ニュースリリース
【衆本会議】岡野純子議員が下請法等改正案について質疑

岡野純子議員(衆議院議員/千葉5区)は11日、衆議院本会議で議題となった下請法等改正案について質疑を行った。質疑の全文は以下の通り。
「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律案」に対する質疑
令和 7 年 4 月 11 日
国民民主党 岡野純子
国民民主党の岡野純子です。
ただいま議題となりました「下請代金支払遅延等防止法」及び「下請中小企業振興法」の改正案に対し、会派を代表して質問いたします。
私たち国民民主党は「働く者のための政党」です。
国民民主党結党以来、私たちは一貫して下請法・独禁法の実効性強化を訴えてきました。その背景には、コロナ禍、原材料費・エネルギーや物流コストの高騰、さらには国際情勢の不安定化という、下請企業にとってはまさに生き残りをかけた苦難の連続があります。
「材料費が高騰しているのに、値上げは認めないと発注元に言われた。
もはや利益が出ないどころか、赤字。何のために仕事をしているのか分からない」「『これ以上価格交渉をすると取引を切られるかもしれない』という空気がある。明示的な圧力でなくても、下請側は沈黙せざるを得ない」
寄せられたこれらの声は“法のグレーゾーン”で許される問題ではありません。
これまでの商慣行として、大企業の利益が優先され、下請企業やフリーランスの労働者が適正な対価を得られない仕組みが温存されてきました。
力ある企業が、自らの利益確保のために、中小企業や個人事業主に「しわ寄せ」を押しつける構造がまかり通ってきました。この構造的な不公正を正さない限り、どれだけ成長戦略を語っても、その果実は一部企業に集中し続けるでしょう。
下請法は、その「公正な分配」を実現するための基盤です。本日は、この法改正の意義とその内容は充足しているのかを明らかにしたく発言いたします。
◉トランプ関税の影響
トランプ政権の相互関税は 90 日間の停止が示されましたが、先行きが不透明なことに変わりはありません。今後、アメリカ市場での価格転嫁が困難となれば、日本国内の下請けにしわ寄せが来ることは必至、といった中、今般の改正は、今後の日本経済を守る上で極めて重要です。 政府は、グローバルな観点から、本法案の意義をどのように位置づけているのか武藤経済産業大臣に伺います。
また、春闘において中小企業の賃上げにマイナスの影響を与える可能性が高まっていますが、賃上げの流れは絶対に止めてはいけません。さらには物価高と景気後退が同時に起こるスタグフレーションが発生する危険性もある中、強力な経済対策が必要と考えますが、国内対策、とりわけ、エネ ルギー・物流コストの削減、消費喚起といった足元の景気対策をどう進めていくのか、武藤経済産業大臣に方針を伺います。
◉速やかに浸透させるスピード感
法案が成立したとしても、その先、現場に落ちていくまでのスピード感が肝要です。今回の改正内容を来年の賃上げにつなげていくことが重要であり、遅くとも来年1月までに施行すべきと考えます。政省令の策定やガイドラインの整備、さらには関係業界への啓発にどれだけ速やかに取りかかれるのか、その「意欲」を伊東公取担当大臣にお尋ねします。
◉価格転嫁の実効性担保
政府は“労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針”を策定しています。しかし、実際の運用において元請け企業の裁量に委ねられていることを懸念します。現行の「自主的な転嫁」の元では、経産省の調査によると約半数がコスト増を価格転嫁出来ていないという結果も出ている、そういった現状を政府はどう具体的に是正するつもりでしょうか。武藤経済産業大臣にお尋ねします。
自主的に交渉すれば取引を打ち切られる恐れがある状況では、転嫁交渉など絵に描いた餅であり、取引当事者間の力関係が変わらない限り、実効性は期待できません。交渉力の弱い中小企業が 取引停止を恐れることなく交渉できる具体的な支援策、例えば中小企業庁が既に取り組まれている、弁護士が法的助言をする“下請かけこみ寺”のように中小企業が安心して交渉するための方策について武藤経済産業大臣お答えください。
