ニュースリリース
【参本会議】伊藤議員が「教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案」について質疑
伊藤孝恵副代表(参議院議員/愛知県)は20日、国民民主党を代表し、参議院本会議で議題となった「教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案」について質疑を行った。質疑の全文は以下のとおり。
教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律案について
令和4年4月20日(水)
国民民主党・新緑風会 伊藤孝恵
国民民主党・新緑風会の伊藤孝恵です。私は、会派を代表し、ただいま議題となりました法律案について質問致します。
冒頭、ウクライナの地で戦火の中、引き裂かれ、奪われ、失われた命に、哀悼の誠をささげます。全世界が足並みをそろえてロシアと厳に対峙し、民主主義国家が連帯して難民の受け入れと支援を進めることは勿論、我が国のジェノサイド条約加盟に向け、国内法との整合性に鑑みた現実的な議論を始める必要があります。官房長官にロシアへの制裁の現状も含め、答弁を求めます。
教育委員会制度や男女共学化など、現在の日本の教育制度の礎は、その多くが戦後、アメリカの提言により成されたものです。そんな時代背景下で、旧文部省の官僚達がアメリカ側を説得してようやく産声を上げたのが、昭和24年公布の「教育公務員特例法」です。本法第21条には「教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない」と記されています。加えて第22条には「研修を受ける機会が与えられなければならない」と書かれています。つまり研修は「義務」であると同時に「権利」でもある。ここに立法の趣旨があります。
そして何故、教員の学びがそれほどまでに大切か?と問われれば、我々の目の前にいる子ども達に、良質な学びを贈る事こそが、この国の未来に連なる可能性そのものだからです。
昭和24年の公布から72年。大戦の傷、癒えぬ中にあって、どうか未来世代が、豊かで幸せな学校生活を送れますようにと、教員たちの奮闘に期待し、この法律を送り出したであろう、先人達の願いに想いをはせながら以下、文部科学大臣に質問させて頂きます。
教員の学びを保障するには「免許更新制」や「研修の是非」よりもまず先に「世界一多忙」と言われる労働環境の改善について、議論すべきだと思います。大臣の見解を伺います。
OECDが2018年に実施した国際教員指導環境調査によると、日本の教員の1週間あたりの労働時間は小学校、中学校共に調査参加国の中で最長にも関わらず、知識や専門性を高めるための「職能開発」の時間は最短でした。授業に向けて「研さん」するのではなく、事務作業や部活動など、課外活動に多くの時間を費やしている実態があります。
今年度は、教員勤務実態調査が行われます。この結果をもとに、働き方を再考し、定額働かせ放題の「給特法」の抜本見直しに向けた検討が開始されるものと理解しています。
教員が疲弊していては、よい授業は出来ません。子ども達を愛するには、愛せるだけの心の余裕が必要なのです。
諸外国は軒並み、教員の身分や待遇を改善する教育政策をとっているのに対し、我が国の教員の給与は右肩下がり、非正規教員の課題も放置されている現状について、大臣はどのような意思をお持ちなのか?またそれらが子ども達の学びに如何なる影響を及ぼしているとお考えか?伺います。
やることは明確です。業務過多に陥っている教員たちの仕事のどこを、どのように減らすのか。教員をサポートする人材やデジタル技術など、いつまでに、どのくらいの規模の投資をするのか。いかなる人材を、いかなる方法で、賃金水準で、計画的に増やすのか。すべては子ども達の毎日の学びを支えるための「海図」を、大臣に見せて頂きたいのです。答弁を求めます。
劣悪な労働環境が認知されている昨今、2021年度採用の公立小学校の教員試験倍率は過去最低の2.6倍となり、中学校・高校も大幅減となりました。教員のなり手はいないのに、2025年度には小学校の全学年で35人学級となります。これに伴って、学校現場には、新たに1万3000人を超える教員を迎え入れる必要があります。新卒並びに社会人教員採用における、それぞれの取組の具体策について大臣に伺います。
教員免許更新制は、免許を有しながら教職に就いていない社会人が教員を目指す上で、高いハードルとなっていました。
かくいう私も四半世紀前に教員免許を取得しましたが、現行法制下では免許は休眠状態です。教員を目指す場合、仕事の合間をぬって30時間の免許状更新講習を受講しなければ、教壇に立つことは出来ません。
文部科学省が昨年、免許状を有する民間企業の勤務者などを対象に行ったアンケートでは、教員への転職ボトルネックとして、「教員免許が休眠状態又は失効中である」とした割合が3割弱、「免許状更新講習を受講する時間がない」とした割合が2割強に上りました。
本法律案により更新制が廃止されれば、講習を受けなくても教壇に立つことが可能となります。今後、文科省として、免許状が休眠状態又は失効中となっている社会人に対して、どのような働きかけをしていくのか?
