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ニュースリリース

【参本会議】田村まみ議員が医療法等改正案について質疑

 田村まみ参議院政策審議会長(参議院議員/全国比例)は1日、国民民主党を代表し、参議院本会議で議題となった医療法等改正案に対する質疑を行った。質疑の全文は以下のとおり。

医療法等の一部を改正する法律案に対する本会議質疑

令和7年12月1日
国民民主党・新緑風会 田村まみ

<冒頭>67字

 国民民主党・新緑風会の田村まみです。ただいま議題となりました「医療法等の一部を改正する法律案」について、会派を代表して質問いたします。

<病床削減に関する社会保険料削減効果の試算の妥当性>562字

 まず本法案に深く関わる2025年6月6日の自由民主党・公明党・日本維新の会の3党合意で、約11万床の病床削減により医療費を 1 兆円程度削減する効果が見込めるとされた件に触れなければなりません。
 既に空いている病床を削減することは社会保険料の削減に直結しません。また、稼働している病床を削減するのであれば、入院中や入院が見込まれる患者は一体どうなるのでしょうか。仮に回復期の患者であれば、医療から介護につながることで介護保険の給付が増大し社会保障の中での付け替えであって国民負担の軽減が実現するとは言えないのではないでしょうか。
 本法案では、2040 年頃を見据えた医療提供体制を確保するため、地域医療構想を、病床のみならず、入院・外来・在宅医療、介護との連携を含む将来の医療提供体制全体の構想とすることとしております。在宅医療や介護の需要増加を踏まえて、将来を構想する必要性を説く一方で、社会保険料削減の試算で在宅医療や介護を無視しているのは一貫性がなく、あまりに乱暴なものであり、効果を過大に見せるための意図も感じられ、信頼性に欠けるものと言わざるを得ません。
 病床削減の効果試算は、介護需要の増加も含めた社会保険料全体を考慮したものであるべきと考えますが、3党合意における社会保険料削減効果の妥当性について、厚生労働大臣の見解を伺います。

<プライマリケアへの薬剤師の関与2問>688字

 国民民主党は、疾病等の初期段階における医療提供体制に関して、衆議院で提出した修正案において、総合診療専門医の養成・確保、疾病等に応じて一定の診療報酬を定める診療報酬の包括支払い制度、患者の人数等に応じて診療報酬を定める人頭払い制度、スイッチOTC医薬品の活用拡大によるセルフメディケーション推進の検討が必要であると提案しました。
 医療費削減策として議論されているOTC類似薬の保険適用を一律で外すことは、薬効群ごとにレセプトの内容に顕著な違いがあることを軽視しています。患者の過度な負担増だけでなく、OTC医薬品へのアクセスについて、国民全体の行動変容が起きていない中では混乱をきたします。また、スイッチ分のOTC医薬品の供給に、メーカーの現状の生産能力で対応することは困難です。
 国民民主党はスイッチを強く後押しするため、まずは医療用医薬品として使っているOTC類似薬からOTC医薬品の使用を少なくとも過半数程度まで利用拡大する施策を講じる必要があると考えます。
 将来的な全面スイッチに向け、まずはセルフメディケーション税制の利用拡大に向け、既存のOTC医薬品への対象拡大とセルフメディケーション税制の恒久化を実施し、国民の理解と利用を促進することがOTC医薬品の活用が進み、医療費適正化に資すると考えます。厚生労働大臣の決断を求めます。

 さらに、安全で利便性の高いセルフメディケーションの普及のためには、プライマリケアにおける薬局や薬剤師の関与を高めることが重要です。院内薬剤師へのタスクシフト・タスクシェア、また地域の薬剤師の疑義照会・処方提案・リフィル処方など職能発揮にむけた環境整備や薬局での穿刺血による検査が可能になる体制整備等により、医師が本来の業務に専念することが可能となり、ひいては本法案が目指している医師偏在是正にもつながると考えますが、厚生労働大臣の見解を伺います。