また「一定の原価上昇があった場合には、転嫁を義務づける制度」など価格転嫁の強制力を法的に担保する考えはありませんか。一般市場では難しくても例えばまずは官公需の公共調達であれば標準価格が明らかであるため実行可能かと考えますが、公から動いて民を変える、という発想は、武藤大臣いかがでしょうか。
◉法の網目にかからない事業者の保護
下請法の適用基準では、委託元の資本金が1千万円超3億円以下の場合、下請側は資本金1千万円以下の場合のみ適用対象とされています。これは「下請法が保護しようとしているのは、特に小規模な事業者」という前提に基づいているわけですが、この法律が作られたのは昭和 31 年。当時は資本金1,000 万円を超える企業はある程度の経営体力があるとみなされていました。しかし時を経て企業の在り方は様変わりしています。例えば IT 系ベンチャー企業がエンジェル投資などで資本金 1,000 万円以上あっても社員は数人で実績も浅い、というケースは多く見られますし、地方の中小製造業者でも町工場が設備更新のために、融資の都合上、資本金を1,000 万以上に増資したり、大手メーカーの下請けで依存度が高く値下げ圧力に抵抗できなかったりするケースなど、 形式的な資本金ではなく、経済的依存関係や交渉力の弱さを考慮すれば、実質的には保護すべき立場の事業者も存在します。行政リソースに限界があることは理解しますが、保護すべき企業とそうでない企業の合理的線引きについて伊東公取担当大臣の考えを伺います。
◉公正取引委員会の執行力強化
日本の下請法そのものは、制度としてはきめ細かいですが、「守らせる力」が弱いように思います。現場の声を拾う下請 G メンの尽力に敬意を表しつつも、より実効性を伴った摘発体制の構築が必要です。
公正取引委員会に対しては、労働現場に寄り添った権限の行使、執行力の強化を、政府として支え ていくべきです。よりきめ細かく実態把握を行うために下請 G メン、トラック・物流Gメンとも連携した取引調査体制を加速させるべきと考えますがいかがでしょうか。武藤経済産業大臣に伺います。
昨年の公正取引委員会の指導件数は 8230 件、うち、勧告対象は 21 件です。確かに、その企業の社会的信用を大きく毀損しますから勧告に慎重になる姿勢は理解できます。しかし、現場の声を聞いていると「調和的指導」では現状変更にも限界があるように感じます。諸外国ではより強力な是正措置が抑止力として機能している例も見られます。競争当局にはより毅然とした対応を求めますがいかがでしょうか。
一方で当局による是正措置は私的自治の原則に対する過度な介入、という懸念もあります。その点どのように均衡を保っているのか伊東公取担当大臣に伺います。
◉「下請法逃れ」対策の抜け穴をどう塞ぐか
適用基準に従業員数を追加することで『下請法逃れ』を防ぐ狙いがあるわけですが、例えば資本金を意図的に減らしたり、子会社化で実質的な支配関係を隠したりするケースも考えられます。こうした抜け道への対策を、実際の運用規定に盛り込んでいくべきと考えますがいかがでしょうか。伊東公取担当大臣に伺います。
◉法律の整備だけでは困難な「デフレ型商慣習」、「発注側の意識」の変え方
長らく続いた「安く、早く、多く」に価値を置いた経済構造の中で、取引の場には暗黙の了解、 あるいは慣習という名の圧力が根強く残っており、発注側の意識が変わらない限り、どれだけ法律を整備しても効果は限定的です。
政府としてこうした企業文化や取引慣行を変えるための具体的な啓発をどのように講じていくのか、武藤経済産業大臣のお考えを伺います。
◉取引最上位企業側からの働きかけ
今般の改正に先んじて、各分野の専門家が取引環境の在り方を検討することを目的とした“企業取引研究会”が立ち上げられています。
その報告書を総括する「まとめ」の章を読み、私は驚きました。まとめの文章はこのように始まります。