学校現場の疲弊のみならず、子ども達が多様な経験や感覚を持つ社会人教員から学べるメリットを思えば、政府広報や「専用相談窓口」などを設けてでも、人材を確保すべきと考えますが、大臣のご所見を伺います。
教員免許更新制は、自民党政権が紆余曲折の末に実現させた政策です。「不適格教員の排除」という目的を、周囲の批判をかわすため「教員の能力開発」という美辞麗句で覆って変質させた結果、いったいこれは何の為?誰の為?という制度が出来上がり、今日の迷走を招きました。
文科大臣が、我が国の子ども達に示しておられる学習指導要領の冒頭には「主体的・対話的で深い学びの実現」が掲げられております。
大臣には是非、当該制度の導入を主導した政治家たちに、主体的、対話的な深い問いを投げかけて頂きたいと思います。
そもそも中央教育審議会のまとめで指摘されている制度の不備の多くは、導入前から危惧されていたことです。にも関わらず、政治主導でいつの間にか進められてしまった事に、問題の核心があります。
子どもや現場の視点に欠けた政策決定を二度としないために、大臣はどのように主体的に、検証に関わっていかれるおつもりか?なぜ廃止の決断に13年もの時間を要したのか?教えて下さい。
最後に、本法律案では、教員免許更新制を廃止するだけでなく「教育公務員特例法」も改正し、研修受講履歴の記録作成を義務化することになっています。研修記録を作成すること自体を否定するつもりはありません。私が伺いたいのは、その記録が教員の成長、ひいては子どもたちの学びにとって有益であるというエビデンスの有無と、制度設計の詳細です。大臣の認識をお示しください。
エビデンスなき理念先行の義務化は、教員免許更新制と同じ過ちを繰り返すことになりかねず、教員による主体的な学びを求める一方で、研修を受講しない場合は懲戒処分になりうるという建て付けは、現場の不安を生んでいます。
教員は、生徒達を目の前にして、自分の使命とは何か。自分は彼らの人生にとって、どのような存在になり得るのか?をいつも考えておられます。
教え子が自ら命を絶ち、なぜ?どうして?と問い続ける、終わらない苦しみの中、レジリエンス教育を学び出した先生に会いました。
担任した生徒がヤングケアラーだったことを同窓会の席で初めて知らされ、どうしてあの時、自分は気付けなかったのか?自問自答した末、ヤングケアラー支援団体でボランティアをはじめたという先生がいました。
教室で一言も声を発しない外国ルーツの生徒と話したい一心で、ポルトガル語を習い出した先生や、耳の障がいのある保護者と目を見て対話したいと手話を習得した先生もいました。
教室の中で、子ども達が先生から学ぶように、先生たちもまた、子ども達の一人一人から、多くのメッセージを受け取っています。ここから生まれた課題感や後悔や、もっと知りたい、まだまだ足りない、そんな気持ちを応援する仕組みが「研修」であるべきなのではないでしょうか。大臣の見解を伺います。
大人になる過程では、沢山の失敗や裏切り、孤独や孤立にさいなまれることがあります。そんな時、若き日に出会った恩師や、ふとかけられた言葉に、その後の人生を支えられることがあります。
この国で生きる子ども達に、そんなかけがえのない時間を贈るための改正に、これらがなることを心から願い、私の質問を終わります。