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ニュースリリース

【参本会議】矢田わか子副代表が「こども家庭庁設置法案」、ならびに「こども家庭庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案」について質疑

 矢田わか子副代表(参議院議員/全国比例)は18日、国民民主党を代表し、参議院本会議で議題となった「こども家庭庁設置法案」、ならびに「こども家庭庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案」に対して質疑を行った。質問の全文は以下の通り。

「こども家庭庁設置法案」、ならびに「こども家庭庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案」への質問

国民民主党・新緑風会 矢田わか子

 国民民主党・新緑風会の矢田わか子です。会派を代表し、ただいま議題となりました「こども家庭庁設置法案」等に対し質問いたします。

 質問の前に、戦禍にあるウクライナにおいては、多くの子どもたちが命の危険に晒され、そして生活難を強いられたり、学習の機会を奪われています。岸田総理におかれましては、 1日も早くこの戦争が終わるよう外交力を発揮していただき、また日本に避難している子ども達を含め、ウクライナの少年・少女への支援強化に取り組んでいただくようご要請申し上げます。

 本法案は、各省庁の「子ども政策」、「子育て支援政策」などに関わる政府内の部局や審議会等を統合し、この新たな「こども家庭庁」が、政策調整機能や司令塔機能を発揮させ、子どもの健全育成のための政策を推進しようとするものです。しかし、法案は組織対応に限定されており、この新組織がどのような基本姿勢で、どのような基本政策をもって政策を推進されるのかは、法文上、明記されておりません。
 この足らざる部分を補完するためか、与党からは議員立法として「こども基本法案」が提出されました。本来は、こういった子ども子育てに関する基本的な政策姿勢を示す法案についても閣法として同時に提出されるべきであったと考えますが、政府として、なぜこの法案のみを閣法としたのか、総理大臣よりの説明を求めます。

 各省庁にまたがる課題を組織的に統合して対応することは、行政改革の一環として妥当なものと考えますが、その統合された組織が統合前に比べ、より高いパフォーマンスを発揮するかどうかは別問題であります。
 同じような目的でもって昨年9月に内閣府に新設された「デジタル庁」については、スタートから8ヶ月で幹部人事の変更があり、また内部的な管理や業務推進において当初期待されていたものになっていない、との指摘もされています。
 こども家庭庁の場合、確かに縦割りの弊害をなくすことにはなりますが、集められた各省庁の担当者が同じような政策スタンスで業務を推進するならば、政策の新機軸を打ち出しながら司令塔機能を果たすことに大きな期待はできません。
 この懸念をどのように取り除かれるのか、今後の運営について対応方針があれば、野田大臣より説明していただきたいと思います。

 国家が子育て支援や教育支援に力を入れるのは、国としての社会活動や経済活動のみならず、文化・芸術活動を継続的に支え発展させる人材を育成するという目的があるからです。同時にこのことは、子どもに一方的に価値観を押しつけながら教育訓練していくのではなく、「子どもの権利条約」で明記されているように、子どもの権利と尊厳と自主性を守り、そして子どもが健やかに成長していく環境づくりに国・地方公共団体が可能な限りの資源をつぎ込むことが重要であると考えます。残念ながら、我が国の家族政策に関する公的支出の対GDP比はヨーロッパ先進国のほぼ半分、また公的教育への財政支出の対GDP比も世界で37位と、国際的にも相対的な低さが際立っています。その分、各家庭や子ども本人の負担が大きくなっています。
 幼児教育から高校までの教育の完全無償化を目指し、当面は、家族政策の公的支出の対GDP比を1.73%から3%程度に倍増することを目標とすべきと考えます。このために、 私ども国民民主党は、5兆円規模の「教育国債」の発行を提言しております。
 この教育国債については、5年前、安倍政権下において与党内で検討された経過もありますので、政府・与党としてもこの教育国債の発行について是非とも前向きの議論を始めてほしいと考えますが、総理大臣の見解を伺います。