―弱い者達が夕暮れ さらに弱い者をたたく その音が響きわたればブルースは加速していく 見えない自由がほしくて 見えない銃を撃ちまくる 本当の声を聞かせておくれよ
よもや行政文書でブルーハーツを目にするとは思いませんでしたが、それほどまでに、現場の生の声が集積された“企業取引研究会”において、「今般の改正をもってなんとしても経済構造を変えた い」という強い思いが溢れたゆえと理解できる読み応えのある報告書でした。
ここで言うところの“弱い者”とは、下請業者を指しているわけではありません。本筋での努力、すなわち「『商品やサービスの価値向上を追求し、顧客に対してそれに見合った対価を訴求する』ということから逃げ、『立場を利用して労働者の価値を評価することもなく買いたたく者』」=それこそが“弱い者”だと定義し、「このような弱い者達が連鎖して出来上がるサプライチェーンが、果たして強い経済を生むのだろうか」と記されています。
真に強い経済を産み出す礎となるのは、取引最上位企業からサプライチェーンの広い裾野を支える一つひとつの企業が、優れた商品やサービスを創造し、競争力を高め、成果を分かち合う経済構造です。
安い労働力を大量に投入することで経済成長を支えた時代から、労働者一人ひとりの生産性を高め、やりがいと誇りを持って働ける社会へのシフトが求められています。
各企業が力をつけるためには、元請けに近い立場の企業から自主行動計画
順守の徹底を呼びかけることも有意であると考えます。「取引最上位企業から業界団体に取引適正化を働きかけ」れば、Tier4、5 への波及も期待出来ることから政府として強く要望していくべきと考えますがいかがでしょうか。武藤経済産業大臣に伺います。
◉運送業界への適用拡大と物流現場への影響
荷主と運送事業者への下請法適用は期待されていたことですが、これをもってトラックドライバーの長時間荷待ちや無償荷役といった過酷な実態が解消されるのか疑問です。ご承知の通り物流業界の現場は、有効求人倍率が全職業の2倍近い状況であり、慢性的な人材不足が深刻な課題になって います。「2024 年問題」の影響も大きい中、改正物流関連 2 法の着実な遂行も併せた具体的な改善策と、運送事業者の声を反映する仕組みをどう作るのか武藤経済産業大臣にお聞きします。
また国民民主党は、「運送業に係る“標準的な運賃”を確保した荷主への税優遇を行うこと」を政策として提案しています、そこへの見解も伺います。
今回の改正には「下請」という呼称の変更も含まれます。「下請」という言葉に限らず、「万引き」「いじめ」「チカン」「パパ活」「派遣切り」など、呼称によって問題の本質が見えにくくなったり、ネガティブなイメージが過剰に付与されたりする言葉は他にもあり、呼称変更は評価できるものです。名称を変更した後も、省庁や国会の中で「特定受注事業者取引適正化法、いわゆる下請法」などと呼んでいては元も子もありませんので、どうか変更後の呼称を徹底し、広く意識を変える一助として頂きますようお願いいたします。
私たちは今、問われています。
「これまでの常識」に依存し、誰かの犠牲の上に経済を成り立たせる道を選び続けるのか。それとも、知恵と工夫と努力に対して正当な報酬が支払われる経済社会を築いていくのか。この法改正を契機として、企業と労働者が互いに研鑽し合える新しい経済モデルを作っていくべきだと、国民民主党は考えます。下請法はその「あたりまえの経済の土台」を作る法律です。
私は、政府が今般の法改正を単なる制度変更として終わらせるつもりはないと信じています。「施行して終わり」ではなく、「生きた法律」として運用していく覚悟を最後に伊東公取担当大臣にお伺いし、「働く人のその努力が真っ当に報われる社会」の実現のために国民民主党として最大限尽力していく旨、お誓い申し上げ、私からの質問といたします。トランプ関税で先が見通せず、国内産業が困難に直面している今こそ、国内は『対決より解決』の姿勢でこの困難を乗り越えて参りまし ょう!
ありがとうございました。