国民民主党安全保障調査会
骨子
- 自分の国は自分で守る
- 新たな感染症、気候変動による自然災害や食料危機、厳しさを増す国際環境など、様々な危機を「想定外」とすることなく、経済、エネルギー、食料、防衛等を含めた総合的な安全保障政策に万全を期し、我が国の領土、領海、国民の生命及び財産を守り抜きます。具体的には「現実的平和主義」を基本理念に、「近くは現実的に、遠くは抑制的に、人道支援は積極的に」を安全保障政策の原則とします。
- 総合安全保障の推進
- 新型コロナウイルスの世界的な流行は、日本の脆弱性、例えばデジタル化の遅れ、サプライチェーンの過度な他国依存、ワクチン開発能力の欠如などを白日の下にさらしました。またエネルギー自給率は約10%、食料自給率は約 40 % (カロリーベース)で、新たなパンデミックや大規模自然災害、地域紛争などのリスクに対して、極めて心もとない現状であると認識すべきです。「自分の国は自分で守る」は、何も防衛に限った課題ではありません。経済安全保障、総合安全保障の必要性を認識し、政府一体となった戦略を策定し、日本の課題解決に取り組みます。
- 専守防衛の堅持
- 戦後日本が追求してきた「平和主義」と「専守防衛」といった重要な安全保障政策はこれを堅持し、我が国を取り巻く諸情勢の変化を踏まえ、我が国の領土、領海、国民の生命及び財産を守るという観点や、集団安全保障に基づいて国際的な責任を果たすという視点からの新たな要請を不断に検討し、必要な対策をとっていきます。非核三原則は堅持するとともに従来の政府解釈を踏襲します。
- 自衛のための打撃力(反撃力)の保持
- ロシアによるウクライナ侵略により国際秩序が根底から覆される危機にさらされる中、中国の急速な軍備拡大、頻繁な領海侵犯、北朝鮮による我が国周辺への度重なるミサイル発射やロシアによる北方領土への新型ミサイル配備など、我が国を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しています。このような厳しい安全保障環境を踏まえつつ、「戦争を始めさせない抑止力」の強化と、「自衛のための打撃力(反撃力)」を保持します。
- 防衛力の強化
- 従来領域(陸、海、空)において不十分であった継戦能力の確保や抗堪性の強化を抜本的に見直して整備する他、防衛技術の進歩、宇宙・サイバー・電磁波などの新たな領域に対処できるよう専守防衛に徹しつつ防衛力を強化するため、必要な防衛費を増額します。
- アクティブ・サイバー・ディフェンス(ACD)の採用
- サイバー攻撃は新たな戦闘領域であるとともに、国民生活や社会経済活動に深刻な影響を与えることから、できるだけ速やかに対策を講じる必要があります。サイバー安全保障を確保するために、我が国においても平時の段階からサイバー攻撃者の動向を探り、対処を行うアクティブ・サイバー・ディフェンス(ACD)について、能力整備と実施体制の整備を行うとともに、「サイバー安全保障基本法(仮称)」を制定します。民間の能力を含めた国家のあらゆる機能を総合した「サイバー攻撃対処能力」の確立を目指します。
- 「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」の見直し
- 我が国の安全保障を確保するため、日米同盟は引き続き重要であり、その中核となる日米防衛協力の実効性を確保するため「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」の見直しを行います。他方、日米同盟関係を堅持・強化しつつも、米国に過度に依存し過ぎている日本の防衛体制を見直し、「自分の国は自分で守る」ことを安全保障政策の基本に据え、必要な取り組みを行ってまいります。また、日米地位協定の見直し、沖縄基地問題の解決を目指します。
- イージスアショアの再検討とミサイル防衛の強化
- 我が国周辺諸国の核開発・保有状況や、現在の弾道ミサイル防衛網を突破する可能性のあるミサイル開発状況などに鑑み、ミサイル防衛体制を抜本的に見直し、あらゆる経空脅威に統合的に対応する統合防空ミサイル防衛(IAMD;Integrated Air and Missile Defense)能力を強化してまいります。
この際、現在進めている「イージスシステム搭載艦」の有効性を検証するとともに、中止が決定された「イージスアショア」の配備についても再検討します。また、各種のミサイル攻撃等から国民の命を守るため、地下シェルターの設置を促進するほか、国民保護のための諸施策に取り組みます。 - 自衛官等の処遇、勤務環境の改善
- 我が国の防衛力の中核である自衛官の確保は精強な自衛隊を維持するために必要不可欠です。自衛官の処遇、勤務環境の向上、留守家族支援策の強化などに取り組むと同時に、退職自衛官の再就職支援の強化や若年定年退職者給付金の拡充を図ります。また、女性自衛官が更に活躍することができるよう、勤務環境の改善や子育て支援、育児後の職場復帰が円滑にできるような施策を講じます。
- 国内の防衛生産・技術基盤の強化
- 我が国の安全保障を支える防衛産業・技術基盤に対する総合的な施策に取り組んでまいります。防衛装備品は自衛隊が防衛力を発揮して国家・国民を守るために不可欠であり、「自分の国は自分で守る」という基本的考え方に基づき、主要な防衛装備を自国生産できる製造基盤の強化や新規参入の促進、研究開発体制の強化や防衛産業の維持・育成を目的とした一定の利益率の確保など防衛産業の活性化に取り組むとともに、防衛産業が抱える様々なリスクを軽減・排除し、装備移転の促進など販路の拡大に取り組みます。