<外来医師過多区域における既存の無床診療所に対する規制強化>286字

 本法案では、外来医師過多区域で新規に無床診療所を開設する場合の、地域で不足している医療機能の提供や医師不足地域での医療の提供を要請することができる等新規参入への規制が盛り込まれておりますが、医師偏在対策として、対象範囲が限定的すぎます。
 国民民主党は、医療資源を有効に活用する観点から、新規の診療所だけでなく、既存の診療所にも同様の対応を求めるべきと衆議院において修正案を提示してきました。与党修正で新たな診療所の開設の在り方について検討規定が加わりましたが、それでも不十分です。
 地域医療の提供を求める対象を既存の診療所にも拡大することに対する厚生労働大臣の見解を伺います。

<医師手当事業に要する費用について>252字

 本法案では、都道府県知事が「重点的に医師を確保すべき区域」を定め、当該区域へ派遣される医師への手当に財政支援を行う、医師手当事業の創設が規定され、その財源は、保険者からの拠出により確保することとしております。
 そもそも論として、医師偏在対策の責任は国・地方自治体です。医師手当事業の財源については、保険者からの拠出を改め、全額を国費とすべきと考えますが厚生労働大臣の見解を伺います。
 また、医師偏在の要因をどのように把握し、その対策としての医師手当によって医師が重点区域に誘引され、医師偏在是正につながるのか厚生労働大臣、説明ください。

<地域医療介護総合確保基金と医師手当事業の整合性>248字

 公的保険において、保険料は保険給付にのみ用いられるべきものです。本来の医療保険の給付との関係性が乏しい医師手当事業に、保険料を充てることは今後『給付』の解釈をどこまでも広げ保険料での対応範囲が拡大していくことにつながる懸念が拭えません。これまでの医師偏在是正のための経済的インセンティブは、公費による地域医療介護総合確保基金を通じて、医療従事者の確保に関する事業への補助が行われてきました。
 公費による同基金の事業と保険者からの拠出に基づく医師手当事業との整合性ついて厚生労働大臣の見解を伺います。

<工程表の遅れ>405字

 次に、医療DXについて伺います。
 医療と介護の連携や医療費の適正化、攻めの予防医療推進に医療DXは必須です。政府は、2023年6月に「医療DXの推進に関する工程表」を策定し、各種施策を進めていますが、当初設定したスケジュールどおりには進まず、例えば電子処方箋を「概ね全国の医療機関・薬局に対し、2025 年3月までに普及させる」とされていたところ、医療機関への導入はわずか1割程度に留まり、本年7月、目標を2030年まで後ろ倒ししました。
 また、電子カルテの普及についても、工程表どおりの進捗が危ぶまれることが、衆議院における修正につながった背景と認識しております。
 工程表を策定しているのは内閣官房の医療DX推進本部ですが、その進捗状況に関し責任をもって管理する大臣は誰なのでしょうか。デジタル社会実現の司令塔たるデジタル庁は機能しているのでしょうか。工程表に対する責任の所在について、厚生労働大臣及び松本大臣の見解を求めます。

<病院経営の赤字>272字

 最後に、深刻な病院経営への対応について伺います。
 病院で働いているのは、医療従事者だけではありません。入院患者に食事を提供する給食事業者、寝具類を洗濯するクリーニング業者、清掃業者、医療事務職等、様々な産業が病院の機能を支えています。
 全国各地において、人件費の増加や物価高騰等により多くの病院が経営悪化に直面しています。その対策として、病院の赤字解消や医療従事者の処遇改善だけでなく、病院機能を支えるこれらの産業の従事者を含めた支援こそが重要であり、地域経済の雇用創出や経済活動の活性化にもつながるものと考えますが、厚生労働大臣の見解を伺います。

<おわりに>193字

 現在、来年の通常国会における法案提出も視野に医療だけでなく介護についても2040年に向けて持続可能な体制をどう構築していくのか、厚生労働省で検討が進められています。
 医療や介護需要の増加も含めた給付削減ありきの議論ではなく、負担について国民の理解を得るための説明をし、負担と給付の適正化に向けた論点を対決ではなく解決のために提言することをお誓いし、私の質問といたします。
 ありがとうございました。

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