ニュースリリース
【参本会議】川合孝典議員が刑事訴訟法改正案などに対する質疑で登壇
川合孝典参議院幹事長(参議院議員/全国比例)は19日、国民民主党を代表し、参議院本会議で議題となった刑事訴訟法改正案に対する質疑を行った。質疑の全文は以下のとおり。
令和8年 6 月19 日参議院本会議
刑事訴訟法の一部を改正する法律案
国民民主党・新緑風会 川合孝典
国民民主党・新緑風会の川合孝典です。
会派を代表して刑事訴訟法の一部を改正する法律案について質問します。
はじめに
再審法改正の本来の目的が「無実の人が罪に問われるという国家最大の誤りを正し、正しい裁判を行うための盤石な仕組みを構築すること」にあるという点については、誰もが異論のないことと考えます。
衆院での再審法審議が、紛糾した背景には、「これまでの冤罪事件における検察の姿勢に対する国民の強い不信感」が存在しています。国家の最高権力の一つである捜査・起訴の権限を独占する検察への信頼が揺らいでいるからこそ、法案に盛り込まれた「例外」や「曖昧な基準」が全て「 検察の保身」から来るものとの疑念に繋がっているという現実を政府は重く受け止める必要があります。
こうした現状を踏まえて、今回の刑事訴訟法改正の立法事実について高市総理の認識を伺います。
1.証拠リスト開示について
衆院での審議を通じて浮き彫りになった主な問題点と課題は、一言で言えば「戦後初の法制化という一歩を踏み出す一方で、えん罪被害者を迅速に救済するための実効性が極めて不十分であり、運用次第では救済活動にブレーキをかけかねない構造になっている」点です。
まず証拠リストの開示に関して質問します。
法改正の大きな柱である「証拠提出命令制度」について、国民民主党は「証拠リストの開示」を強く求めてきましたが、法案は「 裁判所は一定の要件のもと、検察官に対し、再審の請求理由に関連すると認められる証拠の提出を命じる」こととし、証拠リストの開示は拒否しています。
これまでの冤罪事件の歴史を振り返ると、一見すると請求理由とは直接関係なさそうな捜査の初期段階の書類やネガフィルムの中などに、アリバイを証明する決定的なヒントが隠されていた事例が多く見られます。
証拠リストがないということは、申し立て側は「どのような証拠があるのか分からない状態のまま、証拠の提出を裁判所に要請する」ということを意味します。証拠の全容がわからないまま、弁護側はどのようにして裁判所に証拠開示請求を行えと言うのか、法務大臣の見解を求めます。
法務省が「証拠リストの作成・開示の義務化」を拒む理由について質問します。
国会審議において、法務省は、証拠リストの作成や開示を法的に義務付けることを拒む理由のひとつとして、過去の古い事件の膨大な捜査資料をすべてひっくり返し、改めて厳密な「証拠の一覧表」を作成することは、「捜査機関に対して過度な業務負担を強いることになる。」と答弁しています。
冤罪被害者が何十年も人生を奪われている重みに比べれば、リスト作成の負担など取るに足らないものだと考えますが、捜査機関への過度な負担を強いることが本当に証拠リストの作成・開示の義務化を拒む正当な理由と考えているのか、法務大臣の見解を求めます。
併せて、そもそも通常審の段階で証拠を適切に管理していれば、リスト化は難しくないものと考えますが、捜査当局は重大事件の証拠管理をどのように行っているのか、法務大臣の説明を求めます。
次に「関係者のプライバシーや名誉の侵害」という不開示理由について質問します。
検察は、保管している未提出の証拠を一覧表にして開示すること自体が、関係者のプライバシー侵害や名誉毀損に繋がる恐れがある、と答弁していますが、プライバシー侵害の懸念については、マスキングや部分的な不開示などの閲覧を制限する手続きを行うことで、いくらでも技術的に対処可能であり、リストそのものを開示しない理由には当たらないものと考えます。
関係者のプライバシーや名誉を侵害しない、証拠リストの開示方法を検討すべきと考えますが、法務大臣の見解を求めます。
そもそも通常の刑事裁判では、一定の要件のもとで検察官が「弁護人に直接」証拠を開示する仕組みとして刑訴法 316 条の 26 などの証拠開示命令制度が既に存在します。
