ニュースリリース
【参本会議】田村まみ議員が育児・介護休業法等改正案について質疑
田村まみ国民運動局長(参議院議員/全国比例)は10日、参議院本会議で議題となった「 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律案(育児・介護休業法案)」に対する質疑を行った。質問の全文は以下の通り。
令和6年5月10日
国民民主党・新緑風会
田村まみ
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律案
本会議質疑
<導入>
国民民主党・新緑風会の田村まみです。私は会派を代表して、ただいま議題となりました『育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律案』に対し質問します。
<ダブルケアラーへの支援推進>
急速な高齢化、晩婚化、晩産化といった背景から、育児と介護が重 なるダブルケアに苦しむ方への支援が求められています。国民民主 党は、先月、このダブルケアラーを支援する法案を提出いたしました。
ダブルケアラーへの対策に関しては、こども家庭庁の創設により、育児施策はこども家庭庁、介護施策は厚生労働省、という新たな縦割り行政の弊害が生じています。また、ダブルケの担い手は 30 代から40代の働く世代が8割を超えます。就業している方も多いとみられますが、仕事と育児・介護との両立施策については厚生労働省が所管しています。自治体では、重層的支援体制整備事業において、ダブルケアラーのように複合化した課題を抱える家庭への相談・支援に取り組まれているところですが、仕事と育児・介護のケアを担う当事者に対し両立するための総合的な支援を進める必要があります。厚生労働大臣の見解を伺います。
ダブルケアラーへの支援を推進するためには、まず、政府による実態調査の実施が必要です。2015 年度の内閣府における調査以降、政府による大規模な調査は行われていないと承知しております。早急に実態調査を行っていただきたいと考えますが、厚生労働大臣の見解を伺います。
<介護離職防止のための仕事と介護の支援強化等>
ダブルケアラーも含め、仕事と介護の両立の困難さから、介護離職 が大きな課題となっています。今回の法案では、介護離職防止策として、介護に直面した労働者への両立支援制度の情報周知・意向確認や、労働者への早期の情報提供を事業主に義務付けるなどの改正が提案 されています。
これは、前回 2021 年(令和 3 年)の本法案改正における育児支援と同様の仕組みを導入するものと理解しております。2 年前の質疑でも指摘したところですが、事業主が講ずべき措置の肝心なところの多くが省令事項に落ちており、成立後に形骸化する懸念が残ります。
周知や意向確認のタイミング、意向確認の手法、雇用環境の整備の具体的内容について厚生労働大臣に伺います。
個々の労働者の意向が適切に配慮されるよう実効性を担保していくため、労働政策審議会で改めて省令事項を詳細に審議していく必要があると考えますが、厚生労働大臣の見解を伺います。
<仕事と介護の両立支援(ビジネスケアラー)>
仕事と介護の両立支援について、今回の法案では、現行の介護休業、介護休暇の拡充や、新たな両立支援制度の創設は盛り込まれません でした。育児と比較して、介護の両立支援施策が乏しいようにも感じます。今回の法案において仕事と介護の両立支援制度の根幹部分を改正しなかった理由及び仕事をしながら家族の介護に従事するビジネスケアラーに対する今後の支援の充実策について、厚労大臣の見解を伺います。
また、介護休業は、育児休業と異なり、社会保険料免除の対象となっていません。政府は、育児休業は次世代育成の観点から他の被保険者や事業主の理解を得られることから免除の対象となっている、と説明しています。ですが、現在、仕事と介護の両立が出来ないことは日本の労働損失に有する影響は甚大で、社会全体にとって重要な課題となっており、政府が主体的に説明を行うことで介護休業期間中の社会保険料免除について理解を得るべきです。ビジネスケアラーの生活を支えるため、介護休業期間中の社会保険料免除について検討いただきたいと考えますが、厚生労働大臣の見解を伺います。
