ニュースリリース
【衆本会議】田中けん議員が日本学術会議法案に対する反対討論

田中健政務調査会長代理(衆議院議員/静岡4区)は14日、国民民主党を代表し、衆議院本会議で議題となった日本学術会議法案に対する反対討論を行った。討論の全文は以下の通り。
令和7年5月13日
衆本会議討論
国民民主党・無所属クラブ 田中健
国民民主党田中健です。ただいま議題となりました、日本学術会議法案につきまして、会派を代表して反対の立場から討論を行います。
まず、確認しておきたいことがあります。それは、日本学術会議の「法人化」そのものに反対しているわけではない、ということです。むしろ、時代の変化に応じて組織の在り方を見直し、自律性と柔軟性を高めていくこと自体は、前向きに検討されるべき課題であります。参考人質疑の中でも、日本学術会議梶田元会長から、「日本の場合、立法府への科学的助言のチャンネルがないことが課題であり、立法府への助言機能が明記されるなら法人化のメリットになる」との言及がありました。現在のような厳しい財政状況の中で、効率的かつ機動的な運営を求める観点から、法人格の付与という制度設計に一定の合理性があることも理解しております。
しかしながら、本法案が国会に提出されるまでの経緯、そしてその中身を慎重に検討するにつれ、やはり本法案を現段階で成立させることには大きな疑問が残ると言わざるを得ません。最大の問題は、日本学術会議が国際的なアカデミーとしての信頼を維持し続けるために不可欠とされる「5要件」が、法案の設計において十分に尊重されていないという点です。これらはいずれも、ユネスコや国際学術会議など、国際的な学術機関が共有する基準であり、日本が学術国家として国際的な信頼を維持するためには不可欠な価値であります。
ところが、本法案では、監事の任命権が内閣総理大臣にあること、さらには学術会議の運営状況を評価する第三者委員会の評価委員会委員についても総理が任命する仕組みとなっています。これは、名目上の法人化を通じて、形式的には独立性を高めたように見せかけつつも、実質的には政府の関与を強化する構造になりはしないかと言う懸念を生むことになりました。また、法人化の際とその3年後の2回にわたって採用される会員選考方式が、現会員が次期会員を先行する「コオプテーション」という世界標準の会員選考方式からほど遠いものである点にも、懸念が表明されています。しかし、現場から上がっているこれらの声に納得しうる解答は示されず、最後まで懸念が解消されることはありませんでした。
こうした懸念は、学術会議の現職の会員のみならず、広く学術界からも強く表明されています。日本学術会議を構成する会員は、あらゆる学問分野の中から厳正な手続に基づいて選ばれ、国家としての知の基盤を担う存在です。その構成員から「独立性が脅かされる」という声が上がっていること自体が、すでにこの法案の問題性を如実に物語っているのではないでしょうか。
また、全国の学会・学協会からも次々と懸念や反対の声明が発表されています。日本物理学会、日本心理学会、日本社会学会、日本法社会学会など、主要な学会が名を連ねており、その数は100を超える規模にまで及んでいます。これらの学会は、それぞれ専門性の高い分野を担いながらも、共通して「学術の独立性は守られなければならない」という立場から、本法案の問題点を指摘しています。
これほどまでに学術界が分断された状況の中で、政府が一方的に法案を成立させることは、わが国の学術に対する信頼を大きく損なう結果となりかねません。とりわけ、2020年に発生した、日本学術会議の会員候補6名が任命を拒否された問題は、いまだに十分な説明がなされておらず、学術界の不信を払拭するに至っていません。そのような中で、学術会議の構造そのものを大きく変える法案を性急に成立させることは、国民の理解を得るうえでも、極めて困難であると考えます。
さらに申し上げれば、今回の法案では、法人化後の財源や運営体制についての具体像があいまいなままであり、会議の運営に必要な人的・財政的支援が将来的にどのように確保されるのか、依然として不透明です。この点についても、現場からの不安の声は絶えません。
私たちは、学術会議が、政府からの独立性を保ちながら、国民のために自由で公正な知を提供し続ける存在でなければならないと考えます。だからこそ、いま私たちがすべきことは、拙速な法改正ではなく、政府と学術界が対話を重ね、信頼を再構築することにあります。そして、学術の独立性を真に保障する制度設計を、丁寧に作り上げていくことが、学術会議の未来にとっても、知と自由が尊重される社会の未来にとっても必要不可欠であるとの結論に至りました。
以上の理由から、会派を代表しての反対討論といたします。