様な状況にあろうとも、その時々の困難を乗り越え、日本の未来を切り拓いていく力の源泉は人であることから、何よりも人への投資が重要であることを訴えて、討論とさせていただきます。
ご清聴ありがとうございました。