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ニュースリリース

【参本会議】礒﨑哲史副代表が電気事業法等改正案に賛成の立場で討論

 礒﨑哲史副代表(参議院議員/全国比例)は31日、国民民主党を代表し、参議院本会議で議題となった「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」(GX脱炭素電源法案)に対する賛成討論を行った。討論の全文は以下のとおり。

「GX脱炭素電源法案」に対する討論

令和5年5月31日
国民民主党・新緑風会 礒﨑 哲史

 国民民主党・新緑風会の礒﨑哲史です。

 会派を代表し、ただいま議題となりましたGX脱炭素電源法案に賛成の立場から討論を行います。

 以下、賛成する理由を述べます。
 まず前提として、新型コロナの収束に伴い、世界的にエネルギー需要が回復していること、OPECプラスの減産が続いていること、ロシアのウクライナ侵攻により、世界各国が脱ロシア依存やエネルギー確保を進めていること、円安が続いていることなどにより、我が国のエネルギー価格が高止まりし、国民の負担は引き続き高いままとなっていることを再認識する必要があります。
 一方、日本政府として掲げた2050年カーボンニュートラルは国際公約であり、気候変動問題への対応は人類共通の課題となっている中、脱炭素化に向けた取り組みは待ったなしであることは周知の事実です。
 それを受けて、本年2月にまとめられた「GX実現に向けた基本方針」では、オイルショック以来のエネルギー危機とも言える状況の中、安定的、かつ安価なエネルギー供給が最優先課題であること、そして、脱炭素効果の高い電源を最大限活用することを確認しています。加えて、GXの実現を通して、新たな市場・需要を創出しながら産業競争力を強化し、経済成長にもつなげていくことを確認しています。
 国民民主党としては、こうした方向性には賛同すると共に、それに資する対応として、再エネ導入拡大に向けた新制度による系統整備促進や現行の再エネ設備の更新・増設の促進、原子力の利用と規制の責任を明確にした上での規制ルールの厳格化、加えて、原発廃炉に向けた制度の具体化と国の責任の強化は、それぞれ適切な法整備であるものと考えます。

 以上が本法案に賛成する理由でありますが、その具体的な手法や行程については、まだまだ深堀をした議論が不足していると考えます。今回の法案は、多くの重要法案を束ねて提出したことから、多くの重要な論点について深堀をした徹底審議を行うことができずに、ひいては国民の皆様に丁寧に説明する機会を逸したことに大きな問題があったと考えます。こうした政府の強引な進め方に改めて遺憾の意を表すると共に、せめて、再エネに関わる法改正と原発に関わる法改正部分を、分けて審議するべきであったことを、改めて申し上げます。

 そうした観点から、以下、深掘りした審議をすべきだったと思われる論点の一部を挙げることで、残りの討論に代えます。
 まずは、再生可能エネルギーの系統強化における課題です。大都市を中心に電力需給のひっ迫が引き続き起こりうることを考えれば、再生可能エネルギーの増強が見込まれる地域からの系統強化は必要なことと考えますが、いわゆる地産地消による分散電源やEVを使ったVehicle to Home等、蓄電池の利用も想定すると、この度のマスタープランで示した規模の系統整備は必要ないのではないかという考え方もあります。この点は、今回の法改正をもって将来的な工程まで決めきるのではなく、断続的な検討を加えていく必要があります。
 次に、再エネ導入拡大にむけた課題についてです。現状では、太陽光パネルや風力発電の技術などを海外事業者から調達することになります。とりわけ太陽光パネルの輸入に占める約8割は中国製であり、経済安全保障上の観点からも問題があります。本来は、再生可能エネルギーをできるだけ国産化すべきです。我が国が資源・技術ともに強みを持つペロブスカイト太陽電池等の研究開発の加速化や、地熱の活用、ジオエンジニアリングの研究開発支援も重要です。再生可能エネルギー普及のために国富を流出してきた状況から脱するためにも、この点について議論を深める必要があります。

 次に、原発の運転期間の上限規定に関わる科学的・技術的根拠についてです。今回の規定は、従来の40年、60年の数字を踏襲するという事実上の政治判断によるものでしたが、後世に引き継ぐにはあまりに曖昧な判断基準です。延長判断を利用側に置くのであれば、本来は、科学的・技術的な根拠を政府として示すべきであり、根拠が見いだせないのであれば、上限をなくすということも逆にありえるからです。翻って、高経年化の安全規制については省令レベルから法律に格上げされ、これまで40年目に1回だけだった規制委員会の認可が、30年目に早まる上に、以降最長でも10年毎に認可が必要になったことで、規制が厳格化されたことは、なかなか世間には伝わっておらず、政府が説明する機会がしっかりと設けられなかったことは大いに反省すべきです。

 次に、原発のリプレースの問題です。国民民主党は、既存原発の次世代軽水炉や小型モジュール炉(SMR)などへの建て替えを政策として示しています。いわゆる次世代革新炉は安全性が高まることから、脱炭素化と中長期の安定的なエネルギー供給体制を構築する上で急がれる課題と考えますが、今般政府として推進に舵をきったにも関わらず、今回の法案審議では、あまり議論が深まりませんでした。

 さらには、バックエンド、いわゆる廃炉および最終処分に向けた技術者の人材育成についてです。今回、NuROを通じた廃炉に向けた制度を整備することとなりましたが、今後、中長期に亘って既存原発の運営・保守管理、廃炉、最終処分を行っていくのは現場で働く技術者の方々です。とりわけ超長期的に取り組みがされていくバックエンドについては、必要な人材の確保、技術の維持・強化、そして安心して働く環境整備が不可欠であり、その責任は、事業者はもとより、政府も負うべきです。また、バックエンド事業が着実に進むように、規制や作業管理の在り方について、諸外国の事例等も踏まえて、リスクレベルに応じた解体作業が可能となるよう検討を進めていく必要があります。

 電力システム改革、中でも電力の完全自由化の総括の必要性について申し上げます。電力システム改革は、「電力の安定供給の確保」、「電気料金上昇の抑制」、そして「需要家の選択肢の拡大と事業者へのビジネスチャンスの創出」を目的に実施してきましたが、現在においても当初の目的のいずれもが実現されていません。帝国データバンクによれば、完全自由化以降、2021年4月までに登録のあった「新電力会社」706社のうち、2023年3月24日時点で195社が倒産や廃業、または電力事業の契約停止や撤退に追い込まれました。また参考人質疑において、自由化とFITの導入を並行して行ったことでゆがんだ市場の状態をつくり出したとの見解もありました。電力システム改革が与えた影響と課題を検証し、実効性のある取り組みを早急に進めることが必要と考えます。

 最後に、需要サイドでの省エネの促進についてです。今回の法案では直接の対象となっておらず、前回のGX推進法で「推進していく」とだけ言及されている程度ですが、省エネ施策の如何によっては、今後の電源構成にも大きく影響することから、大変重要な課題です。にも関わらず、この点はほとんど議論されなかったことにも、今回の束ね法案の問題の一端があります。また、この点は、温室効果ガス排出に占める電力の割合は4割に過ぎないということも改めて認識すべきであり、需要サイドのあらゆる分野でいかに改革を実施できるかが、カギとなると考えます。

 以上、GX実現に向けては、まだまだ多くの課題についての議論が必要であることを指摘し、国民民主党は、正直で、偏らない、現実的な政治を実践していくことを改めて申し上げ、討論と致します。