 子育て中の家庭において、国民の皆さんが疑問や不満を感じておられるのが、子育て・教育支援策における所得制限の問題です。この所得制限は、児童手当、児童扶養手当、高校授業料無償化、大学などの修学支援制度など、多岐にわたっています。
 低所得者世帯への手厚い支援は福祉国家としての当然の施策ですが、一方で、高校授業料無償化制度に見られるように、公立・私立の違いや共働き世帯かどうかなどによって細かな所得制限が設けられ、中間所得層の多くの世帯が無償化の対象になっていません。このため、子どもが複数いる家庭や厳しい家計状況にある世帯では、子どもたちの進学の選択肢が大きく狭められるという事態に直面しています。
 一方、日本学生支援機構が運営する大学等の奨学金制度においても、中間所得層の学生は給付型の奨学金を受けることはできず、また貸与型の奨学金も世帯所得によって無利子、 有利子の区分がなされているため、有利子の奨学金や民間の教育ローンを利用せざるを得ないという学生も多くいます。卒業後に返済義務を負うのは子ども達であって、世帯収入によって返済の負担に差が出ることに多くの若者は不条理を感じています。成人年齢が18歳に引き下げられましたが、大学生・専門学校の学生にも国としての手厚い支援策を講じていくべきだと考えます。
 アメリカの哲学者のジョン・デューイは「教育の中心は教師でも教科書でもない、子ども自身だ」と主張しました。それは本人の意思によって様々な興味対象を持たせ、それに関する能力を伸ばせば良いという意味ではなく、子どもも一人の生活者として、経済の先を見据えた教育を受けさせるべきだという意味での「中心」ということです。つまり、  教育の受ける権利、そして教育において公的支援を受けるのも、その中心は一人ひとりの子どもにある、ということです。そのことが国の発展、社会の進歩に繋がるということです。この意味において、子どもに関する社会手当や現物給付は、子ども自身に対する給付と位置付け、世帯の所得によらず、すべての子どもを平等に取り扱うためにも所得制限を撤廃すべきと考えます。
 私ども国民民主党は、この所得制限の在り方を検討する機関の設置に関する議員立法を準備していますが、野田大臣、ならびに末松文部科学大臣のお考えを伺います。

 この所得制限に関しては、「特別児童扶養手当」、「障害児福祉手当」など、障害児への 各種支援措置にも適用されています。支援の対象とならない、もしくは手当が減額をされる中間所得層の世帯においては、例えば、子どもの成長に合わせて義足を作り替えようとしても家計が苦しく対応できないといった事例も報告されています。障害児を養育する家庭の負担を軽減するためにも、所得制限の見直しをする必要があると考えますが、厚生労働大臣より見解を伺いたいと思います。

 民主党政権時代に実施された「子ども手当」は所得制限を外し、その財源の一部として所得税の年少扶養控除が廃止されましたが、その後、自公政権は新たな児童手当に所得制限を導入しました。所得制限を復活させたのなら、児童手当支給の対象とならない世帯については少なくとも年少扶養控除を復活させるべきと考えますが、総理大臣の見解を伺います。

 次に少子化対策に関わる政策の在り方について、2点質問します。1点目としては、子育て支援や教育政策の推進は、出生率の向上、ひいては少子化対策・経済成長対策に直接繋がるということを再認識する必要があるということです。例えば、地方公共団体が独自に細かい子育て支援策を講じれば、確実に出生率は上がり、人口の流入を導くことになります。
 中核都市で人口増加率が一番高い兵庫県明石市においては、子育て支援に関して、①高校卒業までの医療費の無償化、②第2子以降の保育料を0歳から無料化、③中学校の給食費の無償化、④市立幼稚園での給食実施と副食費の無料化、⑤公共施設の入場料の無償化――などの現物給付的施策を展開し、少子化に歯止めをかけ地域経済を活性化しています。
 このような、子育て世帯を直接支援する制度は少子化対策に大きな効果を発揮するものであることを国としても認識し、その実行にむけて検討を決断すべきと考えますが、野田大臣のご見解を伺いたいと思います。

 もう一点、子を産み育てやすい社会に向けて提案しておきたい施策は、妊娠・出産に関する支援措置の改善です。
 被用者保険では、産前・産後の休業に対する収入補償として「出産手当金」制度があります。この制度を国民健康保険加入の労働者にも適用すべきだと考えます。今日、短時間労働者や契約社員、個人請負の事業主は実質的に労働者でありながら、被用者保険に入れず、このため「出産手当金」制度は適用されません。この制度が適用されれば、妊娠・出産への意欲が高まり、出生率の向上が期待できると考えます。厚生労働大臣の見解を求めます。

 以上、あくまでも子どもを真ん中におき、関係予算を拡充し、すべての子どもたちを本気で応援する、しからば経済も活性化する、ということを訴え、またそのための政治の決断を求め、私の質問を終わります。ご静聴ありがとうございました。