再審という、より慎重なえん罪救済が求められる場において、通常審よりも弁護側へのアクセスを制限し、裁判所への提出に留める理由は何か、法務大臣の説明を求めます。
2.目的外使用への罰則規定の新設
証拠の目的外使用の罰則規定の新設について質問します。
「開示証拠を目的外に使用した者への刑事罰の新設」については、弁護団やメディアから
「救済活動や報道が萎縮する」と懸念が示されています。
これに対して、平口法相は、通常のファクト検証や「無罪を証明するための支援者らによる再現実験」などは目的外使用には当たらない、と説明していますが、罰則適用の具体的な境界線については「個別の事案に応じて判断される」と、曖昧な答弁に終始しています。
「ルールを守れば問題ない」「正当な活動は処罰されない」等として、具体的な刑事罰の適用基準を示さないことによって、弁護団やメディアの「 救済活動や報道が萎縮する」という懸念について、どのように認識しているのか、法務大臣の見解を求めます。
また、弁護人による無罪の主張を裏付けるための行為は、処罰の対象にはならないとのことですが、具体的な境界線を示さず、「正当なものは大丈夫」と抽象的な説明に終始する法務大臣の姿勢は、現場の逮捕・処罰リスクを軽視しているものと考えます。
冤罪を訴えられている当の国家権力から「俺たちが適切に判断するから安心しろ。」と言われても、弁護士や支援者が安心して活動できるはずがないものと考えます。
「目的内使用」と「 目的外使用」の具体的な境界線を明示すべきと考えますが、法務大臣の見解を求めます。
併せて端的に質問しますが、マスコミによる再審を巡る報道で証拠が取り扱われた場合「目的内使用」と「目的外使用」のどちらに該当するのか、法務大臣の明確な答弁を求めます。
また法務省は、通常審でも既に刑訴法 281 条の 4 の「開示証拠の目的外使用を禁じる罰則」が規定されていることを理由に、再審でも同様のルールを設けるだけで過度な懸念は当たらない」としていますが、通常審と再審では前提がまったく異なります。
通常審は法廷の審理が基本ですが、再審の歴史は「世論を動かして社会問題化させる」の特殊な闘いです。通常審の理屈をそのまま再審に持ち込み、「今まで問題なかったから再審でも問題ない」とする答弁は、再審における世論喚起の重要性を軽んずるものと考えますが、この指摘に対する法務大臣の見解を求めます。
3. 検察官の抗告禁止に対する「例外」の維持
最後に検察官の抗告禁止に対する「例外規定」について質問します。
平口法相や法務省は、「十分な根拠がある場合は抗告可能」という例外規定を残した理由について「 万一、地裁などの裁判所が事実誤認や法令の解釈ミスによって、明らかに不当な再審開始決定を下した場合、それを上級審で正す手段が全くないのは司法制度としてバランスを欠く」と説明していますが、再審が始まるということは、本人が「無罪」になるわけではなく、「裁判のやり直し」というスタートラインに立つだけに過ぎません。
万一、地裁などで事実誤認や法令の解釈ミスが生じたとしても再審公判で争えば良いことだと考えますが、敢えて例外規定を維持する理由について法務大臣の説明を求めます。
結びに
衆議院での修正案には、「施行後、5 年毎の見直し」という附則がつきましたが、これは裏を返せば、現時点での法案には見直さなければならないほどの問題点が含まれていることを政府自らが認めたことを意味しています。
再審決定の引き伸ばしの懸念がある「抗告の例外規定」や(再審の)支援活動の萎縮が懸念される、判断基準の曖昧な「証拠の目的外仕様の罰則化」、捜査当局による証拠の隠蔽に繋がりかねない「証拠リストの不開示」など本法案には課題が山積しています。
ようやく動き始めた再審規定の見直しですが、これは冤罪を疑われる被害者が生きている間に機能しなければ意味がない、ということを政府・法務省は重く受け止めるべきであると指摘し、質問を終わります
以 上
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