また、経済産業省において生産年齢人口の減少が続く中、ビジネスケアラーの数は増加傾向で、2030 年時点では約 318 万人に上り、経済損失額は約 9 兆円との試算を背景に、企業による両立支援への取組を促すための「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」が今年の 3 月 24 日に公表されています。厚生労働省の調査結果では介護休業の規定について整備は進んでいるが趣旨が伝わっていない等、雇用労働者への周知・取得を進め介護離職防止につなげることは経済産業省との連携も重要だと考えます。経済産業省における仕事と介護の両立支援への取組状況、合わせてダブルケアラー支援への見解について、経済産業大臣に伺います。
<各種認定マーク統合の必要性>
次世代育成支援対策推進法について伺います。
前回の育児・介護休業法改正を背景として、次世代育成支援対策推進法に基づくくるみん認定基準が改正され、令和4年4月から男性の育児休業基準の引き上げやトライくるみん認定制度の創設が実施されています。残念ながら令和6年3月までにトライくるみん認定された企業として公表を了解したものはわずか2件です。トライくるみんの取得が進まない要因分析及びより上位のくるみんへ移行する企業の動向について厚生労働大臣に伺います。
ワークライフバランスに関係する各種認定マークやシンボルマークについては、次世代育成支援対策推進法に基づくくるみん、女性活躍推進法に基づくえるぼし、青少年の雇用の促進等に関する法律に基づくユースエール、企業が介護離職を未然に防止するため、仕事と介護を両立できる職場環境の整備促進に取り組むことを示すトモニンなどが乱立しており、それぞれの法律の目的や認定制度の意義は非常に重要であるものの、一目で分かりにくくなっています。統合して現場に分かりやすく周知することで、マークの認知度向上はもとより、各政策目的の実効性を高めていく必要があると考えます。
統合に際しては、各府省や部局単位で細分化された縦割り行政を乗り越え、ダブルケアラーへの支援の観点も踏まえるとともに、育児だけあるいは介護だけに偏重することなく、いずれの支援体制も整備することを企業に促していく制度設計が重要と考えますが、厚生労働大臣の見解を伺います。
最後に法案に大きく関係する育児休業を支える給付の在り方について質問します。
<育児休業を支える給付の在り方>
現在審議されております子ども・子育て支援法等改正案において、子の出生後の一定期間に男女で育児休業を取得することで 28 日間を限度に育児休業給付率を手取り 10 割相当にする「出生後休業支援給付」や、2歳未満の子を養育するため、時短勤務中に支払われた賃金額の 10%を支給する「育児時短就業給付」を創設し、子ども・子育て支援金を充当することが示されています。
これらの給付については、既存制度と別体系の支援金充当事業とすることもできたはずですが、あえて雇用保険法の育児休業給付の体系に位置付けた趣旨について厚生労働大臣に伺います。
また、雇用保険法に基づく給付として行われるものであれば、その効果や現場に与える影響などの検証や今後の在り方に関する検討等については、労働政策審議会において議論すべきものと考えますが、厚生労働大臣に伺います。
さらに、雇用保険法に基づく給付として行われることで、育児休業給付が新たな特別会計に勘定移管された後に、雇用保険料が他のこども・子育て施策に流用されることが容易にできてしまうのではないかと懸念されます。流用の防止や負担と給付の関係を明確にする観点から、新たな勘定の中で、雇用保険料を財源とする給付と、その他の施策はそれぞれで管理すべきと考えます。
運用面だけではなく、法制面でも明確に担保されていることが必要と考えますが、雇用保険料が他のこども・子育て施策に流用されることがないよう明確に答弁を求めるとともに、具体的な制度設計について加藤大臣に伺います。
<結び>
次世代育成支援対策推進法では男性の育児休業の取得率が主な議論となっていますが、家庭内での無償ケア労働を前提としていることには変わりなく、育児や介護を地域や公共のサービスを含めて、社会全体で支えていくという視点が抜け落ちていては雇用労働以外で働く人への支援につながりません。
何より、制度設計者が設定する『ニーズ対応』ではなく『すべての子どもに制限をかけることのない』、各種支援の所得制限撤廃を実施し、子育てする人だけに伝わる『詳細な制度設計』ではなく、社会の誰もに届く『大胆でシンプルな支援』を実現するために私たち国民民主党は「教育国債」の創設を提案し質問を終わります。ありがとうございました。